2009年06月29日

乱反射 貫井徳郎著。

≪★★★≫
それぞれが無関係に見える、小さなモラル違反。それが小さな男の子の命を奪った。
前半は、彼らの描写から始まり、遅々として進まない物語にちょっと辟易。これがどんな風に繋がっていくのか、はやる気持ちでページをめくった。
街路樹の脇にいつも犬の糞をさせる老人。道路拡幅工事のため街路樹を伐採する計画を阻止するために立ち上がる老婦人。
待ち時間が嫌で、夜間診療に風邪で通院する大学生。責任を問われるのが嫌で、内心、緊急の患者が来ないことを願う医師。
大きな車に買い換えたため、車庫入れがうまくいかず、途中で投げ出すOL。
市民の苦情で犬の糞の処理しなかった役所の職員。極度の潔癖症で、糞のために街路樹の点検をしなかった造園業の職人。

小さな、本当に小さなモラル違反が、無責任が連鎖して、男の子が死んだ。
男の子の父親は、この悲しみ、怒りをどこにぶつけるべきなのか。

誰一人として謝らない。誰か一人でも、悪かった、申し訳ない、と思ってくれたのなら、と何度も何度も悔しい思いをした。
でも、父親は気付く。彼らを責めることは出来ない。小さなモラル違反、これくらいならいいか、一回だけなら、そんな些細なモラル違反は誰しもが経験している。それが、どんな風に連鎖して悲劇を生もうとは考えもせずに。

なんて気分の悪い物語を書くんだ、と「愚行録」で証明済みの貫井氏だけど、これは自分にも当てはまることで、小さなモラル違反でも、守れることは守らなくては、と思う。

突き詰めると、やっぱり、あの犬の散歩をさせてた老人が一番の発端だよね。
車庫入れの女性が、免許証を捨てたことが少しだけ救われた。




posted by じゃじゃまま at 10:28| ☁| Comment(4) | TrackBack(2) | 貫井徳郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
悪意がなくても、人は人を傷つけることがある、ということの証明のような物語でしたね。
「そんなばかな」「自分くらい、これくらい」
という安易な気持ちが、負の連鎖を起こすとこんな悲劇を生むことにもなるのだと、背筋が寒くなりました。
Posted by ふらっと at 2009年06月29日 17:05
ふらっとさんへ
ちょっとした行動がこの後どうなるかなんて、考えないですよね〜。すごく深い物語でしたよね。ちょっと最初が長すぎましたけど。でもやっぱり元はあのおじいさんですよね。(爆)
Posted by じゃじゃまま at 2009年07月01日 17:48
こんばんは。
一人ひとりがやったことはちょっとなんだけど
こんな風に連鎖していくとは…って感じでした。
老人も腹立たしいけど、市役所のフンを始末しなかった彼の態度が「いかにもお役所」って感じでむかむかしました。
植木職人の後悔する気持ちが辛かったです。
Posted by なな at 2009年08月01日 18:20
ななさんへ
ちょっとしたことでも、こんな風に連鎖していくと、その先にどんな悲劇が待ってるか分かりませんよね。貫井さんのテーマの奥深さにやられました。
Posted by じゃじゃまま at 2009年08月06日 21:31
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