2013年08月21日

ちょうちんそで 江國香織著。

《★★★★》


江國氏らしい、なんの解決もなく、なんの進展もなく、ただそこに日常があるだけ。
中途半端といえばそうなんだけど、それが江國ワールドなんだよね。
江國ワールドに広がる、その日常や時間の流れ、そして一つの文章が長いのも特徴で、読みながら、ああ、これぞ江國香織、やっぱり江國さんだな〜と、満喫。

なんだろう、言葉が上品というのだろうか。

かつて夫と子供たちを捨て、愛する男の元に走っ雛子。十数年前に失踪してしまった妹と、空想で会話をしている雛子を、気遣いなにかと訪ねていく隣人の丹野。それを快く思わない丹野夫人。
元モデルの美しい妻と、生まれたばかりの可愛らしい赤ん坊に囲まれ幸せな生活を送っている正直。
大学生の誠と亜美のカップル。
家族の都合でカナダの学校に通う少女、なつき。なつきが信頼しているのは小島先生だけ。

それぞれの時間が流れ、日常を送っているのに、軸は雛子。
こういうの好きだな〜。
正直と誠を捨てたのが雛子で、小島先生は雛子の失踪してしまった妹・飴子であろう。
飴子が元気でいることを雛子が知ることもなく、元モデルの妻の昔の仕事を知ってしまい、そこに母・雛子と同じだらしなさ、ふしだらを感じた正直は家出をする。雛子の元へ、妻が会いにやって来るけど、そこでなにがどうなるのかも明かされないまま物語は終わっていく。

この中途半端さ。なにがどうなるわけでもない、、さすがともいうべき。
あの正直夫婦がどうなるのかも分からない。雛子が家族に許される日が来るのかも分からない。許して欲しいとも思ってないだろうし、雛子はそれなりに今の日常で幸せなんだろうから。

そもそも、家族を捨て男の元に走った時が、雛子の本当の幸せだったんだろうな。
紳士然とした丹野がかつて犯した罪も、結局、その人はどこの誰だったのか。その人の家族はどうしたんだろうか、それもどうなるわけでもない。

だけど、江國ワールドに流れる時間は、きれいだと思う。いつもそう。
こんな時間の流れ、人生の受け止め方をしてみたい。雛子の今の生活さえ、幸せそうに見えてしまう。

タイトルにもなっている「ちょうちんそで」雛子のイメージにぴったり。



posted by じゃじゃまま at 11:10| 神奈川 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わたしは以前から江國作品はジェリーの海を揺蕩うようだと思っています。
なんとなく力が抜けて、不本意だったり思うようにならなかったりしても、心地好く身を預けてしまうような感じでしょうか。
Posted by ふらっと at 2013年08月21日 13:44
ふらっとさんへ
江國ワールドの主人公って傍から見るとさほど幸せじゃないし不自由そうなのに、本人たちは充実してるというか・・・それがある意味羨ましかったりして。
Posted by じゃじゃまま at 2013年08月29日 11:33
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