2009年11月28日

イトウの恋 中島京子著。

≪★★★≫
母校の中等部で教師をしている久保耕平は、郷土部の顧問でもある。
実質部員は、一年生の赤堀君しかいないけど、それなりに耕平は熱心である。
ある日、実家でひいおじいさんの持ち物から、祖父の知り合いらしき人物が書いた手記を発見する。それは日本の紀行を書いたI・Bという女性探検家の通訳をしていた人物のものらしい。

伊藤亀吉の手記を耕平と赤堀君は郷土部の題材とし、そして、伊藤亀吉の孫娘も巻き込んで、手記の続きを捜し求める。

孫娘である劇作家田中シゲルは、幼い頃父と母が離婚していたために、実母の存在を知らず、よもや自分が伊藤何某の孫娘と言われても、戸惑うばかりだったが、手記を通して、自分を置いていった母の存在、曽祖父の生涯に興味を示し、アラフォー世代のシゲルと耕平、中学生の赤堀君のちぐはぐでありながらも、いつしか近づいていくところが、なんとも微笑ましい。

中盤までは、ちっとも伊藤亀吉に興味が持てず、なんでまたこんな手記なんか、と思っていたのに、シゲルが興味を持ち始めたように、いつしか伊藤亀吉と、I・Bの旅の終わりが気になり始めて仕方がなかった。

シゲルと耕平、イメージは凸凹コンビなんだけど、お互いが癒されるといいな。

posted by じゃじゃまま at 22:12| ☔| Comment(8) | TrackBack(2) | 中島京子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月05日

冠・婚・葬・祭 中島京子著。

≪★★★≫
中島氏の作品はなんだか温かいですね〜。
冠婚葬祭にまつわる4編の物語。
「空に、ディアボロを高く」 地方新聞社の記者だった菅生裕也は、成人式の取材記事で誤報を載せてしまい、2年間最後まで好きになれなかった地方を後に、生まれ故郷の東京に戻る。なんとなく、普通逆じゃん、なんて思ったけど、そんなある日、そもそもの誤報の元となった女性が入院してると聞き、訪ねてみたのだが・・・。確かに誤報は誤報だけど、誰に迷惑をかけたわけでもなし、その女性が喜んでくれてるのなら、この土地での2年間も無駄だったわけじゃないかもね。
女性は菅生が「菊池さん」のお見舞いに来たと勘違いしてるんだけど・・・。

「この方と、この方」 怪我をして娘の嫁ぎ先の病院へ入院してた「菊池さん」。菊池さんはお見合いのプロだった。写真を見ただけでピ〜ンとこの方とこの方、って分かってしまうらしい。今はもう必要とされない時代だから引退してしまった菊池さんの元へ、2枚の写真が送られてきた。
結婚できない兄を異常なまでに心配し手出し口出しする津村真知と、結婚式へ執着する池上智子。
どうなることかとハラハライライラしながらも、ラストはにんまりしてしまういいお話でした。

「葬式ドライブ」 宇都宮ゆかりさんの葬儀に呼ばれた、たった一度しか面識のなかったサラリーマンと宇都宮さんとの、ほんの短い思い出。
ここに津村真知がちょこっと登場。
取引先の川田工務店の創業者の葬儀に、社命でゆかりさんを連れて行くことになった佐々木直之。いったいゆかりさんとは誰なのか。
ゆかりさんの寂しかった人生と、でも最後に心のこもった葬儀をしてもらって、人ってこうやってだんだんと人々の記憶からも消えていくんだな〜。

「最後のお盆」 ここには、川田工務店に嫁いだお嫁さんがちょこっと登場。そのお嫁さんの実家の三姉妹の、実母の生家を取り壊すことになった最後の夏。不思議な体験の物語。
昭和の時代の映画を見てるかのような懐かしい香りがした。でも正直、なにがどうなのか、よく分からなかった。

最初の2編がよかっただけに、後半はイマイチだった。

posted by じゃじゃまま at 16:31| ☁| Comment(4) | TrackBack(3) | 中島京子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月09日

ハブテトル ハブテトラン 中島京子著。

≪★★★☆≫
毎年夏休みを過ごしてたおじいちゃんとおばあちゃんの住む広島のある町で、5年生のダイスケは2学期だけ過ごすことになった。
東京の学校に行けなくなって、広島の松永の小学校へ通う。小さな心にいっぱいのものを詰めた少年が、ふわ〜っと心が軽くなるまでの成長物語。
「ばあば、助けて」を思い出した。
やっぱり学校に行けなくなった少年が、おばあちゃんと佐渡島へ旅をして少し大きくなる成長物語だったけど、少年たちが元気を取り戻すと、こちらも嬉しくなって元気になれる。

松永の少年たちが明るくて、そしておばあちゃん、知り合いのハセガワさん、居場所が変わり、そうすると視点が変わって、気持ちも変わる。すごくいいことだよね、うん。
祭りやイベントに参加して、ダイスケはどんどん前へ前へってなっていくのが分かって、本当に嬉しかった。

しこりを残したまま別れてしまった元クラスメイトを訪ねるのも、私は泣けてしまった。そのまま大人になってしまうことがほとんどなのに、きちんと謝りに行く。大人になってしまえば、そんなこともあったね〜って、で済ませてしまえるのに、その健気さを持った子どもの心が嬉しくて嬉しくて泣けた。

東京の小学校の問題は、たぶん解決してないし、担任の教師には怒りを感じたけど、ダイスケは松永で元気をいっぱい貯金した分、少しまた頑張れるよね。
いいのに、あのまま松永にいれば。

お好み焼きが無性に食べたくなった。

posted by じゃじゃまま at 12:29| ☔| Comment(7) | TrackBack(5) | 中島京子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月28日

平成大家族 中島京子著。

≪★★★☆≫
登場人物にはクセがあるのに、物語にはクセがなく、読み心地のよさを感じた。
義歯の製作の趣味を持つ、引退した歯科医の緋田龍太郎を筆頭に、緋田家には、妻の春子、春子の母タケ、何年も引きこもっている長男克郎が暮らしていた。
そこへ、事業の失敗で自己破産した長女逸子たち夫婦が孫のさとるを伴い居候になる。
さらに、次女の友恵も離婚して出戻ってくる、お腹に子どもを宿して。
さ〜〜、大家族大家族。
この大家族が織り成す物語が、なんとも心地いいのだ。

主の龍太郎は、気分だけ亭主関白っぽくて、家の中の女どもの考えてること、分かってるつもりで実は勘違いで、蚊帳の外ってところが可笑しい。
春子の実母タケの、意識があっち岸だったりこっちに戻ってきたり。

満州から引き上げる時に一瞬手を離してしまった私の春子はどこに?には、ひや〜〜〜っとしたものが流れた。まさか、そんな・・・ってちょっとしたスリルだったね。
さとるの公立中学のサバイバルも、さとるの父の農作業に夢中になるさまも、すんなり入っていけて、ほんと、読み心地がいいな〜。

克郎の存在感のなさゆえの引きこもりも、家族の誰も恨んだりしていない克郎を知ってからは、前向きな引きこもりとさえ思えた。
その克郎に訪れた春には驚かされ、喜んだ。

しいていえば友恵としんごの件だけは、あんまり好きじゃなかったけどね。
ほのぼの、にんまりしてしまった。


posted by じゃじゃまま at 21:45| ☔| Comment(6) | TrackBack(5) | 中島京子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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