2008年12月05日

ブルーベリー 重松清著。

≪★★★≫
1981年、早稲田大学に入学し、一人暮らしを始めた18歳の「僕」が、山口から上京し、大学の中で、東京の中で、どんな人たちと関わり、過ごしていったのか。
その後の彼らの消息は知らないっていうのが多いので、私なりに想像してみた。

「東京に門前払いをくらった彼女のために」 大学に合格したら、一緒にアパート探して隣同士で住もうと思っていたのに、裕子の番号はなかった。こうして人生って枝分かれしていくんだよね。山口から上京してきた「僕」は、その後もずっと東京に残って、今ではすっかりこっちの人になっちゃってるね。

「恋するカレン・みちのく純情編」 大学で知り合った梶本の、18歳の青年にありがちな勘違い妄想片思いの話。若いんだもん、そういうこともあるさ。梶本君や「僕」が聞いてたあの頃のレコードは、私よりも若干目上だけど、でも、ああ、知ってる知ってる、懐かしいな〜。

「マイ・フェア・ボーイ」 「僕」に東京を教えてくれた年上のトモさん。贅沢と無駄遣い、その違いを常に心に留めておきたいと思う。
トモさんに紹介された「田舎から来た子たち」のその後は、ほんと、リアルで、そうなんだよ、小説とは違うんだよ、ってね。
20年以上の歳月を経て会ったトモさんは、おばさんになってたけど、きっと家のこと、子どものことで大きな山場をいくつも越えて、私と似たような主婦だけど、私よりも強い気がする。

「走れ!東上線ターボ」 梶本の高校時代の後輩が大学の下見に上京してくることになった。梶本君の「勝負の一日」は?
出身地によって東京の玄関口が変わるのって、確かにあるある。
私鉄の種類によっても、乗ってる人間の人種さえ違いを感じることもあるし。
あの後輩は、見事日体大に合格して、どこかの体育教師になってるだろうか。卓球部の顧問でね。

「洗いざらしの幸運」 コインランドリーで見かけた女子大生。必死な思いでトレーナーを乾かしてる。それは「あの人」と別れないためのジンクスだった。
とっても真面目そうで地味っぽい女の子なのに、不倫?なんか自分だけが本気、って気がしたけど。
きっと、あの女子大生は、今頃は普通に結婚もして子供もいるんだろうな。で、当時を振り返っては「あの頃、すっごい好きだった人がいたけど、向こうは遊びだったんだよね〜」なんて語ってるかも。

「4時間17分目のセカンドサーブ」 勝ち組から負け組へ転落した檜山と朝まで飲み明かした「僕」。(もう「私」って年代だね)
マッケンローが2連覇できなかった1982年のウインブルドンのテープを見ながら、今なら敗者と勝者、どちらの気持ちが分かるのか。
人生って、その時は「今さら」って思っても、数年先にも同じように「今さら」って思ってるんだから、気付いたらやり直せばいいんだよね。

「君の名は、ルイージ」 バイト先で知り合った同じ大学の女の子。実は双子らしい。自分の方がなんでもできて、ぐずで頭の悪い妹に勝ち誇りたくて余計なゲームをしてしまったら・・・。きっと彼女は、いつまでもいつまでも「できの悪い妹」と競い、意識している限り、気持ちで勝てないかもね。

「僕と少女とブルーベリー」 家庭教師をしたその少女から、ブルーベリー味のガムを教えてもらった。
母が夜仕事のため一人でお留守番をしていた小学校3年生の女の子は、ひねくれた中高時代を過ごし、どこかで「青い鳥」の先生に出会い、自分の人生を歩いていって欲しい、と思う。

「さらば、愛しき牛丼」 当時で、大学に休学届けを出して留学したカヨちゃんは、素晴らしく頭のよい女性なんだと思う。海外にも支店を持つような大企業に就職して、夫の海外赴任にもついていき、そして思春期の娘が一人いて、夫のリストラ、娘の反抗期で多いに母親業で奮闘してるかも。

「黄昏のイエロー・サブマリン」 バイト先の夢ちゃんに遊園地に誘われた「僕」。これはデートなのか?
行き先は開園したばかりのTDLではなくて、横浜のドリームランド。確かに可哀相な遊園地だったけど、子どもが小さい家庭にはそこそこ和んだ場所だったのにな。あの動いてないモノレールは、自分が若い時に見ると、なんか邪魔くさくてみじめったらしかったけど、夢ちゃんの話思い出すと、かわそうな遊園地、だったよね。

「人生で大事なものは(けっこう)ホイチョイに教わった」
見栄っ張りなナカムラ君。幸せの基準は「自分がどう思うか」ではなくて「人から見て羨ましがられるか」で決まると思っている。
この話が一番好きだった。
正しくないのはナカムラ君。でも正しく生きるのはとっても難しいことだと年を追うごとに分かってくる。
でもいきつくのは、やっぱり正しい「幸せの基準」なんだよね。
モノで計る幸せは、そのモノがなくなれば途端に不幸になってしまう。だから自分がどう感じるか、それが分かったナカムラ君に、泣いた。きっと、子どもはナカムラ君に本物の幸せを教えてくれたんだ。

「ザイオンの鉄のライオン」 母親の再婚相手とうまくいってないタケシ。家庭でもクサクサしてるんだろうな。工業高校へ進学して、そのまま高卒で働いて、普通のいいお父さんになってそうな気もする。
逃げてしまったボブは、やっぱり故郷には帰りたくないんだよ、そのまま浮浪者として東京のどこかにいる。

一つ一つ読み終えた後、そんな風に、多分、きっと、彼らはこうなってるんだろうな〜ってその後のストーリーが浮かんできた。



posted by じゃじゃまま at 15:46| ☀| Comment(5) | TrackBack(3) | 重松清 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。じゃじゃままさん。
その後のストーリーを思い浮かべれたなんて、いい感じで読み終えられたんですね!
私は、著者との微妙な年齢のズレがカチッとこなくて、その辺りがしっくりこなかったです。
じゃじゃままさんみたいに、その後を想像すれば後味もよかったのかも・・残念。
Posted by ゆう at 2008年12月05日 19:26
年齢的には少しずれてるけど、物や場所など懐かしい物ばかりで、主人公の「僕」がそんな生活をしている時に私は○○をしていたなぁって自分のあの頃を思い出してました。
じゃじゃままさんの「その後の物語」楽しみました。
Posted by なな at 2008年12月06日 21:49
ゆうさんへ
その後は知らないってあっさりしてるので、作家さんなんだからこそ作ってよ、って。(笑)
でも、それっきりっていうのが、小説にリアリティを与えてるのかもしれないですね。

ななさんへ
そういえば、梶本君はどうなったんでしょう。彼のその後って出てきましたっけ?
彼もサラリーマンで多忙で、数年に一回くらいの割合で会ってるのかな。
Posted by じゃじゃまま at 2008年12月06日 21:54
こんばんは。
多くの出会いがありましたね。
別れもドラマチックでした。
その後の想像、面白かったです。
再会しないのがリアリティですね。
Posted by 藍色 at 2008年12月07日 01:34
藍色さんへ
そうそう、再会しないっていうのが・・・ですね。
少しくらい脚色して物語締めくくってくれてもいいのにな、っていう願望がないでもないですが。(笑)
梶本君はどうなったんでしょうね。
Posted by じゃじゃまま at 2008年12月10日 11:27
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