2012年01月28日

麒麟の翼 東野圭吾著。

≪★★★★≫

ふらつきながら歩く男性を、交番の巡査が目撃していた。ただの酔っ払いかと思い近づくと、その男性の胸にはナイフが刺さっており、搬送先の病院で息を引き取った。
男性、青柳武明はなにを思いながら橋を目指したのか。
日本橋を舞台に、加賀恭一郎が挑む、家族の絆の物語。

「えらいことしちゃった」と恋人の元へ電話をかけた直後、事故に遭い、意識不明のまま、事件の容疑者となってしまった八島冬樹。
八島の無実をひたすら信じながら、意識が戻るのを待つ香織。
会社の労災隠し、その指示をしたとされる青柳、八島の逆恨みの犯行と警察は踏んで捜査を開始するが、加賀はなぜ青柳が日本橋にいたのか疑問を持ち、そこから解き明かされる、青柳の生前の足取り、それが意味するものは、深い深い家族への、息子、悠人への想いだった。

序盤はずっと八島の犯人説で動き、被疑者死亡でそのままいくところを、加賀は一つ一つ事件と向き合う。
なぜ青柳は日本橋にいたのか。たびたび被害者が目撃された場所には、神社があった。家族の誰もが見覚えのないデジカメ。これはなにを意味するのか。
事件の数日前、青柳武明は悠人の学校へ電話をしている、一体なんのために。

丁寧にほどいていくことで、まったく別のものが見えてくる。
そこから見えてきたものは、三年前に悠人の通っていた中学で起きた事故。
一人の後輩の、その家族の未来を奪ってしまった悲しい事故の裏に隠された真実とは・・・。

死を間近にしながら、青柳が悠人へ伝えたかったこと。気付いた悠人は、武明の想いを真っ直ぐに受け止める。

さすがだなと思った。文章がさらっとしてるので、最初の頃は見落としがちだったその裏に隠された深いメッセージ、いっつも後から、じわじわと、ああ、そうかって気づくんだけど、読む直前に、映画の予告がバンバン視覚から入ってきたおかげもあって、最初からきたね。

父から息子へ伝えたかったことが、なんとも深い。
一気に読んでしまった。

お蕎麦を食べて、下町めぐりがしたくなる一冊でした。

posted by じゃじゃまま at 22:23| 神奈川 曇り| Comment(3) | TrackBack(2) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月12日

峠うどん物語 上下巻 重松清著。

≪★★★★☆≫

峠のうどん屋。頑固なおじいちゃんとおしゃべり好きなおばあちゃん。目の前に建ってしまった市営斎場のせいで「長寿庵」から店名を変更したけど、おじいちゃんはうどんを打てればよし。おばあちゃんはそんなおじいちゃんがいればよし。
でも一人息子であるお父さんは、早くお店をたたんで欲しいと思っている。
孫であるよっちゃんはお店の手伝いをするのが大好きで、そんなよっちゃんをお母さんは本音では苦々しく思っている。

「学校では教えてもらえないこと大切なことが『峠うどん』にはある」っておばあちゃん。
「中学生のうちから人の生き死にを見るのはどうか」とお母さん。

それでもよっちゃんはお手伝いをするのが大好き。
いろんな人の別れの場面、様々な事情や悲しみに涙が止まらない連作短篇集。

もう上巻から止まらなかった。
義理で参列するお葬式、わだかまりの残る別れ、どんなに長生きしていてもその別れは悲しいもので、どれもが胸を打つ。

町医者の患者さんが亡くなるたびに葬儀に参列し、奥さんが癌でずっと看病する「本年も又、喪中につき」は中でもよかった。
お母さんの貧しかった時代の「二丁目時代」も、懐かしくてよかった。

おじいちゃんが頑固で無口すぎるのがちょっと気になったけど、絶対にうどんが食べたくなる!!特に月見うどんが食べたい!!
あの同級生の男の子がおじいちゃんの弟子になるのかどうかも、是非続きが気になる。


posted by じゃじゃまま at 15:13| 神奈川 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 重松清 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

カレンダーボーイ 小路幸也著。

≪★★★≫

目覚めるたびに1968年と2006年を行ったり来たりする安斎と三都。
二人は過去はクラスメイトで現在では同じ大学に勤務する同僚。そしてその1968年には、大好きなクラスメイトの里美ちゃんが転校して、その後三億円強奪事件が原因で一家心中してしまう事件があった。

二人は、なんのためにタイムスリップを繰り返すのか。これは里美ちゃんを救うためではないのか。
三都は過去に救えなかった里美ちゃんのために、安斎は勤務する大学の不正をなんとかするため、過去に行くたびに奔走する。

それはなにかを変えれば、そのためになにかを失うことにもなる。
それでも二人は里美ちゃんを救うために頑張るのだ。

三都は里美ちゃんの一家心中のなにかを知っていて、それを最後まで明かさないんだよ。
ああ、そうだ、これは小路氏の小説だったと痛感。もったいつけるんだよね。
タイムスリップは変に理屈でああだこうだと説明されるより、なんかわかんないけど行ったり来たりっていうんでいいよね。

でも、三都の心は過去に戻ったままになり、そして記憶が薄れて、思い出を失っていくってことなんだけど、でもそのまま成長して、数十年後にはまた同じ大学で再会するし、家族とも記憶はないけど、また新たな思い出を作れるからいいんじゃないの、ってことにならないの?

なんか切ない終わりなんだけど、でもまた出会えるってことで・・・駄目なの?あの切ない終わり方が気になる。
三都は記憶がどんどん薄れて、そのまま1968年にいるんだけど、あのお姉さんの担当編集者も過去にいて、そのまま記憶ありましたけど、あれはどのようなことなんだ??

このタイムスリップには里美ちゃん救出という命題があって、すべてそのための準備ってこと?あの編集者も、安斎と三都が来る時のために過去に来てたってことなのかな。

どうにもこうにもポロポロと小さい綻びが気になってしまった。

posted by じゃじゃまま at 14:54| 神奈川 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 小路幸也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月05日

チヨ子 宮部みゆき著。

≪★★★☆≫

ホラー&ファンタジー短篇集。
「雪娘」・・・ 20年前に殺されてしまった同級生。そういえば彼女が発見されたのもこんな日だった。久しぶりに同級生4人で再会することになった日、雪が降り始めた。
真犯人を知っている同級生と、知られている同級生。
真子の奥底に隠された嫉妬、秘密。小さな足跡が続く雪道。でも真子にはそれが見えない。なんともゾロっとした後味。

「オモチャ」・・・ 縁を切っていた親戚と偶然同じ町に住むことになった一家。その親戚の連れ合いが亡くなった。噂に尾ひれがついてまわり、それは大叔父の名誉を傷つけるものであったけど、どうすることもできず、大叔父も亡くなってしまった。
なにもしてあげられず、助けてあげられなかった甥一家が切ない。なにも言わず死んでしまった大叔父が悲しかった。

「チヨ子」・・・ アルバイトで来た着ぐるみ。不思議なものが見えてしまう。人々が大事にしていた宝物がその人自身となって見えるのだ。
人はなにかを大事にしていれば、守られる。そんな不思議な物語だったけど、宝物がなく、その人自身にしか見えず、背中に黒い悪いものがついている人々の話の方に興味が湧いてしまった。

「いしまくら」・・・ 住んでいる町で殺人事件が起こった。ほどなくして幽霊騒ぎが起こる。事の真相と、被害者の少女の名誉を挽回しようと、中学生カップルが取材をした。
編集者である父親に協力を仰ぎ、それはもう一つの殺人事件のある事実を暴き出すこととなった。
噂の出所や、その心理。教訓めいた物語でもあって、父と娘の物語でもあった。

「聖痕」・・・ 離婚して手放した我が子が殺人犯になっていた。責任の一端は自分にもあると、息子を助けてほしいと、調査事務所を訪ねた男性。
息子の犯罪が、勝手に神の裁きのような扱いでネットで祭り上げられ、それにより更生しようとしていた息子が苦しんでいるという。
正直、これは私には理解不能だった。あの調査員のしていたこと、ネットで盛り上がっている人々の心理がさっぱり分からなくて、それ抜きの話なら逆に興味持てたんだけど、教祖的なジャンルになると、もうお手上げ。



posted by じゃじゃまま at 17:34| 神奈川 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

寿フォーエバー 山本幸久著。

≪★★★≫

いまどきピンクのハート型がシンボルであるバブルの残骸の結婚式場、寿樹殿に勤める井倉靖子。人様の結婚の世話をしてる場合じゃないけど、辞めてしまった先輩から引継いだ大きな婚礼を無事済ませるため、自分の合コンを延期にしてまで仕事に明け暮れる。

近くにできたフレンチレストランがウェディングも手がけ、モタモタしてはいられない・・・はずが、どうにも仕事が中途半端な靖子は、ヘアメイクの友人にはっぱかけられ、チームに支えられ、失敗を繰り返しながら、親に内緒のウェディングプレゼント、子連れ式、大きな式の破談と3歩下がっては5歩前進の成長をしていく。

個性豊かなチームのみんな、お客さん、ほっこり温かい物語、靖子に幸せは来るのか。

目玉はハリー&メロロンのドン引きカップル。いい年してイチャイチャ、ため息カップルだけど、この婚礼にみんなのボーナスがかかっている。
反感ばかりだったこのカップルなのだが、靖子との友情、メロロン再生の物語でもある。

何度も友人の亜湖に「フレンチレストランに抜かされるよ!」と言われてものん気だった靖子。とうとう、同僚のカニ平さんに「あなたの仕事は感心しません」と中途半端を指摘される。
なんでも後回し、詰めが甘い。うっ!とまるで自分のこと言われてるようだけど、確かに靖子はなんでも、あとでいっか〜。ちょっとイライラしちゃうよね。

そういえば、山本氏の仕事物語では、ドジでのろまな亀の成長物語好きだったよな〜と今さらながら思い出した。

待ちに待った合コンのお相手がモデル上がりのイケメンじゃなかったのもほっこり温かい。

posted by じゃじゃまま at 17:09| 神奈川 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 山本幸久 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月28日

月は怒らない 垣根涼介著。

≪★★☆≫

市役所に勤める地味な女性三谷恭子、そして、なぜか彼女の魅力にとりつかれて惚れてしまった三人の男たち。男たちの求愛を受け入れる恭子。
付き合う条件として、私生活を聞いてはならない、詮索してもならない、一緒に過ごす時間だけが恭子を知る時間。

風俗に身を落とした母親に育てられ、そんな母親を憎みながらもそんな女たちに母の影を思う梶谷。自身もヤクザ崩れだが、恭子の姿を見た瞬間忘れられず、強引に知り合う。
バーで絡まれていた恭子を助けようと逆に醜態を晒してしまった大学生、弘樹。チャラ男だったが、恭子を好きになり、嫉妬で身を焦がす羽目に陥る。
パトロール中に恭子を見かけ、既婚者でありながら告白する警察官の和田。

無関係な男たちが、恭子の背後にその影を感じる。なぜゆえに恭子は男たちを受け入れるのか。

公園で恭子と語り合う記憶障害の老人。

なにか不穏な動きあるのかな〜と期待しつつ、読み終えてみると、なんだ恋愛小説!?

恭子の過去になにがあったのかは明かされない、なにか辛い過去らしいんだけどね。
だからこそ、同じような香りのする梶谷を恭子は選ぶ。

正直、中途半端な感じもした。恭子の過去こそ鍵じゃないの?あの公園の老人ともなにか接点あるのかな〜って期待したし、それを覗き見してる男もなんだったのか。
大きく膨らみそうだったわりに、どれもこれも無関係で。

諦めて恋愛小説だったってことにしておくか。


posted by じゃじゃまま at 14:13| 神奈川 曇り| Comment(3) | TrackBack(1) | 垣根涼介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月02日

感染遊戯 誉田哲也著。

≪★★★★≫

姫川玲子の天敵、ガンテツこと勝俣健作。出てきたね〜、コイツ。コイツじゃなかったっけ?姫に昔の事件で暴言吐いた奴。
「過ぎた正義」の倉田。息子が犯罪者になり、妻を殺され、自らも犯罪に手を染めた男。その倉田が手を染める前に手がけた男女殺傷事件。
姫の部下だった葉山。

この三人が関わったそれぞれの事件は、すべて繋がっていた!!!

時系列が掴みづらくて、あっちこっちと脳みそ振り回されたけど、やっぱり誉田氏は警察小説がいいよ。
「感染遊戯/インフェクションゲイム」では、姫が世田谷で起こった会社役員刺殺事件を担当していた。そこへ、ガンテツがやって来て、15年前に起こった事件を語る。その事件とは、今回の被害者、元厚生省官僚の息子が刺殺された事件だった。
15年前の事件は、人違いで起こった事件であった。

「連鎖誘導/チェイントラップ」 警視庁警部補である倉田の息子が交際相手の女性を殺害した罪で逮捕された。倉田の信条は人を殺したら即死刑である。それは息子であっても変えられない。
息子の捜査が終わるまで、倉田は麻布で起きた男女殺傷事件の捜査に関わる。
一見無関係に見えた二人の男女だが、被害者であるはずの松井は外務省で不正をしていた。
そして松井に陥れられた元記者の復讐に、倉田は最後、背中を押した。

「沈黙怨嗟/サイレントマーダー」 姫の部下であった葉山。勤務する北沢警察署で、老人同士の喧嘩の仲裁に借り出された。
囲碁仲間の老人同士が、「待った」をかけられたのが原因で殴ったという。
単純な理由の裏に隠された「お前に殺された」の言葉の真実。

「推定有罪/プロバリティギルティ」 都内で起こった傷害事件の容疑者のシャツには大量の血痕がついていた。数日前、元官僚が嫁と共に殺害される事件が起こっており、容疑者加納が関与しているらしい。
そして、ここで姫の担当している世田谷の会社役員殺人事件と、すべてがある共通の情報から始まり繋がっていた。

そもそもの原因は、元厚生省の大罪、非加熱製剤から始まっていた。
「推定有罪」では、その後の倉田や葉山が担当した事件の谷川老人の最期、倉田が背中を押した元記者の復讐やら、全部が繋がって非情にすっきりした。

時系列で混乱はしたけど。
非加熱製剤が原因で恋人を奪われ、恋人の父を殺人者にしてしまい、友人も失った男の最期は、これはもう本当に誉田氏らしい。
この切なさを伴う残酷さが誉田氏の警察小説。

ガンテツも倉田も葉山も、聞き覚えはあるんだけど、ところどころ忘れてて、それでも姫シリーズの面々はいいね。
姫の、ガンテツにかけた電話のやり取りは嬉しくて興奮した。
また姫の事件が読みたい。

posted by じゃじゃまま at 13:13| 神奈川 雨| Comment(2) | TrackBack(1) | 誉田哲也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

キミは知らない 大崎梢著。

≪★★★≫

悠奈の学校に臨時でやって来た教師。その冴えない先生とは図書室で出会った。悠奈の亡き父の本を読んでいてくれたのが嬉しかった。
その先生が突然去り、悠奈は先生宛ての宅配便の住所を見て驚く。
亡き父の手帳に書かれていた住所だったから。

先生と父親の関係は?父親のことは家でもタブーになっているからこそ、なんでもいいから知りたいと思う悠奈。
先生の家まで行くと、先生を知っているという女子高生と出会い、先生と再会するが、冴えない先生とはまるで別人の男の人になっていた。

そして悠奈はある村の勢力争いやら後継者争い、味方だか敵だか分からない、敵も味方も入り乱れての冒険劇に巻き込まれていく。

本当は冒険劇ところじゃない、悠奈の父親や、先生の関係者が十数年前に一緒に火事で亡くなっていたり、悠奈も命を狙われたりと、サスペンスなのに、冒険って言葉が大崎作品には似合う。

大事なのに、どこかフワフワと女子高生の冒険劇。
ちょっと上から目線だけど、大崎氏は、冒険劇でいいんじゃないか。なにも事件を大きく大きくしようとしなくても、日常の些細な事件の方が合ってる気もする。

「キミは知らない」もたいそうな話ではある。大富豪がいて、その家に気に入られようと殺人にまで手を染める一族と、巫女の家系の一族。
巫女の一族復活を恐れる一派は悠奈をどうにかしようと妨害するし、大富豪の曾孫説あったり、お父さんと一緒に亡くなった女性との関係も不倫なのかなんなのか。

そうそう、大崎氏はもったいぶりがクセだから、最初にいろんなこと思わせぶりにしておいて、後出しじゃんけん的にぜ〜んぶひっくり返して。

それでも実は結構ワクワクして、思わせぶりな展開にイライラしながらもハマっていた。
できれば悠奈には巫女の血筋を大事にしてもらいたいもんだ。

冴えない先生が急に格好よくなる・・・う〜ん。いい男ならどんなに冴えないフリをしてても分かるもんだけどね〜〜。女子高生の目は節穴じゃないはず。
posted by じゃじゃまま at 12:17| 神奈川 雨| Comment(2) | TrackBack(1) | その他 あ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月22日

かばん屋の相続 池井戸潤著。

≪★★★★≫

6編の短編小説。ああ、こんな感じの小説、池井戸氏の初期によく読んだよね。
銀行から融資を受けられるか、受けられないか。中小企業の苦境と、助けてやりたいのと、組織のしがらみでどうしようもない銀行員の葛藤。

「十年目のクリスマス」 十年前、融資を出来ずに倒産に追い込みそうになった会社を襲った火災事故。その後と、あの時なにが起こったかを偶然知ることになった銀行員の話。
空白の十年間は空白のままで、あるのは、あの時と今。そこにドラマの余韻を読むことができる。

「セールストーク」 融資を断られた小島印刷。会社を応援したい江藤と北村と小島印刷を目の敵にする支店長。駄目かと思ったその時、小島印刷に五千万の入金が。
その出所と行方を追っての、勧善懲悪の池井戸氏らしい、お家芸ともいえる短編。
読んでてワクワクさせられる一編。

「手形の行方」 堀田が集金してきた手形を紛失した。腰掛程度の勤務態度で評価の低い男だが、顧客からも評判が悪かった。そんな堀田の自業自得の物語。

「芥のごとく」 期日にお金を銀行に払う、それができるかできないかで経営者としての手腕、会社の行方が決まる。それこそ必死で守り抜いてきたはずだが、手形の発行日ミスにより、今まで張り詰めていた糸が切れてしまった豪傑女社長。頑張りすぎていると、プツンって切れたときに、なにかも失うことってある。

「妻の元カレ」 池井戸氏らしくないちょっとしんみりした話。勝ち組だと思っていた男が、負け組にいたはずの妻の元カレに逆転されちゃう。密会をしているらしい妻になにも言えない、なにも聞けないヒロトは、夫としても男としても魅力ないと思ってしまうよ、私でも。

「かばん屋の相続」 社長が急逝したことにより、かばん屋が銀行員である長男に継がれることになった。その遺言状に疑問を持つ次男や取引先の銀行だが、次男は生前「跡は継ぐな」と言われていたこともあり、会社は長男に譲る。
この相続にはとんだ落とし穴があり、だがその穴は仕組まれたものではなく、欲に走った長男のこれもまた自業自得の話。

こういう一発逆転の勧善懲悪の物語は、池井戸氏らしく、大好き。





posted by じゃじゃまま at 22:44| 神奈川 晴れ| Comment(2) | TrackBack(1) | 池井戸潤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

天使の報酬 真保裕一著。

≪★★★☆≫

邦人保護を担当する外交官黒田の元へ、とある邦人の捜索の現場に立ち会うよう指示が入る。
娘の失踪事件と、その現場をテロ容疑として捜索する現地の警察。そして事情を知っていそうでなにも言わぬ父親の態度。
父親が元官僚で今は薬害訴訟で被告になっているアメリカに本社のある製薬会社勤務という背景にますます不信感を持つ黒田。
娘が偽造パスポートで日本に入国していることが分かり、黒田もまた日本へ。

そして父親も、黒田や現地警察にはなにも告げずに、日本へ。
黒田は、この父親はなにかを知っていると確信するが、謎を解くには霜村一家の兄の行動、そして交通事故が鍵となっていく。

前作はまるで映画化のために書かれたのかって思ってしまうくらい、陳腐に思えたんだけど。(読んでいる間中、織田裕二がチラチラと)
今作は、真保氏らしい入念な設定がうかがえて、嬉しくなった。

とはいえ、なにやら事情が込み入っていて、いやいやそれも薬害訴訟がらみでなにかあるのかと思ってたから、我慢して読んでたけど、だんだんとあれ?そっちに行くの?って。

幼児買春や恐喝、入れ替え殺人、大物政治家と馬鹿息子、隠蔽のためにそこまで、あらその人まで、って。
舞台を大きくしたなと思ったんだけどね、揉めてるのはこの辺の人たち、って感じでした。

それでも真保氏らしい方向性だなと思った。



posted by じゃじゃまま at 21:56| 神奈川 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 真保裕一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする