2015年03月23日

荒神 宮部みゆき著。

《★★★★☆》

北に位置する二つの藩。山神様のいる大平良山を挟み、主藩と支藩に分かれた永津野藩と香山藩には過去からの因縁がある。
香山藩、瓜生家の側室の子が病に倒れた。そんな時に二つの藩を襲った怪物。
民を食い、村は壊滅状態に。が、民を助けるどころではない藩に、香山藩からは小姓、小日向直弥。永津野藩では、藩を牛耳る弾正の妹、朱音が、村の人々と立ち上がる。

怪物に立ち向う時、二つの藩の因縁と、朱音と弾正の過去、香山藩にはびこる病の原因、すべてが一つに繋がっていく。
さすが宮部氏。どこにも誰にも無駄がない。
怪しげな絵師も、永津野に流れ着いたという弾正も、妹朱音も、そしていがみ合う二つの藩も、すべてラストへ向けて繋がってまとまって、もう本当にさすがと言うしかない。

宮部氏の時代物は、常に人の情から来る物語で、いつも物悲しくなるんだけど、やっぱりね、だった。
でも、仕方ない、この寂しさの余韻が宮部氏の時代物なので。

でも、側室の子の死因は?暗殺者は?寺から盗まれた絵馬は?榊田宗栄の身元は?伊吉の正体は?
やじの言ってた通りだったのかな。気になるけどね〜。


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2014年08月03日

ペテロの葬列 宮部みゆき著。

《★★★》

バスジャックに遭った杉村三郎。犯人は警察がバスに突入した際に、自殺した。
後日、犯人は約束通りに人質たちに慰謝料を送って来たが、いったい誰が?そして、あの犯人の目的はなんだったのか。
まるで雲を掴むかのような調査だったが、やがて世間を騒がせた詐欺事件へと繋がっていく。

このシリーズ、ドラマでは小泉孝太郎が演じていて、コンツェルンの娘を国仲涼子。この二人、あんまり好きじゃなくて、特に小泉孝太郎がどうも、この人役者??なんだけど、役者・・・ね〜、と思ってるせいで、どうも小説も進まなかった。

で、国仲涼子の方は、彼女がってわけじゃなく、小説の菜穂子が嫌いなんだ。
今多コンツェルンの娘で、いわゆる愛人の子だから本流からは切り離されるわりに、贅沢に育って、前のシリーズのときから、菜穂子の世間ずれした発言や、現実を知らないお嬢様感覚にイライラさせられてて、ああ、このシリーズか、って思ったら、厚みもあったせいもあるけど、二週間かかってしまった。

でも、読み終えての感想。

いろんな意味ですっきりした。

庶民の出の杉村三郎が、今多コンツェルンの娘と結婚することになって、家族との絆も断たれ、会社も辞めさせられ、娘婿として微妙な立場で義父の会社に入る。
菜穂子は、自分の生活をまったく改めることなく、今までどおりの生活を満喫して、生まれた娘は私立小学校に通わせたり、なんともまあ、釣り合ってない夫婦だったんだよね。
それがずっと不愉快だったわけで、それがようやく解消される結果となり、すっきりした。

バスジャック事件が解決するよりも、そっちがすっきりしてよかった。

杉村三郎の気持ちも、実はずっとそこにあったんじゃないかな。
それをだましだまし続けてきたけれど、隠していた本心にやっと気付くことができて、ああ、すっきりした。

詐欺事件に関しては、ああ、そうですかって感じ。
たくさんいる被害者、加害者の中から、どうして選ばれたのか、ってのは結局分からなかったけど、それもまあいいや。

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2014年04月18日

泣き童子 三島屋変調百物語参之続 宮部みゆき著。

《★★★★》

三島屋のおちかの物語、第三弾ですね。
もう、さすが!としかいいようのない、宮部氏。特に時代物は面白いけど、ますます磨きかかってますね。
許嫁を幼馴染に殺された過去を持ち、その心の傷を少しでも癒すために叔父夫妻の元へ行儀見習いの名目のもと厄介になっているわけだけど。
この叔父が、世の中の不可思議、人の業や生き様の話を聞くことによって、深く沈み傷ついたおちかの魂が、なにかを見出すことになれば、と百物語を言いだした。

どれも不思議で、業や憎しみ、悲しみをおちかに語り聞いてもらうことにより、吐き出し、胸につかえた重りを少しでも軽くすることができる。語って語り捨て、聞いて聞き捨て。

「魂取の池」 ・・・おちかと同年代くらい、年若い娘がやって来た。許嫁と祝言をあげる予定の娘で、なんの不安もない幸せな祝言なのに、取り越し苦労な心配ばかりするお文。そんなお文に、母親が言って聞かせた祖母の話。「魂取の池」と呼ばれる近づいてはいけないその池に、恋人同士で近づくと、男性を嫌いな女性に横取りされてしまうという。
祖母の身に起こったなにやら因縁めいた出来事。目先にとらわれず繋がった縁を大事にしなきゃいけない、というお話。

「くりから御殿」 ・・・息子夫婦に代を譲り、隠居の身となった夫婦。夫には妻には聞かせられない話があった。幼少の頃、水害で生き残った長治郎は、別れたままとなった従姉妹や幼馴染たちの遺体が見つかるたびに不思議な夢を見る。ずっと自分だけが生き残ってしまったことを悔やんでいる長治郎。早く自分もみなのことろへ呼んでくれよ、と願うのに、仲良しだった従姉妹たちはかくれんぼして逃げてしまう。自分だけが生き残ったから、みんなそんな意地悪をするのかい??と泣きながら問う長治郎に、夫の胸中をずっとずっと察していた妻と、言えなかった夫の気持ちに泣いてしまった。
そして、仲良しだった幼馴染たちが長治郎を恨むはずがない、と妻の言葉にまた涙。

「泣き童子」 ・・・ある日三島屋に不吉な感じの老人が百物語をしに現れた。老人なのか、若いのか。番頭の八十助が「なんともぞぞぞっと胴震いする」ような人物だという。断ろうとした矢先、その人物が倒れてしまい、三島屋で面倒をみる羽目に。見れば、八十助が言うような人物には感じられず、そのまま百物語を聞くと・・・。
差配をしていた店子の前に捨て子があった。この赤子は人の悪意や悪行を感じ取り、火がついたように泣きわめくという。この赤子により、差配は自分の娘の犯した罪を知り、娘は自分を見るたびに泣きわめく赤子にとうとう耐えかね、赤子を階段から突き落として殺す。
差配は娘が犯した二つの罪に目をつぶり、月日はめぐるが、娘も差配もその泣き童子から逃れることはできなかった。
八十助が感じたぞぞぞっとするような業を、この差配だった男は持っていた。

ちょっとホラーで怖いよね。

「小雪舞う日の怪談語り」 ・・・いつもは自分が百物語を主催する側のおちかだが、この日は岡っ引きの半吉から井筒屋で行われる怪談語りに誘われる。
この行き帰り、おちかは心優しいお地蔵様と出会い、会では密かに気になっている青野先生との再会もあり、嫌な感じの母娘もいたり、忙しかった。
呪われた屋敷で、入ったまま出てこなかった語り手の父親、絶対に転んではいけない橋で転び、お腹の子を守るために寿命を十年あげた話、人の病が見える目を持つ母の話、そして、半吉が昔親分から言いつけられた悪どいことをしてきた男の最期を見届ける話。

一番最初の、屋敷から出てこられなくなった話が、なんとも奇妙で怖かった。一体、なにが部屋の奥にいたんだろう。

「まぐる笛」 ・・・三島屋の黒白の間に今回やって来たのは、若いお武家さまだった。方言が出てしまうその若者の語った話は、母の故郷の村で起こる数十年に一度のなんとも恐ろしい出来事。そのことを治めることのできるのは女だけに限り、若者の母親はその選ばれた女だった。
人の怨念が渦巻き、退治しても退治してもまたぐるぐるとその怨念は形を成し、まぐるとなって現れ、人々を襲い食う。若者が子供のころまぐるに遭い、母親の秘儀を目の当たりにし、胸にしまっておいた話。

実は私はこういう食害話が好きだったりする。私の中ではヒグマが暴れてたけど、これは人の怨念でできた怪物。

「節気顔」 ・・・おちかの元へ訪れたお多福顔の女性は、叔父の話を語った。その叔父の話にはおちかにも縁のある、ある人物が現れる。
その昔、叔父はあの世とこの世を行き来する男から仕事を頼まれる。それは決められた日に、死者の顔になること。死者の縁者に会い、少しでも慰めになったりすればいい、時には自分を殺めた奴らに復讐しに行くこともあるので注意が必要だったりもする。
叔父は、若い頃散々親不幸をしてきたから、内心、自分の親に会いたい、その顔になりたいと願ったが叶わなかった。両親はこの世に想いを残さず、あちらへ行ったのだろう。
そうして、叔父はだんだんと自分の寿命も尽きてきて、ある日、あの人物がやって来て年季明けを言い渡され、一瞬のっぺらぼうになって、また叔父に戻り亡くなった。

叔父が、復讐をしたい男の顔になって、自分を殺めた者たちへ会いに行った話。結局、あの殺された男はなにをやってみんなに袋叩きにされて死んでいったのだろう。叔父もその謎を解きたかったみたいだけど、それは謎のままで、気になる。
そして、一瞬のっぺらぼうになったのも、どこへ誰に会いに行ったのか、あの人物とおちかの因縁は終わっておらず、次に繋がるのかな、とちょっと期待してる。

どれも人間の愚かさだったり、業だったり、深い愛情や悲しみ、宮部氏の人情物語はやっぱりさすが。
そのくせ、あの、あの世とこの世を行き来する人物は、異色。

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2014年03月13日

ソロモンの偽証 第V部 法廷 宮部みゆき著。

《★★★》

いや〜、長かった。
第U部は案外夢中になったんだけど、第V部はただ長かった。
だいたい、柏木の幼馴染、神原が怪しかった。恐らく自殺であろうことは間違いなかったけど、真相を知ってそうだったし、なんかあるなって思っていて、そのわりにだらだらと学校内裁判が始まって、とっととしてくれよって感じ。

しかも、中学生とは思えない法廷劇で、いくら優等生でもここまでできるかちょっと違和感。

でも本当は、一瞬、三宅樹理は本当になにか知ってるんじゃないか、なにか見たんじゃないかって疑ってしまったし、実は大出たちが殺した??ってほんの一瞬でも疑ったのは事実。
それくらい展開に衝撃はあった。

神原が実は柏木の自殺の現場にいたのは、結構衝撃で、そこで明かされた真実は、柏木は中学生のわりに考え過ぎの面倒くさい嫌な奴だったってこと。
神原自身が証人として呼ばれた時も、それまでは弁護側でプロ顔負けの質疑応答が、急に子供っぽくなっちゃって、あれだけの優等生なんだからそこの変貌ぶりもなんか変だった。

私の中では三宅樹理は、松子を押した犯人だと思ってたんだけど、違ったっけ?

学校内で起きた自殺の真相を、生徒たちで調べようっていうのは面白かったけど、あまりにも出来過ぎた子供たちで、たとえばもっといろんな失敗があったり、試行錯誤しながらの裁判っていうのならしっくりきたかな。

柏木君、結局やな奴だった。



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2014年01月23日

ソロモンの偽証 第U部 決意 宮部みゆき著。

《★★★☆》


同級生が雪の日、学校の屋上から転落死した。これは事故なのか、自殺なのか。それとも・・・。
嘘の告発状、隣人のストーカー、マスコミの穿った報道、それらに混乱させられ、同級生が死に、問題児たちも仲間割れをし、一人は重傷。主犯格とされていた生徒の自宅放火、学校側は元校長を追いやり、普通の生活に戻そうとしている。

警視庁の刑事を父に持つ、優等生藤野涼子は、立ちあがった。もうごまかしや嘘はごめんだ。自分たちの手で、あの日起こったことの真実を突き止めるんだ、と。
校内で裁判を起こすことにより、なにが真実だったのかを証明するという。
涼子は、当初、転落死した同級生を殺した、とされる大出の弁護人に名乗りを上げた。ところが、涼子の父が刑事ということで、大出の父の邪推により涼子は検事側に。
大出の弁護人には、転落死した少年と小学校と塾が一緒だったという他校の生徒が名乗り出た。

涼子は、大出の無実を証明する側だったのが、今度は大出たちが殺した立証をしなければならない。そのために、三宅樹理が書いた嘘の告発状を、真実のこととして受け止めなければならないのだ。
あの告発状は、樹理が自分の大出たちへの復讐のために書いたもの。その嘘をつき通すために友人まで犠牲にしたのだ。

転落死した柏木卓也とは小学校と塾が一緒だったという弁護人、神原和彦は、自分の友人は自殺だったという証明のために疑われている大出を弁護する、なんか複雑だよね、きっともっともっと裏がある。
自分の友人の、自殺を認めるのと、それは殺人でした、と認めるのはどっちが友人らしい発想なんだろう、かと。

涼子と和彦は相反する立場で、柏木卓也の死の真相を追究する。でも彼らがやろうとしているのは、大出の有罪無罪を追究するためではなく、柏木卓也がなぜ死ななければならなかったのか、その真実を知りたいだけ。だから勝敗は関係ない。

中学生とは思えないほど、すごい調査能力で、出てくる言葉も、普通の子供はいくらドラマ見てても知らないよ、って、そこは宮部氏やりすぎって気もしないでもないけどね。いくら優等生たちでも、廷吏とか出てこないって。
しかも、大出の自宅放火の話や、保険金詐欺、学校内裁判のためとか、娘だからとか、話しちゃいけないんじゃないの?物語の展開のためか分からないけど、あんだけ放火の件には触れるな、とかこの話は涼子だけの胸に、って言ってたのに、結局和彦とかみんなに話してるし。

まあ、そこは置いといても、実はぐいぐい引き込まれてしまった。だって、涼子が気付いてしまうんだよね。
樹理の嘘の告発状は、実は嘘ではないのでは、自分たちが追っていることの真実は、実は他のところ、とんでもないところから出てくるのではないか・・・と。

そして私ももしかして、と疑惑がムクムク。
外れてたらご勘弁。あの神原少年が実はキー、だよね?
そして、なんで時代設定がバブル崩壊直前なんだ?と思ったんだけど、公衆電話を使いたかったから、電話ボックスというアイテムがどうしても必要だったんじゃないかと思ったんだ。

電気屋さんのご主人が見た少年というのも、和彦なのでは?
もちろん、野田健一がそういう風に読者を誘導してる気がするんだけど。

どうして柏木卓也が転落死したのか、その真実を私も知りたい。きっと私がモヤモヤと考えている以上のことを宮部氏は与えてくれそう。
どれほどの衝撃を私は受けるのだろうか。

柏木兄の存在が、いまいち忘れてしまって、このお兄さんってどんな立ち位置だったっけね〜?
弟を憎んでいたんだっけ?確か、あんまりいい印象残ってなかった気がするから、どうだったっけな〜。

早く第V部が読みたい。

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2013年11月08日

桜ほうさら 宮部みゆき著。

《★★★★☆》


父が濡れ衣を着せられ、切腹した。父を信じ、どうにかしたいものの為す術のない次男の笙之介。
手がかりを探しに江戸の町に住み、写し本の仕事をしながら、父を陥れたとされる代書屋を探すが、ある日、笙之介は、桜の木の下で、美しい女性を見かける。
父の無実を晴らすという目的と、長屋で起こる様々な出来事と、混じり、絡み合いながら、笙之介が手にした真相は・・・。

第一話「富勘長屋」・・・ 父はもらってもいない賄賂の疑いで謹慎となり、挙句に腹を切り、とどめを刺したのは兄だった。実直な父は、母と兄からうとまれ、なんと哀れだったことか。そもそもは野心家の兄と、不本意な婚姻で不満だらけの母が、長男を出世させるためにお金をばらまき、とりなしてもらおうとしたその行為が父を追い込んだのではないか。
そして、母は父に似た笙之介よりも、兄、勝之介のことしか頭にない。一度は途絶えた古橋家を、兄のために再建したい。そのために、死に別れした元夫の親戚の元へ、笙之介を送り込み、話をつけさせるために江戸に向かわせる手筈も勝手に進めていた。

本当、この母、里江にいいところ一つも見つけられなかった。この里江こそ、最後にもっとガツンと言って欲しかったけど、さてさて。
里江の最初の夫の、伯父である坂崎何某、東谷様は、里江の要望を聞くと思い込ませて、実はあのままではどうにもならない笙之介を救い出すための方便だった。

そして、真の目的は、笙之介の父、古橋宗左右衛門を陥れた黒幕と、その手先となったはずの代書屋を探し出させることだった。その裏には、藩の跡目争いがあるという。
でも、なかなか目的は進まない。なんといっても笙之介が案外ぼんくらで、どうも頭のめぐりが悪いように見える。
ま、それでこそ笙之介なんだけどね。

桜の木の下で見かけた女性、和香との出会い。和香には人には見られたくない秘密があるけど、笙之介は二度ともそれが見えなかった。心で和香を見つめたからそれが見えなかった、と笙之介が世話になっている治兵衛は言う。

第二話「三八野愛郷録」・・・ 人探しをしているはずの笙乃介が逆に捜された。三八野藩の長堀金吾郎は、隠居した殿様が元気をなくし、暗号文のような手紙を書き連ねているという。その意味を探るため、かつて藩にいた笙乃介と同名の男を探しているという。

閑古鳥の鳴いている店の二階で、和香や近所の手習いの子供たちの知恵を借り一計を案じる。
ほどなく、その暗号の意味を知る女性が現れ、殿様の昔を懐かしむ手紙だと分かる。
そして、閑古鳥の鳴いている店も、亡き父の蒲焼屋を嫌々継ぐのと、内容は違えども店を守るとでは、どちらが親孝行か、と長堀金吾郎の言葉により、店の主人は、安い居酒屋を始め、大当たりする。

なかなか温かい話だったね。

第三話「拐かし」・・・ 治兵衛が行方不明だという。ところが、治兵衛はいた。三河屋の一人娘お吉が拐かされたのだ。治兵衛には昔、妻が拐かされ、殺された過去がある。そのために三河屋から相談され、連絡も忘れてしまった。

これには実はお吉が養女であることが大きく関わっていた。女中が生んだ子供を三河屋の夫婦が取り上げたのだ。だけど、我が子のように、そして跡取り娘だと思えばこそ厳しくもした。それがお吉の疑念になり、実母の出現で狂言誘拐となってしまったのだ。

実母には病気持ちの夫と、息子がいた。この息子が悪い虫で、お吉は嫌な女になってしまっていた。どんなに治兵衛が三河屋夫婦の愛情を説いても、聞く耳を持つどころか、心がよじれてしまっていた。
胸糞悪いとはこのことで。

笙之介や手習い所の武部先生たちで捕まえようとしたけど、逃げられてしまった。

よくあそこまで心がよじれて嫌な女になったお吉なのに、三河屋に戻ったもんだ。悪い虫の兄が、ただ単にお吉を利用しただけって分かったのはよかったけど、私の気持ち的にはそのままあの実母と継父と貧乏長屋で暮らしちゃえばいいのに、って思ったけどね。
人情物語でもあるからね〜〜〜。

第四話「桜ほうさら」・・・ ようやく笙之介の本来の目的が果たせる。父を追い込んだ偽文書を書いた張本人が笙之介の前に現れた。治兵衛から手を加えて代筆するように頼まれていた話の作者、押込御免郎その人だ。
笙之介は、何重にも騙されいた。

なにかと世話を焼いてくれていた治兵衛は、最初から笙之介の事情を知っていた。そして、押込御免郎が探し人だということも、押込御免郎がなにをして古橋宗左右衛門を陥れたのかも、本人から聞いて知っていたのだ。

悲しいことはまだ続き、本当の黒幕は兄だったこと。東谷様は、笙之介のために彼を江戸に呼び寄せたのではなく、兄、勝之介を救いたくて笙之介を動かしていたこと。ほとんどの筋書きを知っていた上で、笙之介はただそこにいればいいだけだったってこと。

なんとも救いがないじゃない。あの野心家で嫌な兄が黒幕で、その兄を救いたくて東谷が動いていた、なんて。あんなの救わなくてよろしい。
そしてその兄を溺愛していた母、里江。宗左右衛門の心根のよさとかまったく知ろうともしなかったあの母に、誰かこっぴどく叱って欲しかった。
それすらも、東谷様は、あんな勝気な里江すら、甥の元嫁であるというだけで情を持っている。

これじゃあ、笙之介や父があまりにも可哀相すぎる。

挙句に、逃がしてやろうという東谷様の心を裏切って、なんと勝之介は弟を斬りに江戸に戻ってくる。
これじゃあ、あのお吉じゃないか。心がよじれて、もうどうにもならない。

なんかもう抜け殻のような笙之介は、そのまま死んじゃってもおかしくないような展開で、宮部氏よ!!やっぱりあなたの時代物はこうなるのねって、切なくて切なくて。

ここで生きてくるのが、和香の存在でしょ。
長屋の人々でしょ。もうほとんとあっちの世界に行っていた笙之介を呼び戻したのは和香。
そもそも事の真相が明らかになって、笙之介はそのまま藩に戻ろうとしていたんだよね。どのみち切ない別れが待っていたんだけど、兄の乱心?によって笙之介は三途の川渡りかけて・・・そして和香が「和香を置いていかないでください」と必死の看病をして。

なんとか生き延びた笙之介に待っていたものは、東谷様というか坂崎による藩への根回し。あの押込御免郎は斬られ川に浮かんだ。藩で跡目争いの画策をしていた一派は一掃され、勝之介により笙之介は殺されたことになっている。
なんといっても勝之介の企てにより父を殺したことなどばれて、どのみち藩にはもう古橋家はいられない。逆に戻ったら、兄の起こした罪でもしかしたら笙之介までなにかしら罰あるかもしれないし。
ならば、死んだことにして江戸でやり直すべし、という坂崎の配慮だよね。

ああ、よかったよかった。もう武士でもないけど、藩に戻る必要もないし、師匠の書生として江戸で骨を埋める、そしていつか和香と・・・って。
いや〜〜、切なかったけど、結ばれてよかった。

まさか続編で、兄舞い戻る、ってのやめてね。せっかくのハッピーエンドなんだから。





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2013年08月13日

ソロモンの偽証 第T部 事件 宮部みゆき著。

《★★★》


中学校で男子が転落死した。その体は雪に埋もれ、同級生が発見した。
これは自殺なのか。両親は自殺だと受け入れたものの、その後の匿名の手紙が終息していた事故を大きく揺れ動かす。
匿名の手紙は、第三者による復讐だった。彼女が復讐したいのは、自分をいじめていた問題児三名。その告発の手紙も、悪意ある更なる第三者の手によって、担任教師や告発文を手伝った善意のクラスメートを追い込んでいく。

クリスマス・イヴの深夜、中学校の屋上から転落した少年は、いったいなんのために。事故か自殺か・・・それとも事件か。

転落した少年の心には、親の愛情の目をかいくぐり、悪意が大きく育っていたのか。

まだ読み終えたのは第T部のみなので、この先どうなっていくのか。
刑事の父を持つ優等生藤野涼子が、事故を世間に向けて間違って報道しているフリーライターに宣戦布告する。「自分たちでこの問題の真実を見つける」と。
死んだ少年も、告発文を書いた少女も、教師宛の手紙を盗んだ隣人も、間違った角度からこの事件を追うフリーライターも、真実が明かされ天罰が下る者には下る、そんな日を楽しみに待つ。
それにしても、まだU部、V部と続くので、その日は遠い。


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2012年07月11日

おまえさん 下巻 宮部みゆき著。

《★★★★★》


身元不明の辻斬り、生薬屋瓶屋の主殺し、二十年前の大黒屋がすべてを結んでいた。そして夜鷹殺し。
瓶屋の後妻佐多枝と、美しい一人娘史乃の間にある哀しい誤解。
佐多枝の先夫栗橋医師と、瓶屋新兵衛がきっかけを作ってしまったのか。弓之助の語る真実は、史乃への恋の病にかかっている間島信之輔を打ちのめし、史乃とかつての栗橋医師の助手松川哲秋を出奔させるという失態を犯してしまった。
仲間を殺めた罪を背負ったまま二十年生きてきた三人と、父への疑念を晴らせないまま男と逃げる羽目になった娘、史乃。
かつておでこを捨てたおきえとの再会。
いろんな哀しみが詰まった下巻だった。

とりわけ、史乃を逃がしてしまった間島には憤慨してしまった。なにやってんだよ、と。

「残り柿」・・・ 史乃と松川が逃げてからひと月。松五郎は、おでこを捨てたおきえがおかみに納まった玉井屋から追い出されそうだ、と泣きつかれながらもどうすることも出来なかった、いやどうしようとも思っていなかった。ところが、おきえは図太くおかみに納まったままという結末に、疑念を持つ。
ずっと最初からおきえには嫌悪感を持ち続けていたけど、この章はよかった。おきえを好きになれて、こういう結末にしてくれて、宮部氏よ、ありがとう、と思わず仰いでしまった。

「転び神」・・・ 残り柿と同時期。こちらは、瓶屋の事件とはまったく無縁の、横恋慕した挙句刃物を振り回した仙太郎の事件で知り合った丸助が、弓之助やその兄、淳三郎たちと関わる物語。
縁とは不思議なもので、仙太郎の事件の丸助と、瓶屋の事件のお仲、そして淳三郎が知り合って笑いあうなんて。
弓之助の子供らしい顔を見るのも意外だったし、こんな粋な兄がいたなんて。
淳三郎や、仙太郎にとって丸助はいい存在だし、丸助も幸せかなって、ほっこりした。

「磯の鮑」・・・ つくづく間島信之輔にうんざりした。史乃の次は佐多枝ですか。
それを女差配人にも指摘され、コンプレックスを持ってる男はなんだかな〜と。女に痛い目に遭わされて、間島殿はいつ目が覚めるのか、とキリキリした。

「犬おどし」・・・ 長い長い事件がようやく終わりを告げる時が来た。
逃げ続けていた史乃と松川が見つかった。自分を取り戻した間島信之輔と、自分が壊れてしまった史乃。
事件の終わりは、哀しく切なかった。史乃にはふてぶてしいまま裁きを受けて欲しかった。15歳で壊れてしまった少女は悲し過ぎて、すべてを壊した松川の口からは結局なにも聞けず、やっぱり物悲しいラストだった。



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2012年07月07日

おまえさん 上巻 宮部みゆき著。

《★★★★》


「ぼんくら」「日暮し」に続く井筒平四郎と甥っ子弓之助が江戸の町で起こった遺恨ありの人斬り事件に挑むシリーズ第三弾。
おなじみのお徳さんや政五郎、おでこの面々が嬉しい。

なんていいながらも、読みすすめておいおい思い出してきたんだけど、そうそう、主要な登場人物はそうなんだけどね。
前の事件を忘れてるので、なんだったけな〜と。
宮部氏の時代小説は、上巻はなんのかんのと江戸の活気が伝わってきてワクワクするくらい面白いんだ。だけど、下巻になると実はその裏にある哀しさとか人情の深いところが出てきて、能天気に面白〜〜いと思ってた自分を恥じてみたくなる。
そんな「ぼんくら」と「日暮らし」だった・・・ということは覚えているんだよね。

本所深川も八丁堀も区別がつかないけど、江戸の町、下町は分かってる。
南辻橋のたもとで辻斬りがあった。その亡骸を動かした後も血の名残か、何度洗い流してもそこには人像が残った。江戸の町の人々は、これは斬られた者の怨念、無念だろうかと恐れる。
そしてそれと同じ斬り方をされた事件が起こった。生薬屋瓶屋の主人、新兵衛。やがて最初の辻斬りの身元が割れる。
二つの事件は、二十年前のある恐ろしい陰謀が発端だった。

と、さすが宮部氏だな〜。
一人一人の個性の書き分けが本当に素晴らしい。
なんだけど!「おまえさん」上巻に一週間も費やしてしまった。面白くなり始めるまでにちょっと時間がかかった。中盤までがなんとものらりくらりと、なかなか進まず、そこまでに五日ほど。
中盤以降からはそれはもう俄然面白くて、すでに下巻に着手。
ただ、もったいなくてまだ終結を見てないけど。

非常に楽しみだけど、終わるのが残念。


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2012年05月02日

刑事の子 宮部みゆき著。

《★★★》


父と二人で住む下町で、家政婦のハナからある噂を聞かされた順。
近所にある屋敷に入ったきり若い女性が出てこない、そして時を同じくしてバラバラ殺人事件が起こる。
屋敷の噂は本当なのか、そして第二のバラバラの遺体が発見される。
順は同級生とともに噂の真相を探ろうとする。

屋敷に住む日本画家、その秘書、刑事である父、道雄は秘書の息子の動向を気にしている。
やがて殺された若い女性たちの共通点が見つかる。
画家の家で見つけたマッチが気になる順はハナとともに喫茶店を訪れる。そこで手がかりをつかんだ順とハナを待ち受ける危険とは・・・。

装丁がティーンズ向けっぽかったので、そんなつもりで読んだ。

展開はどことなく陳腐だし、順の家にイタズラの手紙を投げ入れた同級生もむかついたままだし、きっかけとなった秘書の息子の事件もずいぶんと雑?
唯一手が込んでいたのは、秘書の犯行ですかね〜。

少年たちに押し付けるために(いや、元々少年たちの犯行か)いろいろと脚色して、ご苦労さん。

両親が離婚して、母が再婚してる辺り、ちょっとブラックな味付けもあったけど、ティーンズ向けなのか、大人向けなのか、迷う作品でした。どっちでもいいと言われるとそうなんだけど、ちょっと装丁を変えた方がいいような気もする。個人的な見解ですが。



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2012年01月05日

チヨ子 宮部みゆき著。

≪★★★☆≫

ホラー&ファンタジー短篇集。
「雪娘」・・・ 20年前に殺されてしまった同級生。そういえば彼女が発見されたのもこんな日だった。久しぶりに同級生4人で再会することになった日、雪が降り始めた。
真犯人を知っている同級生と、知られている同級生。
真子の奥底に隠された嫉妬、秘密。小さな足跡が続く雪道。でも真子にはそれが見えない。なんともゾロっとした後味。

「オモチャ」・・・ 縁を切っていた親戚と偶然同じ町に住むことになった一家。その親戚の連れ合いが亡くなった。噂に尾ひれがついてまわり、それは大叔父の名誉を傷つけるものであったけど、どうすることもできず、大叔父も亡くなってしまった。
なにもしてあげられず、助けてあげられなかった甥一家が切ない。なにも言わず死んでしまった大叔父が悲しかった。

「チヨ子」・・・ アルバイトで来た着ぐるみ。不思議なものが見えてしまう。人々が大事にしていた宝物がその人自身となって見えるのだ。
人はなにかを大事にしていれば、守られる。そんな不思議な物語だったけど、宝物がなく、その人自身にしか見えず、背中に黒い悪いものがついている人々の話の方に興味が湧いてしまった。

「いしまくら」・・・ 住んでいる町で殺人事件が起こった。ほどなくして幽霊騒ぎが起こる。事の真相と、被害者の少女の名誉を挽回しようと、中学生カップルが取材をした。
編集者である父親に協力を仰ぎ、それはもう一つの殺人事件のある事実を暴き出すこととなった。
噂の出所や、その心理。教訓めいた物語でもあって、父と娘の物語でもあった。

「聖痕」・・・ 離婚して手放した我が子が殺人犯になっていた。責任の一端は自分にもあると、息子を助けてほしいと、調査事務所を訪ねた男性。
息子の犯罪が、勝手に神の裁きのような扱いでネットで祭り上げられ、それにより更生しようとしていた息子が苦しんでいるという。
正直、これは私には理解不能だった。あの調査員のしていたこと、ネットで盛り上がっている人々の心理がさっぱり分からなくて、それ抜きの話なら逆に興味持てたんだけど、教祖的なジャンルになると、もうお手上げ。



posted by じゃじゃまま at 17:34| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月10日

あんじゅう 三島屋変調百物語事続 宮部みゆき著。

≪★★★★☆≫

「おそろし 三島屋変調百物語事始」の続編。
心に暈のかかったままのおちかが、叔父に勧められ、この世の不思議話を語り聞いては捨てる、人の世の情の物語。
タイトルの「あんじゅう」の響きが可愛くて、ついついおまんじゅうを想像していたけど、「暗獣」だったのね。

「暗獣」の最初くらいまでは連載で読んでいたけど、どうもちょっとずつっていうのは性に合わないっていうか、気持ちが持続しないもので。
ようやく一気に読めて、あ〜、やっぱり宮部氏の時代物はいい!

「逃げ水」 その昔、水害に困った村の者たちに奉られていた白子様。ところが、人々が信心から遠のいた時、白子様は怒りお旱さんとなって村を祟り始めた。お旱さんを解き放ってしまった丁稚の平太が番頭と共におちかの元にやって来た。

平太がおちかの三島屋に引き取られ、その後船頭になるために発つ締めは、気持ちのいいものだった。

「藪から千本」 三島屋の隣にある針問屋の住吉屋の一人娘、お梅の嫁入りの日。おちかは籠に乗るお梅とは別人の女お勝と、陰に隠れるようにして立つお梅の姿を見た。
かつてお梅には双子の姉、お花がいた。ところが姑が双子を許さず、住吉屋を二つの分けていた。お花亡き後もお梅は決して本家には入れてはならぬとの遺言が呪いとなっていた。
怖れに囚われた人々の心。魔を除ける縁起物とされてきたお勝登場の物語。

生みの親と育ての親。姑の怨念なのか、父母の執念なのか。人間の情の怖さだ。

「暗獣」 三島屋の丁稚新太が手習所で喧嘩をして帰って来た。ところが友を庇う新太。直太郎は火事で父を亡くし、母は貧しさゆえ直太郎を親戚の元へ託していた。その直太郎が、母恋し、父恋しと心を壊れさせていたのだ。その直太郎を心配した若先生、青野から不思議な屋敷<紫陽花屋敷>の話をおちかは聞かされる。
その<紫陽花屋敷>は直太郎の父が火事で亡くなったとされる場所だ。

必要とされなくなった屋敷の魂、気。人ではないものの気と、人間が触れ合う時、互いに愛しく思いながらも離れなければならない切なさ。
直太郎にも伝わったはずだ。離れていても一人ではないってことが。想いは残る。

「吼える仏」 青野の友人である偽坊主、行然坊。生きるために坊主を騙っていた昔、山で怪我をした行然坊をみなで支えあって暮らしている里の者たちが助けてくれた。
寺の和尚が里の和をまとめている中、行然坊は不思議なことに気付いた。
それは里の隠された黒い闇。里の者たちで外れ者富一を懲らしめていた。妻子を奪われた憎しみで富一は異形の姿の魔の仏になった。

人の心の闇に触れた行然坊は、偽坊主ではあるが、心の闇の暈、凶事の前触れの暈が見えるようになったという。人の心って深いと思う。

「変調百物語事続」 三島屋に暈を見たと行然坊の言った通り、三島屋に押し込みが入ってきた。てんやわんやのエピローグ。
おちかの心が晴れる日はやって来るのか。青野先生とのその後も気になるし、続々編が楽しみなシリーズ。




posted by じゃじゃまま at 12:43| 神奈川 ☀| Comment(3) | TrackBack(3) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月21日

小暮写眞館 宮部みゆき著。

≪★★★≫

ちょっと〜〜、長いんですけど!!!!!
読み始め、なぜかこの作品、恩田陸氏のだと思っていて、また置いてけぼりかな?なんて思いながらだったので、ノれなかった。
でも、おや?宮部みゆき・・・みやべ・・・あっ!!宮部氏か!と思って、突然テンション上がったんだけど、それにしても長すぎて、また下り坂。

変わり者の両親の趣味で、なぜか空き店舗となっていた写眞館にそのまま越してきた花菱家。
建物は取り壊して家を建て直すかと思いきや、そのまま居ついちゃうんだから、本当に変わってる。長男英一は、そんな両親が、かつて妹である風子を亡くしてから、異様に次男である光に対して構うのを理解し見守っている。
そしてそんな両親の愛情に、きちんと答える光−ピカちゃん。
事情を抱える家庭環境を理解し、英一やピカちゃんを支える悪友テンコ。

それだけじゃない、英一たちを見守っている、小暮泰冶郎。亡くなった小暮写眞館の主。

英一の元に持ち込まれる奇妙な依頼を解決しながら、人の想いに触れる数々の物語。

「小暮写眞館」 英一たち花菱家が移り住むことになった写眞館には幽霊が出るという噂がある。亡くなった写真館の主、小暮泰治郎氏が店番をしてる姿を何人も見かけているという。
そんな英一の元に、女子高生が投げつけた一枚の写真。一人の女性の泣き顔。
一体、何者で、どんな事情があるのか。

「世界の縁側」 三雲高校のバレー部の先輩から半ば脅され引き受けた一枚の写真。OGとその家族が写った後ろに、またもや泣き顔の彼らが写っている。なぜ泣いてるのか。そして、撮影者は当時の婚約者だと言う。英一は同級生のコゲパンと共に謎を解明すべく、かつてのOGと元婚約者を探し出す。

「カモメの名前」 お世話になった不動産屋の社長から持ち込まれた一枚の写真。そこには不思議な物体、カモメが写っている。その写真に込めた、フリースクールに通う一人の少年の想い。

「鉄路の春」 7年前、英一の妹で、ピカちゃんの姉である風子が亡くなった。その死を誰もが悲しみ、受け止めきれなかった親族は、その責任を母である京子に押し付けることによって紛らわそうとしていた。亡くなった最愛の娘であり、妹であり、姉である風子。
残された者たちの背負ってきた悲しみが、痛かった。
そして、英一と微妙な関係を保っていた不動産屋の事務員、垣本順子のぶっきらぼうだけど、いろんなことをきちんと受け止めようとしている彼女が、もう一度やり直すために選んだ道、など、正直、この最後の章だけでもよかった気もする。

「鉄路の春」は、号泣だった。

忘れちゃいけない!英一の家に強盗が入った時、小暮さんが追い払ってくれたエピソードは、本当にいたんだ!って嬉しくなってしまった。

でも長いんだよ。


posted by じゃじゃまま at 22:41| 神奈川 ☔| Comment(3) | TrackBack(3) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月24日

おそろし〜三島屋変調百物語事始 宮部みゆき著。

≪★★★★★≫
おちかは、実家である川崎の旅籠屋である事件に遭い、胸に大きな大きな咎を抱え、暗い闇を背負ってしまった。
そんなおちかを心配した叔父は、江戸に呼び寄せ預かることにした。
そして偶然、おちかは不思議な話を聞くことがおちか自身を救うことになるのでは、とおちかに「変わり百物語」を聞くよう言い付ける。

さすが宮部氏の時代物!面白い!おちかが背負ってしまった心の闇も引っ張りすぎず明かされて、それはもう本当に人間の怖い心の闇だった。正直、関わってしまった人々の、それぞれの醜い部分や小ずるい部分、ぞっとしてしまった。

おちかに聞かせに来た人々の「変わり百物語」も、人間の情、怨念がたっぷりと染み込んでいて、宮部氏の時代物を読んでいると、本当に昔は、魔物や物の怪、怨念、当たり前のように存在してた気がする。
それぐらい、人間の情というものに、宮部氏はぐっと深いところまで突いてくる。

気になってるのは、良助がまったく現れなかったこと。
これは次に繋がるためだろうか。
おちかとあの凶宅に出入りしていた謎の老人との因縁も続きありそうな振りだったし、大いに期待してしまう。

おちかと清太郎のその後も非常に読みたいところで、続編を書いてもらえるのなら是非是非お願いしたい。



posted by じゃじゃまま at 16:53| ☔| Comment(8) | TrackBack(6) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月28日

パーフェクト・ブルー 宮部みゆき著。

≪★★★≫
元警察犬マサと蓮見探偵事務所のシリーズ。
「はじめての文学 宮部みゆき」の中の「心とろかすような」でマサを読んだきり、いつか読みたいと思ってたんだ。いたいた、マサ。
家出した進也を探すためにマサと加代ちゃんは、酔っ払いに絡まれ、捜索人の進也に助けられる。
その進也の兄は野球の名門校松田学園のエース。進也が家に連れ戻されるその夜、兄克彦が焼死体で発見された。
松田学園への嫌がらせ、元チームメイトの仕業か?
途中で挟まれる、製薬会社の隠された投薬実験。

なになになに??と止まらない。

今回、進也が出て来た時に、あれ?この少年「心とろかすような」に出てなかったけな〜と、こんなところに進也の登場のいきさつがあったんだ。
改めてマサの事件簿、が読みたくなった。
っつか、「パーフェクト・ブルー」の続編が「心とろかすような マサの事件簿」なのね。

それにしても宮部氏のデビュー作は他の作品らしいけど、この作品もかなり初期だよね。なのにこの完成度の高さ。文章の硬さとかちょっとしたぶれとか、まったく感じなかったし。
すっご〜〜〜〜〜〜っ。


posted by じゃじゃまま at 22:22| ☔| Comment(2) | TrackBack(1) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月02日

楽園 宮部みゆき著。

≪★★★≫
9年前の世間を賑わせたあの誘拐殺人事件に関わった、ライター前畑滋子の元へ持ち込まれた数枚の絵。
その中には、滋子が関わったあの忌まわしい事件の舞台となった山荘と、知るはずもないワインの瓶が描かれていた。
描いた少年は、他にも実の娘を殺害して遺体を自宅の床下に隠していた絵を、発覚前に描いている。
それはなぜなのか?サイコメトラーなのか?偶然なのか?
それを知る術はない。なぜなら、少年はもうこの世には存在しないから。

滋子は、山荘の絵を見てしまってから、あの事件に決着をつけるためにももう一度向き合う覚悟をする。それは、少年の絵の真相を探ること。なぜ少年は床下に遺体が隠されていることを知っていたのか。
実の娘を手にかけなければいけなかった事情とは?残された妹は?
次々に明らかになる事実に、夢中で上下巻週末に一気に読んでしまった。

「模倣犯」は細かいことは忘れてしまったけど、確か、あまり前畑滋子にいい印象を持ってなかった気がする。そして、当時は騒がれるほど「模倣犯」いいかな?って思ってた。なんとなくすっきりしない部分があったんだよね。
映画なんて、論外だったしね。
でももう一度読んでみたくなった。

それにしても、滋子は何様でしょ?ジャーナリストとかライターってのは、ちょっと勘違いしてる人種ではあるよね?世の中のこと、俺様たちがリードしてる、みたいに。
私の周囲にもその職種いるけど、結構鼻にかけてるもんね。
土井崎夫妻に語るとき、真相を探り当てた時の、ライターとしての前原滋子という人間の興味が満たされた感じが、やっぱり好きになれない理由かも。

でも、正直「模倣犯」よりは私は素直にのめり込んだ。
あの川崎だか伊藤先生はいいのかい?次は、滋子教育現場に乗り込むかな?

posted by じゃじゃまま at 23:19| ☀| Comment(9) | TrackBack(8) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月30日

幻色江戸ごよみ 宮部みゆき著。

≪★★★★≫
時代物を苦手としていた私が、宮部氏の時代物にハマり、これからは面白い時代物があればどんどん読んでみたいと思うようになった。
もしも、なにかお薦めがあれば教えてください。
江戸の町がすごく楽しく、時代劇などで見る活気溢れる町並みを想像してしまうのだけど、今回の12編の物語は、どこか物悲しい。
人情は感じるし、いいのだけど、人の怨念や貧しさなども書かれてて、ちょっと3日ほどかかってしまった。

その中でも四話目の「器量のぞみ」は少し希望があったかな。
どこからどう見ても器量のよくない娘が、町でも評判の美男子から求婚される。おかしいおかしいと感じつつも嫁入りし、不思議なことに妹たちも美少女であるのに、醜いと嘆き、明らかに器量が劣る娘を「きれいだ、きれいだ」と褒めちぎる。その昔義父に片思いしていた娘の怨念で、その一家の目には器量よしが醜く見え、器量のよくない者が器量よしに見えるようになってしまったのだ。
そうと知ったお信。妹たちのために真実を教えるべきか、そうすると、自分はどうなる!?器量のよくない自分が、その後どうなってしまうのか・・・。
ドキドキしてしまった。でも人情溢れる、そして希望ある物語で、寂しい他の11編と比べてもよかった。

「首吊り御本尊」もタイトルのわりには、まあまあよい話ではあったけど、「紙吹雪」は切なくていやだね〜〜。「神無月」は是非長編で読んでみたい人情物でもあったかな。娘のために盗みを年に一度だけ働く男と、事情があるとは思うが、その男のためにもなんとか捕まえてやりたいと願う岡引。この対決を、宮部ワールドで長編で読んでみたい。
ちょいと悲しくて、絶賛ってわけにはいかないけど、宮部氏の時代物はいいね。
posted by じゃじゃまま at 23:39| Comment(4) | TrackBack(3) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月24日

あやし 宮部みゆき著。

やっぱり時代物もいいね〜。
江戸の町で起こる、怖いけど悲しいふしぎ噺。
でも、なんかどこかで似たような話、宮部氏の中であったよね。それとも時代物の人情ものになると、お決まりなんだろうか。
「影牢」の、母親を、息子とその嫁の若夫婦が座敷牢に閉じ込めて餓死させたっていう話。どこかの短編にもなかった?
それとも同じ話が違う本に載ってた?

「安達家の鬼」の、心が歪んだ者には恐ろしい鬼が見えるという。若い頃苦労してきたお義母さん、寂しかったからこそその鬼が見えた。そして鬼に同情し、鬼と共に生きていた。この鬼は、お義母さんやこの家を守ってくれていた。やましい心を持った者を見破るには、お義母さんの部屋の方を覗かせるだけでいい。鬼が見えたらたちまち逃げてしまうから。この状況、これもまたどこかで読んだ記憶が。
結構、好きなんだよね、この手の話。

あと、好きなのは「女の首」。奉公先の息子に横恋慕して、叶わないと逆恨みして、若夫婦の子どもを誘拐し、殺そうとした女の怨念。
死んだと思っていた我が子との再会。これもさ、記憶にあるんだよね。やっぱり、この本読んだのかな〜?と思うんだけど、9編全部記憶にあるわけじゃないし・・・。

「時雨鬼」も怖いね〜。つい先日会った女が実は鬼だったら。
おつたからなにやら匂いがしてきた、あれは・・・。
鬼は人間の形をしてすぐそばにいるかもしれない。どうやら物の怪や鬼は匂うものらしい。

「蜆塚」はあまり好きな話じゃないけど、でもこれも記憶ある。何年、何十年かに一度、同じ人間が現れる。彼らは歳も取らないし死なない。だから一つのところにずっと留まっているわけにはいかず、奉公先を変えにやって来るんだけど、同じ年恰好でまた現れる。
でも「気付かないふり」をするのが一番。騒ぐと、松兵衛や米介のようになるかも。ちょっとぞっとするよね。
でも歳を取らずに死なない彼らの話も・・・。

「あやし」はなにかとリンクしてる?本当に読んだ記憶ないのに、どの話も初めてじゃない気がする。
でも、宮部氏の時代物、臨場感があって大好き。
posted by じゃじゃまま at 16:14| Comment(2) | TrackBack(1) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

天狗風 霊験お初捕物控<二> 宮部みゆき著。

お初シリーズ第二弾!!読み応え充分!現代ものばかり読んでると、トリックや謎解きが当たり前で、つい、だから一体どういうわけ?と期待してしまうんだけど、宮部氏の時代物は、そうではない。昔は人間の仕業ではない、もののけとか神隠し、あったのかもしれない。
なんでも解明できるわけじゃないんだな。

「美」に取り憑かれた女の妄念。美しさにしかすがるものがない女の妄念が反物に乗り移り、風となり江戸の町で神隠しが頻発する。
お初と右京之介、兄の六蔵たちは、神隠しにあった少女たちを救うため、行方を追う。そしてお初と魔物の闘い。

真実は、女の悲しい性。

早く先に進みたいのに、ずっしりと文字が埋まっていて、でもそれがまったく苦にならない。でも残りが少なくなるにつれ、惜しいような気持ち。
柏木さまって結局最初だけで、いらなくない?なんて思っちゃったけど、あんまり関係ない人物だったね。

最初に神隠しにあった下駄屋のおあきのその後で、本当は、あの職人さんと家を再建することになった、なんて一文期待してたんだけど。
でも絶対、縁談は破談で、おあきは家を出ないよね。母親と共に、父の残してくれた下駄屋を守るよね。
人情ものでほろりとさせてくれ、やっぱり宮部氏の時代物はいいねぇ〜〜〜〜。お初第三弾はないの?
posted by じゃじゃまま at 11:05| Comment(6) | TrackBack(4) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月16日

かまいたち 宮部みゆき著。

いいっすね〜。宮部氏の時代物。4編どれもよかったですけど、「お初」シリーズの原型。
あとがきがなかったら、私は消化不良でモヤモヤして悩んで寝れなかったかも。
まず「かまいたち」。よかったですね!辻斬りが頻発し、かまいたちと呼ばれる下手人はなかなか尻尾を掴ませない。そんなとき、おようが辻斬りを目撃してしまう。そして犯人の姿も!
かまいたちと思われる若者が、おようの家の向かいに越してきた。
おようの周囲にわらわらといろんな人が現れ、一体誰がかまいたちなのか?
そしてラストの、ほんわかと幸せな予感をさせる父の一言に、にんまりしてしまった。

「師走の客」も、大どんでん返しよかった、よかった。なんか怪しいとは思ってたんだよね。

そしてお初が登場する「迷い鳩」と「騒ぐ刀」。
先にお初シリーズの長編「震える岩」を読んでしまっていたので、原型の話が、後の話と違ってるんですよー。
確かお初は小さな頃から不思議な体験をしてたはずだし、次兄はろくでなしじゃなかったっけ?でもこの原型では、長兄の六蔵よりも次兄の方がお奉行さまに近い存在だし、あれ〜〜??勘違いしてる?
でもあとがきで、最初のお初とは違った設定にしてある、と書いてあったので、すっきり。
私は長兄よりも次兄の庭師の方が好みなんだけどなー。

うん、長編はお初とお奉行様の関係が濃かったけど、この原型では、次兄の方がお初の力を借りて事件解決に役立ってる感じ。

ああ、また時代物が読みたくなってきた!
posted by じゃじゃまま at 14:15| Comment(4) | TrackBack(2) | 宮部みゆき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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