2010年04月16日

鉄の骨 池井戸潤著。

≪★★★★≫

談合は必要悪なのか。
平太は建設現場のコンクリートの打設作業が好きだ。コンクリートを建物の型枠に流し込む、自分が携わる建物が形をなしていくのが、とても好きだ。
そんな平太が、現場から業務課へ異動になった。
業務課は土木の、大口の公共事業が中心だ。
現場しか知らない平太は、その業務課で、次期社長候補とも言われる切れ者の尾形や、課長兼松、課員西田らと共に、ゼネコンの悪しき慣習である談合に悩み、地下鉄工事受注のために奔走する。

「空飛ぶタイヤ」に比べてしまうと、ちょっと業界一色気味なところはあるけど、銀行員の恋人萌との関係が破綻しかけたり、実家の母の病気、業界のフィクサーである三橋との出会いや縁、など散りばめられていて飽きは来ない。
「空飛ぶ〜」は、母子の愛、父子の絆、運送会社の社長に、自動車会社、銀行の善玉悪玉、などなど本当に盛りだくさんで、元銀行員の恐らく頭脳明晰であろう池井戸氏が、小説家として本当にうまくなったな〜〜〜〜と実感させられる作品だった。

「鉄の骨」はそれに比べると肩は並べられないけど、それでもほんのちょっと届かなかったくらいで、十分読み応えはあった。

平太の最初の仕事で、区役所の落札での初めての談合、調整、敗北の辺りでは、思わず、談合は必要悪でいいじゃんって思いそうになったけど、尾形の本当の狙いである地下鉄受注で、一松組が従来のコストダウンでは限界を感じ、工法を変更しての大幅なコストダウンで勝負に出る。そうだよ!これが本当の企業努力なんだよ、って思い当たった。

確かにゼネコン業界の内幕、無理なコストダウンでは会社の経営というのは難しいのかもしれない。一つの倒産が、何千何万という生活を破綻させるから。
それでもこの物語では、尾形の社益のための辣腕、正面からの勝負、裏工作と十分に見せ場があり、悪玉は負ける、という展開で、達成感がある。
平太たち善玉=正義ともちょっと言い切れないところはあったけど。

銀行員の恋人萌の正義感ぶった綺麗事や、園田との三角関係にはイライラさせられたけど、正直、園田感じ悪いし、いらない。
てっきり、園田はなにかの不正に関わってるのかと思ってしまったけど、ただの浮気相手!?
学生時代から社会人へ、恋人同士がぎくしゃくしちゃうところなんかは、同じ女性として、分からないでもない。
同級生が頼りなく見えて、先輩が大人に見えちゃうんだよね〜〜。
実際は、同級生だってあと数年経てば、先輩とは変わらないんだけどね。

業界のフィクサーである三橋との出会いと縁も、よかったね。

池井戸氏、次はどんな業界を見せてくれるのだろうか。すごく楽しみだ。


posted by じゃじゃまま at 11:15| ☁| Comment(6) | TrackBack(2) | 池井戸潤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。

現場がダイスキな平太が業務課で会社の黒い部分を見せられ
戸惑いながらもそこで頑張る姿、応援したくなりました。

恋人の心変わり、私も「あぁ、こういうのってあるよなぁ」って思いながらも、気持は平太に近くなっていたので「なんで?なんでなのよ?」と腹立たしかったです。
Posted by なな at 2010年04月16日 21:11
建築業界のことが詳しく書かれていたので、談合についても、こういうことなのかと新しく知ったこともありました。
平田の一生懸命さが好印象でしたね。
Posted by at 2010年04月17日 19:03
“へいた”と漢字変換したら、“平田”になってしまいました。“平太”のことです。
Posted by 花 at 2010年04月17日 19:06
ななさんへ
心変わり、ありますよね〜〜。(爆)
ほんと、会社の先輩って、単に少し先に会社員になってるだけのことなのに、素敵に見えちゃうんですよね。(更爆)
古傷が疼きます。(T_T)(苦笑)

花さんへ
地下鉄工事の受注のために、一丸となって勝負に出るところは、さすが池井戸さんだな〜って、ちょっと熱くなりました。
でも談合・・・なくならないですよね。
Posted by じゃじゃまま at 2010年04月21日 22:13
園田、見事に感じ悪かったですねー。
どうして萠には判らないんだろう、と苛々しました。
池井戸さん三菱銀行ご出身なのですね。
なるほど〜。
Posted by ふらっと at 2011年09月01日 06:53
ふらっとさんへ
池井戸さんの経歴を見ると、納得ですし、本当に頭のよい方なんだな〜って思います。
金融のこととか、素人にも分かりやすいし。(それでも分かったつもりでいるだけですが)

園田、月日が経っても嫌悪だけは忘れません。(爆)
Posted by じゃじゃまま at 2011年09月07日 23:18
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