2014年08月26日

虚夢 薬丸岳著。

《★★★☆》

目の前で愛娘を殺され、自らも重傷を負った母親。犯人である青年藤崎は、心神喪失で罪に問われなかった。
夫婦関係は壊れ、妻はその後再婚した。
その元妻から「あの男を見た」と電話がかかってきた。

小説家であった三上は、作家を引退し、荒んだ生活をしていた。でも元妻からの電話で動き出す。
元妻は、職場でも近所でも「あの男が襲ってくる」騒ぎ、あの犯人と同じ病名を下される。

あの男を見た、のは妄想なのか。

風俗の仕事をしているゆきは、忘れたい過去がある。しつこい客、田代。ふらりとやって来た藤崎との出会い。
そう、藤崎はやっぱりいたのだ。
三上は元妻が見たという言葉を信じ、藤崎を探し出した。そこでゆきのことも見かける三上。
元妻の病状を心配してくれる高校時代の精神科医の友人、松岡。

一見関係なさそうに見えた三上、ゆき、が藤崎によって繋がり、そして松岡も繋がっていた。

ラストの衝撃の真実は、本当に衝撃だった。
そして元妻の計画。

事件が起こり、精神鑑定という言葉を聞くたびに、普通の人間は憤りを感じる。そんなことで、罪を帳消しにするなよ、と。
この小説は、答えでもない。結局、答えなどないから。
藤崎は結局またもや事件を起こした。やっぱり治ってなどなかった。それでもまた数年で社会に戻って来るのだろうか。

元妻の計画。精神異常を装って、それが他人に見破られるのか。もし計画が成功していたら、大きな波紋となり、なにかを大きく動かしたかもしれない。
でも小説は、そちらではなく、結局正当な被害者遺族の訴えで問いかけることにするらしい。(という終わり方)

その問題提起よりも、ゆきの事実の方がインパクト大だった。
薬丸氏・・・ちょっと興味出てきた。



posted by じゃじゃまま at 18:32| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 や行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メグル 乾ルカ著。

《★★★》

「あなたはこれよ。断らないでね」奇妙な迫力を持つ大学学生部の女性職員から半ば強要され、仕方なく指定されたアルバイト先に足を運んだ大学生たち。そのアルバイトは、彼らに何をもたらすのか?五人の若者を通して描かれるのは、さまざまな感情を揺り動かす人間ドラマと小さな奇蹟の物語。小説の楽しみを存分に詰め込んだ愛すべき傑作、鮮やかに登場。 (「BOOK」データベースより)

お通夜で遺体と添い寝して手を握るバイトや、犬に餌を与えるだけで一日一万円もらえるバイト。
雇い主が作った料理を食べるだけのバイトや、大学病院の売店の入れ替え作業だったり、庭作業だったり。
それぞれが、それぞれに必要なものばかり。「アタエル」だけは、あれだけ女性職員の悠木さんから阻止されて、「後悔しないでね」と言われたバイト。
そして、後悔する羽目になった。

大学病院の売店のバイトは、厳格だった父親が倒れ、思うように体を動かせなくなった苛立ちを母親にぶつけ、その逆らえないストレスを娘である飯島さんにぶつける。そんな家から逃げるようにバイトを探した。そそして悠木さんから言われたバイトで、飯島さんは気付く。
病気は本人も看病する家族も辛い、それでも母親は少しでも父に喜んでもらおうとアイスケースをかき回し、やつれた指から指輪が抜けた。
その失くした指輪をバイトで見つけた飯島さん。病気と闘う両親の姿を見て、飯島さんは少し強くなったかな、優しくなれたかな。

「タベル」バイトは、吐いた記憶から食べることを避けていた青年と、病気で食べることができなくなった雇い主。満足させたい、という願いを、青年のトラウマが邪魔をする。
青年の友人が「たった一度の体調の悪かっただけのことで、食べないなんてもったいない」。そして雇い主には「みんなで食べる食事は、どんなものでもおいしい」と提案し、3人で食事をする。
青年と雇い主の願いが成就したハッピーな物語。

毎年、冬の始まりの一日だけ戻って来る女性。毎年、毎年繰り返される庭作業。
そこには、思いだけが残る。
時はまためぐる。

posted by じゃじゃまま at 18:08| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 乾ルカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月21日

刑事の骨 永瀬隼介著。

《★★★☆》

連続幼児殺人事件の捜査本部で、捜査を仕切る若き管理官、不破。
情報漏洩に頭を悩ませながらも、このままノンキャリのエースとして昇るところまで昇りつめようとしていた矢先、かかってきた一本の電話。
それは、連続幼児殺人事件の犯人しか知りえない秘密の暴露を持つ電話。
大勢の捜査員が見つめる中、不破は犯人との交渉に失敗し、同期の警察官に「ぶち殺せ!」と指示を出し、真犯人を追いつめるも取り逃がすという失態で、二度と浮上することができなかった不破。

射撃の腕を持ちながらも、度胸に恵まれず、追い詰めた真犯人を取り逃がした上、同期である不破の刑事人生を終わりにさせた田村。
その後、連続幼児殺人事件の犯人は四人目の犠牲者を出したまま逃げ切り、時効が成立してしまった。

退官後も不満を抱えたままの人生を歩むことになった不破の元に、田村ことホイチが訪ねてきた。

本当は、取り逃がしたままの真犯人を捕まえたい、いや、見つけた、と言いに来たのかもしれない。
素直になれない不破は冷たくあしらったまま、なにも言いだせないホイチを送り出す。
翌日、ホイチの死体が発見された。自殺だという。

自殺に納得できない不破は、ホイチの部屋で幼児連続殺人事件の捜査ノートを見つける。

そこには当時ホイチが真犯人に遭遇する前に、犯人を見ていた高校生の名前や、被害者遺族のことが書いてあった。
一人一人に当たる不破。そして、一人の名前を発見する。栃尾眞一。
栃尾は警察OBで、過去に自分も幼子を殺害され、妻が自殺するという壮絶な過去を持っている男だった。
栃尾の協力も得て、ホイチの捜査を引き継ごうとした不破。

そこに、当時の目撃者であった高校生、犯人確保に成功していたら出ることのなかった四人目の犠牲者の両親、元片腕であった部下の刑事も絡んで、事件は思わぬ方向に進んでいく。

どうなるんだろう?誰が犯人なんだろう?って止まらなかった。でも、あれまあれま、連続幼児殺人事件に犯人が二人いたとは、四人目の犠牲者の母親千恵の執念といい、元夫の下嶋譲の異常さといい、栃尾の正体、盛りだくさん。

警察の隠ぺいは、必ず出るね。
でも、最後の最後で刑事を見せた不破の行動は、考えたね。
小説はその後は書いてないけど、不破が模倣犯であった犯人を殺害し、出頭したら、取り調べで過去のいろんなことが出てきて、これもまた警察は隠ぺいするんだろうか?

これぞ、ハードボイルド。




posted by じゃじゃまま at 10:04| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 な行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

冬芽の人 大沢在昌著。

《★★》

大沢氏ってハードボイルド作家の位置づけだったのにな。
ハードボイルドというよりも、恋愛小説にしか思えなかった。
ある事件で起こった事故がきっかけで、先輩刑事、前田を死なせてしまい、その妻からは不倫を疑われ、弁解する機会もないまま、責任を感じてOLに転職した元女刑事、しずり。
前田の墓参りで、前田の前妻との間に生まれた息子と出会ったしずりは、前田が死んだ事件を語るうちに、やがて事故だと思われていたものが事件であったのでは?と疑念を持ち始め、前田の息子、岬人と共に真相に近づいていく。

そもそもしずりと岬人は15歳以上も歳が離れてるのに、どうやらすっごい美人で、歳を感じさせないくらい大学生の岬人を夢中にさせてしまうらしい。
職場の上司からも、前田からも好意を持たれていたしずり、そんなヒロイン像・・・好きだよね〜。
ま、ブスよりいいけど。

で、まさかまさかのどんでん返しの結末で、そんなとこに黒幕がいるのって気付かないよね〜。
しかも、前田って悪徳刑事だったわけだし。そんなの、あり?って思うくらい現実味ないけど。
最初の事故に見せかけた殺人も、これが人通りの少ない道なら狙いやすいだろうけど、交通量の多い道路で、そんなにうまく事故に見せかけて轢けるかね?って思うし。

事件よりも、しずりと岬人の恋愛小説を読まされてるみたいだった。


posted by じゃじゃまま at 09:35| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 大沢在昌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月12日

怒り 上下巻 吉田修一著。

《★★★☆》

八王子の住宅街で起きた夫婦惨殺事件。犯人、山神一也は殺害した後、六時間も現場に留まり、冷蔵庫のモノを食べたり、シャワーを浴びたりと、異常な行動をしている。そして殺害現場には「怒」の血文字。
そして一年経っても逃亡を続け、警察はテレビの公開捜査で情報を求める。

殺人事件から一年後の、房総半島の港町では、洋平が家出をした娘愛子を歌舞伎町のソープランドで働いてると連絡を受け、迎えに行く。
その港町に、真面目だけど素姓の知れない田代という男がやって来て、徐々に愛子と親しくなっていく。

大手通信会社で働くゲイの優馬は、「発展場」で知り合った直人を強引に犯し、なぜかそのまま連れ帰り、居候させる。
まったく自分のことを語らない直人。行きずりのつもりが、余命わずかの母親や兄夫婦にも会わせ、徐々に自分の生活圏内に入り込んだ直人。

男にだらしのない母親のせいで、何度も転校を繰り返す泉。同級生の父親とそういう仲になり、夜逃げ同然で沖縄に引っ越すことになった。
島では友人もできた泉だが、同級生の辰哉に連れて行ってもらった無人島で、そこでこっそり暮らす田中と出会う。

それぞれの場所で存在する、三人の謎めいた男。
房総半島、東京、沖縄の人々が、繋がることはない。それぞれの場所で存在する、得体の知れない三人の中に、逃亡犯がいるかもしれない。それぞれの人間模様の中で、一体誰が正体を現すのか。
田代も、直人も、逃亡犯と同じ顔に三つのほくろがあって、左利き。

みんな怪しくて、ドキドキが止まらない。一体誰なんだ?逃亡犯は??

身近にいる者が、素姓の知れない隣人を疑い始め、洋平が、優馬が、それを口にした途端、田代も、直人も姿を消す。

辰哉と沖縄本島に遊びに来た帰り、米兵に襲われる泉。絶対に口外しないで、という泉との約束を守る辰哉。
田中が暮らす無人島の小屋で、「怒」の文字を発見する泉。その文字を見た瞬間、なにかを感じた泉。
ここからは、もう田中の正体がどんどん分かって来て、怖かった。
こいつか!!!と思いながらも、一体いつ泉や辰哉が気付くんだろう?そして、公開捜査の甲斐もあって、山神が潜伏していた建設会社から通報があり、指紋が一致する。

突然キレるという元同僚の証言。そして、新たな情報が寄せられ、その証言で、作り話をしているようで、実は八王子の事件を語っていることを察した捜査員は、その男こそが山神であると確信し、沖縄に急行する。
捜査員の手が山神に届くのが先か、泉たちが気付くのが先か。

田中が暮らす小屋で、「怒」の文字を発見した泉。そして、その小屋の裏に泉がレイプされていることを嘲笑った落書きを見てしまった辰哉。
二人は、それぞれが、逃亡犯とは気付かずに、田中の本性を見抜いた。

そして辰哉の復讐と、捜査員、どちらの手が先に届くか。

この小説は、なぜ山神が犯行に及んだのか、その内面まではえぐりださない。
ただ、今まで普通に接していた隣人が、もしや逃亡犯では?と疑い始めていく変化がうまい。
しかも、三人三様に、怪しいし。

山神ではなかった直人と田代だけど、それぞれに事情があって、関わった人々もみんな影響されていく。
面白かった。





posted by じゃじゃまま at 17:09| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 や行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月03日

ワンナイト 大島真寿美著。

《★★★☆》

大島ワールドの平均年齢が、やっぱり上がっている。
前は学生だったのが、最近では大人、30〜40代の女性になっている。
ま、いいか。

ステーキハウスを経営する佐藤夫妻が、結婚したい常連客たちの願いを叶えるべく、ついでにまるで女を捨てている夫の妹、歩にもなんとか縁づいて欲しいと、真剣な合コンを企画する。
そこに集まった男女6人の、それぞれの連作集。

面白かった。
売れない小説を書き、好きな時間に起きて寝て、自堕落的な生活をしていた歩にも、実は出会いがあった。
戸倉というプログラマー。
この戸倉と共に、この合コンに社長の命令で出ることになっていた平泉は、実はゲイで、合コン当日逃げ出した。
そして、ずっと戸倉に恋をしていた。

一番結婚願望の強かった宮本さなえは、米山と言う、平泉のピンチヒッターに狙いを定め、本性を隠し、近づいていたが、一向に距離が縮まらず、焦っていた。
クリスマスイブにも米山に連絡が取れず、仕方なしに誘った、もう一人の参加者、小野に声をかけると、その日、小野から結婚を前提に交際を申し込まれる。

そして、二人はめでたくゴールイン。

さなえから逃げていた米山は、実は既婚者で、さなえに手を出してはいけないと念じつつ、大阪へ単身赴任している妻との距離に疑問を持ち始めていた。
とうとう、妻と離婚することになり、身軽になってさなえに連絡をしようとしたら、電話番号が変わっていた。

ステーキハウスの佐藤夫妻にそもそも合コンの話を持って行った瀬莉は、結局みんなのキューピットになっただけだけど、前の夫との再会により、踏ん切りがついたし、米山と元妻の玲子も、決着がついて、全部丸く収まったね。

歩と戸倉と、平泉のトリプルな組み合わせや、平泉の恋人、片野との共同生活など、どうも歩だけは好きになれなったけど、まあ、それを言ったらさなえもどうかなって感じだったので、結局、普通の人は瀬莉と玲子と、佐藤夫妻だけか。

歩の悪趣味なとこが嫌いかな。
大島氏も、以前はきらきら透き通った感性だった気がするけど・・・。


posted by じゃじゃまま at 14:58| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 大島真寿美 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ペテロの葬列 宮部みゆき著。

《★★★》

バスジャックに遭った杉村三郎。犯人は警察がバスに突入した際に、自殺した。
後日、犯人は約束通りに人質たちに慰謝料を送って来たが、いったい誰が?そして、あの犯人の目的はなんだったのか。
まるで雲を掴むかのような調査だったが、やがて世間を騒がせた詐欺事件へと繋がっていく。

このシリーズ、ドラマでは小泉孝太郎が演じていて、コンツェルンの娘を国仲涼子。この二人、あんまり好きじゃなくて、特に小泉孝太郎がどうも、この人役者??なんだけど、役者・・・ね〜、と思ってるせいで、どうも小説も進まなかった。

で、国仲涼子の方は、彼女がってわけじゃなく、小説の菜穂子が嫌いなんだ。
今多コンツェルンの娘で、いわゆる愛人の子だから本流からは切り離されるわりに、贅沢に育って、前のシリーズのときから、菜穂子の世間ずれした発言や、現実を知らないお嬢様感覚にイライラさせられてて、ああ、このシリーズか、って思ったら、厚みもあったせいもあるけど、二週間かかってしまった。

でも、読み終えての感想。

いろんな意味ですっきりした。

庶民の出の杉村三郎が、今多コンツェルンの娘と結婚することになって、家族との絆も断たれ、会社も辞めさせられ、娘婿として微妙な立場で義父の会社に入る。
菜穂子は、自分の生活をまったく改めることなく、今までどおりの生活を満喫して、生まれた娘は私立小学校に通わせたり、なんともまあ、釣り合ってない夫婦だったんだよね。
それがずっと不愉快だったわけで、それがようやく解消される結果となり、すっきりした。

バスジャック事件が解決するよりも、そっちがすっきりしてよかった。

杉村三郎の気持ちも、実はずっとそこにあったんじゃないかな。
それをだましだまし続けてきたけれど、隠していた本心にやっと気付くことができて、ああ、すっきりした。

詐欺事件に関しては、ああ、そうですかって感じ。
たくさんいる被害者、加害者の中から、どうして選ばれたのか、ってのは結局分からなかったけど、それもまあいいや。

posted by じゃじゃまま at 14:38| 神奈川 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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