2015年07月01日

風のベーコンサンド 高原カフェ日誌 柴田よしき著。

《★★★☆》

離婚調停中の奈穂は、バブルがはじけ閉館が相次いた百合が原高原のペンションを改装し、カフェを開いた。
たった一人、ここで自分の人生を切り開くために。
このカフェにやって来る地元の優しい人々と共に過ごす高原カフェ日誌。

「風音」 ・・・ なんの縁もない土地で、地元の人々の協力を得て開店したカフェ。なかでもひよこ牧場のバターやベーコン、ソーセージのおかげで奈穂は知らずと救われていく。
ゴルフ場が開発されるとの噂で嫌悪感を示すひよこ牧場の妻、南。
ある日、テレビを見せてくれないかと作業服の初老の男性がカフェにやって来る。カフェはテレビを見るところではないと、憮然とする南だけど、奈穂はその人にテレビを見せてあげたい、と思う。
そして、その心がすべてを動かした・・・のは後に続く話。だけど、ここでベーコンサンドが奈穂のメニューに加わる。

「夕立」 ・・・ 高原の夏は涼しいと聞いてたはずなのに、猛暑で暑い。初めて迎える高原での夏。
村では独身者が少ないが、兄が急逝したために村に戻り家を継いだ村岡との出会い、奈穂の人生が少しだけ色づく。
そこへ奈穂との結婚生活に執念を燃やす夫滋がやって来た。奈穂を自由にはさせないと言いにやって来たのだ。傷つき泣いてるところに、テレビを見に来た作業服の男性「田中さん」がやって来て、あえて具体的なことは言わないのに、奈穂を心配し、励ましているのが分かる存在。
そして、読者はなんとなく「田中さん」の正体に勘付いている。

「豊饒」 ・・・ 秋になり冬の足音が遠くから聞こえてきそうな季節。奈穂は、冬の間をどうしようか迷っている。冬は観光客が見込めないため、カフェを開いていても赤字かもしれない。冬の間だけでもどこかで働くか・・・、そう思いながらも、奈穂の料理、来てくれる客への想いが少しずつ届き始めて客足はついてきている。そんなある日の夜、近所の農家の嫁、小枝がやって来た。村に住む人々にはそれぞれの事情がある。好き好んで農家にやって来たわけでもない女たちがいる。それでもその中で夫と協力し合い自分たちの生活を、この村を守りたいと思っている。
小枝は、自分の人生はなんだったのだろう、と東京からやって来た奈穂がこの村で頑張るたびに苛立っていた。自分はこの村にいるべきではなかった、もっと他に自分の居場所があったのではないか、と。
夫に浮気され、居場所を見失った小枝の言葉に、奈穂はそれでも自分はここで生きていきたい、と思う。

「夢鬼」 ・・・ とうとう冬がやって来た。奈穂が思っていた以上に冬は厳しかった。
ゴルフ場開発が中止になったけど、リゾートホテルが立ち、成功している。なんのレジャーもない高原で、ホテルが成功している以上、冬はいいわけにはならない。村も頑張る、と村岡は決意している。そして奈穂も応援するため、閉鎖されたスキー場で行われるクロスカントリー大会で屋台を出すことを提案する。
奈穂のカフェで出している天然酵母のパンを作っている伊藤夫妻が店を畳むことを考えている。
リゾートホテルのパンの味に打ちのめされたのだ。でも息子を失っている伊藤夫妻は強い。負けて逃げるわけではなかった。
クロスカントリー大会の日、またもや滋がやって来た。ここで死ぬことを考えいた滋、そうはさせまいと声を掛ける奈穂。初めて滋の傷ついた心を聞けたが、それでも二人が復縁することは、ない。

「融雪」 ・・・ 離婚は成立したが、まだ次の恋に進む準備ができていない奈穂。それでも村岡が来るとどうしても胸がはずんでしまう。
そんな村岡が大学の先輩を連れてカフェにやって来た。しきりに村岡と奈穂を冷やかす井村。
そんな井村の心に残る女性。偶然にもその女性はカフェにやって来ていて奈穂と会っていた。お互いが忘れられなかった相手で、奈穂がキューピットになったのか、世の中こんな偶然、うまくいくばかりじゃない。

「花歌」 ・・・ 奈穂のカフェがオープンして一年。そのお祝いを村岡と共にする奈穂。二人の恋はまだ始まったばかりだけど、きっとうまくいく。
「田中さん」」の正体はもう分かってはいたけど、奈穂も気付いたね。南の牧場の商品も、実は奈穂のおかげだったんだよね、きっかけを作ったのは。
最初は南は田中さんを追いだそうとしたんだから。
ホテルのカフェと、奈穂のカフェ、奈穂には負けて欲しくない。でも大丈夫、奈穂のカフェには心強いファンがいるんだから。

家を出てしまった小枝のその後が気になる。

posted by じゃじゃまま at 14:09| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 柴田よしき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/421608037
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。