2015年04月26日

虚ろな十字架 東野圭吾著。

《★★★☆》

一人娘を強盗殺人で亡くした夫婦の事件と、冒頭の少年少女の淡い恋物語がどう繋がるのか、ずっと気になっていた。
幼い娘を殺された被害者遺族。お互い傷が癒えないまま離婚した夫婦。その夫の元へかつての妻が殺害されたとの連絡が入る。
離婚後元妻のその後を知り、死刑とは、犯罪者の再犯歴の高さ、罪を償うとはどういうことなのか、自分たちの裁判をも振り返り、原稿を書いていた妻が、事件と向きあっていたことを知る。
その元妻が被害に遭ったのは、本当にただの行き当りの犯行だったのだろうか?

さすがだと思った。
小さな点が、どんどん繋がって行った。
元妻、小夜子を殺害した犯人の義理の息子が、冒頭の少年。生前、小夜子が取材を重ねていた女性が冒頭の少女。
そうやって繋がって行くのね。

「容疑者Xの献身」のように、深い愛を最後に教えてくれることを信じて読み進めたけど、感想から言えば嫌いな人が心を占めてしまってそれどころじゃない。
まず、冒頭の少年だった史也の妻、つまり小夜子を殺した犯人の娘なんだけど、花恵。なぜか一番嫌い。
史也がいい人なだけに、冒頭で史也と沙織の関係を読んでいただけに、なにこの女、と思ってしまった。
しかも史也の子じゃないし、そのくせ医者の妻の座にいるし。
花恵の父は犯罪者だし、この女ロクなもんじゃない、と思ってしまって、とにかく一番嫌い。

もちろん花恵の父も、この父さえいなければ、ってところあるしね。

そして、小夜子。娘を殺害されて本当に可哀相な人ではあるけれど、小夜子の正義感が次の事件を起こさせたよね。
そもそも、娘の事件がなければ小夜子が命を奪われる悲しみ、その罪への償いをそこまで深く追求することはなかったのだから、最初の犯人が一番のクズなんだけど、小夜子の行動は、個人的にはあまり共感はできなかった。
21年前の若すぎた二人の過ち。それを掘り起こして自首を勧める小夜子の強引さに、嫌悪感を持ってしまった。小さな命を奪った史也と沙織の罪は罪だけど、取材の過程で聞きだしておいて、自首を勧めに史也にまで会いに行く、その小夜子の強引さが、好きになれなくて、小夜子と花恵。この二人が今思い出しても嫌いだ。

死刑についても触れていたけど、正解はないのかもしれないけど、遺族にとって死刑はただの通過点、遺族がそれを望むのは当然の権利で、誰にも否定できないものだとは思う。

最後に、史也と沙織が共に生きることはないとは思うけど、花恵、どっかに行って欲しい。




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2015年04月21日

満月の道 流転の海第七部 宮本輝著。

《★★★☆》

前作からかなり時間が経ってしまったので、登場人物で、誰だっけ?というようなことが多かった。
しかも、あんまり説明がないんだよね。
他の作家さんだと、毎回説明される水戸黄門みたいな感じで、いちいちこれはこうでああで、みたいな説明が入るんだけど、宮本氏のこのシリーズは、普通にさらっと流れていく。
この物語は、宮本氏の自叙伝的小説なので、「私の人生続いてるし時間は流れてるから戻っていちいち説明しないよ」的な?

ま、いいけどね。
でも、父、熊吾や母、房江の価値観や見方は、深みがあって、このシリーズはいつも思うんだけど、刻むものが多い。
熊吾や房江が人生において、本当に苦労して辛酸を舐めてきたり、経験によって掴んだものが多いからこそ出る言葉だったりするんだよね。
そして、それが間違っていたりもするけれど、人間味がある。

ドラマのように、登場人物が事件を起こして劇的に解決するような展開も少ない。
跡を濁して行ったまま去って行く者も多いし、それがまるっきりのフィクションとは違う。
熊吾はまたもや会社の人間にお金を騙されるし、やけぼっくいに火がついて女にうつつを抜かしてる間だったから腹が立つ。
せっかくうまくいっていた会社の経営が危うくなり、今後どうなるんだろう、というところで終わっている。

次は伸仁は大学生だろうか?熊吾の中古車会社はあのまま潰れてしまうんだろうか?
房江は城崎できれいな満月を見られただろうか?麻衣子のお蕎麦屋はどうなってるだろうか?

それまで覚えていられるだろうか?



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2015年04月19日

栄繕かるかや怪異譚 小野不由美著。

《★★★★》

家や庭、井戸、なにかの想いを残して亡くなった者たちが、なにかを伝えたくて・・・ホラーだったね。
どことなく人の悲しみや無念さが溢れて来て、涙がにじんでしまう。
その想いを受け止めてあげる栄繕かるかやの尾端の連作集。

夜、なぜか思い出して怖くなるから、絶対に思い出しちゃ駄目なんだよね。

「奥庭より」 ・・・ 叔母の死後、家を引き継いだ祥子。その家には箪笥でふさがれた開かずの間がある。
誰もいないのに、閉めたはずの襖が開き・・・人の顔や手が・・・。
その昔、その座敷に閉じこめられ、放置され亡くなった女性。その女性を見たくなくて座敷を封じようとすればするほど、部屋から出たがり徘徊する。
尾端は、ならばその部屋から出られるように窓を開け、水を置いてあげましょう、と提案する。
水を欲したまま亡くなった女性の想いを受け入れたのだ。

「屋根裏に」 ・・・ 舅や夫に苦労させられた母親がやっとこれから安心できると思った矢先、屋根裏を歩き回る足音に怯え始める。
息子は家の改修をするが、足音は止まない。そんな時、改修工事をした工務店から、屋根裏に瓦があった、と言われる。その瓦に記憶がよみがえる。その昔、姉が無造作に箱を開け、中から黒いモノが出てきた。その後でした異臭。そしてその土地に伝わる河童の伝説。それらが結びつき、その家には昔、河童の祟りがあって、それを封じ込めるために瓦と箱があったのだ。

「雨の鈴」 ・・・ 喪服の女が歩き回る路地。真っ直ぐにしか進めず、雨の日にしか姿を現さない。
その女が訪ねてくると、その家から死者が出る。家の住人が代替わりし、門の位置を変えたりすると、その女は向きを変え、また次の家を目指して歩き出す。次にやって来るのは有扶子の家だ。
これが一番想像すると、ゾクゾクした。尾端が、ならばその女が路地から抜けられるよう、塀を作り、道を変えましょう、と提案する。

「異形のひと」 ・・・ 父親が祖父の跡を継ぐために田舎に越してきた一家。移り住んだ古家で、長女の真菜香だけが見える老人。勝手に仏間に入り込み供え物を漁ったり、家の中のあらゆるところに隠れている。
いくら母親に訴えても誰も信じてくれない。まるで真菜香が一人おかしくなったかのような扱いだ。
心配した家族は、真菜香の気持ちをほぐそうと古家をリフォームすることにした。そこでやってきた工務店のおじさんから聞いた話。
この家に昔住んでいたおじいさんは、息子とそのお嫁さんたちからいじめられて体を壊して死んでしまった。そのおじいさん、きっと家族から隠れて食べ物を探していたんだろうな、隠れていたのに、お穣ちゃんが見つけちゃうんだろうな、って。
亡くなったおじいさんの想いが泣けた。

「潮満ちの井戸」 ・・・ 祖母から受け継いだ家にある井戸。夫がその横にあった祠を勝手に壊し、庭のリフォームを始めた。
ところが、徐々に枯れ始め、庭全体が病んでいるように見え、嫌な匂いがしたり、人の手のようなものがはいずりまわってるのを目撃した麻里子。そのことは夫に伏せ、業者に相談しようと来てもらうと、井戸を見た途端業者は逃げ帰ってしまった。
後日、栄繕かるかや、尾端がやって来て井戸を埋めることを勧める。

「檻の外」 ・・・ シングルマザーの麻美は、生活のため親戚から格安で家を借りた。ところが車庫のシャッターが突然降りてきたり、エンジンがかからなくなったり、挙句に子供の呼び声が聞こえ、後部座席ににいたりする。生活のために引っ越すこともできない麻美。そこでかつての知り合いに聞いたこの家の悲しい事故。
母親が子供を虐待していて、車に置き去りにしたまま中毒死したという。
余裕のない麻美の姿に、死んでいった子供は自分の母親を重ねたのだろうか。お祓いするために読んだお坊さんが、尾端を紹介してくれて、ガレージに閉じ込められた子供が外に出られるように車庫を変えましょう、死んだ子供が自分で自分を助けられるように、と。

どれも無念さが悲しい。

夜思い出すと怖いけど、よかった。


posted by じゃじゃまま at 16:12| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 小野不由美 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月09日

自滅 柴田よしき著。

《★★★》

ホラーなのか・・・。
「薫衣草」 ・・・ 二卵性双生児の清香と沙香だったが、沙香はある日夫と子供を残し失踪し、見知らぬ町でたった一人で死んでいた。沙香が暮らしていたらしいアパートの不動産からの連絡で、死後数カ月も経ってから向かったそのアパートで、一枚の新聞の記事を見つけた清香。それは二人が幼い頃過ごした町で起こったある殺人事件。時空を超えて、あれ、が沙香や清香を追い詰める。

「雪を待つ」 ・・・ 雪が降った日、傘の先で地面を突いた幼いあの日。そこに猫の死骸があったとしても、雪で隠されていれば分からない。幼かった「私」から、父を奪い、兄も奪い、そして母が去った。そして、今度は娘までも失った「私」。そんなある日、兄の自殺の原因になった女性を知ってしまう。彼女に幼い子がいることも。
幼いあの日猫の死骸を突いたように、「私」は雪を待ち続けてた。あの子が飛び出して来るのを待って・・・。
なんか無理がないか?復讐するなら兄を振った女性の家族よりも、娘を轢いた男の方だと私は思うけど。

「隠されていたもの」 ・・・ フリーライターである絵美に依頼のあったゴミ屋敷への取材。
そこで見つけたものは、人々が要らなくなって捨てたゴミだけでなく隠しておきたい過去のものが埋もれていた。狂気の世界だよね。
あり得ないホラーの世界。

「ランチタイム」 ・・・ 誰にも気にされず、いつも一人だった「わたし」は、今日も一人でランチタイム。
噂話をしている後輩社員を一睨みすれば、一人の女性社員がハッとしたけど、その他は誰も「わたし」に気付きもしない。
「わたし」に待つ真実とは・・・。

「自滅」 ・・・ なんでも消えて欲しいものをビルの屋上から願えば消えてしまう。由佳里を小馬鹿にした店員のお店もなくなった。由佳里をいつもいびっていた鈴本もいなくなった。村崎の妻もいなくなり、交際を初めてようやく入籍した由佳里だが、願えば消えてしまうと信じ続けた由佳里は心を病んでいた。村崎は気付いていた、由佳里だけがその現実を受け入れられなかった。
由佳里が本当に消えてしまえと願うのは、村崎の妻でも、鈴本でも、元の恋人でもない、それは自身だ、と気付いてしまった時、村崎の差し出した手は由佳里に届いたか・・・届かなかっただろうな〜。

posted by じゃじゃまま at 15:43| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 柴田よしき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

願いながら、祈りながら 乾ルカ著。

《★★★★》

北海道、生田羽村生田羽中学校の分校に赴任してきた林。
そして分校全生徒5人の子供たち。なんでも揃う都会の学校とは違う、厳しい環境の中で、迷い、悩み、自らの存在を考え、「願いながら、祈りながら」なにかを見つけ、成長していく彼らのそれぞれの物語。

第一章 始業前 ・・・ 自分を振った彼女を見返すために、こんなところで教員している暇はないと、赴任当初から持て余し気味の林。そんな林の心を見透かすように、三年生の女子生徒にやる気のないことを言われ、下宿先の老医師から「あなたの人生を時間に換えればこの一年はたったの20分。その20分を子供たちのために先生になってください」、そんな言葉が林を変える。

第二章 ひとりのせいで ・・・ 生田羽分校の唯一の三年生である弥生は、修学旅行のために生田羽中学校の生徒たちと合流する。弥生を含めて5人。静かで密かな意地悪は、弥生を孤独にさせていく。
たった数日のために、普段違う学校で学んでいる子が混じってもすぐには受け入れられない、そんなことが大人には見えないのだろうか。これなら本当、弥生は一人で旅行に行った方がいいと思った。
確かに、彼女たちの言い分も然り。せっかくの旅行が、たった一人のせいで台無し、って。
弥生が頼りにしていた一つ上の友人も、隣町の高校へ進学してからはもう弥生を振り向いてくれない。
そのことで、とことん一人になってやる、と弥生を決意させた。そしてこの決意が弥生をより強くさせたのだ。

第三章 特別の条件 ・・・ みなみはいつも普通。容姿も勉強もスポーツも、音楽も、すべていつも自分より上に誰かいる。私はなんのために生まれてきたのだろう、どんな存在価値があるのだろう、そんな疑問を抱えている。そんなみなみが見つけたのは、自分には霊感がある、ということ。祖父の命日に祖父の存在を感じたことにより、みなみはそこへ存在価値を見つけた。
自分を誇大評価したい欲求は誰しもあると思う。でも、そんなみなみの浅はかさを、同級生の学に鋭く指摘され、みなみはなにものでもない自分を認める。

第四章 闇を裂くもの ・・・ 憲太と学は大事な仲間だ。学の両親が畑作をするために東京から移住してきた時、その指導や世話をしたのが憲太の一家で、二人は大切な友達になった。子供時代を二人で過ごしてきた。
ところが学が道内の塾のテストで、村の神童と呼ばれるようになった辺りから、学はつれなくなってきた。
それでも憲太の気持ちは変わらない。学を大事に思っている。そんな二人が星空を見る会で、気持ちをぶつけ合う。
成績が伸びないことを、こんな村に越してきたせいだ、という学に、環境のせいにするな、と憲太は言う。
二人の思い出までも否定されたみたいで辛いよね。
本当は学だって分かってたとは思うんだ。もっと大事なこと、友達って大事だなってそんな素直な気持ちがあれば、学はまた頑張れる。

第五章 いつかくるとき ・・・ 神童と呼ばれている学は、その場の誤魔化しなどしない。
だからみなみが、ない霊感を自慢げに言うのも指摘した。
弥生に好意を寄せている生田羽中学校の生徒へも、弥生の拒絶の言葉を言おうとした。
ところが、いつも嘘ばかりついている亮介が、また嘘をついた。「ありがとうって言ってました」と。
生田羽中学校の少年は安堵の目になった。それなのに、学は追いかけて真実を告げた。
嘘の期待を持たせることは、いつか分かった時より残酷だと思わないかい?それが学の気持ちだ。
いつかくるときのために真実を告げるのもある意味優しさではあるけれど、私は亮介の嘘の方がより優しいと思う。

第六章 きらめきの名前 ・・・ 亮介の一家も都会から畑作をするために移住してきた一家だ。ところが亮介には嘘をつくと言う癖がある。すぐにその場の嘘をつく。後になれば分かってしまうのに、それでもつく。
吹雪のために学校に足止めされた日、憲太が「お前嘘つくじゃん?だったらなんか作り話してくれよ」と。
そこで語られた亮介の話。病気で長く生きられない子供が、病室で見た一枚の風景写真。母親は「そこが気に入ったの?」と聞く。嘘だったけど、聞かれたから「うん」と答えた子供。子供が気に入った景色のために、親はその村へ移住することを決めたのだ。
なぜ、そんな嘘をつくのか。
どんな嘘でも、その場で相手が喜んでくれるなら、その子にはいつか嘘がばれるときが来ることはないから、と。吹雪の中、亮介が語るその物語は、いつもの嘘なのか、それとも真実の・・・。
吹雪が去った後、林が亮介を窓辺に呼ぶ。そこから見える景色は、物語の少年が写真で見た風景。亮介は、このためにこの村に来たんだ・・・、と。

第七章 これからはじまる ・・・ 卒業式。弥生は、一人この村から旅立つ。今までの慣例に逆らい、たった一人で遠い都会への高校へ進学する。それが弥生の決意だ。清々しいくらい自分の足で立っている少女。15歳でその決意ができた幸運を私は祝福したい。
そして吹雪の後で倒れ、そのまま東京の病院へ転院していった亮介から手紙が来た。「元気になってます。ディズニーランドへ行ってきました」という内容。そして日付は平成23年3月11日。そう、あの日なのだ。亮介は、とうとういつかばれる嘘、を身を持って体験することができた。亮介にも、いつか来る時があったんだ、と。
そして、生田羽分校は閉校になる。弥生が卒業し、亮介もいない。生徒は三人しか残らない。元々林が赴任してきた時から一年後の閉校は決まっていたのだ。
それぞれの春へ、「願いながら、祈りながら」歩き出す、素晴らしい物語。




posted by じゃじゃまま at 12:28| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 乾ルカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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