2011年11月22日

かばん屋の相続 池井戸潤著。

≪★★★★≫

6編の短編小説。ああ、こんな感じの小説、池井戸氏の初期によく読んだよね。
銀行から融資を受けられるか、受けられないか。中小企業の苦境と、助けてやりたいのと、組織のしがらみでどうしようもない銀行員の葛藤。

「十年目のクリスマス」 十年前、融資を出来ずに倒産に追い込みそうになった会社を襲った火災事故。その後と、あの時なにが起こったかを偶然知ることになった銀行員の話。
空白の十年間は空白のままで、あるのは、あの時と今。そこにドラマの余韻を読むことができる。

「セールストーク」 融資を断られた小島印刷。会社を応援したい江藤と北村と小島印刷を目の敵にする支店長。駄目かと思ったその時、小島印刷に五千万の入金が。
その出所と行方を追っての、勧善懲悪の池井戸氏らしい、お家芸ともいえる短編。
読んでてワクワクさせられる一編。

「手形の行方」 堀田が集金してきた手形を紛失した。腰掛程度の勤務態度で評価の低い男だが、顧客からも評判が悪かった。そんな堀田の自業自得の物語。

「芥のごとく」 期日にお金を銀行に払う、それができるかできないかで経営者としての手腕、会社の行方が決まる。それこそ必死で守り抜いてきたはずだが、手形の発行日ミスにより、今まで張り詰めていた糸が切れてしまった豪傑女社長。頑張りすぎていると、プツンって切れたときに、なにかも失うことってある。

「妻の元カレ」 池井戸氏らしくないちょっとしんみりした話。勝ち組だと思っていた男が、負け組にいたはずの妻の元カレに逆転されちゃう。密会をしているらしい妻になにも言えない、なにも聞けないヒロトは、夫としても男としても魅力ないと思ってしまうよ、私でも。

「かばん屋の相続」 社長が急逝したことにより、かばん屋が銀行員である長男に継がれることになった。その遺言状に疑問を持つ次男や取引先の銀行だが、次男は生前「跡は継ぐな」と言われていたこともあり、会社は長男に譲る。
この相続にはとんだ落とし穴があり、だがその穴は仕組まれたものではなく、欲に走った長男のこれもまた自業自得の話。

こういう一発逆転の勧善懲悪の物語は、池井戸氏らしく、大好き。





posted by じゃじゃまま at 22:44| 神奈川 ☀| Comment(3) | TrackBack(1) | 池井戸潤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
受賞後ミーハー的に池井戸作品を読み始めたわたしだけれど、すっかり取り込まれてしまいました。
それぞれ少しずつテイストの違う六篇だけれど、底に流れるものは同じですね。
Posted by ふらっと at 2011年11月23日 06:36
ふらっとさんへ
でもきっかけあってお気に入りの作家さんが増えるのって嬉しいですよね。
池井戸さんは初期の頃から、スマートな頭のよさを感じさせる作家さんです。

Posted by じゃじゃまま at 2011年11月24日 16:35
妻の元カレ とんでもない話。
最低の女だね。地獄に落ちて欲しい。あんな女 生きる資格ないな。
Posted by 最悪 at 2016年08月14日 01:44
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/236528829
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

かばん屋の相続*池井戸潤
Excerpt: かばん屋の相続 (文春文庫)(2011/04/08)池井戸 潤商品詳細を見る 池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先「松田かばん」の社長が急逝した。残された二人の兄弟。会社を手伝っていた次男に生前..
Weblog: +++ こんな一冊 +++
Tracked: 2011-11-23 06:40
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。