2015年06月23日

明日の子供たち 有川浩著。

《★★★★》

早く読めばよかった。
レビューで、登場人物の女性に共感できない、とか児童施設ってワード出てたので、暗いのかな、共感できないって嫌な子が出てくるのかな、ってなかなか開けなかった。
ところが、読み始めたら、そんな危惧なんて吹っ飛んだ。
女性陣に対する警戒心も、すっかり忘れてしまうくらいすんなり入っていけたし、のめり込んだ。

児童養護施設「あしたの家」で暮らす子供たち、職員たちの物語。
新任の三田村は気持ちは熱く熱血なんだけど、勘違いしてたり、一言余計だったりと騒がしい。
比較的、施設内で聞き分けのいい部類の奏子に、実は内心拒否られていて、そのエピソードは、読者である私含め、気付かされた視点だった。
「かわいそう」そんな風に思わないで欲しい。それが全編通して伝わって来る。
そして、強いられた自立。そうだよね、高校に進学しなかったら施設は退所しなくてはいけなくて、自立しなくてはいけない。
どのみちいられるのは高校卒業までで、卒業後の生活は自分の手で築かなくてはいけない。
それがどれほど心細く大変か、大人である自分にはもうすでに分かってはいるけど、それを18歳で分からされる子供たちは、やっぱり普通の家に生まれた子よりは大変。

やらなきゃいけないんだから。甘える場所なんてないんだから。

猪俣先生が子供たちに進学を推奨しないその理由。それだけアッコちゃんのことを真剣に思っていたからなんだよね。そしてアッコちゃんとの奇跡の再会。その再会は、猪俣先生とアッコちゃんだけじゃなく、奏子の進学でぎくしゃくしていた久志との溝も埋めた。

和泉にほのかな恋心を抱き始めた三田村。その三田村の前にライバル現る。
それは和泉の高校時代の初恋の相手。和泉の恋の話は切なかったね。高校時代の彼、施設にいるという理由だけで成就しなかった。「住む世界が違う」と。
その彼が選んだ結婚相手は、和泉と寸分違わなかった。和泉は問う。自分があの時「そんなこと気にしないよ」ではなく「分かった」と答えていたら成就したのだろうか。
否、やっぱり駄目だったろう。彼女との違いは、出会ったタイミングだけ。

切ないよね〜。三田村じゃなんか頼りないし、しかも私の中では三田村はうざい。
猪俣先生も、梨田先生も、施設長も、みんなみんないい人。価値観は違っても、それぞれに子供たちを想う気持ちは十分。

全編通して、私たちが普段思いがちな施設への偏見、そこに暮らす子たちの本音が伝わって来て、エアポケットに落ちてしまってるテーマを、こんなに読みやすく問題提起できて、すごい小説だと思った。


posted by じゃじゃまま at 18:30| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 有川浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

我が心の底の光 貫井徳郎著。

《★★★》

母親からの育児放棄により、餓死寸前だった晄。父親はその母親を殺して殺人犯となり、世の中の不公平と折り合いをつけながら生きている。
なんの希望も見出さない、どうでもいい、そんな晄の人生ってなんだったんだろう。
最近は読むモノ観るモノ「復讐」続きで、結局この本もそうだった。

晄の人生は復讐そのものだった。

過酷な運命の元に生まれた晄は、やっぱり普通の人間が感じるような感情では図れなかったね。

引き取られた親戚の家には晄と同い年の従兄弟がいて、こいつが嫌な奴なんだけど、特に晄をいじめたりするわけじゃないけど、無神経さに腹が立って。
詐欺師として天才なのか、その原動力は復讐心なんだけど、自分たちを死の淵に追いやった原因となった人々に復讐していく。

母親がホスト通いにはまり、晄を何日も置き去りにするところは、苦しかった。
いくつものそんな事件が思い出されて、幼い子たちの命を脅かす、親の無責任さに気分が悪くなる。
だから晄の母親が分かれた夫にボッコボコにされるのなんて、ざまあみろってもんで、死んですっきり。

晄は、母親がホストに夢中になって帰ってこなくなった、そのホストにも復讐。
そもそも母親がホストに愛を求めるのは、家に帰ってこなくなった父親が原因で、それは父に愛人ができたから。その愛人にも復讐。
だけど、晄の感情はどこかねじ曲がっていて、晄の復讐に巻き込まれ従兄弟の慎司と幼馴染の怜菜が拉致された時、助けるのは怜菜でしょう?いやいや、まず拉致現場に助けに行ったんだから二人救出すればいいのに、なんで慎司だけしか救出しないのか!!

その理由は、虐待され感情が欠落してしまったとしか思えない晄らしいもので、共感はできないけど納得。
母親が帰ってこない、たった一人の部屋で、慎司が譲ってくれた仔猫がどれだけ晄の希望となったのか。
トラスケの存在だけが晄にとっての希望で、そのトラスケのために復讐をしたのだ。

怜菜なんて目に入ってない、いや、本当は晄だって怜菜の気持ち知っていたし、好きだったのかもしれない。だけどそれよりも優先する感情が晄にはあったんだよね。
トラスケの復讐と、そのトラスケを譲ってくれた慎司への感謝だか義理。ここはもう絶対に譲れない。

やっぱりラストは貫井氏らしく、暗くどんよりしたものだったけど、それでもなんだろう?晄の目的が分かっただけで、共感はできないのに納得がいったことで、彼の選んだ最期に希望を感じた。
これでよかったんだ、と。
彼にはこの先の明るい人生なんて考えられなかったのだから。

一切出てこなかった父親のその後も知りたかった。妻殺し・・・出所してもおかしくないよね。あれだけ元愛人やホストのその後調べたんだから、父親の消息も調べればよかったのに。




posted by じゃじゃまま at 17:41| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 貫井徳郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月16日

神様の裏の顔 藤崎翔著。

《★★★》

神様のような清廉潔白な教師、坪井誠造が逝去した。その通夜は悲しみに包まれ、誰もが涙した―と思いきや、年齢も職業も多様な参列者たちが彼を思い返すうち、とんでもない犯罪者であった疑惑が持ち上がり…。聖職者か、それとも稀代の犯罪者か―驚愕のラストを誰かと共有したくなる、読後感強烈ミステリ!!第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)

通夜に参列する一人一人が、坪井誠造を思い返していく。
そこで思い返されるそれぞれのエピソードのかけらを拾い集めつなぎ合わせていくと、とんでもない事実が浮上する。
元教え子の自殺、同僚教師の息子の事故、隣人の徘徊老人の転落死、ストーカー行為、疑惑を確信に変えさせるような証拠や証言。
坪井を恩師と仰ぎ、心から尊敬していた元生徒が、一度疑い出したら、恩師を犯人に仕立て上げようとする豹変ぶりに嫌悪を抱きながらも面白かった。
疑惑が浮上した途端、呼び捨てだもんね。

でも、徐々に疑惑がただの偶然になってきて、私はそこで終わりでもよかったと思うんだ。
もしくは逆に、やっぱり先生は裏の顔があった、ってことでも。

娘の二重人格のせいにしてしまうのは、せっかく面白かったのに、もったいない。
なんとしても犯罪にしたかったんだろうか、だったら先生が犯人でもよかった。娘にはもう一人の人格がいて・・・っていうのは残念なオチだった。

posted by じゃじゃまま at 12:47| 神奈川 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月02日

ナオミとカナコ 奥田英朗著。

《★★★★》

葵百貨店の外商部で働く小田直美は、大学時代からの親友加奈子が夫からのDVを受けていることを知り、彼女を救うために、夫を排除することを決意する。
それまでは中国人に商品を万引きされて、その対応に追われる様子が描かれるけど、そこで中国人の李社長に気に入られて、チャイナタウンで信頼を得たり、加奈子の夫にそっくりな林を見つけたりと、まさか加奈子の夫の殺害に進んでいくとは思ってなかった。

徐々に計画が進んできて、ま〜、二人の立てる計画っていうのが、素人の私が聞いてても、絶対に危ないな〜って思うことばかり。
二人で話してて、そこに気がつかないのかな〜って、ほとんど呆れてたけど、これがうまくいくのかな?なんて期待も持ったりして。
どう考えても直美と加奈子は犯罪者なんだけど、被害者である夫や夫の家族が嫌な感じで書かれてるから、俄然二人を応援したくなるんだよね。

まず、マンションの防犯カメラってまず一番先に警戒すると思うんだよね。
以前、実際の事件でもあったけど、帰宅する姿が映ってるのに、出ていく姿が映ってなきゃおかしいでしょ。
家出人で届けても、夫の身内が騒いだら、まず一番最初に防犯カメラを見たがると思うんだよね。だからそこは一番警戒しなきゃいけないし、そもそも夫を殺して、その夫の車で出かけたらさ、今いろんなニュースや小説でもNシステムが出てくるから、足がつくよね。
加奈子なんて、最初顧客から騙したお金を下ろすのに自分が行こうとしてて、ね〜ね〜、カメラチェックされたらアウトだって!!って本当に呆れた。

呆れちゃうくらいずさんな計画なのに、二人を応援したくなるよね。
特に義妹の陽子、兄と同じ目に遭えばいいのにとさえ思ったよ。
李社長に頼ったら、どうにかならないかな。その後の二人が知りたい。

posted by じゃじゃまま at 19:50| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 奥田英朗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

雨の狩人 大沢在昌著。

《★★★》

いつの間にか新宿署といえば鮫島じゃなくて、佐江になってしまった。
どこかで鮫が出てきたらいいな〜と思っていたけど、そんなサービスはなかったか。

一匹狼の刑事、佐江と本庁刑事のコンビがクラブで起きた不動産会社社長の射殺事件を発端に、その底にある日本最大の暴力団幹部、延井の陰謀と野望を暴いていく。
大沢氏は登場人物に愛着が沸くとどんどんキャラが変わって来るような気がする。

つまはじき者だった佐江が、実は上も認める有能な刑事で、実は信頼されてる、とか。そういうくだりがしつこいような気もしたけど、中年太りの冴えないおっさんってイメージだったのに、タイの殺し屋の女の子にほのかな気持ちを抱くところなんて、イメージが鮫島になりそうで、いやいや、冴えないおっさんなんだよなってイメージを打ち消したりして。

今回もかなりややこしい裏社会の相関図ありの、実はなんだか分からないところもあったけど、そこで止まっても仕方ないので、裏社会と刑事の闘いをとにかく読みました。
絶対に延井の放った殺し屋からは逃げられないはずなのに、佐江は助かるんだよね〜。
家の中でウトウトしてたら、殺し屋が目の前にいた、なんて絶体絶命なのに、謎の人物が佐江を救う。
ま〜、うまくいくもんだ。

冒頭の少女と、行方不明の父親と、佐江たちが追ってる事件と、本当によく繋がったもんだ。
このラストは、狩人シリーズ終わりなの?刑事じゃなくてもなんとかやっていけるか。

posted by じゃじゃまま at 19:36| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 大沢在昌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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