2012年05月31日

銀色の絆 雫井脩介著。

《★★★★》


両親の離婚により母と共に名古屋に移り住み、そこでフィギアスケートの名門コーチや仲間と出会い、高校生活をスケートに賭けた母娘の物語。
大学生活をスタートさせた小織が、友人に選手生活だった頃の話を語る回想形式で話は展開していく。

横浜では夫の庇護の下、なんとなくスケートに通わせ、ママ同士の付き合いや小織の演技に磨きをかけることにさほど熱心ではなかった梨津子が、夫の不貞の場に居合わせ、安定した生活を手放すことになった。
実家のある名古屋に戻り、そこで意図したわけではないが、運命の出会いともいうべきか、名コーチ美濤先生の門下生となり、母親の姿勢、小織の眠っていた才能、根性、そして表彰台も夢ではないと、二人三脚で進んでいく。

そこには強豪のライバルたちがひしめいていた。
その中で彼女たちは戸惑いながらも、母として、スケーターとして、よき師、よき友を得、成長していく。

読んでいる間中、ちらほらと選手たちが浮かんでしまった。あの子かな、この子かな。
もちろん、特定の誰ってこともないんだろうけど、そこかしこにいろんな選手たちの物語がちりばめられているのかなと。

雫井氏はスポーツの話のイメージがあるんだよね。デビュー作は柔道だったったけ?
きっと入念な取材の成果なのか、一見敷居が高そうなスケートを題材に、非常に入りやすかった。雫井氏自身もとっても乗っていたんだろうなって勝手に解釈してしまった。

途中、誰かが小織を陥れるのか、誰かが脅迫されるのか、とミステリ要素を想像していたけど、ミステリのミの字も出ない、母娘の絆の物語。
美濤先生が、まるで他人事で身の入らない母、梨津子に諭す。
「スポーツというのは人に見られて成り立つスポーツ。技が成功したときに子供はコーチが見ていたか振り返るが、コーチは一人一人を見ていられない。そんなときにいつでも我が子を見ていられるのが母親という存在」との話は、スケートに限らず、母親の役割というか、子供との関わりを言ったもので、すごく心に響いた。

小織の選手生命に自分のすべてを懸けた梨津子。スケートというのは、リンクで闘うのは本人だけど、次いでどうしてもコーチに目が行きがち。
でも、母親だって負けてない。
結局、小織は高校でスケートを引退してしまうけど、美濤先生はちゃんと見ていた。梨津子の献身ぶりを。
だからこそ小織にラストで言うセリフには泣けてしまった。

あなたの道しるべにしなさい、と。

後悔の残るスケート人生だったけど、その一つの後悔があるからこそ、これからがんばれるんだ。







posted by じゃじゃまま at 17:57| 神奈川 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | その他 さ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スポーツやドタバタは本能だね。

しかし、スポーツって意外にお金かかると思ってますけど、
そこに切り込んだんですね〜。
なんか、興味出てきました。こんど図書館行ってこよう。

最近読んだ「途中の一歩 上・下」は結構量が多いですが、
さらりと読み切れました。
結構面白かったですし、これはオススメです。
雫井さんはクローズドノートが代表的かと思いますが、
ネットで他の本も探していたら、雫井さんを解析?
している要なサイトがあって、ちょっと驚いた〜。
http://www.birthday-energy.co.jp/

「発想も大胆で、素材を見つけて加工するのが得意」
だったり
最近は「恋愛や家族物にまで作風を拡げた。」
とか。
まぁ、雫井さんにはテンポの良いのを期待していたりします。
Posted by 蒼太 at 2012年09月22日 19:31
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。