2007年11月10日

夜想 貫井徳郎著。

交通事故で妻子を失ってしまい生きる力、後を追って死ぬ力さえ奪われた雪籐。そんな雪籐が、ある日不思議な能力を持つ遙と出会い、徐々に生きる目的を見出していく。
遙の能力によって多くの人を救いたい、遙と雪籐の願いは一つだった。しかし遙の力によって救われたい、自分たちも力になりたい、と集まる人々によって少しずつ変貌を遂げていく。

なんていうか、貫井氏の書く人物って好きになれないキャラが多いんだけど、この雪籐も嫌いだった。ずっと続くと思ってた、そんなことすらも考えないほど当たり前だった自分の日常が、交通事故によってすべて失われてしまった雪籐の絶望はもちろん同情する。
でも、なんかすごく最初から嫌いだった。
雪籐は遙によって救われたのではなく、救われたがってる男。最後に書かれるこの一言を、多分最初から感じていたからだと思う。

救われたいと願う彼の気持ちは至極まっとうで当たり前で責めることはできないけど、でもすごくうざかった。

人間を特別な存在として崇めると、そこにお金の匂いをかぎつけてくる人物やら、サークル化する若者やら、それぞれの心の動きはすごくリアルで、さすが貫井氏。

笠置も、磯崎も、雪籐も、女性スタッフも、どうもみんな好きになれなかった。
きっと私も、雪籐の立場だったらなにかに救われたいと願う気持ちは人一倍強いかも、だからこそ、同じ匂いがして好きになれなかったのかな。
実際には遙の能力に頼りたい気もするけど、そのくせこの作品において遙の能力だけが浮いていた気がしてしまうのはなぜだろう。

せめて、ちょっと勘が鋭いだけ程度にして欲しかった。
posted by じゃじゃまま at 22:49| Comment(7) | TrackBack(5) | 貫井徳郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
雪籐が抜け出せずにいた悲しみ。
その深さは本人にしかわからないことですが、救いを求める気持ちは痛いほど伝わってきて、
つらさを感じながらの読書でした。
光を感じさせる終わり方がよかったです。
Posted by 藍色 at 2007年11月11日 03:41
藍色さんへ
雪籐の立場なら救われたくて当然でそれは伝わってきたのに、なぜかイラッとしちゃったんですよね。雪籐の同僚たちと同じ目で感じてた私です。
本当、心狭っ!
Posted by じゃじゃまま at 2007年11月11日 07:42
確かにどの人物にも感情移入し切れませんでした。
一見一途に見える行動や言動も、つまるところ自己中心的な依存心からくるものだからでしょうか。
新興宗教が形作られるありさまを見せられているようなぞわぞわするものもありました。
人間、ときどき心して視点を変えないといけないなぁとも思わされました。
Posted by ふらっと at 2007年11月11日 08:28
ふらっとさんへ
自己中心的な依存心、そうなんです!それを感じたから最初から最後までイラッときてしまって、コフリットのメンバーすべてちょっと受け入れられませんでした。
Posted by じゃじゃまま at 2007年11月11日 11:07
「コフリット」に集まる人たち…
現実の世界にいますよね。
何かを信じるのって大切だけど
偏っちゃいけないなぁって思います。
雪籐さん、私も好きになれなかった。
なよなよした同世代の男の人の物語って
どうも苦手です。
Posted by なな at 2007年11月11日 12:34
これは宗教の話ではないのですが、救いを求めるために人に頼るという行為を理解することが出来ません。
私は恵まれていて、どん底を味わったことがないからなのだと思いますが。
だから私も感情移入は出来ませんでした。
でも、救いとは何かを考えさせられる話ではありました。
Posted by at 2007年11月11日 21:20
ななさんへ
雪籐の直面した不幸を思えば責めちゃいけないんですけど、でも遙の存在そのものによりかかってすがりながら立ち上がろうとしてるその姿が、ど〜しても嫌でした。
貫井さんの作品は、苦手なキャラが多いので読むのが怖いですよ。

花さんへ
私もどん底を味わったら多分コフリットに集まる人の誰かになるかもしれません。そういう要素があるから、こんなに毛嫌いしちゃうのかな〜?と思ったりしました。雪籐のようになりそうで、戒めなくては。
Posted by じゃじゃまま at 2007年11月11日 23:01
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