2009年05月03日

待ってる橘屋草子 あさのあつこ著。

≪★★★★★≫
江戸の町を舞台に、その日を一生懸命生きる、裏店で暮らす人々。
そんな人々の、豊かではない、時に哀しい生き様を綴った連作短編集。
でもただ切ないだけじゃない、哀しいだけじゃない、ラストには一筋の幸せへの光が、時に弱々しく、時には強く伸びているのが救いだった。
そして料理茶屋「橘屋」の仲居頭のお多代。彼女がこの物語の一筋の光なんだよね。

「待ってる」 橘屋に奉公してる間に両親と妹が夜逃げしてしまった。おふくはそれでもおっかさんを待ち、幼なじみの正ちゃんの年季が明けるまでを待ってる。

「小さな背中」 大事な娘を病で失ってから、おみつたち夫婦の不幸が始まった。そんなとき、隣の部屋から折檻されてる子どもの泣き声。庇ううちに我が子にしたくて・・・。どんな母親でも子どもは傍にいたいものなんだ、どれも泣けるけど、泣けた。

「仄明かり」 薬も買えない暮らし。お敬は林蔵のためになんとしても手に入れたい。そんなお敬に偶然を装い昔のいいなずけが現れた。
お敬の窮地を救ったのは、やっぱりお多代。そして林蔵の愛だった。

「残雪のころに」 自分には女としての魅力があると、その価値でのし上がろうとしていたおその。小娘のその甘さをお多代はぴしりと窘め、おそのは大人の女の幸せを掴む。思うままにならない人生だけど、女はずぶとい。

「桜、時雨れる」 幼い頃怪我をして、見舞金が入ったために父親は酒に溺れ、母親は見限って出て行ってしまった。残された三太。
母親の働いていた料理茶屋「橘屋」へ消息を尋ねに行き、そこで三太は自分の生きる道を見つける。

「雀色時の風」 おふくの母親が見つかった。幼なじみの正ちゃんが教えてくれた。でももう母は別の幸せを見つけていた。悲しいけれど、おふくもすでに自分の生きていく場所を見つけていた。出会いと別れ、再び歩き出すまで。もうおっかさんの腕に抱かれてた子ども時代じゃない、大人にならざるを得ない時代で、なんと強いことか。

「残り葉」 物語りも終わりに近づき、おふくとお多代の別れも近づいていた。薄幸だったおふくが、橘屋で生きる場所を見つけ、肉親との別れ、淡い恋との別れ、いつも支えてくれていたお多代との別れ。
お多代の人生を思うと、これもまたなんと波乱万丈なことか。
お多代に太之助がいたように、おふくにも長七が寄り添ってくれることを願う。

posted by じゃじゃまま at 01:02| ☔| Comment(2) | TrackBack(1) | あさのあつこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
おふく、健気やのう。そして二話目が始まると、あれれ?
おふくの物語と勝手に思い込んでいました。
本の帯にだまされたぁ...^^;
でもどっちかで言うと、これはお多代の物語でしたね。
Posted by しんちゃん at 2009年05月15日 20:02
しんちゃんへ
私は帯を見てないんですけど、橘屋草子ってなってるから、橘屋がキーなんだなと思ってました。
だからおふくの初恋のその後が出てきたときはすっごい嬉しかったし、実らなくても、あの料理人さんの存在がほのかに期待させてくれましたね。
Posted by じゃじゃまま at 2009年05月19日 22:16
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Tracked: 2009-05-15 20:00
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