2014年04月12日

三月 大島真寿美著。

《★★★★》

短大を卒業してからおよそ20年。同窓会の案内を受けとって以来、ノンは学生時代に亡くなった男友達のことが気になりはじめる。彼は自殺ではなかったのではないか?ノンは仲のよかった友人に連絡を取ると―。仕事や家庭、それぞれの20年の時を歩んできた女性6人。学生時代の男友達の死を通じて明らかになる「過去」。その時、彼女たちが選ぶ道は―。未来に語り継ぎたい物語。 (「BOOK」データベースより)

大島ワールド健在だった!!
これが大島ワールドだ!読み終わった後、ひそかによし!!って決意してしまうような、よし!もう一度頑張ってみようって。
そっと背中を押すような物語が大島氏。
女性作家さんは、加齢と共に作風が微妙に変わってくるけど、大島氏も例外ではなかった。
以前は、高校卒業前後の女の子が、特別になにか事件があったわけでもないんだけど、自然と、さりげなく新たな一歩を踏み出すってものが多かったけど、「三月」はアラフォーが主役。

個人的にはこっちの方が共感できる年代なんだけど、10代の子たちの未来を感じる物語もよかっただけに、大島氏がだんだん年齢設定を上にしてきてることが寂しい。
でも!!!「三月」は大島氏の得意とする分野だよね。

これが大島ワールド。
短大時代の仲間たち。一人の青年の事故死をめぐって、その周囲の人間模様も浮き彫りになってくる。
「モモといっしょ」は、森川君の事故死を自殺として広めてしまったのは私のせいかも!ってノンからの電話に振り回される領子。勤めてた会社が倒産してしまって、彼氏もいない、そばにいるのは愛犬のモモだけ。そのことをちょっとした見栄で言えなかったり。そんな20年近くも前の事故死のことで今更騒ぎ立てるノンに呆れつつも、久しぶりに、東北に嫁いでしまったノンに会いに行くことを決める領子。
これから仕事も探さなきゃいけないアラフォー女性の、心細いような、でもまた出発しようって、そう思えるのが大島作品のすごいとこ。

「不惑の窓辺」・・・ 明子は、領子からもう15年以上も前に事故死した森川君の話を聞いた。
森川君は、明子の従兄カンペーの友人だった。そして、明子はずっとずっとカンペーに恋をしていた。でもその想いを告げることもできないまま、カンペーは他の女性と結婚してしまい、ずっと独身だった明子も数年前、叔母に勧められて子連れの後妻となった。心にはいまだカンペーを残しながら、義理の娘が自分のことを「あいつ」呼ばわりしてることを耳にして、傷ついている。そして、領子の電話でカンペーが、あの頃、友人の小沼花と付き合ってたという話を聞き、動揺する。
義理の娘ともうまくいってなかったという現実、好きだったカンペーは友人の花のことが好きだった?こういうのって一気に来るんだよね〜。落ち込み、明子もまた、ノンに会いに行ってみようかなと思う。

「花の影」・・・ ノンの思い込みによる発言は、伝言ゲームのようにあの時代の仲間たちの間を、いろんなさざなみを起こしながら流れていった。明子からの電話で花は久しぶりにあの頃のことを思い出していた。
もしも、阪神淡路大震災がなかったら、花はカンペーと結婚していたかもしれない。一番の支援者を震災で失い、花も両親も傷つき、とうとう花はカンペーの優しさから逃げてしまった。以来、花はずっと独身で、親の介護をしている。姉夫妻がいてくれたら・・・花はカンペーと今頃幸せな家庭を築いていたかもしれない・・・でもそれは現実ではない。現実は、姉夫妻を失い、カンペーを失い、花は親の面倒を見続けている。
そんな花の日常に、明子からの電話は外からの風を入れた。
花もまた、ノンやあの頃の友人に会いに東北に行こう、と思い立つ。

「結晶」・・・ 森川君の事故死は、自殺だったのか、それとも・・・。当時、森川君と付き合っていた穂乃香。でも結局穂乃香が結婚したのは、仲間内の栃田君だった。それが原因ではないのか?そんな憶測が仲間内でもささやかれ、そして当人の穂乃香は夫である栃田を疑い、夫の栃田も、事故当日の穂乃香を疑っていた。
ノンから、確かめるべきと言われ、20年近く経って、ようやく二人は森川君の死、自分たちの関係に向き合い、確かめ合う。
それぞれが必死で生きてきた20年、築き上げてきたものたちが確かにここにあるという、重みのある章だった。

「三月」・・・ ノンの、かつての森川君の事故死を自殺と断定させてしまったのは私かも!という思い込みの電話が仲間内に周り、それが縁で卒業以来かつての仲間たちが、ノンの嫁ぎ先の東北に集まった。
それそれが会わなかった年月分、いろんな問題や出来事にぶつかりながらも、揉まれて生きてきた。
全部を語り合わなくても、お互いに想いを馳せる部分もあるだろう。ノンも、人知れず、夫に疑惑を感じながら蓋をして生きてきた。そして一度口にしてしまったことで、とうとう現実になってしまった。
みんなとの再会、その時、ノンは心の裏側で夫の裏切りと、そしてそれが浮気ではなく本気であることを悟り、悲しみ、不安、動揺、いろんなものがごちゃごちゃと押し寄せてきていたんだろう。
でも、みんなと会い、三月は出会いと別れの季節でもあることにふと気付き、そうだ、自分ももう一度この生活から卒業をして、また再出発しよう!と、そう気持ちが切り替わった。

こういうのってほんの一瞬で吹っ切れるんだよね。

「遠くの涙」・・・ みんなが東北に集まって再会してた頃、一人美晴はアメリカにいた。学生時代から演劇の道に進むと決めていて卒業後、渡米したのだ。だから森川君の死も、それぞれのみんなのその後も遠くの話だった。一人飛び出してきたからこそ、弱音は吐けなかった。小さな嘘が、そのまま本当のことを言えなくして、二度の離婚も、演劇とは関係ない日本料理店で働いていることも遠く離れた距離と共に見えないところに隠した。
ノンたちが再会するというメールを読んだ三時間後、日本に大きな地震が起こった。ノンは、領子は、明子は、穂乃香は、花は?無事のメールを読んだのは4月になってから。
ノンからのメールで、みんなの無事を知り、会わなかった20年に語りきれないほどのそれぞれの人生があったことを改めて感じた時、美晴も、二度の離婚や別れた息子のこと、辛いことたくさんあった。みんなに黙っていたこともあった。でも自分も今、生きている、生きているうちに、他の仲間たちのように再会したい!とそう気持ちが変化したのもすごく分かる。
こういうのも、一瞬一瞬で切り替わるんだよね。そして、美晴は、みんなに会わない間に起こったいろんなこと、昔のようにいろんな話をしてた頃の自分たちのように、話したい、と思ったんじゃないかな。

ノンのその後も、美晴宛てのメールの中で書かれていて、ちょっと安心。震災の後、心の離れた夫とも抱き合って無事を確かめ合い、今は家族で結束して立ちあがっていると。
もしかしたらそれは今だけで、その後はノンたち夫婦がどうなるかは分からない。小説だからなんとでも書けそうだけど、あえて書かないところに、その世代でもある私はどっちにでも想像できて、逆に、よ〜し!頑張れ〜って応援できる。

どれもハッピーエンドってほどでもないのに、なぜか元気をもらう大島ワールドは健在だった!


posted by じゃじゃまま at 17:39| 神奈川 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 大島真寿美 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
タイトルからして身構えながら読みはじめたのだけれど
「三月」が無事に過ぎてほっとしたところに
次の章でやはりぐらっときてしまいましたね。
でも、だからこそそれぞれが明日の方向に目を向けられたのかもしれないなぁ、なんて思います。
大島さん、巧いですねぇ。
Posted by ふらっと at 2014年04月12日 18:28
ふらっとさんへ
大島さん、徐々に設定が上の年代になってきてますね。
若い女の子が主人公のもまた読みたいですけど、この、なんということはないのに、いつの間にか成長している風の物語は今もって変わってなくて、これが大島ワールドなんだろうなと思います。最近の著作の中では「三月」が一番大島さんらしいと思いました。
Posted by じゃじゃまま at 2014年04月18日 16:58
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