2011年04月03日

月と蟹 道尾秀介著。

≪★★≫

「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも。」やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。やがてねじれた祈りは、大人たちに、少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げるーやさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長編小説。(「BOOK」データベースより)

直木賞ってこういうの好きな気がする。
よく分からないけど、なんとなく。いつもの道尾氏とは違った、伏線もなし、殺人事件もなし、それぞれに、闇を抱えた少年たちの、それでも毎日生きていくって物語。
ダークで重い。
父を亡くし、母と祖父と暮らす慎一。祖父の老いを感じ、母の背中に女を感じ、クラスからは弾かれ友人は春也だけ。心の中に憎悪を育て、それを祖父は感じ取り危惧する。
父の仕事がうまくいかず、そのたびに虐待を受けている春也。慎一と二人でヤドカリを火であぶりだす行為にのみ慎一との友情を感じていられる。春也の、一人にしないでくれ、という叫びが聞こえてくるようで、春也の心の中にも嫉妬が育つ。
鳴海の母は、慎一の祖父との事故により亡くなる。その慎一と同じクラスになり、穏やかではいられない。母を失い、父までもが慎一の母と付き合っているのではないか、と大人になりきれない少女は心を痛める。

そんな三人が放課後、山でヤドカリを神様に見立て儀式を行うけど、なんだか嫌な気持ちにさせられる。
自分だって子供の頃、他愛もなく生きもので遊んだこともある。だけど、そこに込められた願いが子供ながらに、子供以上の憎悪があるように思えて、鬱々としてしまう。
でもそれは大人になったから思うことであって、そこに必死で願いを込める、込められる、それはやはり彼らがまだ子供だからだろうか。

慎一に嫌がらせの手紙を出していた春也。春也の孤独がいじらしい。慎一の願いを叶えるためにナイフを振り上げる春也だけど、三人の中で一番子供らしかったんじゃないだろうか。
車の中で見た、ハサミを振り上げる影、慎一の見間違いだとしても、怖い。
鏡の中で慎一が見た、もう一人の自分も、怖かった。そんな慎一の心に気付いた祖父は、さすがだな、って思う反面、そんな昭三が悲しい。

終章で、慎一と母が福島へ行くことになったとき、そこだけに救いを感じることができた。
傷ついた心を寄せ合っているようで、実はえぐりあってる彼らは、きっと離れて暮らす方が幸せになれるんだと思う。

あ、結構読み終わってじっくり考えてみると、ひねりも伏線もないけど、なかなかの手ごたえ作品なのかもしれない。あまり好みのタイプではないけど。
実際読むのに時間かかったし。


posted by じゃじゃまま at 16:36| 神奈川 ☁| Comment(5) | TrackBack(4) | 道尾秀介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
みんなが屈託を抱えてそれぞれに傷ついていて。
たしかにさくさく読める一冊ではありませんでしたね。
Posted by ふらっと at 2011年04月03日 19:05
ふらっとさんへ
私の思ってたミステリの方向の話ではなかったので、あれ、あれ??って思ったまま終わってしまって。
だから読後にあれこれと気付いて・・・。(苦笑)
Posted by じゃじゃまま at 2011年04月04日 21:48
こんばんは。
じゃじゃままさん。

ヤドカリを焼くシーンばかりが、頭を離れません。
しかし、グロなんだけど一線を越えてないあたり、賞を狙ってのことなんでしょうか。

直木賞らしい直木賞でしたよね。
Posted by ゆう at 2011年04月06日 20:23
じゃじゃままさん、こんばんは。
お返事遅くなってごめんなさい。
新学期は色々と忙しくてPCに向う時間がなかなかなくて…

昭三さんの思いが切なかったですね。
Posted by なな at 2011年04月15日 23:19
ゆうさんへ
遅くなってごめんなさい!!
そうそう、直木賞らしいな、って思いました。
私、直木賞の基準合わないかも!?(爆)

でもこの作品は後から来ますね〜〜〜。

ななさんへ
私も同じくです。というより、本がなかなか進まず・・・。

三人の子供たちが抱えてる思い、重かったですね。
Posted by じゃじゃまま at 2011年04月22日 22:41
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