2014年06月19日

鏡の花 道尾秀介著。

《★★★★》

製鏡所の娘が願う亡き人との再会。少年が抱える切ない空想。姉弟の哀しみを知る月の兎。曼珠沙華が語る夫の過去。少女が見る奇妙なサソリの夢。老夫婦に届いた絵葉書の謎。ほんの小さな行為で、世界は変わってしまった。それでも―。六つの世界が呼応し合い、眩しく美しい光を放つ。まだ誰も見たことのない群像劇。
(「BOOK」データベースより)

「やさしい風の道」 ・・・ 嘘の物語を作るのが好きな少年。姉と二人で、昔家族が住んでいた家を訪ねる。もしかして自分は生まれてくる予定じゃなかったのではないか、その不安を確かめるために。
妻に先立たれた老人、瀬下が今は住んでいて、少年が母親のお腹にいた時に、姉であった赤ん坊が二階から転落死したことを、私たちは聞かされる。失ってしまった娘への想いは、残された弟を追い詰めてるのだろうか。

「きえない花の声」 ・・・ この章では、前の章で出てきた瀬下という老人が、川に落ちて死んでいて、残された妻と息子が、かつて家族で住んでいた海辺の町へやって来る。
妻は、ずっと夫の浮気を疑っていて、夫はあの女に会いに行った日に川に転落して死んだのでは、と思っていた。
何十年も経ったこの旅で、泊った旅館の仲居が、かつての夫の同僚の娘であることを知り、母親は、妻がずっと疑っていた夫の浮気相手だと知る。そして、浮気だと思っていたことの真相を知った時、なんとも残念な思いと温かな思いがあった。残念というのは、もちろん、生きていれば、っていうことだけど。

「たゆたう海の月」 ・・・ ここでは瀬下夫妻の息子、俊樹が死んでしまう。
夫妻は元気に暮らしているが、社会人になり、転勤してしまった息子から送られてきたハガキ。メールで返信を打つが息子からはない。そして俊樹が崖から転落死したとの連絡が入る。夫妻は、息子が最後に行った場所へ向かう。

「つめたい夏の針」 ・・・ 第一章では姉の翔子が死に、弟の章也が生きていたけど、ここでは章也が死に、姉が生きている。
章也は小学2年のときに交通事故で死んでしまう。それから翔子は高校生になり、生きていれば中学2年になる弟と同じである直弥と、夏のオリオンを見に、夏休み、内緒の旅をする。
翔子の心には、あの日、自分がもう少し違う行動をしていれば、章也は事故に遭わなかったかもしれない、とその後悔がずっとある。

「かけそき星の影」 ・・・ ここでは、直弥と真絵美の両親が死んでしまっている。蚊取り線香の火が洗濯物に移り、直弥の目の前で両親が燃えてしまった。
その原因をずっと自分のせいだと思っていた直弥と、姉の真絵美がずっと隠していた真実。

「鏡の花」 ・・・ 鏡作りと民宿をしている美代の家。美代には火傷があり、そのことを詫びながら死んでいった祖父がいる。本当はおじいちゃんのせいじゃないのに、それが言えなかった美代。
その民宿に、今までの主人公たちが全員生きて登場し、出会う。

当初は、読むたびに生きている人と死んでいる人が違って、その世界観に戸惑ったけど、道尾作品であること、そしてタイトルを考えた時、鏡に映ったもののように、向こう側には違う世界、物語があるのかもしれないと気付き、そうやって読むと、すんなりと受け入れることができた。

それでもやはり「鏡の花」が一番好きだ。自分のことを責めながら死んでしまったおじいちゃん。そんなおじいちゃんを想う孫の美代。
おじいちゃんに会うために、本当は信じてたわけじゃないけど、そんな自分でいたくて、章也の作った物語を信じたくて、夜抜け出す美代。
そんな美代を心配してみんなが探してくれた。火傷のある方も、ない方も、同じようになでてくれる母の手の温かさ。

何度も泣いてしまった。

左右対称の自分じゃない、本当の自分を見たくて「トゥルー・ミラー」が欲しくなった。


posted by じゃじゃまま at 10:24| 神奈川 ☀| Comment(2) | TrackBack(1) | 道尾秀介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めは、死んだはずの人が出てきたり、いるはずの人がいなかったり、読み違ったかしら?と戸惑いましたけれど、じゃじゃままさんがおっしゃるように、仕組みがわかってからは、切ない思いとともに読み進みました。
いまここにいる自分の奇跡を思わされたりもしました。
Posted by ふらっと at 2014年06月19日 13:00
ふらっとさんへ
そうそう、最初はあれ?ってもう一度読み返したりして。
パラレルワールドみたいで、でもやっぱり最後が一番いいですよね。みんな生きてるし。
Posted by じゃじゃまま at 2014年06月26日 12:27
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鏡の花*道尾秀介
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