2008年08月22日

四度目の氷河期 荻原浩著。

≪★★★≫

結構ぎっしりでしたね、内容の濃さ。
シングルマザーやハーフなんて、白い目で見られちゃうある田舎町。研究所で働く母親と二人で暮らすワタルは、ちょっと変わった男の子。走ることが大好きで、決められた色で絵を描くことよりも好きな色で絵を描きたい。そんなワタルを周囲は持て余し、なにかと問題児扱いする。
母親は、ワタルの父について「言えない約束」と言い、なにも明かさない。ある日シベリアの氷河で発見された一万二千年前のミイラの記事を見つけたワタルは、このミイラこそ自分の父親だと確信する。
ボクはクロマニヨン人なのだ!

自分の出生を知らないストレスが、ワタルを知らずに追いつめて、一万年前のミイラを自分の父親だと思い込ませたのかもしれない。
確信してからのワタルは、たとえそれば荒唐無稽なことであっても、居場所を見つけ幸せだったと思う。

そしてもう一つの出会い。酒乱で酔えば家族に暴力を振るうろくでなしの父親から弟をかばいながら、明るく強く生きているサチ。

この二人の少年少女の、小学校からの十数年間の月日の物語。
クロマニヨン人と信じた少年は、槍投げがしたくて陸上部に入る。昔から走ることは好きだったから。だってクロマニヨン人は狩りで走るから。
ワタルの学生生活が、自分で信じ込んだ出生によって走ることや槍投げに出会えてよかったなってしみじみ思う。

母親も失い、ワタルは実の父に会いに行く。私は、研究所のなんとかって博士よりも、やっぱりワタルの父はあのアイスマンなんだと思う。
サチと二人で、アイスマンを還してあげようって思うのは、私も物置同然の倉庫で誰にも見向きもされなくなった場所に置かれるよりも、幸せなんじゃないかと思った。
たとえ、それが大馬鹿野郎のすることで、幼稚な考えでも、なんだかワタルの気持ちが分かってしまった。

長い長い年月がかかったけど、ワタルが自分というものを見つけられて、これがまたシベリアの白白白・・・タイトルの氷河という言葉から想像する寒さと今までの孤独が合ってて、よかった。
posted by じゃじゃまま at 23:06| ☁| Comment(5) | TrackBack(4) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ワタルの思い込み、強かったですね。
クロマニヨン人にびっくりでしたけど、アイデンティティをつかむための気持ちが伝わってきました。
寒そうな表紙とタイトルが、夏の読書向きの本って思えます。
Posted by 藍色 at 2008年08月23日 02:19
波乱万丈の人生とは、この人の人生そのものですね。
ラスト、爽快に終わってよかった。
でないと、本当に救われなかったですよね、分厚い本だったのに(笑)
Posted by ゆう at 2008年08月23日 10:39
このテーマを、こんな風に描こうと思った荻原さんに拍手を送りたいです。
どうしたら思いつくのでしょうね。クロマニヨン人。
Posted by ふらっと at 2008年08月23日 11:17
思い込みの激しい男の子でしたが
信じるものが出来て、心を通わせることが出来る人が現れて
読んでいて「よかったね〜」って思えました。
Posted by なな at 2008年08月23日 21:40
藍色さんへ
ワタルとアイデンティティって言葉、すごく似合いますね。この物語のテーマってアイデンティティ探しでしたもんね、そういえば。

ゆうさんへ
私は一瞬、寂しいラストになるのかと思いましたよ。(爆)
やっと見つけた狩りの小屋でしたっけ?実は廃墟でな〜んにもなかったり、とか。(更爆)
違いますよね!?

ふらっとさんへ
長い長いお話でしたけど、ワタルの自分探しのお話で、よくぞダラダラしたり、くどかったりせずに、貫けましたよね。自分の出生を知らないジレンマが、クロマニヨン人と思い込みだったけど、でも救われたのも分かるし、うまいですね。

ななさんへ
我が子だったら扱いにくいだろうし、友だちでもちょっと距離置いちゃうかもしれないけど、ワタルにしか分からない孤独、ワタルだからこその孤独、よく書ききれてましたね。サチも孤独だからこそ惹かれあったんでしょうね。
Posted by じゃじゃまま at 2008年08月27日 14:31
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