2010年09月28日

光媒の花 道尾秀介著。

≪★★★☆≫

畏れながら隠し持つ過去の罪、それでも生きていかなければならない人間の悲しさ、強さ。
残酷な物語に慄きながらも、他の章でしっかり生きている姿を垣間見れて、なかなかの読後感のよい物語でした。

「隠れ鬼」 認知症の母を支えながら、父の遺した店で細々と生活している母と息子。父は30年前に自殺していたが、それぞれが秘密を抱えていた。息子は父の秘密に気付き、父は息子の秘密に気付いていた。そして、母は誰の秘密を見ていたか・・・。

「虫送り」 小学生の兄妹が虫取りをしていた河原で、ホームレスの男性が死んだ。その兄妹がホームレスの死に大きく関わっていたことを、対岸にいた誰かが見ていた。そしてその誰かも大きな秘密を抱えていた。

「冬の蝶」 昆虫博士になりたかった男性は、ホームレスに手をかけてしまった。そしてその男性は中学時代、好きだった少女を救えなかった過去を持つ。だからこそ、ホームレスに手をかけてしまったのか?

「春の蝶」 隣室の耳の聞こえない孫と老人の住む部屋に泥棒が入った。哀しい現実から逃げるように耳を閉ざす少女に、自分の辛かった少女時代を重ね、かつての同級生に蝶の話をしてくれた少年がいたことを思い出す。

「風媒花」 父を病で亡くした寂しさを、母のせいにしながら生きてきた青年。そんな弟と母の不仲に心を痛ませている姉。その姉が入院した。畏れていた死が再び寄って来る。
姉に甘えてきた青年。風が花粉を運ぶ花のように、姉が家族を繋いでくれる。

「遠い光」 退院し、教室に戻った教師。そのクラスに再婚により名字の変わる女子生徒がいた。女子生徒の抱える寂しさに、自分の非力さを悟る女教師だが、その寂しさやその姿が、女教師や認知症の母を抱えながらも生きる男性を救っていく。

あの河原の兄妹のお兄ちゃんの登場も、心が軽くなる一瞬だった。

サチは、養父をどうしたのだろう?
残酷に見えながらも、一筋の光が差し込んでいて、救いの物語だった。



posted by じゃじゃまま at 11:17| 神奈川 ☔| Comment(5) | TrackBack(2) | 道尾秀介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
何事も、一面的にだけしか見ないと見逃すことがたくさんあって、得てしてその見逃したところに大切なことが潜んでいたりするのではないか、なんて思わされる一冊でした。
Posted by ふらっと at 2010年09月28日 13:38
こんばんは。
もう、面白くて面白くて、素晴らしい作品だ!なんて思って読んでいたのですが、もう、忘れちゃってます・・
似たようなパターンが続いたからでしょうか(汗)

養父の件、気になります。
また図書館から借りて、読み直してみます。
Posted by ゆう at 2010年09月28日 19:43
こんばんは。
読後感がすごく良かったですよね。
タイトルもピッタリだなって思いました。
Posted by なな at 2010年09月28日 22:29
一つひとつ物語は独立しているようで、実はつながっている。出来事は一つのことにとどまらず、多くの人たちと関係しているのだと、感じました。
そして、つらい出来事があっても人は生きていかなければならないが、生きていくなかで、小さな希望を見た思いでした。
Posted by at 2010年09月29日 22:34
ふらっとさんへ
自分が主役の人生でも、他の物語では自分が脇役だったり、たくさんの交差があって、道尾さんの作品の中でも分かりやすくて、良かった一冊です。

ゆうさんへ
あれよあれよと読み進めてしまいました。読みながら、今までの登場人物がどこかで救われていないかと期待しながら・・・。そう、養父をもしもサチがどうにかしてたのなら、随分と次の物語では、普通に生きてるな、と。

ななさんへ
暗い話のようなのに、一筋の明るい日差しが差し込むような期待感があって、救われる物語でした。

花さんへ
そうなんですよね〜。多くの出来事が交差しあって、主人公がそうと気付かなくても、それが前の主人公で、それぞれのその後が垣間見れて、すごく良かったです。
Posted by じゃじゃまま at 2010年09月30日 14:56
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