2007年10月25日

青い鳥 重松清著。

≪★★★☆≫
「吃音」でうまく喋れない非常勤講師の村内先生。彼は、うまく喋れないから、大切なことしか言わない。本当に大切なことを教えに、一人ぼっちで誰かにそばにいて欲しい、そういう一人の子のために、非常勤講師としてやって来る。
そして、その子が本当に大切なことに気づいた時、「間に合ってよかった」と一言言い残して去っていく。

どの章にも、学校でたった一人孤立してしまった子が出てくる。それはいじめだったり、反抗心であったり、家庭での虐待であったり。
誰にも分かってもらえず、ますます一人ぼっちになっていく子に、村内先生は「一人じゃないよ。僕がいるよ」と、心で教えてくれる。
一人ぼっちに、もう一人いたら、それはもう一人ぼっちじゃないんだ。
特に好きな三篇「おまもり」「進路は北へ」「カッコウの卵」。
「おまもり」は村内先生というより、昔事故を起して加害者となってしまった父親と、その家族の絆、そして被害者遺族が12年目にして父へくれたもの、なんかそれに目頭が熱くなった。
父親の12年間の罪の意識、そしてこれからも変わらずに貫いていく姿勢がなんとも感動的。

「進路は北へ」は、知ってた?黒板って全部西に向かってるって。
それはどうしてかって。私は黒板よりもアナゴの作文の方がよかった。附属の学校にいながらたった一人外部に出る女の子の話。これも村内先生よりも、「なんだかお嫁に出すみたいね」といった森バアの気持ちの方がなんだか嬉しかった。

「カッコウの卵」は、もう文句なしに泣いてしまったよ。
ずっと嘘をつきつづけて生きていたてっちゃん。寂しいのに、怖いのに、そんなの平気さと強がって、問題ばかり起こしてたてっちゃん。
今は立派に働いて、同じように家庭から捨てられた智恵子共に生きている。
そんなてっちゃんが7年ぶりに村内先生を見かけて、恩師へ会いに行く。そこで語られたてっちゃんの寂しい過去。
村内先生が「嘘は一人になりたくないからつくんだ。嘘を言う子は寂しい。そんな子のそばにいたい」って言葉には、文句なしで泣けた。

どれも正直、今思い出してもなにが大切なんだっけ?って忘れてるのが多いけど、不思議とすべての話、読んでるときは自分も「そんな子」になってるから、村内先生の言いたいこと伝わってくるんだよね。





posted by じゃじゃまま at 23:11| Comment(16) | TrackBack(9) | 重松清 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めて知りましたこの本。
最近出た本ですか?
泣ける本、久しぶりに読みたいです。
Posted by とも at 2007年10月26日 11:05
ともさんへ
多分最近ですね、あ、でも2〜3ヶ月は経ったかな。予約ちょっと待ったので。
「きみの友だち」にほんの少しだけ似てますね、一人ぼっちの子。重松さんは、あの頃の子ども達の寂しさ、ずるさ、孤立への恐怖、なんでこんなにうまく書けるんでしょうね。どんぴしゃですよね。
Posted by じゃじゃまま at 2007年10月26日 21:14
こんばんは。じゃじゃままさん。
私も、「きみの友だち」と重ねた部分がありました。
この作品は、自分の中で葛藤するものがたくさんあって、読んでいて辛くて辛くてしょうがありませんでした。
本当にこんな先生がいたとしたら、実際に子供達は受け入れることが出来るんでしょうか。
心がキレイすぎて、怖い気もします。
Posted by ゆう at 2007年10月27日 21:09
「カッコウの卵」、泣けましたよね〜。
困窮している生徒ひとりひとりに合ったアプローチをして、「大切なこと」を伝えていく村内先生。
優しい気持ちが心に響きました。
Posted by 藍色 at 2007年10月28日 01:36
村内先生は、饒舌ではないけれど、とても力強くて、大人の私には突き刺さってくるような言葉をいくつも言ってくれましたね〜。
じゃじゃままさんの引用された言葉、私も印象に残ってます。
Posted by エビノート at 2007年10月29日 20:39
ゆうさんへ
ゆうさんは辛かったんですね。
私も「ハンカチ」の子みたいに、ちょっとした一言で失敗すること多いんですけど、無事にそのまま卒業できる子とそうじゃない子の差ってなんなんでしょうね。
でもそういえば、これと「カッコウの卵」「進路は北へ」(これは森バアが好き)以外はあまり好きな作品ありません。なんか、痛い子たちが多かったですね。

藍色さんへ
最終章は泣けましたね〜。この章読んでて、中学時代の担任を思い出したんです。あまり担任運のよくない私ですが、いつも怒られてばかりで、なにやっても人とずれてた私のこと初めて「なんだ、普通の子じゃないか」って言ってくれたとき、その「普通」というのがすごく嬉しかったですね。

エビノートさんへ
そういえば以前トラブルがあった時、一人の女性が嘘をついたんです。その嘘は、まさしく一人になりたくない!そんな保身から出た嘘ばかりで、ああ、彼女もあの時は寂しかったんだな〜と。
でも今でもちょっと許せないですけど。私、思い切りその嘘のせいで孤立したので。(爆)
Posted by じゃじゃまま at 2007年10月30日 08:20
こんにちは。
やっと読めました&感想書けました。感想を書けば書くほど暗くなってどうしようかと思いました。(なんとか明るく書けてよかったぁ)
あ、本当だ。なんでですかねあの言葉は胸にどーんと入ってきますよね〜。嘘はつけばつくだけ独りになっていくとあの頃気づいていたらよかったなぁと思います。
Posted by musagoro at 2007年12月14日 18:52
musagoroさんへ
確かに感動の重松作品を期待して読むと、ちょっと辛い話が多かったかもしれないですね。
最終章の「カッコウの卵」が一番重松さんらしかったかも。宝物の言葉が詰まってましたね。

そう、一人になりたくないから嘘をつく、うまいですね。
Posted by じゃじゃまま at 2007年12月14日 22:14
泣けました(T_T)

なんか、普段中々言いづらいことをストレートに「言葉」にしてくれる村内先生。
「カッコウの卵」は、もう号泣でした。
Posted by じゅずじ at 2008年03月03日 23:05
じゅずじさんへ
「カッコウの卵」は本当に号泣でしたよね。
村内先生が言う「間に合ってよかった」って言葉、深くて、温かくて好きですね〜。
Posted by じゃじゃまま at 2008年03月09日 08:16
ひとりぼっちが二人いたら、もうひとりぼっちじゃない。中学生の言う大切は本当に大切。村内先生の言葉はどれも胸にきました。よく考えれば、どれも簡単と言いますか、当たり前のはずの事なんですよね。だけど同時に一番難しい事でもあって、それだけに強く打たれました。
Posted by たまねぎ at 2008年04月13日 22:49
たまねぎさんへ
村内先生のような先生に、出会えていたら、幸せでその先の人生間違えなさそうですよね。たとえ間違えても、戻れる原点があるっていうか。
案外、中学時代の先生って心に残るものですよね。
Posted by じゃじゃまま at 2008年04月17日 23:09
ここに出てくる学校は、村内先生を必要とする子どもがいることをちゃんと解っているので、「間に合った」けれど
それ自体に学校が気づかずに、あるいは気づかない振りをして「間に合わなかった」たくさんの子どもが、この物語の裏側で訴えているような気がして胸が締め付けられました。
Posted by ふらっと at 2008年05月19日 06:49
ふらっとさんへ
村内先生を学校へ呼んでるのは、誰なんでしょうね。教育委員会の誰かがすごく優秀で、各学校の事情に精通してて村内先生を派遣してるのか、村内先生のことは伝説的存在で、各学校の校長や先生が要請しているのか・・・。
すっごく関係のないことなんですけど、読んだ時からふっと想像してしまって。
Posted by じゃじゃまま at 2008年05月23日 10:31
自分のことを理解してくれる人がひとりでもいることは、大きな心の支えになると思います。
その点、寄り添うようにいる村内先生は、すばらしい先生だと思いました。
Posted by at 2008年06月02日 19:44
花さんへ
幼稚園の頃からどうも先生受けがあまりよくなくて。(爆)別に目立ってたわけでもないのに、なにかが嫌だったんでしょうね〜。
なので村内先生のような存在は、素晴らしいし、大きな支えになりますよね、本当に。
Posted by じゃじゃまま at 2008年06月07日 23:28
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

青い鳥 重松清
Excerpt: 心の闇に閉じこもってしまった独りぼっちの生徒達のために、吃音のある非常勤講師・村内先生が寄り添い、救いの手を差し伸べる連作短編八編。 いじめられる子供、いじめる子供、両方の心情とともに、吃音のある教..
Weblog: かみさまの贈りもの〜読書日記〜
Tracked: 2007-10-27 21:05

青い鳥 重松清
Excerpt: 装画は木内達朗。装幀は新潮社装幀室。「小説新潮」2006年4月号〜2007年4月号不定期掲載に加筆改稿。連作短編集。 目次:ハンカチ/ひむりーる独唱/おまもり/青い鳥/静かな楽隊/拝啓ねずみ大王..
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2007-10-28 01:41

青い鳥 〔重松 清〕
Excerpt: 青い鳥重松 清新潮社1680円Amazonで購入livedoor BOOKS書評/国内純文学_uacct = "UA-918914-3";urchinTracker(); ≪内容≫ 先生はうまくし..
Weblog: まったり読書日記
Tracked: 2007-10-29 20:28

「青い鳥」
Excerpt: 青い鳥 重松 清 学校ってなんのためにいくんだろう? 仕事ってなんのためにいくんだろう? あなたはなんのためにいきますか? かなりどもりのひどいムラウチ先生。けれどそれを苦にする..
Weblog: 柚子すき毎日
Tracked: 2007-12-14 18:45

青い鳥<重松清>−(本:2008年3冊目)−
Excerpt: 青い鳥 出版社: 新潮社 (2007/07) ISBN-10: 4104075078 評価:89点 重松清の本を読むときには覚悟が必要だ。 以前にもそんなことを書いたかもしれない。 ..
Weblog: デコ親父はいつも減量中
Tracked: 2008-01-05 15:24

【青い鳥】 重松清 著
Excerpt: いやぁ、失敗した… 本当に、まいった… 最後の「カッコウの卵」を電車の中で読んでしまった [:悲しい:] 先生はうまくしゃべれない。だから、“たいせつなこと”しか言わない――。 村..
Weblog: じゅずじの旦那
Tracked: 2008-02-19 22:43

青い鳥  重松清
Excerpt: 思い出しました。この胃がきゅっと締め付けられるような痛みや、呼吸を乱す胸の詰まり。重松さんの本は自分の中の色んな記憶と一緒になって、心と体の内側を物凄く揺らしてくるんでした。少年少女の物語を書いた時な..
Weblog: 今更なんですがの本の話
Tracked: 2008-04-13 23:12

青い鳥*重松清
Excerpt: 青い鳥(2007/07)重松 清商品詳細を見る 「よかった、間に合った――」 村内先生は中学の臨時講師。言葉がつっかえて、うまくしゃべれない。で...
Weblog: +++ こんな一冊 +++
Tracked: 2008-05-19 06:50

「青い鳥」/重松清
Excerpt: 「青い鳥」/重松清(新潮社刊)  先日、「気をつけ、礼!」を読んだ。 相変わらずいい意味で“重松臭”のする作品だった 「青い鳥」が映画化されると聞き、原作を読んでみることにした。 小説自体より、予告..
Weblog: 京の昼寝〜♪
Tracked: 2008-11-17 08:21
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。