2015年06月23日

我が心の底の光 貫井徳郎著。

《★★★》

母親からの育児放棄により、餓死寸前だった晄。父親はその母親を殺して殺人犯となり、世の中の不公平と折り合いをつけながら生きている。
なんの希望も見出さない、どうでもいい、そんな晄の人生ってなんだったんだろう。
最近は読むモノ観るモノ「復讐」続きで、結局この本もそうだった。

晄の人生は復讐そのものだった。

過酷な運命の元に生まれた晄は、やっぱり普通の人間が感じるような感情では図れなかったね。

引き取られた親戚の家には晄と同い年の従兄弟がいて、こいつが嫌な奴なんだけど、特に晄をいじめたりするわけじゃないけど、無神経さに腹が立って。
詐欺師として天才なのか、その原動力は復讐心なんだけど、自分たちを死の淵に追いやった原因となった人々に復讐していく。

母親がホスト通いにはまり、晄を何日も置き去りにするところは、苦しかった。
いくつものそんな事件が思い出されて、幼い子たちの命を脅かす、親の無責任さに気分が悪くなる。
だから晄の母親が分かれた夫にボッコボコにされるのなんて、ざまあみろってもんで、死んですっきり。

晄は、母親がホストに夢中になって帰ってこなくなった、そのホストにも復讐。
そもそも母親がホストに愛を求めるのは、家に帰ってこなくなった父親が原因で、それは父に愛人ができたから。その愛人にも復讐。
だけど、晄の感情はどこかねじ曲がっていて、晄の復讐に巻き込まれ従兄弟の慎司と幼馴染の怜菜が拉致された時、助けるのは怜菜でしょう?いやいや、まず拉致現場に助けに行ったんだから二人救出すればいいのに、なんで慎司だけしか救出しないのか!!

その理由は、虐待され感情が欠落してしまったとしか思えない晄らしいもので、共感はできないけど納得。
母親が帰ってこない、たった一人の部屋で、慎司が譲ってくれた仔猫がどれだけ晄の希望となったのか。
トラスケの存在だけが晄にとっての希望で、そのトラスケのために復讐をしたのだ。

怜菜なんて目に入ってない、いや、本当は晄だって怜菜の気持ち知っていたし、好きだったのかもしれない。だけどそれよりも優先する感情が晄にはあったんだよね。
トラスケの復讐と、そのトラスケを譲ってくれた慎司への感謝だか義理。ここはもう絶対に譲れない。

やっぱりラストは貫井氏らしく、暗くどんよりしたものだったけど、それでもなんだろう?晄の目的が分かっただけで、共感はできないのに納得がいったことで、彼の選んだ最期に希望を感じた。
これでよかったんだ、と。
彼にはこの先の明るい人生なんて考えられなかったのだから。

一切出てこなかった父親のその後も知りたかった。妻殺し・・・出所してもおかしくないよね。あれだけ元愛人やホストのその後調べたんだから、父親の消息も調べればよかったのに。




posted by じゃじゃまま at 17:41| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 貫井徳郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月16日

神様の裏の顔 藤崎翔著。

《★★★》

神様のような清廉潔白な教師、坪井誠造が逝去した。その通夜は悲しみに包まれ、誰もが涙した―と思いきや、年齢も職業も多様な参列者たちが彼を思い返すうち、とんでもない犯罪者であった疑惑が持ち上がり…。聖職者か、それとも稀代の犯罪者か―驚愕のラストを誰かと共有したくなる、読後感強烈ミステリ!!第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)

通夜に参列する一人一人が、坪井誠造を思い返していく。
そこで思い返されるそれぞれのエピソードのかけらを拾い集めつなぎ合わせていくと、とんでもない事実が浮上する。
元教え子の自殺、同僚教師の息子の事故、隣人の徘徊老人の転落死、ストーカー行為、疑惑を確信に変えさせるような証拠や証言。
坪井を恩師と仰ぎ、心から尊敬していた元生徒が、一度疑い出したら、恩師を犯人に仕立て上げようとする豹変ぶりに嫌悪を抱きながらも面白かった。
疑惑が浮上した途端、呼び捨てだもんね。

でも、徐々に疑惑がただの偶然になってきて、私はそこで終わりでもよかったと思うんだ。
もしくは逆に、やっぱり先生は裏の顔があった、ってことでも。

娘の二重人格のせいにしてしまうのは、せっかく面白かったのに、もったいない。
なんとしても犯罪にしたかったんだろうか、だったら先生が犯人でもよかった。娘にはもう一人の人格がいて・・・っていうのは残念なオチだった。

posted by じゃじゃまま at 12:47| 神奈川 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月02日

ナオミとカナコ 奥田英朗著。

《★★★★》

葵百貨店の外商部で働く小田直美は、大学時代からの親友加奈子が夫からのDVを受けていることを知り、彼女を救うために、夫を排除することを決意する。
それまでは中国人に商品を万引きされて、その対応に追われる様子が描かれるけど、そこで中国人の李社長に気に入られて、チャイナタウンで信頼を得たり、加奈子の夫にそっくりな林を見つけたりと、まさか加奈子の夫の殺害に進んでいくとは思ってなかった。

徐々に計画が進んできて、ま〜、二人の立てる計画っていうのが、素人の私が聞いてても、絶対に危ないな〜って思うことばかり。
二人で話してて、そこに気がつかないのかな〜って、ほとんど呆れてたけど、これがうまくいくのかな?なんて期待も持ったりして。
どう考えても直美と加奈子は犯罪者なんだけど、被害者である夫や夫の家族が嫌な感じで書かれてるから、俄然二人を応援したくなるんだよね。

まず、マンションの防犯カメラってまず一番先に警戒すると思うんだよね。
以前、実際の事件でもあったけど、帰宅する姿が映ってるのに、出ていく姿が映ってなきゃおかしいでしょ。
家出人で届けても、夫の身内が騒いだら、まず一番最初に防犯カメラを見たがると思うんだよね。だからそこは一番警戒しなきゃいけないし、そもそも夫を殺して、その夫の車で出かけたらさ、今いろんなニュースや小説でもNシステムが出てくるから、足がつくよね。
加奈子なんて、最初顧客から騙したお金を下ろすのに自分が行こうとしてて、ね〜ね〜、カメラチェックされたらアウトだって!!って本当に呆れた。

呆れちゃうくらいずさんな計画なのに、二人を応援したくなるよね。
特に義妹の陽子、兄と同じ目に遭えばいいのにとさえ思ったよ。
李社長に頼ったら、どうにかならないかな。その後の二人が知りたい。

posted by じゃじゃまま at 19:50| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 奥田英朗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

雨の狩人 大沢在昌著。

《★★★》

いつの間にか新宿署といえば鮫島じゃなくて、佐江になってしまった。
どこかで鮫が出てきたらいいな〜と思っていたけど、そんなサービスはなかったか。

一匹狼の刑事、佐江と本庁刑事のコンビがクラブで起きた不動産会社社長の射殺事件を発端に、その底にある日本最大の暴力団幹部、延井の陰謀と野望を暴いていく。
大沢氏は登場人物に愛着が沸くとどんどんキャラが変わって来るような気がする。

つまはじき者だった佐江が、実は上も認める有能な刑事で、実は信頼されてる、とか。そういうくだりがしつこいような気もしたけど、中年太りの冴えないおっさんってイメージだったのに、タイの殺し屋の女の子にほのかな気持ちを抱くところなんて、イメージが鮫島になりそうで、いやいや、冴えないおっさんなんだよなってイメージを打ち消したりして。

今回もかなりややこしい裏社会の相関図ありの、実はなんだか分からないところもあったけど、そこで止まっても仕方ないので、裏社会と刑事の闘いをとにかく読みました。
絶対に延井の放った殺し屋からは逃げられないはずなのに、佐江は助かるんだよね〜。
家の中でウトウトしてたら、殺し屋が目の前にいた、なんて絶体絶命なのに、謎の人物が佐江を救う。
ま〜、うまくいくもんだ。

冒頭の少女と、行方不明の父親と、佐江たちが追ってる事件と、本当によく繋がったもんだ。
このラストは、狩人シリーズ終わりなの?刑事じゃなくてもなんとかやっていけるか。

posted by じゃじゃまま at 19:36| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 大沢在昌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月06日

ウエンカムイの爪 熊谷達也著。

《★★★》

一気に読んでしまった。
一番読みたかった「ウエンカムイの爪」。
そう、私はヒグマの食害事件、怖いんだけど、興味があるのだ。北海道での事件やワンダーフォーゲル部の事件、数年前に起きた東北の熊が脱走して職員の女性が被害に遭った事件など。
それこそリアル鬼ごっこ。

ヒグマに遭遇して、危機一髪の瞬間、謎の女性に助けられた写真家吉本。彼は一年後、北大の、ヒグマの生態研究の取材に同行することになった。
その前にキャンプ中の大学生たちが襲われる事件が起きており、緊張感の走る中、吉本は謎の女性が研究チームの責任者と知り、調査の過程でヒグマと対峙することとなる。

読みやすさもあるけど、展開もサクサクしてて、多分ほんの数日間の出来事なんだよね。
もっともっと読みたかったけど、あっという間に終わってしまいました。

posted by じゃじゃまま at 15:34| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 か行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マスカレード・イブ 東野圭吾著。

《★★★》

「マスカレード・ホテル」をほとんど忘れてしまってるので、なんとも言えないけど、刑事の新田とホテルのフロント、山岸さんの、出会う前のそれぞれの活躍が読めて楽しかった。
この後でもう一度「マスカレード・ホテル」を読んだらまた楽しめるのかもね。

「それぞれの仮面」・・・ ホテルの宿泊客に昔の恋人がやって来た。彼からの突然の頼み。消えた女性を探して欲しい、という。元恋人の嘘、消えた女性の仮面の下の顔。どうでもいいですけどね、この女性がまんまと実業家と結婚しないように天罰が下って欲しいもんだ。

「ルーキー登場」・・・ 実業家の男性がランニング中に殺害された。通り魔なのか、それとも怨恨なのか。
残された吸殻は捜査を混乱させるためで、殺害の現場の状況からもしやこの近辺に住んでいる者では、と新田は睨む。そして実業家の妻に横恋慕する一人の男が浮上した。果たして本当の黒幕は?
これもこの女に軍配が上がるのかと悔しいね。

「仮面と覆面」・・・ 山岸のホテルに、超人気作家が宿泊することになった。熱狂的なファンが一目作家に会おうとロビーを張っている中、宿泊客のプライバシーを守るために、山岸が奮闘する。そして人気作家の仮面の下には?

「マスカレード・イブ」・・・ 大学教授が殺された。容疑者は研究のライバルであったが、彼にはアリバイがあるはずだった。
殺害された日、彼にはアリバイがあるのに、なぜかその日一緒にいた人物をどうしても言うことができない。
そもそも彼は殺害日をなぜか翌日だと信じてた節がある。実際会うことはなかったけど、山岸の推理と、新田の勘が交換殺人を導き出す。

posted by じゃじゃまま at 15:20| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

キャロリング 有川浩著。

《★★★★★》

幼い頃からの虐待で心に傷を追っている大和俊介。いつもそんな彼を見守ってくれた西山秀代のもとで働いていたが、主要取引先の連鎖倒産でクリスマスに廃業が決まってしまった。
元恋人の柊子、デザイナーのベンさん、一言多い東大出の朝倉さん。
残された日々を、社長以下四人の社員で向かう、クリスマス倒産までの思いもよらぬ事件の数々。

学童保育部門で預かっている航平が両親の離婚で心を痛めている。お父さんに戻って来て欲しいという願いから、別居中の父親の元へ母に内緒で通いつめていたら、思いもよらぬ誘拐事件に発展して、あちらもこちらもたくさんの別れや思いやりが溢れていて、泣いたりホロリとさせられたり、ページをめくる手と涙の止まらない感動作。

ベタ甘の有川氏なので、そう思って読み始めたら、冒頭からちょっと異変が?
大和が銃を突きつけられていて、絶体絶命の場面。
ところが一転して、物語はその以前からのスタートで。いつ、あの絶体絶命の場面にいくのか、ドキドキしながらも、大和と柊子がお互い好きなのに、どうしても触れて欲しくない、触れられない部分、父親からの虐待を思う時、子供の親への想いに胸が潰されそうだった。
航平は、あの日、お父さんとお母さんが喧嘩した日、自分が寝なければもしかしたら別居なんかしなかったのではないかと自分を責めている。
わたるという物語の少年に、自分の想いを乗せて書き続ける。
大人の事情なのに、子供は、もしあの時、って自分のせいにしてしまうんだな。

赤木ファイナンスの面々も、しょうもない人たちの集まりだったけど、最初から選択肢のない人生だった、という彼らにも、同情はしないけど、ヤクザの世界に身を置きながらもそれでも少しでも水面から顔を出そうとしてる辺り、頑張れ!!と言いたい。

虐待で心に傷を追った大和を、ずっと見守ってくれた秀代と亡き夫。両親の離婚で傷つきながらも受け止めた航平、優しすぎる柊子。
まさか、こんなに号泣するとは思わなかった。

しばらく忘れられない一作になりそうだ。



posted by じゃじゃまま at 15:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 有川浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月26日

虚ろな十字架 東野圭吾著。

《★★★☆》

一人娘を強盗殺人で亡くした夫婦の事件と、冒頭の少年少女の淡い恋物語がどう繋がるのか、ずっと気になっていた。
幼い娘を殺された被害者遺族。お互い傷が癒えないまま離婚した夫婦。その夫の元へかつての妻が殺害されたとの連絡が入る。
離婚後元妻のその後を知り、死刑とは、犯罪者の再犯歴の高さ、罪を償うとはどういうことなのか、自分たちの裁判をも振り返り、原稿を書いていた妻が、事件と向きあっていたことを知る。
その元妻が被害に遭ったのは、本当にただの行き当りの犯行だったのだろうか?

さすがだと思った。
小さな点が、どんどん繋がって行った。
元妻、小夜子を殺害した犯人の義理の息子が、冒頭の少年。生前、小夜子が取材を重ねていた女性が冒頭の少女。
そうやって繋がって行くのね。

「容疑者Xの献身」のように、深い愛を最後に教えてくれることを信じて読み進めたけど、感想から言えば嫌いな人が心を占めてしまってそれどころじゃない。
まず、冒頭の少年だった史也の妻、つまり小夜子を殺した犯人の娘なんだけど、花恵。なぜか一番嫌い。
史也がいい人なだけに、冒頭で史也と沙織の関係を読んでいただけに、なにこの女、と思ってしまった。
しかも史也の子じゃないし、そのくせ医者の妻の座にいるし。
花恵の父は犯罪者だし、この女ロクなもんじゃない、と思ってしまって、とにかく一番嫌い。

もちろん花恵の父も、この父さえいなければ、ってところあるしね。

そして、小夜子。娘を殺害されて本当に可哀相な人ではあるけれど、小夜子の正義感が次の事件を起こさせたよね。
そもそも、娘の事件がなければ小夜子が命を奪われる悲しみ、その罪への償いをそこまで深く追求することはなかったのだから、最初の犯人が一番のクズなんだけど、小夜子の行動は、個人的にはあまり共感はできなかった。
21年前の若すぎた二人の過ち。それを掘り起こして自首を勧める小夜子の強引さに、嫌悪感を持ってしまった。小さな命を奪った史也と沙織の罪は罪だけど、取材の過程で聞きだしておいて、自首を勧めに史也にまで会いに行く、その小夜子の強引さが、好きになれなくて、小夜子と花恵。この二人が今思い出しても嫌いだ。

死刑についても触れていたけど、正解はないのかもしれないけど、遺族にとって死刑はただの通過点、遺族がそれを望むのは当然の権利で、誰にも否定できないものだとは思う。

最後に、史也と沙織が共に生きることはないとは思うけど、花恵、どっかに行って欲しい。




posted by じゃじゃまま at 17:26| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月21日

満月の道 流転の海第七部 宮本輝著。

《★★★☆》

前作からかなり時間が経ってしまったので、登場人物で、誰だっけ?というようなことが多かった。
しかも、あんまり説明がないんだよね。
他の作家さんだと、毎回説明される水戸黄門みたいな感じで、いちいちこれはこうでああで、みたいな説明が入るんだけど、宮本氏のこのシリーズは、普通にさらっと流れていく。
この物語は、宮本氏の自叙伝的小説なので、「私の人生続いてるし時間は流れてるから戻っていちいち説明しないよ」的な?

ま、いいけどね。
でも、父、熊吾や母、房江の価値観や見方は、深みがあって、このシリーズはいつも思うんだけど、刻むものが多い。
熊吾や房江が人生において、本当に苦労して辛酸を舐めてきたり、経験によって掴んだものが多いからこそ出る言葉だったりするんだよね。
そして、それが間違っていたりもするけれど、人間味がある。

ドラマのように、登場人物が事件を起こして劇的に解決するような展開も少ない。
跡を濁して行ったまま去って行く者も多いし、それがまるっきりのフィクションとは違う。
熊吾はまたもや会社の人間にお金を騙されるし、やけぼっくいに火がついて女にうつつを抜かしてる間だったから腹が立つ。
せっかくうまくいっていた会社の経営が危うくなり、今後どうなるんだろう、というところで終わっている。

次は伸仁は大学生だろうか?熊吾の中古車会社はあのまま潰れてしまうんだろうか?
房江は城崎できれいな満月を見られただろうか?麻衣子のお蕎麦屋はどうなってるだろうか?

それまで覚えていられるだろうか?



posted by じゃじゃまま at 18:16| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 ま行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月19日

栄繕かるかや怪異譚 小野不由美著。

《★★★★》

家や庭、井戸、なにかの想いを残して亡くなった者たちが、なにかを伝えたくて・・・ホラーだったね。
どことなく人の悲しみや無念さが溢れて来て、涙がにじんでしまう。
その想いを受け止めてあげる栄繕かるかやの尾端の連作集。

夜、なぜか思い出して怖くなるから、絶対に思い出しちゃ駄目なんだよね。

「奥庭より」 ・・・ 叔母の死後、家を引き継いだ祥子。その家には箪笥でふさがれた開かずの間がある。
誰もいないのに、閉めたはずの襖が開き・・・人の顔や手が・・・。
その昔、その座敷に閉じこめられ、放置され亡くなった女性。その女性を見たくなくて座敷を封じようとすればするほど、部屋から出たがり徘徊する。
尾端は、ならばその部屋から出られるように窓を開け、水を置いてあげましょう、と提案する。
水を欲したまま亡くなった女性の想いを受け入れたのだ。

「屋根裏に」 ・・・ 舅や夫に苦労させられた母親がやっとこれから安心できると思った矢先、屋根裏を歩き回る足音に怯え始める。
息子は家の改修をするが、足音は止まない。そんな時、改修工事をした工務店から、屋根裏に瓦があった、と言われる。その瓦に記憶がよみがえる。その昔、姉が無造作に箱を開け、中から黒いモノが出てきた。その後でした異臭。そしてその土地に伝わる河童の伝説。それらが結びつき、その家には昔、河童の祟りがあって、それを封じ込めるために瓦と箱があったのだ。

「雨の鈴」 ・・・ 喪服の女が歩き回る路地。真っ直ぐにしか進めず、雨の日にしか姿を現さない。
その女が訪ねてくると、その家から死者が出る。家の住人が代替わりし、門の位置を変えたりすると、その女は向きを変え、また次の家を目指して歩き出す。次にやって来るのは有扶子の家だ。
これが一番想像すると、ゾクゾクした。尾端が、ならばその女が路地から抜けられるよう、塀を作り、道を変えましょう、と提案する。

「異形のひと」 ・・・ 父親が祖父の跡を継ぐために田舎に越してきた一家。移り住んだ古家で、長女の真菜香だけが見える老人。勝手に仏間に入り込み供え物を漁ったり、家の中のあらゆるところに隠れている。
いくら母親に訴えても誰も信じてくれない。まるで真菜香が一人おかしくなったかのような扱いだ。
心配した家族は、真菜香の気持ちをほぐそうと古家をリフォームすることにした。そこでやってきた工務店のおじさんから聞いた話。
この家に昔住んでいたおじいさんは、息子とそのお嫁さんたちからいじめられて体を壊して死んでしまった。そのおじいさん、きっと家族から隠れて食べ物を探していたんだろうな、隠れていたのに、お穣ちゃんが見つけちゃうんだろうな、って。
亡くなったおじいさんの想いが泣けた。

「潮満ちの井戸」 ・・・ 祖母から受け継いだ家にある井戸。夫がその横にあった祠を勝手に壊し、庭のリフォームを始めた。
ところが、徐々に枯れ始め、庭全体が病んでいるように見え、嫌な匂いがしたり、人の手のようなものがはいずりまわってるのを目撃した麻里子。そのことは夫に伏せ、業者に相談しようと来てもらうと、井戸を見た途端業者は逃げ帰ってしまった。
後日、栄繕かるかや、尾端がやって来て井戸を埋めることを勧める。

「檻の外」 ・・・ シングルマザーの麻美は、生活のため親戚から格安で家を借りた。ところが車庫のシャッターが突然降りてきたり、エンジンがかからなくなったり、挙句に子供の呼び声が聞こえ、後部座席ににいたりする。生活のために引っ越すこともできない麻美。そこでかつての知り合いに聞いたこの家の悲しい事故。
母親が子供を虐待していて、車に置き去りにしたまま中毒死したという。
余裕のない麻美の姿に、死んでいった子供は自分の母親を重ねたのだろうか。お祓いするために読んだお坊さんが、尾端を紹介してくれて、ガレージに閉じ込められた子供が外に出られるように車庫を変えましょう、死んだ子供が自分で自分を助けられるように、と。

どれも無念さが悲しい。

夜思い出すと怖いけど、よかった。


posted by じゃじゃまま at 16:12| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 小野不由美 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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