2010年09月03日

遥かなる水の音 村山由佳著。

≪★★★☆≫

<お願いがあるんだ。僕が死んだら、その灰をサハラにまいてくれないかな>
周(アマネ)の願いを叶えるため、姉の緋沙子、ジャン=クロード、中学時代からの親友、結衣と浩介はパリからモロッコへと旅立つ。
物語は、周の死後、周、緋沙子、ジャン=クロード、浩介、結衣、そしてガイドサイードの視線で、周が好きだったモロッコの景色や音や匂いと共に、それぞれの心の内が語られていく。そして明らかになるもの、変わっていくもの・・・。

緋沙子はパリで恋人と暮らすが、フランスでは婚姻制度にとらわれない人も多く、緋沙子の恋人もそうであった。紙切れ一枚で義務のような生活をしたくない恋人と、それでも愛を形で願う緋沙子。愛してるのに寂しさが伴う恋人とつかの間離れ、最愛の弟周のために、周の大切な人たちと、彼の遺灰をサハラにまくために、旅に出る。

ジャン=クロードは、同性愛者である。アマネとは互いが抱かれる側であり、肉体関係を持たないが、最愛の人である。アマネが病に倒れてからもずっと傍で付き添い、最期の時までアマネの理解者であり、母親のようであり、大きな大きな愛情で彼を包んだ。
皮肉屋で、旅の間中一言付け足すが、4人の中で一番大きな悲しみを堪えていたのはジャン=クロードだ。

結衣は、浩介と共に雑貨店を経営している。昔はここに周がいた。だが周は菓子職人になるためにパリへ行ってしまった。ただの共同経営者であった浩介と一夜を共にしてしまい、男としての浩介を受け入れたいが、そんな自分を認める勇気がないために、二人の関係はぎくしゃくしている。モロッコへ向かう途中、浩介の乗った飛行機が行方不明になる事故に遭遇し、ようやく結衣は自分の気持ちに正直になれる。

浩介、周の愛したただ一人の男。周は一途に、ひたすらに愛し続け、そして隠し続けた想い。
ところどころに映画【シェルタリング・スカイ】のシーンや作者のことに触れ、それがますます物語の雰囲気を作り上げてた。

そうそう!私はこの映画を観てたんだよ。そうそう!なんかすごく悲しい気持ちで見終わった後歩いてたの覚えてる。
まるで救いがなくて、なんなんだよ、これは!って戸惑ったの覚えてる。
いまいち理解できなかった当時ではあるけど、愛する人を送るため、遠い地までやって来た彼らの物語を読んで、もう一度【シェルタリング・スカイ】が観たくなった。

周の好きだったモロッコを辿り、サハラ砂漠へと向かうなんて、そこまでしてくれるなんて、どれだけ周はみんなから愛されていたのだろう。
タイトルの通り、遥かなる水の音を感じさせる物語だった。



posted by じゃじゃまま at 23:42| 神奈川 | Comment(2) | TrackBack(0) | 村山由佳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。じゃじゃままさん。
『シェルタリング・スカイ』とても気になります。
映像が頭にあって、この作品を読んだのなら、また、違った印象が残ったのでは。と思います。

少しでも関連した映像があると、何だか物語が身近に感じられますよね!
Posted by ゆう at 2010年09月05日 13:08
ゆうさんへ
モロッコ辺りの空気がよく伝わってきた作品でしたよね。映画も、砂漠とかそっちの印象しか残ってなくて、ストーリーは難解だったんですよね。
でも今なら映画、理解できるかも!?
村山さんも【シェルタリング・スカイ】意識してたんですかね?よく出てきてましたね。
Posted by じゃじゃまま at 2010年09月06日 11:56
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