2014年03月29日

海と月の迷路 大沢在昌著。

《★★★》

N県警察学校校長、荒巻正史警視。多くの部下たちに慕われ、惜しまれつつ引退する彼の送別会で、荒巻の警察官人生を決定づけた、N県H島で起こったかつての事件を語り出す。

炭鉱で成り立つその小さな島で起こったある一人の少女の事故。その死に不審なものを抱いた若き荒巻巡査。だがその島では警察官よりも、島を支配する企業の階級の掟、しきたりが重視され、思うように捜査は進まない。
島で起こった喧嘩に、階級を無視した荒巻の公平な判断が鉱員たちの反感を買い、多くの島民、同僚である先輩巡査からも孤立してしまった荒巻。
それでも不審死を疑う数少ない協力者と共に、荒巻は真相に近づいていく。

8年前に起きていた類似する少女の水難事故。見て見ぬふりをすることによって保たれていた島の平穏は、事故が事件だったと主張する荒巻によって覆されていく。

妨害や孤独に耐え、殺人鬼から少女たちを守りたい、その一念だけで突き進む荒巻は、果たして真相に辿りつくことができるのか。

そうそう、こういうのを読みたかったんだよ。がっつり大沢氏の作品を堪能した。
一瞬、島の表紙だったんで、かつての売春島の話かと思ったけど、戦後間もない頃のある不審死を追うストーリーで、こういうのを待っていたよ。

とにかく、ことなかれ主義の岩本巡査には腹が立ちまくり。島に赴任中はとにかく問題起こさずに、って態度ががっかりな岩本巡査。しかも事件を追う荒巻に対して、チクるように鉱員や職員たちの前で叱責したり、警察官としてだけでなく、人間としてがっかり。その奥さんも、荒巻が孤立した途端、手のひら返しで、なんと小さな人間か。

ま、うまい具合に少女の不審死を疑った怪しげな組夫が元刑事だったり、情報が集まったりするのは仕方ないけど。
まさか犯人がそんな近いところにいたとは。


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2014年03月23日

裏閻魔 中村ふみ著。

《★★☆》

幕末、瀕死の周を救ったのは一人の彫り師だった。その男から鬼込めをされた周は、不死の運命を背負う。
男の弟子となり、周の名を捨て宝生閻魔と名乗り、師匠より、破門となったもう一人の兄弟子を探しその命を奪うように託される。
その兄弟子こそ、かつて閻魔の姉を殺した男かもしれない。

不老不死のため、同じところに住み続けられず、場所を変え生き続ける閻魔。
東京で、閻魔を見て「一之瀬周さまのお知り合いですか?」と、閻魔がかつて捨てざるを得なかった名前を口にする少女と出会う。
その少女は、閻魔の旧友岡崎の娘、そして閻魔の運命の人であった。

そして、その少女、奈津をもっと前に欲していた男がいた。その男こそが、閻魔の探し続けていた兄弟子、宝生夜叉。閻魔の姉を殺し、母を失ったばかりの幼子だった奈津をいつか自分のものに、と狙い続けている男だった。

奈津を軸に、閻魔と夜叉が出会い、時代を超えながら宿命の二人が向かい合う。

第二弾、第三弾まであるので、ここでは決着は着かなかった。
私の大好きな【トワイライト】みたいではないか!!

だけど、閻魔は甘いね〜〜〜。とっとと夜叉留め刺しちゃえばよかったのに。結構夜叉はえげつない手をつかったしね。

でも、続きをちらっと見てみると、夜叉も今後変わってくるのかな、善玉の方に。よくある展開だけどね。
気になるけど、急いで読まなくてもいい感じかな。

posted by じゃじゃまま at 17:31| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 な行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏光 乾ルカ著。

《★★★》

ファンタジー・ホラーというのか。
私は乾氏の作品では「プロメテウスの涙」が断然お勧めで、でも基本的には全部好き。
「夏光」・・・ 戦争中、田舎へ疎開した者たちは、いい待遇を受けていなかった。この物語の少年哲彦も、最初のうちこそ叔母が差別はしなかったが、戦争が長引くにつれ、徐々に居心地の悪いものになっていく。
哲彦と、顔の半分に呪われた痣のある喬史は、いつも村の子供たちのいじめの対象になっていた。それでも哲彦は喬史が好きだった。ある時、喬史の目の中に青い光を発見した哲彦は、その秘密を知った時、自分の運命をも悟る。まったく救いのない哲彦の人生に、切なくなってしまった。

「夜鷹の朝」・・・ 療養するため学校を休学して訪れたある屋敷。そこで青年は不思議な少女に出会う。屋敷の主や奥様には見えない、その少女の秘密とは・・・。聞こえる鳥のさえずりが、少女の悲しい心の叫びだった。

「百焔」・・・ 容姿にコンプレックスのある姉は、美しい妹を妬んでいた。ある時、都会からやって来たお洒落な女の人に、自分の不運を人に移す呪いを教えてもらう。嫉妬で燃え上がった心は、それを実行してしまう。
その呪いのせいなのか、妹は火事で大やけどを負ってしまう。あれほど美しかった妹は、今では姉のコンプレックスになりえないはず、だったのに。妹の心は美しかった。それを知った姉は、初めて妹を心から愛せたのでは。

どれも切ないのに、なんでだろ〜〜〜〜〜。どこか清々しい気持ちでもある。

「は」・・・金魚がどんどん大きくなり、やがては飼い主にも襲いかかる。そんなことってある?
友人がけがをして入院した。退院祝いに駆けつけると、友人自らが料理をふるまい、全部残さず食べろ、という。
不思議に思いながらも食べると、やたらとおいしい、特に白身の魚が。けがの原因を聞くうちに、そのまさかの金魚が、格闘の末どうやら友人の腕を食いちぎった、という。死闘の末、その金魚は冷凍され、今まさに食卓に・・・。そして、食べても食べてもますます空腹になる、友人とその男。いったい、彼らの食欲は金魚の呪いなのか。

「Out of This World」・・・ 少年たちの夏の思い出。父親と息子が越してきた。父親はマジシャンだったという。だけど、大人たちの噂では、どうやらマジックに失敗して東京にいられなくなり親戚を頼って越して来たらしい。少年の体には無数の傷があって、父親に殴られている。
それでも少年には友達がいて、夏休みはやはり宝の日々。ラジオ体操を休んだ少年を、見舞いに行き、遊んだ日々もあった、確かに。
なのに、少年はそれよりも前に父親に殺されていた。少年の、切なる想いが伝わって来て、悲しいのに、やっぱりどこが清々しいんだよね。

「風、檸檬、冬の終わり」・・・ 荒んだ人生を経験してきた女性。若い頃は、父親と共に人身売買の片棒を担いでいた。彼女は、人の感情を匂いで嗅ぎわけることのできる能力を持っている。売られていく少女たちから発する匂い。その中で、たった一人、爽やかな香りの少女がいた。これから売られていくというのに。
それから十数年経ち、罪を償い介護の仕事をするようになった彼女は、恩人からあの時の少女と同じ匂いを嗅いだ。
恩人に問う。「今、なにを考えていましたか?」その答えは、希望や歓びだった。

あの少女は、殺されていく運命の中でも、初めて見る海に希望や幸せを感じていたのだ。

本当に不思議。切ない話ばかりなのに、泣くような悲しさじゃない。どこかに救いや希望があるから。



posted by じゃじゃまま at 16:50| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 乾ルカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月13日

ドミノ倒し 貫井徳郎著。

《★★》

ひとつの事件が別の事件を呼び起こし芋づる式に掘り出される死体!死体!!死体!!!いったい何が起きているんだ!?油断大敵・貫井流ユーモア私立探偵小説。(「BOOK」データベースより)

探偵さんの心の声は非常に面白かったけど、ストーリー的には眠気を催し、何度も寝てしまった。
探偵の昔の恋人にそっくりな妹との出会いも、この妹が好きになれなくて、出てくるたびにイライラした。
こんな妹じゃ、お姉さんとの思い出も崩壊しちゃうよ。

でも、途中で、殺された美人詐欺師やネズミ講の男、ロリコン男に×って書いてあった意味分かったけどね。きっと天誅なんだろうと。
それにしても犯人たちが、なんとも言えずお粗末な展開。
結局なんだったのか、あの美人詐欺師の生き別れた双子のお姉さんは、どうしちゃったんだろう?
真相に辿りつけたのか、署長さんも逃げ切れたかな。

どうせなら、殺人事件を探るうち・・・って展開をやめて、最初から腐ったあの町をさらけ出して、そこからの探偵さんや署長さんの逃亡劇にした方が面白かったかも。

ま、とりあえず時間返して。

posted by じゃじゃまま at 19:30| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 貫井徳郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ソロモンの偽証 第V部 法廷 宮部みゆき著。

《★★★》

いや〜、長かった。
第U部は案外夢中になったんだけど、第V部はただ長かった。
だいたい、柏木の幼馴染、神原が怪しかった。恐らく自殺であろうことは間違いなかったけど、真相を知ってそうだったし、なんかあるなって思っていて、そのわりにだらだらと学校内裁判が始まって、とっととしてくれよって感じ。

しかも、中学生とは思えない法廷劇で、いくら優等生でもここまでできるかちょっと違和感。

でも本当は、一瞬、三宅樹理は本当になにか知ってるんじゃないか、なにか見たんじゃないかって疑ってしまったし、実は大出たちが殺した??ってほんの一瞬でも疑ったのは事実。
それくらい展開に衝撃はあった。

神原が実は柏木の自殺の現場にいたのは、結構衝撃で、そこで明かされた真実は、柏木は中学生のわりに考え過ぎの面倒くさい嫌な奴だったってこと。
神原自身が証人として呼ばれた時も、それまでは弁護側でプロ顔負けの質疑応答が、急に子供っぽくなっちゃって、あれだけの優等生なんだからそこの変貌ぶりもなんか変だった。

私の中では三宅樹理は、松子を押した犯人だと思ってたんだけど、違ったっけ?

学校内で起きた自殺の真相を、生徒たちで調べようっていうのは面白かったけど、あまりにも出来過ぎた子供たちで、たとえばもっといろんな失敗があったり、試行錯誤しながらの裁判っていうのならしっくりきたかな。

柏木君、結局やな奴だった。



posted by じゃじゃまま at 19:15| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月08日

和菓子のアン 坂木司著。

《★★★》

デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(通称アンちゃん)は、ちょっぴり(?)太めの十八歳。プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。謎めいたお客さんたちの言動に秘められた意外な真相とは?読めば思わず和菓子屋さんに走りたくなる、美味しいお仕事ミステリー。 (「BOOK」データベースより)

サクサク読めて、和菓子が食べたくなった。
絶対、明日の帰りには和菓子屋さん覗いて、なにか買って帰ろう、って思える!!!

そして、接客業が楽しそうに思えしまうのがミソ。でも、現実はそんなに甘くないんだけどね〜。
嫌な客は本当に嫌な客だし、結構引きずるもんだけど、アンちゃんたちはプロフェッショナルだね。
謎ときに活躍するのは、ヒロイン、アンちゃんじゃなくて店長。
乙女な立花さんとか、やり取りが面白い。っていうか、アンちゃんの心の突っ込みが面白かった。

初坂木氏なんだけど、お仕事小説が多いみたいで、是非とも他の作品も読んでみよう。

posted by じゃじゃまま at 11:13| 神奈川 ☀| Comment(2) | TrackBack(1) | その他 さ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ファミレス 重松清著。

《★★★》

妻と別居中の雑誌編集長・一博と、息子がいる妻と再婚した惣菜屋の康文は幼なじみ。料理を通して友人となった中学教師の陽平は子ども2人が家を巣立ち“新婚”に。3・11から1年後のGWを控え、ともに50歳前後で、まさに人生の折り返し地点を迎えたオヤジ3人組を待っていた運命とは?夫婦、親子、友人…人と人とのつながりを、メシをつくって食べることを通して、コメディータッチで描き出した最新長篇。 (「BOOK」データベースより)

3人のオヤジたちのそれぞれの人生、互いの友情に、いろんなスパイス(事件)が加わって、煮たり焼いたり・・・仕上がりは?
陽平が妻の書棚で見つけた離婚届。
3人が通う料理教室の講師、エリカが妊娠中の出戻り娘と共に一博の家に転がり込んできたり。
陽平の教え子の母親が不倫ドライブ中に事故に遭い、怖いお姑さんに兄妹たちが逆らえずにいたり、いろんなことがあって、どうな風にエンディングになるのかなって。

基本的に、重松氏の描く女性には共感できなかった。そもそも他人の家に図々しくも居候するエリカ先生とその娘、嫌いじゃん。
離婚届を人生リセットお守りのように持つ陽平の妻も・・・。そんなロマンチックに自分の人生って考えないな〜、私は。まあ、子供が独立して、夫婦二人きりになってみないと、なんとも言えない。
一博の妻は、京都で一人で生きていく力があるから離婚できたんだろうし。
もしかして、私はどちらかというと、家族を大事に幻想を抱いてる3人のオヤジたちに似てるのかもしれない。

しいていうなら、総菜屋の康文のところが一番好きかな。どっしりと家族していて。
もちろん、血の繋がらない連れ子がいるけど、血の繋がりよりも、互いをどれだけ大事に思えるか、それが家族なんじゃ・・・と思ったりね。
ああ、エリカ先生の娘と、三行半突きつけられた元ロッカーのコージー。ここも、いまどきの若者は、って感じだけど、コージーをそのまま総菜屋で修業させてあげたかった。

陽平の教え子、ドンの家庭。あそこもお母さんの不倫という家族にとっては汚点だよね。そこをこの先どうやって乗り越えていくのか、気になるけど、ほっとくか。




posted by じゃじゃまま at 10:53| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 重松清 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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