2013年07月29日

ゼラニウムの庭 大島真寿美著。

《★★★☆》


その家には秘密がある。その秘密を守るために、磁場に引きつけられるようにその家に縛られる家人たち。
祖母に打ち明けられた秘密は、到底信じることのできないものだけど、実際その秘密を見てしまっている作家でもある孫娘るるちゃんは、それを書きとめることにした。

祖母には双子の姉妹がいる。嘉栄さんは、なぜか人よりも生きる時間が倍以上かかる不思議な運命を背負った人だった。
祖母が亡くなった時は、るるちゃんの母よりも若く見えた。そうして、嘉栄さんは、人目につくことを許されず、隠され、るるちゃんの家の秘密として存在するのだった。

しかもこの嘉栄さん、なんだかいちいち癪にさわるんだ。るるちゃんのお母さん、静子さんがその昔、婿養子であるお父さんの亮さんと嘉栄さんの仲を疑いぎくしゃくしてるのに、知っていてわざと波風立てるような態度をしたり、いつまでもずっと若々しいからってちょっと鼻について、私も嫌いだった。

「ゼラニウムの庭」は、嘉栄さんという秘密を守り続ける一族の物語であるんだけど、このままだと嘉栄さんを嫌いなままで終わるところが、その追加版「嘉栄附記」は、その後のるるちゃんや嘉栄さんの人生が書いてあって、嘉栄さんのいいわけ文みたいな感じがしないでもないけど、でも附記のおかげでいろんなことが一気に進んだ感じ。

「嘉栄附記」は、実はいつまでも若々しく生きていることが決して幸せなわけじゃないと伝えている。
実はずっと孤独で寂しかった嘉栄さんではないか。あの遠慮のない物言いは致し方ないとして、数奇な運命を受け入れるためにはあれくらい強く跳ね返す意思がないとやっていけなかったんだね。
なんか【ベンジャミン・バトン 数奇な人生】をどうしても思い出すよね。あれとは逆だけど。

実はこういう特異なタイプは、実際あるんじゃないかって。不老不死とかそういう言葉は、彼らみたいな人が語り継がれて広まっていったんじゃないかって文章あったけど、なるほどそうかもって思った。
伝説とか到底信じられないような出来事も、実際は近い出来事があるから残ってる。

どうして嘉栄さんが生まれたのかは分からないけど、嘉栄さんのために、祖母、母・静子、娘・るるちゃん、そしてるるちゃんの娘・葵がいる。
るるちゃんの二番目の夫と、嘉栄さんが恋人だったっていうオチはちょっと気色悪いけどね〜。っていうか、るるちゃんがああいう駄目男に惹きつけられちゃうのが残念だった。なぜなら、途中までるるちゃん=大島氏だと思っていたから。

でもこれってやっぱりフィクションだったんだもんね。別にいっか。

案外引き込まれて二日で読んでしまった。


posted by じゃじゃまま at 15:33| 神奈川 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | 大島真寿美 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
確かに、嘉栄さんには、ずいぶんイラッとさせられました。
でもじゃじゃままさんのおっしゃるように
まったくあり得ない話でもないのかもしれませんね。
そう思うと、一層奥深く隠さないといけないように思われてきます。
Posted by ふらっと at 2013年07月29日 18:28
ふらっとさんへ
附記を読むことによって嘉栄さんを本気で嫌いにはなれなかったですね。可哀相な人だったんですもんね。
Posted by じゃじゃまま at 2013年08月02日 20:53
女性の心理描写がいい〜

大島真寿美さんの新作『三月』を読みました。
読みやすくて読後感も良かったです〜共感できたし。

http://birthday-energy.co.jp/ってサイトは大島真寿美さんの宿命の特徴が限定された場所で、はしゃぎまくる強気な人、なんて書いてましたよ。どうなんだろ?コラムをぜひ読んでね♪
「ハレる運命2014」も配信中!!
Posted by omiso at 2014年01月24日 00:10
omisoさんへ
「三月」はどこかの新聞でも評価を読んで、早く読みたいなと思っています。
大島さんの作風というか、雰囲気、昔は結構ほんわかしていたのに、女性の作家さんは年月経つとちょっと変わってきますよね。
Posted by じゃじゃまま at 2014年01月24日 18:26
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