2010年08月28日

真昼なのに昏い部屋 江國香織著。

≪★★★≫

アメリカ人のジョーンズさんと、人妻である美弥子さんの、江國氏らしい「不倫」物語。
汚くなくて、爽やかというのでもないけど、清々しいような、絵本でもめくっているような恋愛物語なのである。
まずジョーンズさんも美弥子さんも、日本語というものが美しい。
丁寧な、きちんと選ばれた言葉で会話しているのが、美しい二人を想像させる。それは外見っていうのではなくて、佇まいというのか。
でも決して潔癖な人たちではないんだけどね。

ジョーンズさんは大学で教鞭を取っている。美弥子さんには、ひろちゃんという夫がいて、美弥子さんはひろちゃんを愛している。いつも家の中をきれいにして、料理もこじゃれてて、主婦である私が面倒くさいと思っている雑事を、美弥子さんが行うと、軽やかで楽しげで、なんだか私もやってみようという気になってしまうから江國氏の小説って好き。

私のように、時間に追われて何事も大雑把になってしまうなんてことが、およそ想像できない。

で、そんな美弥子さんのことを小鳥のような人だ、と思い、ジョーンズさんは愛しく思う。
美弥子さんは、ひろちゃんという鳥かごの中にいるかのよう。
そして、美弥子さんはそんな自分に満足していた。
なのにいきなりジョーンズさんを大事に思い始めてしまうのだ。

江國氏の小説に出てくる夫というものが、私は常々嫌いだ。
妻に無関心そうであったり、自分が一番であったり、そんな夫のことを好きでいる妻にも、いつも共感できない。
絶対に江國氏の価値観とは相容れないんだけど、でも主人公たちが醸し出す雰囲気が好き。

ジョーンズさんによって、美弥子さんは一歩外に踏み出てしまう。
一度出てしまった美弥子さんが、ひろちゃんの真実に気付き、そのまま選んだ道が、美弥子さんにとって幸せなのかは分からない。でも、美弥子さんは、恐らく、強い。ああいうタイプが一番強い気がする。

ジョーンズさんと美弥子さんが、ジョーンズさんのアパートで過ごす時間が、タイトルのままで、さすが江國さんだな、と尊敬してしまう。


一見、言葉がシンプルで児童書のようなんだけど、やっぱりこれは大人の話なのだ。
ジョーンズさんはもう美弥子さんのことを小鳥のようだとは思わない。
なんとも切ない物語なんだから。




posted by じゃじゃまま at 22:44| 神奈川 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ジョーンズさんと美弥子さんの会話、その距離感が素敵でしたね。

かわっていく美弥子さんに怒り、戸惑い、最後にはすがっていた(と思うんだけど…)浩、情けなかったですね。ちょっとすっとしました。

籠の外に出てしまった美弥子に興味をなくしたジョーンズさん。彼もやっぱり「男」なんですよね。
Posted by なな at 2010年08月29日 09:59
ななさんへ
そうそう、浩みたいなタイプって妻が思い通りにならないとすねたり、そんな自分勝手な奴が、最後見捨てられるとスカッとしますよね。
でも江國さんの書く男性像は、浩やジョーンズさんのように身勝手な人、女性もなんとなく醒めてる人多いかも。
Posted by じゃじゃまま at 2010年09月03日 11:10
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