どうしてこうハードボイルド作家って、狂気の世界を書くか、非常にロマンチストかに分かれるんだろう。
垣根氏は、前者だ。頭のいい人って、こういう狂った感覚に興味があるのか、勉強ができるとそのはけ口がクレイジーな世界に向くのだろうか、と勘繰りたくなる。
恭一は上司を殴って会社を辞めた後、地方の旅行会社に勤務している。でもいったんスイッチが入ると、外国人犯罪者が相手だろうがヤクザ相手だろうが執念深く、決して引かない。でもそれって、すごい危険だし、普通の感覚じゃないよね。
そして、恭一がなんとなく惹かれちゃう女、圭子。売春していてヤクザに引っ掛かり、殴られながらも決して逃げられない女。
この二人が、圭子の情夫市原を殺しちゃって、恭一は圭子のことを頭の悪い女だと思いながらも、結構自分だって似たようなもんじゃないかと私は思う。
頭に血が上って市原を殺しちゃったり、ヤクザの事務所に盗みに入ったり、なんていうか、やってることは圭子同様頭良くないって。
ただ恭一はそれがいつもうまくいくから、なんとなく格好いいんだけどね。
今私の手元には垣根氏の新作「ゆりかごで眠れ」があるんだけど、これはお下品なクレイジーさか、硬派なクレイジーさか、どっちなんだろう。
圭子がどうも好きになれなくてイライラしっぱなしでした。