2007年12月25日

秋の牢獄 恒川光太郎著。

≪★★★★≫
先が知りたくて一気に読んでしまった。
「秋の牢獄」。まさに。いつまで経っても11月7日から逃れられない。終わらない一日。昔読んだ北村薫氏の「ターン」を思い出した。
何度も何度も、同じ日を繰り返す。一体なんのためなのか?
理由は分からない。いつか11月8日を迎える日が来るのだろうか。
何十回と妻を殺しても、目が覚めるとまた妻が浮気をしに行く。
そんな繰り返しの日々、やっぱり絶望しちゃうだろうな。
北風伯爵がどんな存在なのか分からないけど、最初は怯えてた藍も、ただ繰り返される日々に絶望し、北風伯爵に飲み込まれる日を、なにか救われる時として迎えるところが、怖いようなでも嬉しいような。
不思議な物語。

「神家没落」も、ちょっと薄ら寒い。迷い込んだ一軒の屋敷。そこに囚われると出ることはできない、身代わりを立てない限り。
そして数日置きに屋敷は消滅し、日本のどこかの場所に現れる。それは決まったルートで。彼は一体なんのために、どんな運命でその屋敷に迎え入れられたのか。脱出するために、ある男を身代わりに屋敷に閉じ込めたけど、その男はとんでもない犯罪者だった。
以前「風の古道」で見かけたレンと対決するあの男を思い出してしまった。犯罪者にとってはいい隠れ蓑だよね、かなり怖い。
神家は滅んだけど、切なさを伴う。

「幻は夜に成長する」は、リオがなぜ選ばれてしまったのか。その力を利用しようとする者どもに、復讐していって欲しいと思ってしまった。その体にのしかかろうとする男を、破滅に導いて欲しい。
ただ、リオという少女がいなくなった家では、どんな悲しみが襲ったのかと思うと、嫌な気分だし、物語自体理不尽な展開で、あまり好きじゃなかったかも。

恒川氏の物語は、登場人物たちの当たり前の日常をある日突然奪ってしまう、その切なさがまたいい。


posted by じゃじゃまま at 23:03| Comment(13) | TrackBack(14) | 恒川光太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おはようございます。
「秋の牢獄」が一番好きでした。
北風伯爵に飲み込まれた後はどこへ行くんでしょうね?
Posted by なな at 2007年12月26日 08:12
こんばんは。じゃじゃままさん。
私も、三編目はあんまり好きじゃなかったですね。
確かに理不尽で、よく物語を理解できなかったような・・・
一番よかったのは、ななさんと同じく表題作でしょうか。
Posted by ゆう at 2007年12月27日 21:38
ななさんへ
できれば飲み込まれた後、先に消えちゃった人たちと再会できてればいいですよね。
どんどんメンバーが増えて、そして一人ずつ消えていったら、最後は誰もいなくなっちゃったりして!?

ゆうさんへ
同じ日を繰り返すのも、一度や二度なら、今度はああしようこうしようって楽しいですけど、終わりのない繰り返しは絶望的ですよね。
やっぱりやり直したら、というかやり直せるのなら、その先に進みたいですよね〜。
3編目はよく分かりませんでした。
Posted by じゃじゃまま at 2007年12月27日 22:37
後の短編になればなるほど、人間の心の闇が感じられて、怖ろしかったです。
本当なら北風伯爵の方が怖いのかも知れないけれど。
Posted by エビノート at 2007年12月27日 22:47
こんばんは。
三者三様の囚われた人たちのドラマ。
ホラーは苦手なんですけど、なんとなく心惹かれる内容でした。
次も読んでみようと思います。
Posted by 藍色 at 2007年12月28日 00:30
こんばんは。
怖いはずの北風伯爵が希望に繋がっていく。
一見矛盾した人間の心理がそこにあって不思議な話でした。
違った色合いを持つ三つの異界でしたが、次回作ではどこへ連れっていってくれるのでしょう。
Posted by 雪芽 at 2007年12月28日 22:59
エビノートさんへ
怖いはずの北風伯爵も、ひたすら終わりのないリプレイをしてるうちに、その存在が救いになっていくのがなんとも切ないですね。でもなんとなく分かりますよね、自分では終わらせられないなら、って。

藍色さんへ
私もホラーは苦手なんですけど、恒川さんの物語は不思議ですよね。ホラーなんだけど、どことなく切なくて懐かしくて。楽しみな作家さんです。
「神家没落」の青年、なぜ戻る〜〜!!っと叫んでしまいました、心の中で。(苦笑)

雪芽さんへ
最初は北風伯爵に会ったらどうしよう、ってハラハラしていたのに、不思議ですよね。でも、何度も何度も繰り返さなくちゃいけないなら、いい加減終わりにしてよ、って私も最後は北風伯爵に救いを求めるかも。北風伯爵の正体はなんだったんでしょうね。
Posted by じゃじゃまま at 2007年12月30日 23:12
じゃじゃままさんこんにちは。やっぱりその辺りを思い出したり、連想しますよね。『ターン』と違って一人きりじゃないから、はじのうちは暢気にも構えられるのかなあと思いました。
Posted by たまねぎ at 2007年12月31日 15:04
たまねぎさんへ
「秋の牢獄」は仲間いて最初楽しそうだったんですけどね。でも一人、また一人と消えていく、終わりのない繰り返しは、やっぱり絶望に繋がっていきますね。
Posted by じゃじゃまま at 2008年01月01日 22:27
北風伯爵は、怖いようだけど、飲み込まれないと元に戻れないという、不思議な存在でしたね。
次の日には元にもどっているのなら、死ぬ覚悟で思い切ったことが試せそう!でも小心者の私には、何かをするという勇気がないかも。
Posted by at 2008年08月27日 21:20
花さんへ
飲み込まれると元に戻れるんですか!?
花さんに言われるまで、全然気付きませんでした。どこ行っちゃったんだろう、って。それなら飲み込まれるのも怖くないですね。

思い切ったこと試せそうですが、私も小心者なので、そういうときに限って元に戻らなかったら、って思ってしまって、できない。(爆)
Posted by じゃじゃまま at 2008年08月30日 18:07
こんにちは。
私は「君が見つける物語」という小説で
『秋の牢獄』を発見しました。
先が知りたくて一気に読んでしまい、読み終わった後に、恒川光太郎さんに続きを作って欲しいなぁと、思いました。


とても面白かったです。

私は『秋の牢獄』を読んで、もしかしたらデジャヴュを感じる時は私も同じ日を繰り返しているのかもしれない!!と、思ってみましたが、デジャヴュは、ただの脳の錯覚でした。

主人公はあの後、十一月八日に行けたのでしょうか?

長文失礼しました。
Posted by 藍ちゃん at 2012年01月24日 21:34
藍ちゃんへ
好きな作家さんを発見できるのは幸運ですよね。
恒川さんの作品は、なんだか懐かしい気持ちにさせてくれるんですよね。
不思議なホラーなんですけど、雰囲気がとっても好きです。

ずっと11月7日に囚われているのは、まさに牢獄で頭おかしくなっちゃうでしょうけど、でも何度でもやり直しができるのはちょっとした魅力です。(爆)
Posted by じゃじゃまま at 2012年01月29日 00:56
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