2013年05月18日

七つの会議 池井戸潤著。

《★★★★》


ネジの強度不足。偽装。そこから始まった。

今回はいつもの池井戸作品と違った気がする。いつもは善者がいて、会社を守るためにとことん不正を暴き、企業の悪に迫っていくような話が多かったけど、今回は誰が善なのか見極めるのが難しかった。どれもこれも癖があって善者がいないのかと思ったよ。
いやな奴に見えても、彼らにも企業で働き、利益を上げるために割り切らなければならない事情がある、そんなサラリーマンの現実を描いた物語。

唯一、居眠りばかりしている八角さんと、ねじ六の二代目社長がいい人だったよ。あとは副社長か。

「居眠り八角」 いつも会議の時に居眠りばかりしている万年係長。同期の北川が営業部長でノルマをぎりぎりと締め上げている中でもやる気いまいちの八角。そんな八角を叱るどころかやりづらそうにしているのが不思議でたまらないお隣の課の原島。そんな時、八角が上司の坂戸をパワハラで訴えた。
結果は、坂戸は人事部付になり、代わりに営業一課の課長に任命されたのが原島だった。誰がどう見てもおかしな人事で、原島は八角を問い詰める。真相を知った原島はどうしたのか。

「ねじ六奮戦記」 ネジは利益が小さい。父親から継いだねじ六の会社が危機に立たされた。利益が小さい上に、主要取引先の東京建電の坂戸にさらにコストダウンを迫られた上、今まで納めていたネジまで見直され、とうとうこれまで、となった時。
東京建電の担当が原島に替わり、なぜか一度はコンペで敗れたネジの注文が入ってきた。一体なにがあったのか。原島が落としていったネジをふと試験機にかけると、ネジが折れた。そのネジを見つめる二代目社長。

「コトブキ退社」 営業四課の浜本優衣は、未来のない恋愛に見切きをつけ会社を辞める決意をした。辞める前になにか一つ自分にできることをしたい、空腹でも我慢して仕事を続ける社員のために、手軽に軽食を取れるようにしたい、無人のドーナツ販売を提案した。保守的な会社との戦いだった。優衣は、自分の可能性と夢と出会いを手にした。

「経理屋稼業」 経理部の新田は結婚生活に不満を持ち、優衣に甘え続けていたがとうとう去られる。それでも自分の卑怯さに気づけない新田。営業の原島と経費のことでひと悶着あったことを根に持ち、営業一課でコストアップしていることに気づいた新田は仕返しを思いつく。
それは前任者の坂戸から引き継いだ原島が、取引先をねじ六に替えた真相を調査をすること。執拗に調べる新田だか、それは踏んではならない地雷だった。
新田の卑怯な人生は、そこで終わった。妻との離婚、大阪への転勤。小気味よかった。
それにしても、まだネジの一件は読者には明かされない。

「社内政治家」 北川に取り入り営業で花を咲かせるはずだった佐野は、常に状況を見極め、強い方に、自分を評価してくれる方を向く風見鶏だった。
北川に不満を持つと、北川と敵対している製造部の稲葉にすり寄り、情報を流す。そればばれ、今ではカスタマー室長というクレーム処理に追いやられた佐野。折りたたみ椅子へのクレームが多いことに気付いた佐野は、自分を裏切った北川と稲葉に一矢報いるために、いや、彼らを失脚させる意気込みで、このクレームを利用する。
調べた結果、椅子に使用されるネジの強度が不足していることに気づいてしまった。そして、佐野は告発する。ここでもまた一人、真相を知り、がんじがらめになる男がいた。

「偽ライオン」 かつての部下、佐野に追い詰められた北川。そんな北川も最初から冷徹なわけではなかった。苦労して育ててくれた母親のために少しでも負担を軽くさせてあげたいと、大学時代は遊ばずバイトをした。そんな北川だからこそ、仕事には厳しい。かつての北川もノルマに苦しめられてきた。佐野が告発したネジの強度偽装は、北川も、製造部長の稲葉も、そして東京建電の社長も知っていたことだった。もしも世間に公表したら、坂戸が強度偽装をしたネジを使用している列車、航空機、甚大な被害が出る。
会社を守るために、なんとしても隠ぺいしなければならなかったのだ。ところが、佐野を説得をしたと思っていた北川だが、副社長の村西にまで告発文が届いていた。

「御前会議」 東京建電の副社長として親会社のソニックから出向した村西。その村西に、告発文が届く。強度を偽装したネジが公共機関に出回っていると。親会社へ報告するとともに調査を始めると、過去にも同じ事例があったことを八角からそれとなく知らされる。
今の坂戸と同じ立場でノルマ達成のために、なんとしてもコストダウンをして受注を取るためにやむなく魂を売った男が北川であることも知る。
そして、その時の東京建電の部長が、村西のライバル、今はソニックの重役である梨田であることも。
ソニックの判断も・・・隠ぺいだった。どこにも正義はないのか。そんな村西の目に、リコール隠しの新聞記事が入る。

「最終議案」 東京建電も、親会社ソニックも、世間から隠ぺいすることを選んだ。とろこが何者かが新聞社にリークした。とうとう出てしまった。折りたたみ椅子どころではない。列車も、航空機も、その賠償は計り知れない。ここでとうとう坂戸が出てきた。坂戸も優秀な兄への劣等感から、必死で働いてきた。
どうしても受注を取るために。ところが、強度偽装を坂戸なのか、それとも仕入先が言い出したのか、で言い分が食い違う。坂戸は、トーメイテックは北川から紹介されたことを打ち明け、その北川は東京建電の社長から頼まれたことを証言する。

ネジの強度偽装。東京建電の宮野が、会社の利益のために、そして自分の保身のために偽装をトーメイテックに持ちかけ、それを坂戸のせいにする。もちろん、坂戸にまったくの罪がないわけではないけど、会社ぐるみの犯罪であったわけだ。
利益のために散々ノルマを課し、そのせいで無理なコストダウン、仕入先にも無理を強い、その土台を作った梨田も、20年前の偽装を隠ぺいしたことを問われ、出向させられた。

八角、そして副社長だった村西が今度は社長になり、今後の東京建電を立て直していく。

ラストはやっぱり池井戸氏らしい。すっきりした。



posted by じゃじゃまま at 14:38| 神奈川 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 池井戸潤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ほんとうに善悪の見分けがつかない物語で、誰を応援したらいいのか初めは戸惑いました。

八角さんがいてくれてよかった、と思いました。
Posted by ふらっと at 2013年05月18日 18:43
ふらっとさんへ
まさか八角さんがね〜。(笑)
いつもなら八角さんが善なのに、最初パワハラで訴えたり、やる気なかったりで、違うのかと思ったら、やっぱり、でしたね。(笑)
Posted by じゃじゃまま at 2013年05月20日 21:58
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