2007年12月11日

追伸 真保裕一著。

出だしは、期待外れの多かったここ最近の真保作品の中では、おや?と昔の緻密さを思わず思い出させるような、丁寧な書き出しに思えた。
私が評価している「ストロボ」のようなものでもいいかな〜、なんてちょっと嬉しくなったり。
離婚しようとしている一組の夫婦の、日本〜ギリシャ間の手紙のやり取り。一体なぜそんな頑なに妻は離婚を願うのか。かつて一人の女性から奪ってまでも手にした結婚なのに。
夫の方は、赴任先のギリシャで妻からの要求にどう答えていいか分からず、戸惑いと疑問を手紙で繰り返す。

次第に手紙には、妻の祖母の過去について触れられる。祖母の秘密、それがどのように現在の妻の心理に影響を及ぼしているのか、次第に明らかになる。
この辺が少々ミステリなのかもしれない。

夫と妻の夫婦間の問題から、徐々に祖母の過去へと遡り、それが一体どう繋がっていくのか。
手紙のやり取りのみだけど、一旦は破局へ向かう内容から、ほんの少し矛先が変わり、受容へと変化していくところが、いつの間にかって感じでそこはうまい。

ただ文中で、妻が祖母と祖父の過去の書簡を見つけたくだりで、一同涙が止まらなかった、と書いてあったから、涙の準備は万端。
そのわりに、私はあまり泣けなかった。

ネタバレになります。

祖母と祖父の愛には、なるほど、泣けるのかもしれない。
だけど、厳しい言い方だけど、祖母も孫である奈美子も男にだらしないだけって気がするんだけど。
奈美子に至っては、なんというか、別に好意を持ってくれてる男性に心うきうきすることぐらい誰だってあるし、そのことと祖母の血筋とを強引に結びつけて一人になりたがってる我が儘な女にしか思えなかった。

祖母の過去も、それは女として悲劇かもしれない。でも、結婚後の悲劇は、結局は身から出た錆なんじゃないかな。それなのに妻を愛し続けたであろう祖父のその献身ぶりに、わりの合わないものを感じてしまう。
そこまで祖母の過去、血筋にこだわる奈美子ならば、二人の未来が祖母たちとここまでもまた重なって欲しい。
posted by じゃじゃまま at 23:21| Comment(8) | TrackBack(5) | 真保裕一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
斬新な手法を使った作品だったので、目先のものに惑わされて、すっかりはまってしまった作品でした。
しかし、その割の合わなさを、なんていい男!と、そっちの方に解釈してしまいました。こんな人いるかい!と思いつつ、感動してしまった私です(爆)
Posted by ゆう at 2007年12月13日 19:36
ゆうさんへ
確かに手紙のやり取りだけで一冊ってすごいですよね。しかもわりと一気に読みきっちゃったし。
それに徐々に心境に変化があるのが伝わってきてそこは丁寧でしたね。
そんなに意地になって離婚したいって請うほど悪いことですかね?ちょっと好意持たれていい気分になることぐらい。

祖父も夫も器大きいですよね〜〜!妻と祖母にはもったいない!(爆)
Posted by じゃじゃまま at 2007年12月14日 22:11
祖母の秘密には興味があって読み進めたけど、なんとなくキレイすぎかな?と、思ってしまった。
そんな血筋だから「別れる」というのも、なんか違うかな。

最近の真保さんは、期待はずれが大きいです(>_<)
Posted by じゅずじ at 2008年01月19日 22:04
じゅずじさんへ
そうなんですよね。離婚の理由が「血筋」じゃあ、強引すぎますよね。っていうか、血筋のせいにしてないで、もっとしっかり自分を律していけよ、な〜んて辛口に思ってしまいました。

真保さん、そうですね、最近の作品はいまいちなのが多いですね。人気作家になってしまって時間ないのかな?昔はもっとじっくり丁寧な作家さんってイメージありましたけど。
Posted by じゃじゃまま at 2008年01月19日 23:36
私は今のところ、真保作品の中では『ストロボ』が一番好きなのですが、『追伸』、今度読んでみますね。
TB宜しくお願いします♪
Posted by 初めまして。 at 2008年05月10日 10:16
こんばんは。
私も「ストロボ」大好きです。
ミステリもいいんですけど、真保作品は人間ドラマもいいですよね。「灰色の北壁」も好きです。
Posted by じゃじゃまま at 2008年05月10日 21:55
 僕は泣きましぇん!でも読み始める前に思っていた以上に引き込まれました。

 ただ全編手紙のみというのは、結構読むのに疲れたかな。でもきっと書く方はもっとエネルギーを使ったんだろうな。真保さん、ご苦労さん。(^^

 でもじゃじゃままさんの感想を読んで…祖母はともかく、奈美子はふざけた奴だなと思えてきた。(^^;
Posted by higeru at 2008年07月12日 11:36
higeruさんへ
やっぱり時間が経っても、奈美子には共感できない〜。
真保さんの作品、普通に感動して泣けるのもあるのに、最近は自然に泣けないですね〜。

もっともっとうまい作家さんのはずなのに、最近はピーク越えちゃったんでしょうか。
Posted by じゃじゃまま at 2008年07月12日 22:38
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