2015年03月23日

ヤモリ、カエル、シジミチョウ 江國香織著。

《★★★☆》

江國ワールドだ。
幼稚園児の拓人は人よりも言葉が遅いけど、虫やヤモリと話ができる。
姉の育実はそれを知っている。
彼ら独特の世界と、愛人の家からたまに戻って来る夫を待ち続ける母親の奈緒。
彼らが通うピアノ教室の先生とその両親。
彼らが遊びに行く霊園の管理人、拓人の周囲の人々のゆっくりとめぐる時間、なんとも優しげで残酷な物語。

拓人の世界はひらがなで、読みにくいという人もいるけれど、なかなか優しい時間だった。
ヤモリと会話する拓人の世界は、透明で優しい風が吹いてるよう。
小説に出てくる人物の中で唯一現実的だったのは、姉の育実だけだったように感じる。

夫を待ち続ける奈緒は、いつまでも女で怖いし、婚約者が中心のピアノの先生の恋する乙女にも辟易。
江國氏の描く女性ってこういう人多いよね。決して共感できないっていうか。
夫の恋人の真雪も、夫も、奈緒も、三人とも厚かましい感じで、誰も好きになれない。

ピアノの先生のお母さんもかつて不倫していた相手をうっとりと思っていて、だけど、実際9年間不倫してたのは私にはできないけど、心の中にいるのは、まあ、理解できる。

拓人の次にこのお母さんが理解の範疇。

ああ、あと霊園の管理人さんね。彼は拓人が見えない会話をすることを察したけど、拓人を理解できる人って心に寂しさを抱えてる人なのかな。
複雑な毎日さえも、さらりと日常が流れていくのは江國ワールドの特徴だよね。

結構長編だったけど、難なく読めた。

奈緒と夫、愛人には幸せになって欲しくない気もするけど、江國氏と幸せな家族像を語り合ったら絶対平行線になりそうな気がする。


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2013年09月18日

はだかんぼうたち 江國香織著。

《★★★》


恋人がいながら年下の鯖崎と会うことがこれもまた日常であった桃。決して恋人ではないのに、鯖崎を選んでしまった。
ネットで知り合ったボーイフレンドと同棲していた母が急死してしまった桃の親友の響子。
興味を持った女性に近づかずにはいられない鯖崎は、桃の親友で夫と子供もいる響子に興味を持ち、親密になっていく。
決して自分だけのもにならない、恋人同士ではなく、似たもの同士の二人なことに納得している桃。

誰にも共感できず、好きにもなれない登場人物に囲まれながら、それでいて、江國ワールドにうっとりと浸かってしまった。

夫のモノであることに満足している桃の母は、誰のものにもならない生き方をしている桃と姉の陽に不満を持ち、特に姉の陽に対しては、ほとんど憎んでる?っていうくらい辛辣。
隼人は、妻の母の恋人・山口を受け入れられない。妻子ある男がネットのそういう場に出入りすること自体理解しがたい。そしてその山口は、愛人の和枝亡きあと、家に戻るわけでもなく、和枝との思い出を探して農作業に没頭する。

物語の中心にいる桃と鯖崎は、まったくもって好きになれない。
その枝葉にいる登場人物の方がまだまともで、これって読者としてどうよ?って感じがしないでもないけど。

まったくもって鯖崎って男は、好きになれず、そんな鯖崎から離れない桃も好きじゃないな〜。
桃の言うとおり、二人は似た者同士だからね。石羽っちでいいじゃんね、って普通なら思うのに、あえて鯖崎を選ぶところが、やっぱり似たもの同士仕方ないってところか。

自分の親友に手を出してるのに、それを隠しもしない鯖崎と、ある意味受け入れてる桃。ああ、やっぱり好きになれない。
一番嫌いなのは、鯖崎。二位、桃。三位、陽。(ちゃんとしてないの嫌いなので)
四位、山口。(ふにゃふにゃしてそうなので)五位、響子の長女。なにかと反抗期で不愉快。
六位、響子。四人の子供を大事していそうだったのに、鯖崎なんかと・・・。
七位、桃の母。あんなに愛してる夫にもし愛人がいたら、なんて思うとちょっと愉快というか恐怖。

これだけ嫌いな登場人物ばかりって・・・。

でも江國ワールドだと不潔感がないんだよね〜、不思議。

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2013年08月21日

ちょうちんそで 江國香織著。

《★★★★》


江國氏らしい、なんの解決もなく、なんの進展もなく、ただそこに日常があるだけ。
中途半端といえばそうなんだけど、それが江國ワールドなんだよね。
江國ワールドに広がる、その日常や時間の流れ、そして一つの文章が長いのも特徴で、読みながら、ああ、これぞ江國香織、やっぱり江國さんだな〜と、満喫。

なんだろう、言葉が上品というのだろうか。

かつて夫と子供たちを捨て、愛する男の元に走っ雛子。十数年前に失踪してしまった妹と、空想で会話をしている雛子を、気遣いなにかと訪ねていく隣人の丹野。それを快く思わない丹野夫人。
元モデルの美しい妻と、生まれたばかりの可愛らしい赤ん坊に囲まれ幸せな生活を送っている正直。
大学生の誠と亜美のカップル。
家族の都合でカナダの学校に通う少女、なつき。なつきが信頼しているのは小島先生だけ。

それぞれの時間が流れ、日常を送っているのに、軸は雛子。
こういうの好きだな〜。
正直と誠を捨てたのが雛子で、小島先生は雛子の失踪してしまった妹・飴子であろう。
飴子が元気でいることを雛子が知ることもなく、元モデルの妻の昔の仕事を知ってしまい、そこに母・雛子と同じだらしなさ、ふしだらを感じた正直は家出をする。雛子の元へ、妻が会いにやって来るけど、そこでなにがどうなるのかも明かされないまま物語は終わっていく。

この中途半端さ。なにがどうなるわけでもない、、さすがともいうべき。
あの正直夫婦がどうなるのかも分からない。雛子が家族に許される日が来るのかも分からない。許して欲しいとも思ってないだろうし、雛子はそれなりに今の日常で幸せなんだろうから。

そもそも、家族を捨て男の元に走った時が、雛子の本当の幸せだったんだろうな。
紳士然とした丹野がかつて犯した罪も、結局、その人はどこの誰だったのか。その人の家族はどうしたんだろうか、それもどうなるわけでもない。

だけど、江國ワールドに流れる時間は、きれいだと思う。いつもそう。
こんな時間の流れ、人生の受け止め方をしてみたい。雛子の今の生活さえ、幸せそうに見えてしまう。

タイトルにもなっている「ちょうちんそで」雛子のイメージにぴったり。

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2013年05月06日

犬とハモニカ 江國香織著。

《★★★》


江國ワールド、なんというか生活感のない空間で生きている人々の瑞々しい、透明感のある、物語。

読んでいると不思議に、そんな生活をしてみたいって思ってしまうんだよね。たとえば、結婚して五年、おそらく子供のいない夫婦の、公園にピクニックに行く話。
「ピクニック」 近所の公園にお弁当を持って出かける夫婦。とてもしゃれた感じがする。容器やシートがその辺のものではなく外国製のおしゃれなもので、中身も、読んでいると簡単そうで真似したくなるけど、いざとなったら面倒くさそうななんとかのトマト煮とか、その夫婦の見えない距離。
そんな夫婦って実際は疲れそうだけど、江國ワールドでは、いとも簡単に書かれていて、なぜか羨ましく感じてしまう。
妻の、他人を(夫でさえ)気にしない、凛とした冷たさに、羨ましさを感じてしまう。

「犬とハモニカ」 まるでタイトルと関係ない物語なんだけど、離婚を決意している妻と娘が海外旅行に行き、迎えに来る夫。空港にはいろいろな人間が到着していて、犬を連れていたり、非常識な家族であったり、彼らの生活の奥には踏み入れないけど、すれ違う人、それぞれにそれぞれの人生、物語がある。
かといって、それ以上は進まない、それが江國ワールドだったりもする。

「寝室」 ずっと恋人であった女から別れを告げられた男。結局は妻の元へ戻るわけだけど、おそらく不倫していたらお互いに疲れる関係であったはずなのに、これもまたいとも簡単に、そして簡潔に、江國風にいえば清々しささえ漂ってくる二人の関係。
ま、振られた男はまだ女を愛してたようだけど、結構簡単に妻の元へ心が戻る。
江國ワールドでは、未練さえも淡泊で、だからあんまり心乱されないんだな。

「おそ夏のゆうぐれ」 主人公である志那とその恋人の至とは、いったいどんな関係なんだろう。一緒に旅行もするし、付き合った半年っていうから恋人なんだろうけど、相手が妻帯者なのか、そういう細かいところは一切無駄で、至をものすごく愛しているはずなのに、それでも志那は孤独で、江國ワールドでは、そういう女性がよく登場する。
どんなに相手を好きでいても、崩せない自分があるような。

「夕顔」 やはり光源氏だったか。光源氏は現代語訳で読むと面白いんだよね。

「アレンテージョ」 バカンスに来たゲイのカップル。誰にでも平等に笑顔や愛想を分け与えるマヌエルと、そんなマヌエルに嫉妬し、束縛したいルイシュ。だけど、実際はマヌエルに束縛されてるのかもしれない。この二人が、もしかしてバカンスから戻ったら、ルイシュから別れを切りだしたりして。
それとも誰にでも優しいマヌエルに嫉妬しつつも関係を続けていくかも、両極端な二人の関係が見えてきそうだけど、まったくドロドロしてなくて、フランスやハリウッドではなく、オランダとかスウェーデン映画のようだった。
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2012年06月16日

金平糖の降るところ 江國香織著。

《★★★☆》


ブエノスアイレス近郊で育った日系人佐和子とミカエラの姉妹が留学した日本で出会った男、達哉。
三人の何十年にも及ぶ三角関係の愛の物語。

少女の頃から常にボーイフレンドを共有してきた姉妹。それは相手の愛を確認するための幼い行動だった。
だけど、日本で出会った達哉だけは共有を拒んだ姉佐和子。
達哉と結婚して20年後、佐和子は突然愛人の田渕とブエノスアイレスに戻る。

追う達哉。拒む佐和子に、そんな達哉を待ち受けるミカエラ。

とっても不思議な三角関係。

結局、佐和子も達哉を愛しているし、ミカエラもずっとずっと達哉を想っていた。
達哉は佐和子のものだし、佐和子だって達哉を愛しているはずなのに、なぜゆえにわざわざ愛してもいない田渕と駆け落ちするかな。
自分のものにならなかった達哉を、佐和子よりも深く深く愛していたのはミカエラかもしれない。
だけど、結局達哉はミカエラのものにはならない。

すごくすごく不器用な二人の愛の物語に思えて、ちょっと切なかった。
結局佐和子も達哉もお互いを理解し合っていてお互いを愛してるくせに、どうしてもそこに納まる気はないみたいで・・・。
わざわざ傷つくほうを選ぶ佐和子は強いのか、ただの自己中女なのか。

いろんなボーイフレンドと遊びながらも実は、自分のものにならなかった達哉を想い続けていたミカエラだけど、どうしても応援する気にはなれなかったし、うん、結局はそれぞれが別々の道に進みそうで安堵した。
やっぱり達哉には佐和子でしょう。

だけど達哉は佐和子が戻ってくるまでは絶対待てなさそうだし、佐和子も戻らなさそう。

この本で、嫌いなキャラを挙げるとしたら1位はやはり田渕でしょう。
最初ストーカーかと思ったよ。どういう約束で逃避行になったんだか知らないけど、見た目もどうってことなさそうな男が妻子を捨てて佐和子の元へ来る辺りかなりうざい。

2位は、ミカエラかな。ずっとずっと姉と共有できなかった義兄に想いを寄せてて、あわよくば奪おうと虎視眈々と狙ってた感がむかつく。
いくら想っても結局は達哉がミカエラを想うことはなさそうだし。

まったく共感はできないけど、佐和子には同情する。わざわざ愛する者を捨てなくても、と。
そして、ナルシストでまったく鈍感な達哉は好きにはなれないけど、ま、どうでもいいか。佐和子を理解しながらも、結局は佐和子が戻ってくるまでは待てなさそうな節操のなさも、いかにも、だし、なんていうかそういう男にはこういう女よね、ってことでお似合い。

江國氏は不倫をさらっと爽やかに?書くよね。
なんかまったく痛みを伴わない不倫ってすごいね。経験してみてもいいかななんて錯覚を起こしそう。

ミカエラの娘アジェレンと上司の不倫なんてちょっとした気分転換だった。


posted by じゃじゃまま at 21:45| 神奈川 ☔| Comment(2) | TrackBack(1) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月20日

抱擁、あるいはライスに塩を 江國香織著。

≪★★☆≫

ロシア人の祖母、厳格な祖父、離婚歴のある叔母、自由な叔父、そして両親と共に暮らす4人の子供たちの三世代に渡る家族の物語。
大きな洋館に住む柳島家では、子供は大学に行くまで学校には行かせない教育方針であった。
ところが、一番下の末っ子卯月の母が、学校へ行かせたいと思ったばかりに、陸子、光一までが小学校へ行くことになり、それは彼らにとって耐え難い苦痛の時間になってしまった。

苦労の人生を歩んできた祖母。祖国のロシアのことわざで、ライスに塩を、それは自由という証の言葉。

母の菊乃は、厳格な父に逆らい家出をし、妻子ある男の子供を身篭って戻ってきた。
その菊乃と望を受け入れたのは、婚約者であった豊彦であった。
叔母の百合は、見合いで縁談を受けたが、馴染めず、精神を病んで戻ってきた。
叔父の桐之輔は、子供たちから見れば自由な叔父だが社会には適応できてるのかはちょっと不明。

江國氏の価値観が出てるな〜って作品だった。
自己犠牲の協調性よりも、自分が美しいと信じるものを頑固なまでに貫く生き方。

世間からは風変わりと思われている、そんな家風に育ち、父の違う長女望、光一、陸子、母の違う卯月は、それぞれが大人になる過程で、どのような選択をしていったのか。

ああ、江國ワールドだな〜と思いつつ、誰一人として共感する人物はいなかった。
好きな人物が一人もいなかったと言った方がしっくりくるかな。

妻子がいながらも菊乃と関係を持つ望の実父、そんな関係を友情と位置付ける菊乃の淡白さ、
あっさり愛人のできた豊彦、愛人らしからぬ愛人、光一の選んだ女性、家を出て実母と暮らすことを選んだ卯月、そして極めつけは、菊乃の元を去り愛人と暮らすことを選んだ豊彦と、そのことに傷つかないことが後ろめたい菊乃。

どれもちっとも共感できないし、好きになれない人たち。
ただ江國ワールドの上品の中の傲慢、薄情さ、淡白さは作品としては嫌いではないけれど、一人一人は絶対に友だちになれない人種。

祖母を愛し続けた竹治郎だが、祖母の心にあった人は・・・。
江國氏らしい裏切り。


posted by じゃじゃまま at 23:54| 神奈川 | Comment(2) | TrackBack(1) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月28日

真昼なのに昏い部屋 江國香織著。

≪★★★≫

アメリカ人のジョーンズさんと、人妻である美弥子さんの、江國氏らしい「不倫」物語。
汚くなくて、爽やかというのでもないけど、清々しいような、絵本でもめくっているような恋愛物語なのである。
まずジョーンズさんも美弥子さんも、日本語というものが美しい。
丁寧な、きちんと選ばれた言葉で会話しているのが、美しい二人を想像させる。それは外見っていうのではなくて、佇まいというのか。
でも決して潔癖な人たちではないんだけどね。

ジョーンズさんは大学で教鞭を取っている。美弥子さんには、ひろちゃんという夫がいて、美弥子さんはひろちゃんを愛している。いつも家の中をきれいにして、料理もこじゃれてて、主婦である私が面倒くさいと思っている雑事を、美弥子さんが行うと、軽やかで楽しげで、なんだか私もやってみようという気になってしまうから江國氏の小説って好き。

私のように、時間に追われて何事も大雑把になってしまうなんてことが、およそ想像できない。

で、そんな美弥子さんのことを小鳥のような人だ、と思い、ジョーンズさんは愛しく思う。
美弥子さんは、ひろちゃんという鳥かごの中にいるかのよう。
そして、美弥子さんはそんな自分に満足していた。
なのにいきなりジョーンズさんを大事に思い始めてしまうのだ。

江國氏の小説に出てくる夫というものが、私は常々嫌いだ。
妻に無関心そうであったり、自分が一番であったり、そんな夫のことを好きでいる妻にも、いつも共感できない。
絶対に江國氏の価値観とは相容れないんだけど、でも主人公たちが醸し出す雰囲気が好き。

ジョーンズさんによって、美弥子さんは一歩外に踏み出てしまう。
一度出てしまった美弥子さんが、ひろちゃんの真実に気付き、そのまま選んだ道が、美弥子さんにとって幸せなのかは分からない。でも、美弥子さんは、恐らく、強い。ああいうタイプが一番強い気がする。

ジョーンズさんと美弥子さんが、ジョーンズさんのアパートで過ごす時間が、タイトルのままで、さすが江國さんだな、と尊敬してしまう。


一見、言葉がシンプルで児童書のようなんだけど、やっぱりこれは大人の話なのだ。
ジョーンズさんはもう美弥子さんのことを小鳥のようだとは思わない。
なんとも切ない物語なんだから。


posted by じゃじゃまま at 22:44| 神奈川 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月11日

左岸 江國香織著。

≪★★★☆≫
濃厚だった。かなりの時間毎日読んでいたのに、見直すと、まだ半分にもいってなかったり、江國風に言うなら、そんな自分に途方に暮れてしまった、って感じ?大長編だよね、これ。
兄をこよなく愛し、隣家に住む幼なじみの祖父江九と兄惣一郎の男同士の友情に嫉妬しながらも、祖父江九に生涯(だよね)愛し続けられる女茉莉。
心の中では存在するのに、すれ違いながら互いに別の方角を向いている。茉莉はさまざまな男性と恋をして、九も数奇な人生を歩んでいるらしい。
九については「右岸」で語られることとなるんだろうけど、50年に及ぶ茉莉の人生は、江國氏によって語られる。

辻氏と江國氏のコラボは「冷静と情熱のあいだ」を思い出すね。江國氏のファンだった私だけど、辻氏の小説の方が愛に包まれてた記憶があるんだけど・・・。小説はよかったけど映画は散々だった。

そして、今回。江國氏らしく、性に奔放である。しかも上品に。
茉莉の母も夫と娘を置いて出奔する。茉莉の父新は、生涯妻のことを想っていた。この物語の女性(茉莉、母喜代)は本当に身勝手だ。
夫と娘を置いて留学し、恋人を作り出奔する母。
17歳で駆け落ちし、戻ってきたときは別の男。その男を置き去りにして九と抱き合う。そして別の男、始と結婚。その後も友情の関係、また恋したり、結局母喜代とたいして変わんない気がする。

江國氏の女性って、上品に性に奔放で、現実的じゃない気もする。

しかし茉莉の50年。長い!濃厚!
祖父江九は、超能力とか訳分からなくてどうでもいいかなと一瞬思ったけど、九の視点でしか見えないこと、九を取り巻く出来事は、やはり辻氏の「右岸」を読むしかなく、やっぱり九の身に起こったこと気になる。
茉莉の娘さきと、九の息子であろうアミ。この二人も運命なんだろうか。
里中真智子の「あすなろ坂」を思い出した。

身勝手さゆえの一人で、正直茉莉は放っておこうって気になるけど、父新のことを思うと、きゅっと苦しくなる。生涯、彼は妻を待ち続けたんだよね。こういうとこ江國氏って冷たいよね〜。



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2007年10月22日

がらくた 江國香織著。

作中に、柊子が編集者に、「あなたの訳はいつもそっけない」って言われるシーンがあるんだけど、そうだそうだ、これは江國氏自身のことだな〜って。
そっけないというのは、決して否定したセリフではなくて、冷静、無駄がないってことで、江國さんの描く物語には、いつも無駄がないよね。そのわりに生き方は面倒くさいけど。

夫のことが好きで好きで堪らなくて、それを確認するために他の男とも寝てしまう妻柊子。あえて夫の存在を遠くに感じることで、その寂しさも含めてそういう愛し方を好む。
夫も妻以外に恋人が複数存在する。それは決して裏切りではないらしい。なぜなら、原は柊子を愛してるから。
とっても辛辣な柊子の母桐子。旅先で出会った女子高生ミミ。ミミとの交流も桐子はあっという間に自分の生活空間の一部にしてしまう。

とまあ、ややこしいはずの人間関係が、江國ワールドになると、そっけなく無駄がないんだよね。そう、無駄がないんだ。無駄な心理描写に行数を割くこともないし、ミミと原が肉体関係を持っても、無駄がない。
すべてがそうだな。作中に、桐子に頼まれて電球を変えるシーンがあったんだけど、柊子が押入れから脚立を出して、みたいなシーン。日常なら、実に面倒くさい行為なんだけど、江國さんが書くと、なんでもないことのように思えて、家事がすごく楽しそうに思えちゃう。
ジャムを似ることだって、私ならこれもまた時間がかかって面倒くさいと私なら感じるんだけど、江國氏の書く女性は、いとも簡単にそういうことをしてしまってるんだよね。
文章に無駄がないから。でも、結構それが好き。読んでいる間は、私の生活のすべてにも無駄がなかったもん。

無駄はないけど、柊子や原さんの愛し方は面倒くさい。
posted by じゃじゃまま at 22:46| Comment(5) | TrackBack(5) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月08日

ぬるい眠り 江國香織著。

江國ワールドですね、私の苦手なタイプの方の。
こういう掴みどころのない人間たちの話って、江國氏にとっては居心地がよくて、格好いい生き方なのかもしれないけど、身近にこんなタイプの人間たちがいたら、傍迷惑。
9編のうち、「ラブ・ミー・テンダー」の年老いた父親が、年老いた母親にしてあげてる他人から見たら馬鹿げた行為。母親もそれを分かってて騙された振りをしてるのか、それとも本当に信じ切ってしまってるのか、それともこれは老夫婦のお遊びなのか、私はお遊びだと思ってしまった。

「放物線」もわりと許される好きな作品。学生時代の友人が年に数回集まって、同じ空気を共有してた者同士だけが感じ合う続きの時間が、妙に心地よい。どうして学生時代の仲間同士が集まると、一気に時間が戻ってしまうんだろう。でも「放物線」の3人は決して思い出話はしないんだよね。おいしそうな中華料理がよかったね。

あとは許せる範囲の話もあったけど、でも人間的にはどれも好きになれなかった。性にだらしなくてもいやらしく感じないし、それが正しい生き方というか、気持ちいい生き方に見えちゃうけど、絶対錯覚。

「間宮兄弟」みたいなのがまた読みたい。


posted by じゃじゃまま at 16:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月25日

スイートリトルライズ 江國香織著。

これ前も読んだよね。多分そうだろうと思ったけど、また図書館で借りてしまった。
以前はどう思ったのだろう?多分、江國氏が広げるワールドにどっぷり浸り、こんな風に夫以外の男と寝てしまうのも清潔感漂う瑠璃子に、ほんの少し憧れていたかも。ベアを作り、昼間は小洒落たお菓子を作り、春の日差しが似合うような生活を、素敵、なんて思っていたかも。

3年前の私がどう感じたかは忘れたけど、今の私には、瑠璃子は無神経で非常識で嫌な女に映った。夫の聡も、くだらない女=後輩と浮気ごっこしちゃって、嫌いだし、もっと嫌いなのが春夫。
ネチネチしてしつこ〜〜い!
江國ワールドは、もしかしてそのまま江國氏が好む生活なのかも?なんて思ったら、瑠璃子を書く江國氏まで、「ちょっとちょっとおかしいよ」と言いたくなってしまった。
この3年に私はどうなってしまったのだろう。

一番好感が持てたのは聡の妹、瑠璃子の義妹である文。
文はきっと兄の火遊びも気付いているし、瑠璃子の本質も見抜いているし、文にもっと活躍していただきたかった。

ところで瑠璃子の「守りたいものに嘘をつく」って深いぞ!!
posted by じゃじゃまま at 09:51| Comment(4) | TrackBack(2) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月28日

すきまのおともだちたち 江國香織著。

≪★★★★≫

またもや「ホテルカクタス」のような不思議なワールドだったけど、とってもほんわかした気分になれた。
ありえないし、絶対フィクションなのに、でもあってもいいかも、と思わせてしまう。

すきま・・・時間の隙間、空間の隙間、なんの隙間か分からないけど、お皿と女の子、「さびれた村」に住む兄弟、彼らの住むすきまにストンと落ちてみたい気もする。
でもそんなことを思える江國氏は、本当に素敵だと、今回読んでいて思った。なんて素敵な想像力なんだろう。

現実の世界では時間は確実に過ぎているのに、すきまに生きている少女たちは、そのまま。時間が止まってるよう。でも止まってるのではなく、少女にも思い出が出来たように少女たちのすきまも動いてはいる、だけど、そのまま。
なんて不思議なの!!!そしてなんて素敵なの!!
そしてもっと素敵なことに、なぜか少女のことを読んでいると、力が湧いてくる、今の悩みなんてちっぽけなことって思えてしまう。
こんな素敵なお話を書ける江國氏は本当に素敵!

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2006年01月25日

間宮兄弟 江國香織著。

こういうのが大好きなの!
これぞ江國ワールド!!

本当は素敵な間宮兄弟ならよかったんだけど、どうやらうざい、キモイ兄弟らしい。
だけど育ちの良さなのかな〜、それが秋葉系にならないのは・・・。

明信と徹信だったら、どっちかといえば明信かな。だって徹信は、はっきり言わないと分からないタイプだそうだし(沙織談)、キモイよね〜、そういうの。
一人で思い込んで、熱くなられても迷惑だっちゅうの。

だけど、二人の兄弟の「おもしろ地獄」だとか二人で今日はつけ麺を食べに行くという優雅さ、花火大会だといっては浴衣をあつらえ、スイカがお決まりだったり、カレーパーティだとか、なんだか行ってみたくなる、そんな気にさせちゃうのが江國ワールドなんだな〜。

葛原さんも直美姉妹も、なんだかんだといいながら心地よい時間を過ごし、また行きたくなるそうだ。
ならば、行ってみたいじゃない。

毎年母のために東京のどこかで食事をしたり、お土産を買い揃えたり、それを大満足とする母親もかなりの自己中の人で、きっとそばにいたら世間知らずで迷惑しそうな人種だけど、どこ吹く風で気にしないんだろうな〜、そういう強さを持った人々を描くのは、本当に江國氏は得意だよな〜。

間宮兄弟の住む近所に住んでみたい。そして是非一度くらいは招待されてみたいもんだ。

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間宮兄弟
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赤い長靴 江國香織著。

え〜〜〜、すっごいつまんなかった。
今まで江國ワールドは、優雅で、上品で、昼下がり、そうね2〜3時?ベランダの窓を開けて、爽やかな風が部屋の中を抜けて、ゆったりとしたチェアに横たわって、近くのテーブルにはお紅茶なんぞ置いてあって、お気に入りのレコードなんて掛けながら、自分も優雅な妻になりきる、そんな世界だったのに。

もちろん、江國氏の本を読んでいる私の格好は小奇麗に見えるブラウスに、膝丈のフレアースカート、そうそうイメージピッタリなんだけど。

だけど、この作品の夫婦にはどこも憧れるところもないし、ちっとも優雅さも感じられない。
全然会話が成立しない、自分勝手な夫に魅力も感じないし、そんな夫を不在の時により一層愛しく感じてる妻にも、優雅さや幸福さも感じない。

あれ〜、不思議。今までの作品は、どこかしら登場してくるヒロインたちに圧倒的な憧れを持てたのに、日和子にはかけらも感じない。
読んでて瞼が重くなる作品だった。



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