2014年09月29日

オール・ユー・ニード・イズ・ラブ 東京バンドワゴン 小路幸也著。

《★★★★》

待ってましたの、東京バンドワゴンシリーズ、もう何弾だか分からなくなってしまいました。9弾か??
細かいエピソードは忘れてしまっても、大丈夫。なんとかついていけるから。
今は亡き、サチさんの語りが耳に心地よく、東京バンドワゴンを舞台に繰り広げられる人情あふれる下町の物語。
 
秋は、
「真っ赤な紅葉はなに見て燃える」・・・ 堀田家ゆかりの人々が増えてきてみ〜んなお知り合い状態なんだけど。
青が出演した映画の脚本家の岸田さんが東京バンドワゴンにやって来て、すずみさんが作った特設コーナーの作家の棚を見ている。そこへ岸田さんと高校時代同級生だった、これまたバンドワゴンゆかりの裕太君がやって来て、再会する。
裕太君によると、岸田さんはすずみさんがフェアをやっている作家の本を燃やしていた過去があるという。なんと、その作家の娘が岸田さんということも判明する。
同じ頃、本を売りに来た女の子。この子も訳ありで、記入した住所と帰る場所が違うことにバンドワゴンの面々はなにかあると察知して、心配する。
親子の絆を優しく問いかける。

それにしても、裕太君って誰だっけ?

冬、
「蔵くなるまで待って」・・・東京バンドワゴンの蔵に眠る、秘密の蔵書に気付いたライターがいるという。
サチさんの実家のことや、なんだか忘れちゃったけど、大事なものなんだよね。
そのライターさんがとうとうバンドワゴンにやって来た。サチさんの初スキャンダルにも話が及んで、藤島さんまでがお父さんの後妻さんとのスキャンダルが狙われたり、そこで明かされる藤島さんの素姓。
とっても有名な書家を父に持つご子息だったという。
敏腕実業家の藤島さんのアイデアで、蔵の蔵書をすべてデジタルアーカイブ化することで、ライターさんをもバンドワゴン側に抱き込め、サチさんの日記から、身の潔白も証明されてよかったよかった。
ついでに、このライターさんと、木島さんっていう、最初にライターさんの存在を勘一に教えてくれた記者さんね、この二人が結婚するってところまで話は及ぶ。

ってことは、本当はバンドワゴンのこと教えたの、木島さんじゃないの?って疑いたくもなるよね。
この二人の結婚は余計だった気もするけど、花陽の友達が木島さんの子供で、この少女が父親の再婚を望んでるって設定だったしね。

春、
「歌って咲かせる実もあるさ」・・・ 勘一が盲腸で入院しちゃった。
バンドワゴンに隣接するカフェに、常連さんの薫子さんがやって来る。最近、古銭でコーヒー代を支払うってことで、藍子や亜美さん、仲良しのすずみさんから事情を聞いていたお嫁さんは心配していた。幼馴染でもある我南人は、薫子さんの優しい遠慮と気遣いに気付く。
物語常連の茅野さんは、元刑事でありながら、古本の詐欺にあってしまう。でも本人はそれでもどこか楽しそう。
一番シンプルな章だったけど、好き。

夏、
「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」・・・ 木島さんと仁科さんの結婚の話や、研人が高校に行かずにロンドンへ音楽のために留学したいと言い出す章。
ちょっと登場人物が増えてきたから、整理するのにちょうどいいかな、なんて勝手に思ってたら、結局は行かないし。
身内の説得よりも、おじいちゃんである我南人の人脈はすごかった。
世界的に超有名なミュージシャンと研人を会わせ、海外を知るためにはまず足元を見よ、じゃないけど、自分の国をよく知ることだ、と悟らせる。
そうなんだよね、海外に行くと日本のこと聞かれたりするんだよね。自信を持って答えられない自分が恥ずかしい。
日本人は自分の国というか、愛国心って改めて考えたりしないもんね。

昔、海外で古典のこと聞かれたもんね。

posted by じゃじゃまま at 11:24| 神奈川 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小路幸也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月17日

赤ヘル1975 重松清著。

《★★★★★》

広島を舞台に、弱小カープが奇跡を起こす年に起こった、少年たちの物語。
決して野球だけの物語ではない、背景には、広島県民たちの愛すべきカープの活躍が描かれているけど、原爆を落とされて30年、広島の人々の苦悩や、そこから立ちあがって来た強さ、そして、私たちの子供時代がそこにはあった。

カープの帽子が赤ヘルと呼ばれるようになる赤に変わった年。カープを愛して止まない野球少年のヤスや、新聞記者志望のユキオ、一攫千金を夢見ては敗れる父に連れられ転校を繰り返すマナブの1975年。
赤なんて女の色だ、と頑なに帽子を被らないヤスは、父を原爆の後遺症で亡くしている。
女手一つで酒屋を継ぎながら姉と自分を育ててくれている母のために、野球部にも入らず家の手伝いをする。

家族のために、誰かが誰かのために我慢する。そんな時代だったよね。
広島へやって来たマナブ。広島の平和や原爆について、熱くなる広島によそもんで、よそもんはよそもんらしく、それでも思うことあって言葉にすると、ヤスに怒られる。
ユキオが言う。「原爆についてヤスから言ってきたら聞くことはしても、こちらからは言ってはいけない」その気持ち、ズシンときた。

分かった風なこと言ってはいけないんだ。そういうことは本当の関係者たちしか言ってはいけないんだ。

物語にはたくさんの関係者が出てくる。その悲しみや苦悩を、読んで知ってはいても、分かった風に理解したと思ってはいけないんだ。

マナブの父はいつも怪しげな商売に手を出しては失敗する。いつも夜逃げ同然で越していく。
どこかにマナブがいるんだろうか。
重松氏の物語にはいつも、どこかにいるんではないだろうか、という人たちが出てくる。

マナブの父が、ヤスの母からお金を受け取る。騙すつもりはなかった、と言うけど、こういう人いるよね。
つもりはないというけど、毎回同じ失敗して、気付かないだろうか。
ヤスは胡散臭さを感じ、だけど、自分の連れの親だから信じたいと、マナブに「大丈夫か?」と聞く。
マナブは父の今までを見て、どこか危なげなものを感じていながらも、「大丈夫」と言ってしまう。
ここで言えないものか。やはり子供は最終的には親を信じてしまうんだろう。

結局失敗するんだけど、マナブにも腹が立つし、ついでにマナブの母にも腹が立った。
家族を捨て、新しい家庭を作る身勝手さ。母に捨てられたマナブ、やっぱりどこかにいそうだ。

カープの優勝を見届け、父と共に九州へ旅立つマナブ。送られてきた手紙に返事を書くと、宛先不明で戻って来て、それっきり。
ヤスがカープのキャンプ地へ行き、北別府選手の名前を叫びながら、心ではマナブを想う。
「帰ってこいよ」と。

三人の少年の物語の先は描かれていない。

このまま会うことはなかったのだろうか。それがさすが重松氏らしいというか、安易な夢を持たせない。

マナブ、一攫千金の夢ばかりを追う父と共に、君はどんな大人になりましたか?
ちゃんと地に足をつけた大人になりましたか?お父さんと同じような弱い人にはなってませんよね?
人を裏切らない大人になってるといい。
きっと他の人よりは寂しいこと、辛いことたくさんあったと思うけど、優しい大人になってるといい。
そして、やっぱり広島に戻っていて欲しい。

人を想うこと、原爆のこと、カープのこと、私はこの物語を読書感想文に推薦する。



posted by じゃじゃまま at 17:41| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 重松清 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

生存者ゼロ 安生正著。

《★★★》

エボラ出血熱やデングウイルスなど、世間を騒がせてるこのタイミングで、なんと恐ろしい本を読んでしまったことか。
というか、安生氏、すごいタイミングで執筆したね。もちろん、ご本人は預言者でもなく、たまたま、もっと以前から目を付けていたテーマに違いないけど。

北海道根室半島沖に浮かぶ石油掘削基地。
そこから緊急連絡が入り、そのまま連絡が途絶える。演習をしていた陸上自衛官の廻田は、救助に向かう。
目にした光景は無残な死体だらけの基地。生存者はゼロ。この遺体のあり様は、なにかの感染症か。
家族を果ての土地で奪われ、学界からも追われた感染症学者の富樫と廻田は、ウイルスの正体に迫るため、責任から逃れようとする政治家や富樫を陥れた元同僚たちと闘いながらも、調査する。

国民がパニックになり、収拾がつかなくなることを恐れ、情報をひた隠しにする政府。なんとかこのまま終わってくれないか、と希望的観測で調査を打ち切った後、とうとう北海道のある町で同じような死体が溢れ、本土に迫るカウントダウンが始まる・・・。

そうかそうか、ウイルスか。
どっかの組織が生物テロを起こしたのかと思ったけど、そうではなかった。
人間が自分たちの文明のため、掘り起こしてしまった、恐ろしいウイルスだった。

ちょうどドラマで、シロアリ駆除業者が一家殺人事件を起こしたのと重なったため、シロアリ、ウイルス、嫌な感じだった。
感染すると猶予もないまま発症して、致死率100%で、結局、シロアリ同士の縄張り争いに賭けるしかないのも、救いがなくてラストがパッとしない。
責任逃ればかりの政治家に、まさか現実ではもう少しマシだろうと思いたい。

そもそも、地方自治体に任せてる方が絶対逃げられないって、中央の政治家さん。そこ、わかんないかな。

家族を失った富樫が、薬物中毒になってしまったのも、なんとも救いがないし。

この先、これからも未知のウイルスが出てくる気がして、人間が先を行きすぎると、こうやって警鐘を鳴らされるのかな。


posted by じゃじゃまま at 17:07| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 あ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月13日

チルドレン 伊坂幸太郎著。

《★★★》

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。 (「BOOK」データベースより)

そんな風に書いてあったけど、何気ない日常に起こった、って結構陣内の日常って何気なくないんだけど。
五つの物語が一つ・・・になったっけ?

なんていうか、常識がないようにも見える飄々とした陣内君の、周りで起こる、そして陣内君の周りにいる人々の、物語。
ほとんど一つの物語だよね。陣内君が大学生だったり、社会人になってたり、また家裁の人目指して勉強中だったりと、時間を前後しながら、一つになったというより、最初から一つの物語。

銀行強盗に遭ったり、誘拐事件の身代金受け渡し現場にいたり、的外れな考えしてそうで、的を射ていたり。
付き合うと疲れそうだけど、あの飄々とした中にも、強さがある気がして、あんな風に生きてみたいな〜と、自分にはないものだから憧れる。

陣内君のお父さんは、女子高生のストーカーってこと?
「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。
posted by じゃじゃまま at 16:48| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 伊坂幸太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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