2015年09月13日

冷蔵庫を抱きしめて 荻原浩著。

《★★★★★》

あ、ダメ、ダメだってわかっているのに、どうして同じことを―。あなたの心、解放します。現代人のライトだけど軽くはない心の病気に、シニカルに真剣に迫る短編集。 (「BOOK」データベースより)

「ヒット・アンド・アウェイ」・・・ これ、大好き。DVの恋人に我慢しながら前夫との子供を守る幸乃。どうしていつもこういう男に掴まるんだろう。女の幸せは結婚して夫に養ってもらうと信じていた母親に反発していた幸乃だけど、磁石と同じで反発しあうのは元は同じということ。このフレーズ、今回荻原氏結構好きみたいで他の短編にも出てた。
そんな自分に、ママに、さようならするために幸乃はDV男と闘う。
これ、本当に好きだな〜。ボクシングジムの会長も、通ってるボクサー田辺君も、本当にいい。これからの幸乃の人生、本当に応援したくなった。

「冷蔵庫を抱きしめて」・・・ 結婚前は相性ばっちり、私たちって磁石みたいにぴったり、って思ってたけど、結婚したら小さなことがたくさん違うことに気付いた直子。そんな幻滅に気付きたくなくて、またもや悪い癖が出てしまった。拒食症。理想の夫婦が破たんする話かと思ったら、ほっこりと温かい物語だった。
拒食症を隠していたけど、夫にはばれていて、汚してしまったトイレを一緒に掃除してくれる夫。
「二人の最初の共同作業です」なんて、そんなしゃれたジョークを言う夫、なんて素敵なんだろう。
磁石はぴったりくっつくけど、それはお互いが似た者同士だからじゃない、SとN、違う者同士だからだ、なんて、これも素敵。

「アナザーフェイス」・・・ 自分と似たような男がウロウロしているらしい。たくさんの目撃情報。でも俺じゃない。だんだんとそのドッペルゲンガーが近づいてくる。
なんか「世にも奇妙な物語」の一編のような話だった。

「顔も見たくないのに」・・・ 顔だけが取り柄だった元恋人。熱が冷めればその馬鹿っぷりや浮気ぐせに愛想も尽きる。
なのに別れた途端、あいつがテレビに出るようになった。顔も見たくないのに。どうなるのかな〜と思ったら、ちやほやされた時期が過ぎ、テレビから干されてしまったあいつがまた麻衣の元へ戻って来た。
当然突き放すものと思ってたのに・・・なんだかどうなっちゃうんだろう?

「マスク」・・・ マスク依存症になってしまった男。人に見られない、という快感を得てしまった男が異常なまでにマスクに依存し始める。ちょっとやりすぎな男。この人、着ぐるみに居場所を見つけたのかな。

「カメレオンの地色」・・・ いつも相手の好み色に染まってきた梨代。今の恋人候補のために部屋を片付けていたら出るわ出るわ、過去の男たちに染まっていた証拠が。そして誰の色にも染まっていない、本当の梨代を好きになってくれた中学時代のボーイフレンドを思い出す。昔の自分を思い返し、梨代は恋人候補の男と会うことがくだらなくなり、役者を目指しているはずの、中学時代のボーイフレンド、中村遼介に会いたくなって検索してみる。物語はここで終わってしまうんだけど、心から遼介、出てこい!!!って願った。
二人の中学時代のエピソードが切なくも微笑ましかったから、私も、梨代にはあの頃の梨代でいて欲しくて、二人に再会して欲しいと思った。

「それは言わない約束でしょう」・・・ 心に思ったことが無意識に口から出てしまう礼一。自分では言ってるつもりないのに、それが相手に聞こえてしまえば・・・しかも接客業だから非常にまずい。
でも分かるな〜。これ、つい出ちゃうってことあるんだけど、だけど、絶対まずい。デパート辞めて家の八百屋継ごうかなと思った矢先、父親が店を畳んでしまった。礼一は父親の接客を見習って、愛情のある悪口で接客するようになる。デパートでそれはどうよ、とは思うけど、案外客は喜んでるらしい。

「エンドロールは最後まで」・・・ 結婚できないのではなく、しない女になると決意した千帆。その途端映画館で出会いがあった。
結婚詐欺ってオチかな〜と思わせて。
医師だと思ってたら救急救命士。二人が出会ったシチュエーションも実は映画のワンシーン。挙句にアフリカに行くためにお金が足りない、って言い出す始末。
一体彼は何者?だけど千帆は彼についてアフリカに行く決意をした。多分、大丈夫。彼は本物。そう希望を繋げられる空気だった。

8編のうち、大好きだったのは約半分だけど、それでもその半分がとっても素敵だったから高評価。

posted by じゃじゃまま at 13:26| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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