2012年07月16日

東雲の途 あさのあつこ著。

《★★★★》


心に深い闇を抱える小間物問屋、遠野屋清之介。その闇を嗅ぎ取り、執拗に遠野屋にこだわる同心、木暮信次郎。どこか人間として欠けていると、つかみどころのない信次郎に呆れながらも、離れることができない岡っ引き伊佐治。
清之介と信次郎は対極にいながらも、どこか根っこの部分は似ている。
伊佐治は執拗に遠野屋に絡む信次郎を、憎まれ口をききながら諌めることもできる。
暗殺者としての過去を捨て、商人として生きると決めた遠野屋、その陰にしつこくつつきまわる信次郎にはハラハラ、イライラしながら、でもこのシリーズはもしかして終わりなのかな。

今までずっと遠野屋にこだわり続けてきた信次郎。水死体が上がり、商人に化けた侍がなぶり殺しにされていた。その事件が、またもや二人を引き寄せる。
その水死体からある物を取り出した信次郎は、これはなにか密書の類で、きっと裏があると見破る。
時を同じくして、遠野屋の元へ、兄者の側近がやって来る。なんの因果か、その水死体を遠野屋に引き取って欲しいと頼みにやって来た。
この伊豆という武士と、木暮、伊佐治は遠野屋の屋敷で対面してしまう。

やはり遠野屋は死を引き寄せる、と信次郎はクツクツ嗤う。

ここまでは今までと同じパターンで、せっかく静かに生きようとしている清之介の邪魔するんじゃないよ!と思ってたんだけど、本当に過去と向き合い決別するために、遠野屋は自分の過去を木暮信次郎や伊佐治にさらけ出し、不毛な天下取りを止めさせ、商いで平和を築こうと生国へ向かう。

その展開に、なんと、信次郎は旅立つ遠野屋と同行する伊佐治を品川で引き留め、遠野屋に、必ず生きて帰って来いと、こんなストレートにではないけど伝える。
伊佐治にも、用心に用心を重ねろ、と今までの信次郎のイメージを覆すかのように実は人間だったじゃん、と安心した。
なによりも、意地悪にしか見えてなかった信次郎が、今回の事件を通して、初めて遠野屋の味方になった気がして、嬉しくなった。
今までも信次郎は別に遠野屋を嫌っていたわけではないんだろうけど、二人が、そして伊佐治を含めて三人がぐっと近づいて、遠野屋は生国が経済で立ち直ることにも成功させた。

もしかして弥勒シリーズ、私には遠野屋シリーズだけど。終わりなのかな〜。
今まで執拗に遠野屋に絡んできた信次郎だけど、遠野屋が自分の過去を語り、認め、その上でまっとうに商人として生き切ると宣言して、隠してきた今までと違い、もう信次郎がこだわって意地悪しなくてもよくなったし。仲良くなった三人をもう少し見たいな。

posted by じゃじゃまま at 22:02| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | あさのあつこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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