2013年05月06日

犬とハモニカ 江國香織著。

《★★★》


江國ワールド、なんというか生活感のない空間で生きている人々の瑞々しい、透明感のある、物語。

読んでいると不思議に、そんな生活をしてみたいって思ってしまうんだよね。たとえば、結婚して五年、おそらく子供のいない夫婦の、公園にピクニックに行く話。
「ピクニック」 近所の公園にお弁当を持って出かける夫婦。とてもしゃれた感じがする。容器やシートがその辺のものではなく外国製のおしゃれなもので、中身も、読んでいると簡単そうで真似したくなるけど、いざとなったら面倒くさそうななんとかのトマト煮とか、その夫婦の見えない距離。
そんな夫婦って実際は疲れそうだけど、江國ワールドでは、いとも簡単に書かれていて、なぜか羨ましく感じてしまう。
妻の、他人を(夫でさえ)気にしない、凛とした冷たさに、羨ましさを感じてしまう。

「犬とハモニカ」 まるでタイトルと関係ない物語なんだけど、離婚を決意している妻と娘が海外旅行に行き、迎えに来る夫。空港にはいろいろな人間が到着していて、犬を連れていたり、非常識な家族であったり、彼らの生活の奥には踏み入れないけど、すれ違う人、それぞれにそれぞれの人生、物語がある。
かといって、それ以上は進まない、それが江國ワールドだったりもする。

「寝室」 ずっと恋人であった女から別れを告げられた男。結局は妻の元へ戻るわけだけど、おそらく不倫していたらお互いに疲れる関係であったはずなのに、これもまたいとも簡単に、そして簡潔に、江國風にいえば清々しささえ漂ってくる二人の関係。
ま、振られた男はまだ女を愛してたようだけど、結構簡単に妻の元へ心が戻る。
江國ワールドでは、未練さえも淡泊で、だからあんまり心乱されないんだな。

「おそ夏のゆうぐれ」 主人公である志那とその恋人の至とは、いったいどんな関係なんだろう。一緒に旅行もするし、付き合った半年っていうから恋人なんだろうけど、相手が妻帯者なのか、そういう細かいところは一切無駄で、至をものすごく愛しているはずなのに、それでも志那は孤独で、江國ワールドでは、そういう女性がよく登場する。
どんなに相手を好きでいても、崩せない自分があるような。

「夕顔」 やはり光源氏だったか。光源氏は現代語訳で読むと面白いんだよね。

「アレンテージョ」 バカンスに来たゲイのカップル。誰にでも平等に笑顔や愛想を分け与えるマヌエルと、そんなマヌエルに嫉妬し、束縛したいルイシュ。だけど、実際はマヌエルに束縛されてるのかもしれない。この二人が、もしかしてバカンスから戻ったら、ルイシュから別れを切りだしたりして。
それとも誰にでも優しいマヌエルに嫉妬しつつも関係を続けていくかも、両極端な二人の関係が見えてきそうだけど、まったくドロドロしてなくて、フランスやハリウッドではなく、オランダとかスウェーデン映画のようだった。


posted by じゃじゃまま at 17:27| 神奈川 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
江國ワールド、不思議ですよね。
ドロドロな関係が描かれていたとしても
なぜかさらっとした肌触りのような。
描かれている内容は深いところのものなのに
表面をさらっとなでられているような読後感です。
Posted by ふらっと at 2013年05月06日 18:35
ふらっとさんへ
そうなんですよね〜。結構ドロドロしてるかもしれないのに爽快ささえ感じますよね。
難しいこと感じずに生きていけたら楽かも??
Posted by じゃじゃまま at 2013年05月09日 15:58
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