2015年09月13日

冷蔵庫を抱きしめて 荻原浩著。

《★★★★★》

あ、ダメ、ダメだってわかっているのに、どうして同じことを―。あなたの心、解放します。現代人のライトだけど軽くはない心の病気に、シニカルに真剣に迫る短編集。 (「BOOK」データベースより)

「ヒット・アンド・アウェイ」・・・ これ、大好き。DVの恋人に我慢しながら前夫との子供を守る幸乃。どうしていつもこういう男に掴まるんだろう。女の幸せは結婚して夫に養ってもらうと信じていた母親に反発していた幸乃だけど、磁石と同じで反発しあうのは元は同じということ。このフレーズ、今回荻原氏結構好きみたいで他の短編にも出てた。
そんな自分に、ママに、さようならするために幸乃はDV男と闘う。
これ、本当に好きだな〜。ボクシングジムの会長も、通ってるボクサー田辺君も、本当にいい。これからの幸乃の人生、本当に応援したくなった。

「冷蔵庫を抱きしめて」・・・ 結婚前は相性ばっちり、私たちって磁石みたいにぴったり、って思ってたけど、結婚したら小さなことがたくさん違うことに気付いた直子。そんな幻滅に気付きたくなくて、またもや悪い癖が出てしまった。拒食症。理想の夫婦が破たんする話かと思ったら、ほっこりと温かい物語だった。
拒食症を隠していたけど、夫にはばれていて、汚してしまったトイレを一緒に掃除してくれる夫。
「二人の最初の共同作業です」なんて、そんなしゃれたジョークを言う夫、なんて素敵なんだろう。
磁石はぴったりくっつくけど、それはお互いが似た者同士だからじゃない、SとN、違う者同士だからだ、なんて、これも素敵。

「アナザーフェイス」・・・ 自分と似たような男がウロウロしているらしい。たくさんの目撃情報。でも俺じゃない。だんだんとそのドッペルゲンガーが近づいてくる。
なんか「世にも奇妙な物語」の一編のような話だった。

「顔も見たくないのに」・・・ 顔だけが取り柄だった元恋人。熱が冷めればその馬鹿っぷりや浮気ぐせに愛想も尽きる。
なのに別れた途端、あいつがテレビに出るようになった。顔も見たくないのに。どうなるのかな〜と思ったら、ちやほやされた時期が過ぎ、テレビから干されてしまったあいつがまた麻衣の元へ戻って来た。
当然突き放すものと思ってたのに・・・なんだかどうなっちゃうんだろう?

「マスク」・・・ マスク依存症になってしまった男。人に見られない、という快感を得てしまった男が異常なまでにマスクに依存し始める。ちょっとやりすぎな男。この人、着ぐるみに居場所を見つけたのかな。

「カメレオンの地色」・・・ いつも相手の好み色に染まってきた梨代。今の恋人候補のために部屋を片付けていたら出るわ出るわ、過去の男たちに染まっていた証拠が。そして誰の色にも染まっていない、本当の梨代を好きになってくれた中学時代のボーイフレンドを思い出す。昔の自分を思い返し、梨代は恋人候補の男と会うことがくだらなくなり、役者を目指しているはずの、中学時代のボーイフレンド、中村遼介に会いたくなって検索してみる。物語はここで終わってしまうんだけど、心から遼介、出てこい!!!って願った。
二人の中学時代のエピソードが切なくも微笑ましかったから、私も、梨代にはあの頃の梨代でいて欲しくて、二人に再会して欲しいと思った。

「それは言わない約束でしょう」・・・ 心に思ったことが無意識に口から出てしまう礼一。自分では言ってるつもりないのに、それが相手に聞こえてしまえば・・・しかも接客業だから非常にまずい。
でも分かるな〜。これ、つい出ちゃうってことあるんだけど、だけど、絶対まずい。デパート辞めて家の八百屋継ごうかなと思った矢先、父親が店を畳んでしまった。礼一は父親の接客を見習って、愛情のある悪口で接客するようになる。デパートでそれはどうよ、とは思うけど、案外客は喜んでるらしい。

「エンドロールは最後まで」・・・ 結婚できないのではなく、しない女になると決意した千帆。その途端映画館で出会いがあった。
結婚詐欺ってオチかな〜と思わせて。
医師だと思ってたら救急救命士。二人が出会ったシチュエーションも実は映画のワンシーン。挙句にアフリカに行くためにお金が足りない、って言い出す始末。
一体彼は何者?だけど千帆は彼についてアフリカに行く決意をした。多分、大丈夫。彼は本物。そう希望を繋げられる空気だった。

8編のうち、大好きだったのは約半分だけど、それでもその半分がとっても素敵だったから高評価。

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2013年02月04日

花のさくら通り 荻原浩著。

《★★★☆》


ユニバーサル広告社シリーズ第三弾。
経費削減のため都心から都落ちした彼らが越してきたのは、ちょっとさびれたさくら通り商店会にある、和菓子屋、岡森本舗の二階。
そして今回彼らのクライアントとなっていくのが、このさびれた商店会。
現実に嘆きながらも、このままなにも変えたくない人々と、どうにかして商店会を盛り上げていきたい人々。

最初は些細な依頼だった。さくら祭りのチラシを、なんとなく二階に越してきた広告社に頼んだだけだった。和菓子屋、岡森本舗の若旦那、守にとって、広告社も印刷屋も同じ感覚。
ところが、チラシで杉山たちのやる気スイッチが入ってしまった。
やる気スイッチは守から商店会の人々に伝染し、やがて仲間は増えていく。

ところどころ、吹き出してしまって、なんだろ、杉山の呟きが面白すぎる。
町にある小さなスーパーが、たびたび値段のスパイにやって来るのを逆手に取り、逆襲するのもスカッとしたし、桜のない桜祭りをさくらんぼにしてみたり、こんな風に商店街が来るお客さんのことを考えて楽しませてくれたらいいよね〜って思う。
思うことは思うんだけど、効率的なことを考えちゃうと、一箇所で終わるスーパーを利用しちゃうんだけどね。
それはそれとして、お寺の息子光照と、坂の上の教会の娘、初音ちゃんの初恋。ロミオとジュリエットみたいに光照は思ってたみたいだけど、初音ちゃんはそんなことないみたいだし、二人の三年後、会いたいな〜。

シャッター通りにしたままの方が得な、会長の弟、磯村不動産。なにやら政治も絡んで、町には町の苦労があるのね。
だけどそんなんじゃ駄目なわけだ。やっぱり現にそこにお店がある限り、そこに人々が住んでいる限り、眠ったような商店街なんて嫌だよね〜。

なんだか楽しくなってきて、このままずっと杉山たちはさくら通り商店会に住み続ければいいのにな。



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2012年06月03日

幸せになる百通りの方法 荻原浩著。

《★★★》


ほっこりする短編集。
「原発がともす灯の下で」・・・ 嫁の仁美さんに頭の上がらない賢一夫婦と同居する絹子さんのお話。
節電節電とうるさい仁美さんや物憂げな孫娘愛美、日々思うことはたくさんあるけれど、胸の呟きが面白い絹子さん。
昔は不便だけど、でもなんでも電化製品に頼ってる今よりもよかったかもしれない。

「俺だよ、俺。」・・・ なんとなく上京してきて、なんとなく役者志望となった青年。夢も叶わぬままそれでも夢にしがみつく劇団員たちの今の舞台は、いわゆる「俺俺詐欺」と呼ばれる犯罪だった。
成果の上がらない詐欺に、とうとうタブーとされている大阪をターゲットにしてしまった彼ら。
そして、青年は目が覚める、自分たちのしてきたことに。

「今日もみんなつながっている。」・・・ 見込みのない自称小説家。その自称小説家に押され気味で、人気料理ブログの本を企画する出版社員。料理の人気ブロガー。妻が人気のブロガーとは知らずに、部下の企画を却下した上司。ネトゲの世界に夢中の女子高生。練炭自殺をはかろうとした育児ノイローゼ気味の主婦。
みんなそれぞれ繋がっている。

「出逢いのジャングル」・・・ 友人に誘われて気乗りしないままに参加したお見合いパーティ。
結婚に向かない男との恋愛に踏ん切りつけたくて来たはずなのに、ついつい比較してしまう。そんな陶子が最後に気になったのは「柏田」さんだった。

「ベンチマン」・・・ 会社をくびになったことを家族に言い出せない夫。いつも時間をつぶす公園のベンチで出会った同じ境遇のベンチマンに勇気をもらった男性の家族の再生物語。

「歴史がいっぱい」・・・ 歴女の彼女を持つ敦志。会社では歴史を変えようと新たな企画を出すが、それもうまくはいきそうもない。
そんなとき、二人の歴史を変える決定的な出来事が起こる。

「幸せになる百通りの方法」・・・ ハウツー本が好きな田中。人生はそんな本の通りにはいかないもの。
自由に生きている路上で歌う千冬と出逢い、マニュアル通り成功するんだったら、絶対人には教えない、と言われる田中。ハウツー本に頼って、リストラ候補に上がり、人生思うようにいかない田中だけど、大事なものを路上で見つけたかもしれない。

「出逢いのジャングル」では陶子の人物観察眼に笑ってしまった。
「ベンチマン」は、実は妻はなんとなく気付いていて、呆れていた息子が自分で仕事を見つけてきて、自分も人生やり直すにはちょっと遅いかもしれないけど、でも絶対がんばるんだろうなって希望が見えたラストはじ〜んとした。
「原発ともす灯の下で」の絹子さんは面白い。孫娘の愛美も実は優しいし。

ほっこり心が温かくなる物語。




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2011年09月27日

砂の王国 荻原浩著。

≪★★★☆≫

ホームレスに転落した山崎は、いかさま辻占い龍斎とカリスマ的な容姿を持つホームレス仲間ナカムラを巻き込み、宗教というビジネスで起死回生をはかる。
人生を取り戻すため、名前も変え、計画はうまく行くように見えたが・・・。

山崎の作った王国は、砂で作ったように脆くも崩れ去るのか。

第一章は、山崎がホームレスまで行き着き、あがいてる様子。イカサマだけど巧みな話術の龍斎、不思議な男ナカムラと出会うまで。
第二章は、ナカムラを利用し、龍斎を巻き込んで起死回生をはかる宗教を立ち上げる。

結構分厚い上下巻で正直、第一章、第二章まで山崎の人生物語か?ってたいした盛り上がりがなく、まったりしてしまった。
ところが、第三章で動いた。

山崎改め、木島の作った「大地の会」は順調に会員数を伸ばし、うまくいくように見えた。
それが偽物だと分かっているのに、なぜか木島を応援したくなってしまう。
木島の駒のはずだった龍斎やナカムラ、特に謎だらけだったナカムラが自分の意思で動き始めたところは、なんだかぞ〜っとした。
山崎が、邪魔なのは自分だ、と気付いた瞬間、その絶望感が怖かった。

なにかを信じたいって思う人間の心の隙間に入るビジネス宗教。それが軌道に乗っていく様を見て、こうやって出来上がるんだな〜と妙に感心してしまった。

乗っ取られた「大地の会」。
木島もとい、山崎の報復物語を読みたい。「大地の会」奪還物語、もしくはどうせ偽宗教なんだから、「大地の会」崩壊物語。
もしかしてあるかな、続編。このまま終わって欲しくないね、山崎には。


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2010年05月16日

ひまわり事件 荻原浩著。

≪★★★≫
ひまわり幼稚園の問題園児4人組と、有料老人ホームひまわり苑の老人たちの交流事件簿の数々。
選挙活動のために、園と苑の一体化で点数稼ぎを目論む理事長や園長、それに反発する一部有志の老人と、大人の都合で振り回され立ち上がる?園児たちの騒動記。

父親を事故で亡くし母子家庭の晴也、お受験でストレスの溜まっている和樹、太っちょでちょっとどん臭い秀平、おしゃまでませている伊梨亜の4人組は問題行動が多く、隣のひまわり苑に入り浸るようになる。

長年連れ添った妻に先立たれひまわり苑にいる誠次、元寿司屋の親父だった寿司辰、ダンディでひまわり苑の不正に立ち上がる片岡さん、口は達者なおトキ婆、訳ありで誠次の憧れの君磨須子さん。
老人たちと園児たちが、お互いを恐れ意味不明の生き物とみなしていながらも、じわじわと近づいていく様は微笑ましかった。

人間いくつになっても人間関係はややこしい老人ホームの話や、ちょっと変わった子ども達や頑張る保育士の話は、ところどころ可笑しくて思わず笑ってしまうんだけど、なぜだか中盤まで退屈に感じた。

保育士や子ども達、誠次の目線で語られるエピソードは、ちょっとずつ101章に分かれてて、個人的にはそれが敗因だった気がする。
それなりに笑えるのに、盛り上がるまでに長いんだよね。ささっと読めるわりに、すぐに飽きちゃう。なんと一週間もかかってしまった。

しかし、終盤のバリケードで経営者側と対決する辺りから、ググッと読めて、それがあるから★は三つ。
おトキ婆との別れ、ラストの誠次や寿司辰との再会など涙なくしては読めなかった。



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2009年11月04日

オイアウエ漂流記 荻原浩著。

≪★★☆≫
ゴルフ場建設視察のため、スポンサーを連れての海外出張の最中、乗った飛行機が遭難、墜落し、無人島に流れ着いてしまった乗客10人と犬1匹。
救出されるために生き残るためのサバイバルが始まった。

冒頭は笑えたんだけどね。結構爆笑して、てっきりそういう話かと・・・。

非常に読み味の悪かった「東京島」を思い出してしまった。
あれよりはマシだけど、男女の人間が無人島に漂着して生活すると、笑い話だけでは終われない、なんか人間のドロドロしたもの見ちゃうんだな。

パワハラ部長と、KYの野々村、もっと笑えるかと思ったんだけど、腹が立つだけだった。
薮内がやけに魚に詳しかった事情も、あらそう、って拍子抜けだったし、私はてっきり、実は著名な学者とかそんなオチを期待してたんだけど。
早織も恐ろしく身勝手なだけだったし。ところでどうして3人だけヘリコプターなんだ?
当然みんな救出されたんだよね?

こうなってみると読み味の悪かった「東京島」の方がインパクトが強かった。

posted by じゃじゃまま at 21:45| ☔| Comment(8) | TrackBack(3) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月31日

ちょいな人々 荻原浩著。

≪★★★≫
どれもこれも、ふふっと小さな笑いを起させる。
「ちょいな人々」 ワンマンな社長に振り回されるちょいな社員。ワンマン社長だけじゃなく、若い女性社員にも振り回されてるオヤジたちの滑稽さが笑いを呼ぶ。

「ガーデンウォーズ」 隣家の老人と争う嫁。隣家の嫁と意地を張り合う老人。庭をめぐってのトラブルをそれぞれの視点から見ると面白い。決して交わることのなかった二人が共同作戦に立ち上がったこととは。

「占い師の悪運」 インチキ占いで生計を立てようとしていた満宮。うまくいきそうだったのに、うっかりボロを出すことに・・・。
思わず、あ〜あとこっちが落胆してしまった。

「いじめ電話相談室」 子供たちからのSOSに立ち上がったサトコ。いじめは子供だけの話ではないんだよね。
手段には疑問を感じなくもないけど、結構スッとした。わりと好き。

「犬猫語完全翻訳機」 社長の悲願であった愛猫との会話のために、社員に研究をさせて発売に漕ぎ付けた犬猫語翻訳機。モニターたちの声が、笑わせてくれる。

「正直メール」 前社長の失敗作であった犬猫語翻訳機を過去の汚点とし、その技術を改良し、音声だけでメールができる携帯を開発させた。そんな携帯を使用した社員やその家族が経験した、この携帯の問題点が笑えた。
もう、絶対に人前で読んじゃまずいな〜と分かってたんだけど、我慢できずに読んでしまった。案の定、私は不審人物となってしまった。

「くたばれ、タイガース」 熱狂的なタイガースファンの婚約者を、巨人ファンの父親に紹介する日。それは奇しくも巨人阪神戦の日だった。

posted by じゃじゃまま at 22:24| ☔| Comment(6) | TrackBack(4) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月22日

四度目の氷河期 荻原浩著。

≪★★★≫

結構ぎっしりでしたね、内容の濃さ。
シングルマザーやハーフなんて、白い目で見られちゃうある田舎町。研究所で働く母親と二人で暮らすワタルは、ちょっと変わった男の子。走ることが大好きで、決められた色で絵を描くことよりも好きな色で絵を描きたい。そんなワタルを周囲は持て余し、なにかと問題児扱いする。
母親は、ワタルの父について「言えない約束」と言い、なにも明かさない。ある日シベリアの氷河で発見された一万二千年前のミイラの記事を見つけたワタルは、このミイラこそ自分の父親だと確信する。
ボクはクロマニヨン人なのだ!

自分の出生を知らないストレスが、ワタルを知らずに追いつめて、一万年前のミイラを自分の父親だと思い込ませたのかもしれない。
確信してからのワタルは、たとえそれば荒唐無稽なことであっても、居場所を見つけ幸せだったと思う。

そしてもう一つの出会い。酒乱で酔えば家族に暴力を振るうろくでなしの父親から弟をかばいながら、明るく強く生きているサチ。

この二人の少年少女の、小学校からの十数年間の月日の物語。
クロマニヨン人と信じた少年は、槍投げがしたくて陸上部に入る。昔から走ることは好きだったから。だってクロマニヨン人は狩りで走るから。
ワタルの学生生活が、自分で信じ込んだ出生によって走ることや槍投げに出会えてよかったなってしみじみ思う。

母親も失い、ワタルは実の父に会いに行く。私は、研究所のなんとかって博士よりも、やっぱりワタルの父はあのアイスマンなんだと思う。
サチと二人で、アイスマンを還してあげようって思うのは、私も物置同然の倉庫で誰にも見向きもされなくなった場所に置かれるよりも、幸せなんじゃないかと思った。
たとえ、それが大馬鹿野郎のすることで、幼稚な考えでも、なんだかワタルの気持ちが分かってしまった。

長い長い年月がかかったけど、ワタルが自分というものを見つけられて、これがまたシベリアの白白白・・・タイトルの氷河という言葉から想像する寒さと今までの孤独が合ってて、よかった。
posted by じゃじゃまま at 23:06| ☁| Comment(5) | TrackBack(4) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月21日

愛しの座敷わらし 荻原浩著。

≪★★★≫

夫、晃一の転勤に伴い、家族+夫の母と一緒に東北?に越してきた一家。
そして晃一が新しく選んだ家は、街中とは離れ、お隣さんが見えないくらい、買い物も往復で50分かかる、築103年で、広いっていえば広いけど、民芸館風の古めかしい家だった。
そして、ととととと、と軽い足音とその主もついて・・・。

主の正体がやっとおでましか〜になるまで、長く感じてしまった。
出てきては消え、なかなか家族に認められなくて、焦れったかった。

長女の梓美も、元の学校では八分にされてて、嫌がらせのメールは、こっちが腹が立ってくるね。そんな寂しい梓美だけど、新しい家で、座敷わらしに出会ってから、友だちができて、これから楽しい中学生活が始まる。
晃一も、仕事や上司の付き合いで家族を大事にしなかったけど、座敷わらしのおかげで家にいる時間が多くなってきたし、おばあちゃんの鬱も、座敷わらしを遠い昔別れた兄弟と思い込み、元気が出てきた。

体が弱いって言われてた弟・智也もかっちゃんに出会い、田舎の付き合いを面倒くさがってた妻の史子も、家族がみ〜んな座敷わらしのおかげで変わっていった。

ところがまたもや晃一の転勤。梓美なんてやっと乗り越えて、これからって時だったのに。なんだったんだい、この数ヶ月は・・・。
しかも座敷わらしとも・・・。

ラストの「六名様ですね」は、ここまで来るのにちょっと前半長すぎた気もするけど、このラストの一言が、すっごい効いた。
何度も心の中で復唱しては、にんまりしてしまった。
posted by じゃじゃまま at 16:57| 🌁| Comment(12) | TrackBack(9) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月22日

噂 荻原浩著。

≪★★☆≫

香水を売り出すために、口コミの噂を利用した戦略を打ち出した企業。女子高生をモニターとしてスカウトし、その会場で女の子の足首を切り取るレインマンという殺人鬼の話をする女性実業家。
それはただの噂で、ただの戦略にすぎなかったのに、事件が実際に起こってしまう。

小学生の頃流行った「口裂け女」を思い出して、噂話の興奮が蘇ってしまった。
でも、すごくゾクゾクしそうな話なのに、なんでか退屈になってしまったのは、恐らく物語のペースがゆっくりで、多くの無駄を感じたからじゃないかと自分で自分を分析してみた。
犯人像が割れるまで、そして第一第二、第三の事件が起こるまで、な〜んかまったりしちゃって、むさぼるように読んだというには及ばなかったな。

でも終盤は結構衝撃的だったかも。あ、そうなんだ〜、そっち行ったか、って。
ってか、確かにあいつ、くさいな、とは思ってたんだ。二重人格か妄想癖あるのかな〜って感じはしたよね。
荻原デビューが「千年樹」だっただけに、サスペンスも違和感なかったけど、一瞬誉田哲也氏の作品読んでるのかって作家さんがごちゃごちゃになってしまった。
posted by じゃじゃまま at 22:25| ☔| Comment(4) | TrackBack(3) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月17日

オロロ畑でつかまえて 荻原浩著。

≪★★★≫

人口300人しかいない村。雑誌の特集では「日本一の田舎」と書かれ、村の8人しかいない青年団は、なんとかこの村を活性化したいと願う。唯一東京の大学からUターンしてきた慎一が、広告代理店に頼んでなんとかしてもらおうと提案する。
潰れかけた広告代理店、たまたま慎一たちが飛び込んできて、村おこしキャンペーンの依頼を引き受けることになった。
そして企画したのが、いるはずもない恐竜を演出すること!?

牛穴村の青年団の面々がユニークで、荻原氏のユーモアが冴えてる。
慎一は、村では大卒ってことで一目置かれていて、勇んで上京して広告代理店に勤める元同級生に会いに来るところなんて、ドラマで是非再現したいくらい大ボケで笑ってしまう。

都会育ちの人間には鼻で笑われてしまいそうなくらい純朴だけど、そこに救われる人もいるわけで。
競争の世界から、自然体に戻れた元キャスターに癒されるな〜。
もちろん嘘をついた報いは受けるけど、裏の庭で見つからないものは、どこに行ってもない、ってことが分かって、みんな地に足がついてよかったよかった。

紆余曲折ありながらも、未来は明るくて、そんなラストもよかった。

篠田節子氏の「ロズウェルなんか知らない」を思い出してしまい、結構似てるけど、調べたら荻原氏の方が早かったんだね。
ちなみに「ロズウェル〜」は五つ星だったけどね。


posted by じゃじゃまま at 22:39| ☁| Comment(3) | TrackBack(3) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月25日

メリーゴーランド 荻原浩著。

≪★★≫
東京の家電メーカーを辞め、生まれ故郷の駒谷市で公務員になった遠野啓一。まったりゆったり勤めていたけど、市民から税金の無駄遣いと叫ばれている「駒谷アテネ村」再建のために、天下り役人がた〜くさん役員に名を連ねているペガサスに出向になる。
そこで、「駒谷アテネ村」を再建することなんてこれっぽっちも考えてない、今までのままでいいじゃ〜ん、っておじいちゃんたちを目の当たりにするにつけ、俄然やる気が出てくる。
まるでよくある話ってことだね。「県庁の星」はしょぼいスーパー。
映画「タンポポ」でもラーメン屋を立て直したり、スクールウォーズだって荒れた学校をラグビーで立ち直らせたり。
日本人は、こういうの大好き。

なんだけどね〜。どうも疲れたよ。
「駒谷アテネ村」は、啓一も頑張ったし、バーベキューをして、ピザを売って、野菜や特産物販売所もいいと思う。
でも、昨今、税金の無駄遣いが叫ばれてて、ニュースでも大阪市やいろんなところの無用の箱物を見ちゃったりしてると、啓一やみんなが頑張っても、ペガサスのような人間がその後ろにはいて、甘い汁啜ってるのかと思うとね〜、啓一の頑張りは認めても、市長交代で、是非上向きになった「駒谷アテネ村」を潰さないで!とチラッとは思っても、あんまり魅力を感じないんだよね、舞台に。

やっぱ犯人はペガサスや役所だね。あいつらがフィクションなんかじゃなくて確実に世間にいると思うと、全部中止!解散!!って叫びたくなる。
ああ、ついでにいえば、啓一が在籍してたっていう「ふたこぶらくだ」の団員たち。どうも妻の立場になっちゃうんだけど、うちでは絶対にありえない。人んちに、何泊もあんな大勢で来るっていうのは。
まず、向かい入れたりすることなんて私には無理だ。

人の金だと思うと、ああいう使い方になるんだろうな〜と思うと、ああ、また腹が立ってきた。
ラストのメリーゴーランドも、別に感動もなく、わたし的にはイマイチ。
posted by じゃじゃまま at 15:50| ☔| Comment(7) | TrackBack(3) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月08日

さよなら、そしてこんにちは 荻原浩著。

≪★★★≫
サクサク読めたな〜。そして装丁っていうの?これ、好き。タイトルページにそれぞれ描かれてるこの紙の手触りとか、色使いとか、すっごくいいよね。
荻原氏って、「千年樹」、そして次が「押入れのちよ」ときたもんだから、こんな柔らかい手触りのお話書くとは、なるほどね〜。
でも、最近男性作家読んでると、一瞬誰のか分からなくなるの多いね。似てるというのか。
表題作の「さよなら、そしてこんにちは」は葬儀屋の社員のお話。なかなか興味深いというか、葬儀屋さんが出てくるお話って読んだことなかったから、是非今後も焦点を当てて欲しいかも。ドラマありそうだしね。

「ビューティフルライフ」はリストラされたお父さんが、一念発起して山奥で農業をやっていこうってお話。どう見ても、先行き不安なんだけど、ふふって笑えちゃう。私は、この話結構好きだった。
家族がまとまって引っ越しするなんて、温かいじゃない。普通なら、田舎で暮らそうっていうお父さんに、妻も娘も大反対ってなりそうなのに。
そして、一人息子が不登校っていう問題とお父さんの決意は、実は決して無関係ではなくて、でも家族の誰一人としてそのことを口に出さない。そういう思いやりが、ね〜〜、私は好きなのよ。

「美獣戦隊ナイトレンジャー」は、憧れの君の本性を見てしまった人妻。そういうオチか、って思ったけど、でも、憧れの君に逢うために子どもをダシにしてテレビの前に陣取る、あの苦労。そんなことしなくっても言えばいいじゃんね〜って思うけど。姑にも夫にも。
どうってことないと思うんだけど。馬鹿にされようかなんだろうが、別に「ファンなんです〜」で済む話だと思うんだけどね。
男性作家さんには、主婦(嫁)を美化してないか?奥ゆかしいのを想像してるのだろうか。図太いんだけどね〜。姑はともかく夫だったら「どいてよ!見えないじゃん!!」くらい言えそうだけどね。

「寿し辰のいちばん長い日」これも好きだったな〜。妙に寿しが食べべたくなったよ。偏屈な職人気質のおやじの見栄が、悲しい、というか悔しいオチで、なんだか自分が損した気になった。

「長福寺のメリークリスマス」は、せっかく妻と娘のために、今まで禁じていたクリスマスを解禁し、喜ばせようと変装までしてツリーを買いに行ったのに、恩師に遭遇してしまった僧侶の不運。
妻の気分になって、あ〜あ、勿体無い、と呟いてしまった。

他「スーパーマンの憂鬱」「スローライフ」
posted by じゃじゃまま at 22:35| ☔| Comment(10) | TrackBack(8) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月18日

押入れのちよ 荻原浩著。

ホラーっぽいと聞いてたので、怖々読んでみました。でも、荻原氏の「千年樹」を先に読んでしまったので、免疫が出来てたせいか物足りなさまで感じてしまった。
いや〜、「千年樹」の怖かったこと。あの装丁見てると、なにかいけないものを見つけてしまいそうな、稚児衣装着た子どももまだ頭の中ですぐに浮かんじゃうし。そんな強烈な「千年樹」だったのでね〜。

「コール」はちょっと泣けた。学生時代、同じ女性を好きになった親友同士。片方は彼女と付き合い結婚する。片方はずっと思い続ける。それが逆転するとき、切なくも幸せな終わり方でよかったかな。

「押入れのちよ」は、ちよはなんとも愛嬌あって可愛いお化けだよね。役に立つし、いいかもね。本当のブダの正体が分かった時は、ほんの少しぞぞっとした。でも微笑ましい。

「木下闇」は頭の中で想像してしまうと、ラストちょいと怖いけど、一番好きだったかな。この短編の中では一番気持ちがラストに向けて急いた。突然神隠しのようにいなくなった妹の行方。

「介護の鬼」と「殺意のレシピ」「予期せぬ訪問者」は想像のつく展開で、「介護の鬼」はあまりにも嫁の仕打ちがむごくて気持ち悪かったよ〜。
順番的に、こっち先に読んで、「千年樹」を後から読めばよかった。

posted by じゃじゃまま at 21:59| Comment(9) | TrackBack(5) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月01日

千年樹 荻原浩著。

どなたかのブログでよさそうな感触を得たので借りてみました。
うんうん、結構好き。冒頭の、部下?の謀反によってアキレス腱を切られ、妻子と共に山中に置き去りにされた国司、公惟。幼子を背負い、せめてこの子だけでも、とその思い虚しくくすの木の下で息途絶えた。
そして何百年もの時を経て、その木の下でいじめを苦に自殺しようとしてた少年、星。どこからか幼子が出てきて、最初は自殺を止めようとしてるのかと思ったら、早く死ねと、そう願ってるのだと気づいた時のあのぞぞぞ〜〜〜とした恐怖。
ちょっとこの先読むのが怖くなったけど、冒頭の3人の無念が木に宿ったのか、時を前後しながら語られる、千年もの間に繰り広げられてきた物語。そしていつの時代にも、この巨樹くすの木がそばにあった。

ちょっと怖いよ、これ。
戦時中くすの木の下で、幼子が呼ぶから行ってみたら爆撃に当ったり、怨念ですかね〜。ちっともいいことなくて、ちっとも守ってくれない。やっぱり残念無念の思いが、呼ぶんですかね。

これは別に生まれ変わってるわけじゃないのか。みんなそれぞれ別の人か。同じ章で語られる過去と現在の繋がり。これは意味があったのか?
道に迷ってことりの里・郷土史料館に入った家族の娘はどうなったの?あれは、遠い昔ことりの木の近くの池に望まれなかった赤子を静めてた話と、連れ子同士で結婚した夫婦に新しい命の誕生と、をいいたかっただけで、娘は別に行方不明になったわけじゃない?

その辺の締めくくり方、想像力を逞しくしろよって感じで、それがいいのかもしれないけど、どうせならはっきり書いてくれた方が楽なのに。
ぞぞぞ感と悲哀感がなかなか好きな作品でした。

posted by じゃじゃまま at 23:33| Comment(7) | TrackBack(5) | 荻原浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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