2015年06月02日

ナオミとカナコ 奥田英朗著。

《★★★★》

葵百貨店の外商部で働く小田直美は、大学時代からの親友加奈子が夫からのDVを受けていることを知り、彼女を救うために、夫を排除することを決意する。
それまでは中国人に商品を万引きされて、その対応に追われる様子が描かれるけど、そこで中国人の李社長に気に入られて、チャイナタウンで信頼を得たり、加奈子の夫にそっくりな林を見つけたりと、まさか加奈子の夫の殺害に進んでいくとは思ってなかった。

徐々に計画が進んできて、ま〜、二人の立てる計画っていうのが、素人の私が聞いてても、絶対に危ないな〜って思うことばかり。
二人で話してて、そこに気がつかないのかな〜って、ほとんど呆れてたけど、これがうまくいくのかな?なんて期待も持ったりして。
どう考えても直美と加奈子は犯罪者なんだけど、被害者である夫や夫の家族が嫌な感じで書かれてるから、俄然二人を応援したくなるんだよね。

まず、マンションの防犯カメラってまず一番先に警戒すると思うんだよね。
以前、実際の事件でもあったけど、帰宅する姿が映ってるのに、出ていく姿が映ってなきゃおかしいでしょ。
家出人で届けても、夫の身内が騒いだら、まず一番最初に防犯カメラを見たがると思うんだよね。だからそこは一番警戒しなきゃいけないし、そもそも夫を殺して、その夫の車で出かけたらさ、今いろんなニュースや小説でもNシステムが出てくるから、足がつくよね。
加奈子なんて、最初顧客から騙したお金を下ろすのに自分が行こうとしてて、ね〜ね〜、カメラチェックされたらアウトだって!!って本当に呆れた。

呆れちゃうくらいずさんな計画なのに、二人を応援したくなるよね。
特に義妹の陽子、兄と同じ目に遭えばいいのにとさえ思ったよ。
李社長に頼ったら、どうにかならないかな。その後の二人が知りたい。

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2014年06月12日

森に眠る魚 角田光代著。

《★★★》

出会ってしまった5人の母親。出会う時期が違えば決して友達にならなかったかもしれない5人の母親が、母親であるがゆえに関係を絶てず、憎しみながらも嫌悪しながらも、見えない糸でがんじがらめになっていく。
その様がリアルで息苦しくなる物語。

東京の都心近くの、文教区。地域柄、進学先は公立、私立、国立と選択できる。お受験をする人を馬鹿にするもの、人知れず決意するもの、それぞれ。
あるジャーナリストの取材を受け、一人の母親がお受験も視野に入れてると発言したことから、疑心暗鬼になり、行動を疑ったり、幼児教室を見学に行ってみたり。
それぞれが様々な理由でお受験を決意するところが、リアル。

お金があり、我が子にはいい教育環境を、とお受験に至る親もいれば、相手の子育てに反感を持ち、あの子と、あの母親と関わりたくないからお受験をする者もいる。

すごく息苦しい物語だった。この物語を読めば、以前起こった「お受験殺人事件」を思い出すだろう。
あの事件では、被害者の母親が一時叩かれ、加害者が同情されるということもあった。
母親という存在に自分がなるまでは、そんな風に捉われたこともあったけれど、角田氏がどれだけ取材したかが分かる。

取材し、いろいろな母親と接し、闇の部分をよく理解したな、と本当に思った。

かつて悩み、苦しみ、もう忘れたはずのあの時代を思い出し、しばらく気分が悪かった。

小説に出てくる、かおり、瞳、容子が少しずつ自分にも当てはまり、息苦しかったけど、分かる分かる、ああ、私もこんな感じなのかな〜っていやな気分。
逆に千花や繭子は私の中にはまるでいないけど、それはそれでこんな人嫌だな〜とまたいやな気分。

容子と繭子が嫌い。

かつてのドラマの「名前をなくした女神たち」を思い出して、これが原案かと思ったくらい。
必ずセレブがいて、身分不相応の見栄っ張りがいて、嫉妬深いのがいて、翻弄される優柔不断がいる。

「ママ友は意識して作らない。いなくても、その場だけの挨拶で十分」と言ったのはかおりだったか。
苦手なタイプとは距離を置く瞳も分かるし、容子の相手の様子に敏感なのも分かる、でもそれは自分が苦しいぞ。

終盤、自分を苦しめる相手の子供を手に掛けようとしたのは、一体誰なのか。

距離を置ければ幸せだけど、それが分かっていてできない苦しみ。
そして、ラストの彼女たちの未来は、見合った結末が用意されていたと思う。決してハッピーエンドではない方向で。

容子と千花はまた小学校で一緒になり、互いを苦しめ合うのだろうか。
瞳はまた私学の中で、孤独を感じたり、場違いな感じで苦しむのだろうか。

かおりは、繭子は・・・。

息苦しく、不安にさせる秀作。



それぞれが誰かを嫌悪して、母親でなければこんなに苦しむこともなかったのに。
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2014年05月14日

沈黙の町で 奥田英朗著。

《★★★★★》

学校で一人の少年が死んだ。2階から転落して・・・。事故なのか、自殺なのか。
死んだ少年の背中には無数の抓られた痕があり、いじめが明らかになる。そして、仲の良かった少年4人が逮捕・補導される。

被害者の名倉少年の家族の想い、加害者とされた少年たちの保護者の想い、加害者少年たちのそれぞれの目線、クラスメイトの目線、名倉少年がどんな生徒だったのかが明かされ、あっちに行ったりこっちに来たりしていた読者の思いも徐々に片方に寄っては、立ち止まったり・・・そんな問題作であった。

地方都市の、有名呉服店の一人息子が死んでしまったとなれば、タイトルの「沈黙の町で」は行く末が想像できてしまい、タイトルに含まれた意味を考えると、なんと恐ろしいことか、と暗い気持ちになってしまった。

そんな想像をしていたけど、読み終わると、もっともっとやるせない気持ちになった。

当初は、お金持ちの気弱な名倉少年がいじめられたというのは安易に想像できてしまい、読者もそのつもりで読んでしまう。だから坂井瑛介の母親がわが子を守ろうとすればするほど、その親ばかぶりに腹が立ったり。
これが、瑛介目線や健太目線になると、俄然景色が変わってくる。

教師や刑事たち、そして、本当にこんな奴いそうっていう堀田弁護士が端々で語る、中学生の現実や、加害者、被害者の立場を私たちは読まされて、その都度、はっとする。
特に、堀田弁護士が語るいじめの被害者、加害者の親の気持ちは、なるほどな〜と嫌な奴なんだけど、納得させられた。

子供を亡くした親にとっては、子供になにが起こったのか事実を知りたい、でもその事実が子供や自分たちにとって辛いものだと受け入れられない・・・それはそうだと思う。
名倉少年の母親は一番辛いだろう。たとえ自分の息子に友達とうまくいかない性質があったとしても、それでも受け入れがたいだろうし、でもそんな息子にしてしまった自分たちにも思い当たる。

加害者とされた少年の母親も、首謀者は他の誰かで我が子は流されただけ、と思いたい。
ましてや調べが進むと、一番疑われていた瑛介の男気が判明して、母親の百合にしてみれば名倉家に一言言いたいよね〜。
ここでも堀田弁護士が「時が過ぎるまで頭を低くして待って」って嫌な奴っぽいのに言うことはごもっともなことばかり。
検事や刑事たちも、少年たちが何か隠してることを察し、黙っているのは男気なんかじゃない、そのせいでみんなが迷惑するって言いつつも、なんというか、子供たちの世界の正義やルールを、すっかり大人の私も思い出した。

あの年頃の正義やルールって独特なものだったな、と。そう、まだ子供だから・・・。

よく出来上がった物語だと思う。
ニュースになるいじめも、いじめる側、いじめられる側、この二つにくっきりと分かれるものばかりでもなく、子供たちの事情もあるんだろうな、と思い馳せ、そしてそのことに傷つく。

一体誰が悪いのか。
いろんな連鎖なんだろう。名倉少年の家が裕福じゃなかったら、親が買い与えなければ、名倉少年ももう少し空気を読めれば・・・。
名倉少年の気持ちも少し分かる。みんなが自分のこと馬鹿にしていたら、平気な顔をしていることでプライドを保てていたのかもしれない。
でもどこかやっぱりずるい子だったんだろうな、すぐにちくったり。

いじめは100%悪いというけれど、私は99%だと思う。残りの1%で、なにが周りをそうさせるのか考えてもいいのではないかというのが私の持論だけれど、やっぱりそうだよな、とこの物語で改めて思った。

ラストは、結構愕然とした。ああ、そういうことか、と。
その後は明らかになっていないけれど、刑事や検察の目はくぐれないと思うよ。
それに、やっぱり誰も知らなくても、自分だけは知っているんだから、この先自分も欺きながら生きていくのかな。

中学で起きたいじめを、両面からよく書かれた小説だと思う。




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2014年01月20日

噂の女 奥田英朗著。

《★★★》


「中古車販売店の女」から始まった。
ある地方都市。中古車を買った先輩に付き添い、販売店にクレームをつけにいくことになった雄一。買った当事者よりも、とにかくなんでもケチつけてなにかしら巻き上げたい後藤に引きずられる形で行った店で、雄一は中学の同級生、糸井美幸に会う。
クレームは思った以上に難航し、いきり立った後藤が毎日押しかけ、それに引きずられ雄一も行く羽目になったが、どうやら美幸も自分に気付いたようだ。

昔は目立たなかった彼女が、今では肉感的でそそる感じになっていて、しかも元同級生に聞いた噂では、キャバクラ嬢になったり、会社社長の愛人だったりと、ムラムラしてくる噂しか聞こえてこない。
図々しい後藤は、ほらほらと、なにかとけしかける。

当の美幸も、意味ありげな行動をする。

そして、「麻雀荘の女」では、勤めていた会社が倒産した美幸が雀荘でバイトしている。
ここから「○○の女」は全部美幸のことなのだ。

どこにいっても、男を物色し、同性には頼れる姉御であったりと、ますます美幸の噂は増殖していく。
弟はやくざだし、愛人は次々に死ぬし、美幸はどんどん強力になり、空恐ろしい。
やがて、美幸の化けの皮は剥がれ・・・そうになるのだが、どこまでいっても美幸は無敵なのだ。

いったい、美幸は愛人や夫殺しで捕まるだろうか。私としては捕まって欲しい。
パチンコ仲間に睡眠薬を入手させたのも、警察に早く掴んで欲しいし、そうだそうだ、あの子供。あれは夫の子ではなく、きっと義理の息子の子どもに違いない。なんという悪魔のような女なのだ。本当に噂の女なのだ。


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2012年03月06日

我が家の問題 奥田英朗著。

≪★★★≫

それぞれの<我が家の問題>。
「甘い生活?」・・・ 夫が帰宅拒否症の新婚夫婦。
一人暮らしからいきなり同居になると、そりゃお互い我慢が必要なんだけどね。

「ハズバンド」・・・ 実は会社で使えない夫だと知ってしまった妻は・・・。
そりゃね、社内の野球大会などで出る野次ってそのまんまだから、怖い怖い。いい男でも、実は会社では嫌われてたり、とか知らぬが仏なことは確かにある。 

「絵里のエイプリル」・・・ 両親が離婚するかもしれないって知ってしまった姉弟。
仮面夫婦と片親と、子どもにとってはどっちも嫌なもんだ。

「夫とUFO」・・・ UFOと交信すると言い出した夫には、会社でのストレスがあった。
夫を守る妻が健気。

「里帰り」・・・ 名古屋と北海道にそれぞれ実家のある一人娘と長男の結婚後の初めての帰省。
こんな風にお互いの実家を好きになれたら幸せだけど。

「妻とマラソン」・・・ 売れっ子作家の妻がマラソンで生きがいを感じる。
生活レベルでママ友や近所づきあいって変わっていくから、結構共感してしまう部分あった。
無理だけど、走ってみたら気持ちいいんだろうな〜。

どこかで伊良部が出てくるかと思った〜。
奥田氏はこういうユーモア小説も面白いんだけど、やっぱ伊良部には敵わないか。

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2011年09月07日

純平、考え直せ 奥田英朗著。

≪★★☆≫

組の盃をもらったまだ二年の純平は、ヤクザにしてはイマイチ詰めの甘い性格なのか、歌舞伎町では女たちに可愛がられてしまう。
兄貴分の北島に心酔していて、早く北島のようなヤクザになりたいと願ってるが、往々にしてそういうタイプが多いように、傍から見るとバカなんだよね〜。

惚れてる女の手前格好つけようと、頼まれたトラブルにいきがって首を突っ込んだわりに、相手のヤクザにボコボコにされちゃったり。で、やめときゃいいのに仕返しして、相手は血眼になって探してるっていうのに、俺ってこれで有名??なんて思っちゃう短絡さ。

組長に鉄砲玉になってくれ、って頼まれて喜んで受けちゃう純平。それをナンパ(逆ナンか?)した女、加奈にうっかり喋って、掲示板に書かれちゃう。
Xデーまで思い切り娑婆の空気を吸う純平をよそに、掲示板では大盛り上がり。

刻一刻と迫るその時、知り合いのじいさんを拉致されたり、オカマのゴローとテキヤの信也との束の間の友情、純平の周りは大忙し。

純平!考え直せ!っていうメッセージは純平には届かなかったか。
その後の純平が気になるラストではあったけど、無責任に盛り上がるネットにうんざりしながらもサクサク読んでしまった。

できれば、撃ったものの弾出ないとか、全然当らない、とかずっと間抜けな純平でいて欲しい。


posted by じゃじゃまま at 22:15| 神奈川 | Comment(3) | TrackBack(1) | 奥田英朗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月27日

無理 奥田英朗著。

≪★★★≫
合併間もない地方都市ゆめの市。妻に浮気され捨てられた生活保護課の市役所職員相原友則、こんな田舎暮らしから抜け出して東京で女子大生になることが目標の女子高生久保史恵、元暴走族で年寄りばかり狙った詐欺まがいの営業をしている加藤裕也、スーパーに派遣されている警備会社の私服保安員の堀部妙子、県議会への進出を狙っている二代目市議の山本順一。
不満も事情もたっぷりある彼らの、どツボにハマった人生。

たくさんの不満を抱えた彼らが、ふとした瞬間に階段を踏み違え、こけ出す人生なんだけど、正直役者は揃ってるのに、揃いすぎてしまって、料理し切れなかった気がする。

不正受給の証拠を掴むためにパチンコ屋で張り込みをしていた相原は、そこで自分好みの主婦の不倫現場を見かける。よせばいいのに相原の行動は止まらない。

予備校帰りに変質者に誘拐・監禁されてしまう女子高生史恵。
犯人の家族背景がなんとも中途半端。史恵よりも、こっち主役の方がよかったんじゃないの?

不満のはけ口とばかりに万引き犯を捕まえては罵倒してた妙子も、脇の甘い山本も、一瞬見境をなくしたことがきっかけですべてを失う。

よく舞台なんかで、最後にキャストが一同に集まるシーンあるけど、盛りだくさんなのに、え〜、ここでおしまい?って。
結構長かったから、おしまいでもいいんだけどさ。

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2009年05月12日

オリンピックの身代金 奥田英朗著。

≪★★★☆≫
東京オリンピック開催間近の、国民すべてが浮かれていた日本。
一人の青年が、富を吸い上げ、貧しさを底辺の人間に押し付ける不平等な日本、政府を相手に、オリンピックを人質に身代金を要求するという大胆な犯罪に出た。

序盤は、警察官僚の自宅、警察寮、開通間近のモノレールが爆破され、時間を前後しながら東大生、島崎が秋田から出稼ぎで来ていた長兄の死により、兄の代りに労働者となり過酷な労働に耐える日々が描かれている。
どう見ても、島崎がこの先この爆破事件に関わるように見えなくて、のったりゆったりしていて、ペースダウンしてしまった。
兄の遺骨を郷里に持ち帰る際、汽車の中でスリの常習犯村田と知り合い、その村田を見逃すという島崎に、イライラしたりして、もし島崎が爆弾犯だとして、この村田がそそのかしていたらむかつく〜〜、なんて思っていたけど、序盤ののったりゆったり感は、島崎が、どのように変化していくのかという大事なペースだったんだ。

中盤には、島崎が自分の信念に基づいた行動を応援し、終盤は、村田と同じ目線(は無理だけど、村田の「死なさんでけれ」がよく分かる)で、島崎は一本気すぎて損をしたようにも思うし、生真面目な人間ほど怖いものはない。

過酷な労働に従事するしかなく、底辺で必死になって浮かれたオリンピックを築き上げた人々のことは見てない日本に、そこに東大生島崎を置き、目を向けたさすがの奥田氏の作品。
個人的に言えば「邪魔」や「最悪」そして「オリンピックの身代金」も同種で、重くてあまり好きじゃないんだけど、奥田氏の力をやっぱり再認識してしまう。
途中、貫井氏を読んでるのかと思ったけど(暗さがね)、これはやっぱりさすがだ。
島崎の成功を願う自分と、オリンピックはいいなぁ、とはしゃぐ自分がいること。まるで村田だ。

posted by じゃじゃまま at 14:11| 🌁| Comment(9) | TrackBack(6) | 奥田英朗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月12日

イン・ザ・プール 奥田英朗著。

≪★★★★≫
再読です。本棚から引っ張り出してきました。抱腹絶倒間違いなし?
「イン・ザ・プール」 依存症の男と、変人精神科医の伊良部デビュー作。
伊良部に勧められるままに、軽い気持ちで始めたプール通いに、どんどん中毒状態になっていく和雄。和雄の依存症もすごかったけど、あまりの変わり者の伊良部の登場に、脱力の笑いが止まらない!?
やっぱり笑えたのは、ストレスを忘れるために、大きな悩みがあったらいちいち気にしてられないでしょ、ってやくざを闇討ちするのは?には、何度読んでも笑える。

「勃っちぱなし」 自分を捨て、会社の同僚と不倫の末に再婚した妻に言いたいことが言えずにいた哲也。なぜか勃っちぱなしになってしまった。周囲にばれないように四苦八苦してる哲也が、上司に接待を頼まれ、温泉に入るのを誤魔化すために、非常ベルを鳴らすとこが一番好き。人間、小さな嘘を隠すために、大きな罪を犯すってところがなんとも言えない説得力。
伊良部の名医なんだか、いい加減なんだか。

「コンパニオン」 被害妄想のモデル広美。この話が一番好きっていうか、笑った笑った。姿なきストーカーに付け回され怯える広美に、男を幻滅させればいいんだよ、って伊良部のアドバイス。それに則って、広美が鼻くそほじったり、淡を吐いたり・・・大爆笑。
でもやっぱ実は伊良部って名医なんじゃないかと・・・。

「フレンズ」 携帯依存症の高校生。携帯がないと友情が続かないと思い込み、友だちの数で幸せが決まると思っている。軽いフットワークで自分は人気者だと勘違いしている少年。ちょっと切なかったけど、本当に変人伊良部なんだけど、結構ツボ押さえてるんだよね。

「いてもたっても」 強迫神経症のルポライター。タバコの火の後始末やガスの元栓。もしも自分の不始末で火事が起こったら、と思うといてもたってもいられない。そんな義雄が頼ったのは「伊良部総合病院」お精神科。またここでも伊良部が、とんでもない行動に出たおかげで、義雄は救われる羽目になってしまった。
義雄は思う。「伊良部の精神科は天職だ。人を深刻にさせない天性のキャラクター」
それが治療の一環だったのか、天然なのかは微妙なとこだけど、やっぱり名医かも!?

かつて読んだときは、本当に笑いに笑って、抱腹絶倒間違いなしだったんだけど、少し爆笑度が控え目になってしまった。

posted by じゃじゃまま at 22:39| | Comment(3) | TrackBack(2) | 奥田英朗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月28日

家日和 奥田英朗著。

おお〜〜。さくさく読めて、なんてリラックスできたのでしょう。
奥田氏ってミステリからいつの間にやらコメディというかユーモア小説が多くなってきて、好きだな〜。いちいち、その一言が面白いんだよ、とプッと吹き出してしまう。よく人間観察してるよね。

「サニーデイ」 ネットオークションにハマった主婦。オークションの評価がよいと自信がつく主婦。もっと褒められたくてハマっていく。私はネットオークションはまったくやったことないんだけど、主婦やってると、家事育児に関してもやって当たり前で、「ありがとう」「ご苦労様」なんて言われないから、その渇望が分かる。
認められたり、褒められると、ついつい調子に乗る主婦の姿が、ちょっと身近だったりして。

「ここが青山」 リストラされて妻が働きに出るようになり、主夫業になぜか馴染んでいる夫の話も、微笑ましかった。子どもにブロッコリーを食べさせるためあの手この手でお弁当を工夫してる姿、ちょっと笑えた。女性よりも男性の方が実は家事丁寧かも?

「家においでよ」 妻と別居した男性が、それまではお洒落な妻のインテリアに付き合わされていたのが、ええい!と自分の部屋を作っていく。男性の理想とする部屋ってそんななのか。ちょっと羨ましいかも。私も一人で、収入だってそれなりにあれば、ホームシアターや多きな窓から夜景が見えるようにゆったりしたソファ置いて、ワインバーなんかもいいかもね。少なくとも、こんな日常がごちゃごちゃした部屋には・・・ま、どのみち私がいたら、どんな部屋もごちゃごちゃしそうだ。

でもこの話だっけ?一人になった部屋で遠慮なくオナラを放つ、っての。こういういちいち余計な一言が、可笑しい。

「グレープフルーツモンスター」 在宅の仕事を持ってくる担当の営業マンに妄想を抱く主婦。お!奥田節が出るか!と期待したけど、かなり控え目。誤解されそうだけど、なんとな〜〜〜くこの主婦の妄想って想像できてしまう。ついでにラストは、新しい営業マンに「奥さんのこと栗原が欲求不満らしいですよって言ってましたよ」くらいのパンチ来るかと期待してたんだけど、なかった。

「夫とカーテン」 新築マンションを当て込んでカーテン屋をオープンさせてしまった夫。うまくいくのかと不安でいると、イラストレーターの妻に天から力が降りてくる、って話。でもマンションに引っ越してからカーテン買う人なんているのかな。特に新築の場合って、うちの場合はマンションの販売会社と内装の会社がタッグ組んでいて、照明からカーテンまで紹介されたけど。契約の後にカタログ持ってきて「どうぞお選びください」って。だからカーテンのないままの生活、越してからカーテン購入っていうのがよく分からなかった。

「妻と玄米御飯」 ロハスにハマった妻とそれに付き合わされる家族。お隣のブルジョア佐野夫妻に影響されてる妻、正直この話は面白くなかった。奥田氏のことじゃないと思うけど、端々にちょっと連想されるようなことを書くのも興ざめで、イマイチだったかな〜。

でもさくさく読めて息抜きになった。
posted by じゃじゃまま at 16:42| Comment(12) | TrackBack(12) | 奥田英朗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月02日

町長選挙 奥田英朗著。

え〜〜〜、なんかつまんない。
前2作は、本当に抱腹絶倒もので、周囲にも「奥田氏はうまい!」って散々絶賛したのにな〜〜〜。
奥田氏の人気を不動のものにした?「邪魔」や「最悪」よりも、私は「東京物語」が好きだし、伊良部シリーズは大大大好きだったのに。

伊良部の奇人変人っぷりは変わらないんだけど、今回の患者が現実の誰かさんをモデルにしてるの分かるし、でもあんまり笑えない、可笑しくない。

それまでは、な〜〜んか変なアドバイス(かなり大胆だったり奇抜だったり)でも実は功を奏してたり、意外と名医じゃん!って思ったけど、駄目だ、今回。全然新しい発見ってのがなかった。

あんなに楽しみにして予約待ちしてたのに。

町長選挙町長選挙
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 町長選挙
[著者] 奥田 英朗
[種類] 単行本
[発売日] 2006-04
[出版社] 文藝春秋

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posted by じゃじゃまま at 23:16| Comment(12) | TrackBack(10) | 奥田英朗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月23日

ガール 奥田英朗著。

楽しみにしていた作品です、やっと予約まわって来ました。
ノリは「ララピポ」の女性版、って全然いやらしくないけど、今回はすべて女性が主人公なので、なんとなく。

登場する女性はすべてキャリアウーマン。だけど微妙なお年頃(なのか?)、若さの特権でおいしい思いをしてきた女たちが、そのおいしさが次の世代へ移っていく寂寥感を味わいつつ、でも安易に結婚を逃げ場にしない、だけどまだきっぱり仕事一筋にもなりきれない、なんとも奇妙なバランスで揺れてるお話でした。

すべて30代の女性で、う〜ん、同性からすると、30代ってこんな感じなのかな〜って。
奥田氏は男性なのに、さすがうまい作家!だけあって、女性の心理を絶妙に書いていました。
でもやはり男性作家ゆえに、辛辣さはないんだよね、30代女性の焦りに。
これがもし女性作家で、林真理子や柴田よしき辺りだったら、もっと辛辣に、女のドロドロさが出るんだろうけど、その通り!!なんだけど、まだ優しさがありますね、男性から見た女性の方が。

男性から見ると、30代女性ってこんな風に焦りと、でもまだ大丈夫って自信の年齢なのかしら。
私の経験上(??)20代後半で一度分かれ目がやってきて、30代前半はそれこそジタバタ、そしてだんだん開き直って、40代目前で最後の焦りと諦め?
こんな風にまだまだ楽しんじゃう余裕は・・・どうかな〜。女性作家ならそんな(優しく温かな?)目で彼女たちを見ない気もするけど。少なくとも私は。

個人的には、「ガール」38歳でもイケイケのお光を哀れみながらも尊敬しちゃってる代理店勤務の由紀子の話ちょっと好き。
「マンション」の秘書相手に闘うゆかり、結構好き、応援しちゃった。
「ひと回り」の容子、これはいかんですよ。ウザすぎ。ま、最後はヤングを卒業できてよかったけど。

でもやっぱり楽しい一作でした。新作「町長選挙」もすっごい楽しみです。




posted by じゃじゃまま at 21:30| Comment(0) | TrackBack(1) | 奥田英朗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月28日

サウスバウンド 奥田英朗著。

やっぱりうまいな!!
小学生の少年が主人公で、元過激派闘士でカリスマ的な存在の父、なんでそんな父と結婚したのかさっぱりわかんない母、姉に妹、小学生相手にまるでヤクザの中学生カツ、親友の向井、淳、リンゾウ、そして誤解しながらも本当の友達になれた黒木、とっても魅力一杯の人たちに囲まれた、すっごい破天荒な物語。

すべての人物の名前がスラスラ出てくるくらい、面白い!
無政府主義、アナーキストの父の主張が過激だったので、もしや奥田氏はそっちの人か????と一瞬不安になった。そりゃ一ファンとして、好きな作家が問題ありの思想の持ち主じゃ、一応心配ってもんで、作風にも影響が・・・なんて思ったけど、これがなかなかどうして、上原一郎は言ってることは問題ありありの危険分子だけど、男気たっぷりの筋?の通ったおっさんだった。そう、思ってしまう私も上原一郎の魅力にハマってしまってるのだろうか。

西表島に不法住居した一家に、変化が。いつも不機嫌だった姉が笑顔を取り戻し、母に至っては二郎曰く開き直ったと表現してるけど、きっと都会のしがらみに解放されて本当の姿に戻ったんだろうね。
東京では、仮面をかぶり、摩擦を起こさぬように過ごしていたけど、母だって昔は闘士だったんだもんね。

母の「お母さんはお父さんのファンでいようって決めたの」ってセリフで、なんかしっくり来ちゃいました。

できれば黒木が西表島に家出してきて、淳たちとも再会する続編を待ちたい。

【Amazon.co.jp】
サウス・バウンド
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2006年01月22日

ララピポ 奥田英朗著。

≪★★★★≫

「サウスバウンド」の興奮も覚めやらぬうちに「ララピポ」読んだ。
なんだこりゃ、ちょっとH。でも面白いんだよね〜、これが。短編なんだけど、人物が繋がってる。・・・ってことに気付いたのは、2話目もかなり進んだ辺り。

2話目の主役の風俗嬢のスカウトマン、名前もきちんと書かれてるのに、1話目の登場人物の上階の住民だった例の男とはまったく気付かなかった。
気付いたのは、夜な夜ないろんな女を連れ込んでいて、かなりいい女で、気に入ってるらしいデパガのトモコの、夜のセリフ。ハートたち(複数ハート)

それ読んだときに「あれ〜??もしや??」なんて気付いてしまった。もっと早く気付くよね。でも気付けば、次はどの人物が出てくるのかな?なんて楽しみ。
ブラックな終わり方なのね〜、って思ってたけど、さすが奥田氏、ユーモアあるじゃん。

私としてはスカウトマンとトモコのその後が非常に気になる。

ララピポララピポ
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] ララピポ
[著者] 奥田 英朗
[種類] 単行本
[発売日] 2005-09
[出版社] 幻冬舎

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posted by じゃじゃまま at 16:56| Comment(6) | TrackBack(3) | 奥田英朗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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