2011年05月20日

抱擁、あるいはライスに塩を 江國香織著。

≪★★☆≫

ロシア人の祖母、厳格な祖父、離婚歴のある叔母、自由な叔父、そして両親と共に暮らす4人の子供たちの三世代に渡る家族の物語。
大きな洋館に住む柳島家では、子供は大学に行くまで学校には行かせない教育方針であった。
ところが、一番下の末っ子卯月の母が、学校へ行かせたいと思ったばかりに、陸子、光一までが小学校へ行くことになり、それは彼らにとって耐え難い苦痛の時間になってしまった。

苦労の人生を歩んできた祖母。祖国のロシアのことわざで、ライスに塩を、それは自由という証の言葉。

母の菊乃は、厳格な父に逆らい家出をし、妻子ある男の子供を身篭って戻ってきた。
その菊乃と望を受け入れたのは、婚約者であった豊彦であった。
叔母の百合は、見合いで縁談を受けたが、馴染めず、精神を病んで戻ってきた。
叔父の桐之輔は、子供たちから見れば自由な叔父だが社会には適応できてるのかはちょっと不明。

江國氏の価値観が出てるな〜って作品だった。
自己犠牲の協調性よりも、自分が美しいと信じるものを頑固なまでに貫く生き方。

世間からは風変わりと思われている、そんな家風に育ち、父の違う長女望、光一、陸子、母の違う卯月は、それぞれが大人になる過程で、どのような選択をしていったのか。

ああ、江國ワールドだな〜と思いつつ、誰一人として共感する人物はいなかった。
好きな人物が一人もいなかったと言った方がしっくりくるかな。

妻子がいながらも菊乃と関係を持つ望の実父、そんな関係を友情と位置付ける菊乃の淡白さ、
あっさり愛人のできた豊彦、愛人らしからぬ愛人、光一の選んだ女性、家を出て実母と暮らすことを選んだ卯月、そして極めつけは、菊乃の元を去り愛人と暮らすことを選んだ豊彦と、そのことに傷つかないことが後ろめたい菊乃。

どれもちっとも共感できないし、好きになれない人たち。
ただ江國ワールドの上品の中の傲慢、薄情さ、淡白さは作品としては嫌いではないけれど、一人一人は絶対に友だちになれない人種。

祖母を愛し続けた竹治郎だが、祖母の心にあった人は・・・。
江國氏らしい裏切り。




posted by じゃじゃまま at 23:54| 神奈川 | Comment(2) | TrackBack(1) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
共感できる人はたしかにいなかったです。
でもこれだけ協調性なく、自分の信念を貫く人たちを見て、自分が出来ないからこそ「すごいなぁ」って思いました。
Posted by なな at 2011年05月24日 08:32
ななさんへ
ああ、分かります。
江國さんの描く人たちや世間って、自分とは相容れないものなんだけど、でもある意味、そういう生き方もあるんだ、できるんだ、って憧れでもあって。
かといって、今の私がそれをしたいかっていうとそうでもないんですけどね。(笑)
Posted by じゃじゃまま at 2011年05月27日 22:32
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「抱擁、あるいはライスには塩を」江國香織
Excerpt: JUGEMテーマ:読書 三世代、百年にわたる「風変わりな家族」の秘密とは―。東京・神谷町にある、大正期に建築された洋館に暮らす柳島家。ロシア人である祖母の存在、子供を学校にやらない教育方針、叔父..
Weblog: ナナメモ
Tracked: 2011-05-24 08:32
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