2013年07月29日

サファイア 湊かなえ著。

《★★★★★》


宝石にまつわる短編集。
「真珠」 躾の厳しい母に育てられた主婦、林田万砂子は、その人生のすべての運をイチゴ味の歯磨き粉のおかげだと思っている。その製品が製造中止になり、復活させるために彼女の選んだ行動は放火だった。
お客様相談室担当である男が、万砂子の話を聞き、そして驚愕の事実に気付く。万砂子の犯罪は、それだけではなかった。

「ルビー」 実家の裏に特殊な老人介護施設が建設された。どこの地域でも反対された施設だが、日本一心に垣根のない母と父のおかげで実家の裏に建つことになった。三年ぶりに帰省した姉は、妹から、その施設にいる「おいちゃん」との交流を聞かされ、たまたま自分の雑誌で取り上げることになっていたある事件を語り出す。
「おいちゃん」からプレゼントされた、母の胸に光るブローチ、それは昭和史に残る一億円の価値のある事件のものだった。
このまま、母達とおいちゃんの交流が続きますように、と願った。

「ダイヤモンド」 誰がどう聞いても結婚詐欺にかかってるとしか思えない冴えない男。そんな彼が一羽の雀に優しくしてあげたことから、雀の恩返しを受ける。
どうやら自分が騙されていることにようやく気付けた男だけど、その代償は大きかった。

「猫目石」 人の後をコソコソつけて、よその家の弱みを見つけ、それをわざわざ告げ口する坂口さん。その報いにすっきりした私はまずいですかね〜。
だって本当に坂口さんって悪意の塊なんだもん。

「ムーンストーン」 元議員の夫を殺した罪で捕まっている女性。

中学時代、教師からも生徒からもいじめられていた久実。そんなとき正義の声をあげ助けてくれた少女がいた。彼女はクラスの中心で、彼女が声をあげ、行動を起こしたおかげで久実は少し楽しい生活を送ることができたような気がしていた。だけど、それはうわべだけで、実はまだ自分はまだ仲間ではなかったと気付かされる久実。お土産が一つ足りない。自分の分だけがない。そんなときでも小百合は、クラスメイトが買ってきたムーンストーンのピアスをさっと久実と分けてしまう、正義感と平等の人であった。

その十数年後。夫から暴力を振るわれ続け、娘を守るために夫を殺してしまった、小百合。その小百合を助けるために、ムーンストーンのピアスと友情のために、弁護士になった久実は小百合の目の前に立つ。

普通に読んでいたら、絶対久実と小百合が反対になるんだけど(私だけか?)、お??っと気付いた時の幸福感。久実が裁判で勝つところも読みたかった。

「サファイア」 なんでも律儀にしてしまう「わたし」は、いつしか人と過ごすよりも一人でいられる一人旅が好きになった。そんな旅で運命の出会いをした「わたし」。ようやく出会えた運命の人。幸せな時間を過ごしていたが、誕生日の前日、待ち合わせの場所に彼は来なかった。
ホームから転落して轢死していたのだ。悲しみに暮れる「わたし」に、アパートの隣人タナカが、もしかしたら事故ではないかもしれない。タナカが偶然誘った悪徳商法のバイトが原因でホームから突き落とされたのかも、と言われる。
「わたし」に一人旅の歓びを教えてくれたのもタナカ。そして運命の出会いをして、だけどその彼を奪う原因を作ったのもタナカ。

私はこの「サファイア」が一番好きで、結構泣いちゃったんだけどね。

「ガーネット」 作家になった「わたし」こと紺野真美。映画化になり主演女優との対談となった。
そこで明かされる想い。そして、「サファイア」の結末。

主演女優と対面した真美は、その女優が最愛の恋人を奪った悪徳商法の被害者だと知る。そして、この女優こそがタナカに食ってかかりバッグで飛びかかってきた女性。タナカは、女優とかつて悪徳商法の加害者と被害者の関係で殴られながら、その後どのような関係であったかは分からない。恐らくなにもないけど、心の中でその女性が女優になったことを応援しながら、それ以上踏み込まないでいるのは、やはり真美や亡き恋人中瀬修一への責任だろう。だけど、山から女優へ送るハガキには想いが込められていて、ほろっとしたし、そしてなによりも、「サファイア」の結末は、真美の恋人は人から恨まれて殺されていないってこと。

この短編集は、どれもこれもがよかった。
「サファイア」「ガーネット」「ムーンストーン」がお気に入り。

posted by じゃじゃまま at 16:34| 神奈川 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | その他 ま行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブラックはブラックでも
重苦しくずどんと胸が重くなるブラックではなく
ピリッとスパイスの効いたブラックで
湊作品の中ではやはり異質なのかもしれませんね。
わたしも結構グッときました。
Posted by ふらっと at 2013年07月29日 17:12
ふらっとさんへ
この作品で、こういう感じのも書けるんだ〜と、ぐっと湊さんが好きになりました。

Posted by じゃじゃまま at 2013年08月02日 20:47
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