2015年04月09日

自滅 柴田よしき著。

《★★★》

ホラーなのか・・・。
「薫衣草」 ・・・ 二卵性双生児の清香と沙香だったが、沙香はある日夫と子供を残し失踪し、見知らぬ町でたった一人で死んでいた。沙香が暮らしていたらしいアパートの不動産からの連絡で、死後数カ月も経ってから向かったそのアパートで、一枚の新聞の記事を見つけた清香。それは二人が幼い頃過ごした町で起こったある殺人事件。時空を超えて、あれ、が沙香や清香を追い詰める。

「雪を待つ」 ・・・ 雪が降った日、傘の先で地面を突いた幼いあの日。そこに猫の死骸があったとしても、雪で隠されていれば分からない。幼かった「私」から、父を奪い、兄も奪い、そして母が去った。そして、今度は娘までも失った「私」。そんなある日、兄の自殺の原因になった女性を知ってしまう。彼女に幼い子がいることも。
幼いあの日猫の死骸を突いたように、「私」は雪を待ち続けてた。あの子が飛び出して来るのを待って・・・。
なんか無理がないか?復讐するなら兄を振った女性の家族よりも、娘を轢いた男の方だと私は思うけど。

「隠されていたもの」 ・・・ フリーライターである絵美に依頼のあったゴミ屋敷への取材。
そこで見つけたものは、人々が要らなくなって捨てたゴミだけでなく隠しておきたい過去のものが埋もれていた。狂気の世界だよね。
あり得ないホラーの世界。

「ランチタイム」 ・・・ 誰にも気にされず、いつも一人だった「わたし」は、今日も一人でランチタイム。
噂話をしている後輩社員を一睨みすれば、一人の女性社員がハッとしたけど、その他は誰も「わたし」に気付きもしない。
「わたし」に待つ真実とは・・・。

「自滅」 ・・・ なんでも消えて欲しいものをビルの屋上から願えば消えてしまう。由佳里を小馬鹿にした店員のお店もなくなった。由佳里をいつもいびっていた鈴本もいなくなった。村崎の妻もいなくなり、交際を初めてようやく入籍した由佳里だが、願えば消えてしまうと信じ続けた由佳里は心を病んでいた。村崎は気付いていた、由佳里だけがその現実を受け入れられなかった。
由佳里が本当に消えてしまえと願うのは、村崎の妻でも、鈴本でも、元の恋人でもない、それは自身だ、と気付いてしまった時、村崎の差し出した手は由佳里に届いたか・・・届かなかっただろうな〜。

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願いながら、祈りながら 乾ルカ著。

《★★★★》

北海道、生田羽村生田羽中学校の分校に赴任してきた林。
そして分校全生徒5人の子供たち。なんでも揃う都会の学校とは違う、厳しい環境の中で、迷い、悩み、自らの存在を考え、「願いながら、祈りながら」なにかを見つけ、成長していく彼らのそれぞれの物語。

第一章 始業前 ・・・ 自分を振った彼女を見返すために、こんなところで教員している暇はないと、赴任当初から持て余し気味の林。そんな林の心を見透かすように、三年生の女子生徒にやる気のないことを言われ、下宿先の老医師から「あなたの人生を時間に換えればこの一年はたったの20分。その20分を子供たちのために先生になってください」、そんな言葉が林を変える。

第二章 ひとりのせいで ・・・ 生田羽分校の唯一の三年生である弥生は、修学旅行のために生田羽中学校の生徒たちと合流する。弥生を含めて5人。静かで密かな意地悪は、弥生を孤独にさせていく。
たった数日のために、普段違う学校で学んでいる子が混じってもすぐには受け入れられない、そんなことが大人には見えないのだろうか。これなら本当、弥生は一人で旅行に行った方がいいと思った。
確かに、彼女たちの言い分も然り。せっかくの旅行が、たった一人のせいで台無し、って。
弥生が頼りにしていた一つ上の友人も、隣町の高校へ進学してからはもう弥生を振り向いてくれない。
そのことで、とことん一人になってやる、と弥生を決意させた。そしてこの決意が弥生をより強くさせたのだ。

第三章 特別の条件 ・・・ みなみはいつも普通。容姿も勉強もスポーツも、音楽も、すべていつも自分より上に誰かいる。私はなんのために生まれてきたのだろう、どんな存在価値があるのだろう、そんな疑問を抱えている。そんなみなみが見つけたのは、自分には霊感がある、ということ。祖父の命日に祖父の存在を感じたことにより、みなみはそこへ存在価値を見つけた。
自分を誇大評価したい欲求は誰しもあると思う。でも、そんなみなみの浅はかさを、同級生の学に鋭く指摘され、みなみはなにものでもない自分を認める。

第四章 闇を裂くもの ・・・ 憲太と学は大事な仲間だ。学の両親が畑作をするために東京から移住してきた時、その指導や世話をしたのが憲太の一家で、二人は大切な友達になった。子供時代を二人で過ごしてきた。
ところが学が道内の塾のテストで、村の神童と呼ばれるようになった辺りから、学はつれなくなってきた。
それでも憲太の気持ちは変わらない。学を大事に思っている。そんな二人が星空を見る会で、気持ちをぶつけ合う。
成績が伸びないことを、こんな村に越してきたせいだ、という学に、環境のせいにするな、と憲太は言う。
二人の思い出までも否定されたみたいで辛いよね。
本当は学だって分かってたとは思うんだ。もっと大事なこと、友達って大事だなってそんな素直な気持ちがあれば、学はまた頑張れる。

第五章 いつかくるとき ・・・ 神童と呼ばれている学は、その場の誤魔化しなどしない。
だからみなみが、ない霊感を自慢げに言うのも指摘した。
弥生に好意を寄せている生田羽中学校の生徒へも、弥生の拒絶の言葉を言おうとした。
ところが、いつも嘘ばかりついている亮介が、また嘘をついた。「ありがとうって言ってました」と。
生田羽中学校の少年は安堵の目になった。それなのに、学は追いかけて真実を告げた。
嘘の期待を持たせることは、いつか分かった時より残酷だと思わないかい?それが学の気持ちだ。
いつかくるときのために真実を告げるのもある意味優しさではあるけれど、私は亮介の嘘の方がより優しいと思う。

第六章 きらめきの名前 ・・・ 亮介の一家も都会から畑作をするために移住してきた一家だ。ところが亮介には嘘をつくと言う癖がある。すぐにその場の嘘をつく。後になれば分かってしまうのに、それでもつく。
吹雪のために学校に足止めされた日、憲太が「お前嘘つくじゃん?だったらなんか作り話してくれよ」と。
そこで語られた亮介の話。病気で長く生きられない子供が、病室で見た一枚の風景写真。母親は「そこが気に入ったの?」と聞く。嘘だったけど、聞かれたから「うん」と答えた子供。子供が気に入った景色のために、親はその村へ移住することを決めたのだ。
なぜ、そんな嘘をつくのか。
どんな嘘でも、その場で相手が喜んでくれるなら、その子にはいつか嘘がばれるときが来ることはないから、と。吹雪の中、亮介が語るその物語は、いつもの嘘なのか、それとも真実の・・・。
吹雪が去った後、林が亮介を窓辺に呼ぶ。そこから見える景色は、物語の少年が写真で見た風景。亮介は、このためにこの村に来たんだ・・・、と。

第七章 これからはじまる ・・・ 卒業式。弥生は、一人この村から旅立つ。今までの慣例に逆らい、たった一人で遠い都会への高校へ進学する。それが弥生の決意だ。清々しいくらい自分の足で立っている少女。15歳でその決意ができた幸運を私は祝福したい。
そして吹雪の後で倒れ、そのまま東京の病院へ転院していった亮介から手紙が来た。「元気になってます。ディズニーランドへ行ってきました」という内容。そして日付は平成23年3月11日。そう、あの日なのだ。亮介は、とうとういつかばれる嘘、を身を持って体験することができた。亮介にも、いつか来る時があったんだ、と。
そして、生田羽分校は閉校になる。弥生が卒業し、亮介もいない。生徒は三人しか残らない。元々林が赴任してきた時から一年後の閉校は決まっていたのだ。
それぞれの春へ、「願いながら、祈りながら」歩き出す、素晴らしい物語。




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2015年03月26日

一匹羊 山本幸久著。

《★★★★》

様々な日常の、ほっこりとする短編小説。
「狼なんてこわくない」・・・ 遠距離恋愛している高校生が、お金を貯めて金沢に越してしまった大好きな彼のところへ向かう、バスの中での話。隣に座ったのは、恐らくお水系の派手なお姉さん。その会話や、麗子の心のつぶやきが面白い。
そして、バスが到着して、待ち受けていた男の子の言葉も、これまたいいよね!!
続きが読みたかったのに、連作ではなかったのが残念。

「夜中に柴葉漬」・・・ 居酒屋でバイトする青年と、男手一つで彼を育てた父親。息子は父親をうっすら馬鹿にしてるようで、ふいにバイト先に来た父親の意外な社交性を見てなにかが変わったみたいで、嬉しい。
自由人を気取っているトリイに「君はこの中で一番不自由そうに見える」と言ったお父さん。息子には冴えない親父に映っていたかもしれないけど、このお父さん、なかなかできる男だ。

「野和田さん家のツグヲさん」・・・ 隣家の少年から見てツグヲさんは、30歳過ぎても働きもせずお小遣いまでもらっちゃって、数年に一度は誕生日プレゼントまでもらってる困った大人だ。「ぼく」の未来はこの町にはなくて、下手したらツグヲさんみたいになっちゃう、と本気で嫌がる「ぼく」。
そんな「ぼく」と、事故に遭ったお父さんの代理でツグヲさんが送迎してくれることになった二人の車中の会話と、心のぼやきが面白い。
ツグヲさんの悪友たちがなにやら悪だくみをしていて、それを阻止したツグヲさんの意外な一面を見て、「ぼく」が町を少し好きになったのも嬉しい。

「感じてサンバ」・・・ 南のどこかの島のキャバクラで働くミナコ。そのお店で働く女の子たちは島には居着かない。ちょっとすればまたどこかへ行ってしまう。ミナコもそんな一人のはずだったけど、帰る場所のないミナコは、だんだん島が好きになっていく。
ミナコの過去、なんか気になるけど、この島で幸せになって欲しいもんだ。

「どきどき団」・・・ 亭主関白な夫は、妻がボランティアで子供たちに昔遊びを教えているのが気に食わない。
今までは貞淑な妻だったけど、徐々に強くなっていくこのおばあちゃんの、これまた心のつぶやきが面白い。
山本氏が書くと、亭主関白な嫌な夫も、どこか愛嬌があるから憎めない。

「テディベアの恩返し」・・・ 他人へのリクルート活動を支援する企業に勤める鮒村の会社に、元プロ野球選手の高校の同級生がやって来る。どこか偉そうな態度は昔も引退して二年経つ今も変わらない。
そんな熊田に腰の引けていた鮒村が、帰りの電車で、熊田から聞かされたある話。熊田にも弱音があって、そしてそんな熊田が昔、自分を目標としていたという事実。平凡な鮒村が一歩踏み出しそうな物語。

「踊り場で踊る」・・・ 家具売り場で働く鮎川は、恋人なし、パワースポットめぐりが生きる源となっている。
ある日曜日、元彼が鮎川の社員割引を目的として、婚約者と来ることになり、ちょっと気分悪い中、それでも鮎川はターゲットを決め、家具のセールスに熱心だ。
いつもと変わりない日常、そこへ迷子のおばあさんがやって来て、鮎川を誰かと勘違いしている。
おばあさんの記憶の中で、きっと楽しかったであろう女学校時代の友達たちが今も目の前にいて、嬉しそうに話しかける。
おばあさんが鮎川を誰かと間違えて話しかけてるけど、今、鮎川はおばあさんのお友達のタキちゃんと重なって、タキちゃんのように?タキちゃんの代わりに?よし!と気合を入れ直して、またいつもの日常に立ち向かっていく。そのリセットさが心地よかった。

「一匹羊」・・・ ある縫製工場で働く40歳過ぎの大神。昔は自分の意見を押し通す気概もあったけど、徐々に世の中の流れに逆らうよりも、黙って流れていく方が賢いと悟った40代。
職場体験に来た中学生からの質問で、そんな自分を見つめ直し、やる気を出す。

どれもこれも、ささいなきっかけで、ちょっとした一歩を踏み出す、ほっこりとする物語ばかり。
山本氏の小説は、うっかり電車や人目があるところで読むと、危ない危ない。
一人ニヤニヤする危ない人になってしまうからね。


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2015年03月23日

荒神 宮部みゆき著。

《★★★★☆》

北に位置する二つの藩。山神様のいる大平良山を挟み、主藩と支藩に分かれた永津野藩と香山藩には過去からの因縁がある。
香山藩、瓜生家の側室の子が病に倒れた。そんな時に二つの藩を襲った怪物。
民を食い、村は壊滅状態に。が、民を助けるどころではない藩に、香山藩からは小姓、小日向直弥。永津野藩では、藩を牛耳る弾正の妹、朱音が、村の人々と立ち上がる。

怪物に立ち向う時、二つの藩の因縁と、朱音と弾正の過去、香山藩にはびこる病の原因、すべてが一つに繋がっていく。
さすが宮部氏。どこにも誰にも無駄がない。
怪しげな絵師も、永津野に流れ着いたという弾正も、妹朱音も、そしていがみ合う二つの藩も、すべてラストへ向けて繋がってまとまって、もう本当にさすがと言うしかない。

宮部氏の時代物は、常に人の情から来る物語で、いつも物悲しくなるんだけど、やっぱりね、だった。
でも、仕方ない、この寂しさの余韻が宮部氏の時代物なので。

でも、側室の子の死因は?暗殺者は?寺から盗まれた絵馬は?榊田宗栄の身元は?伊吉の正体は?
やじの言ってた通りだったのかな。気になるけどね〜。


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ヤモリ、カエル、シジミチョウ 江國香織著。

《★★★☆》

江國ワールドだ。
幼稚園児の拓人は人よりも言葉が遅いけど、虫やヤモリと話ができる。
姉の育実はそれを知っている。
彼ら独特の世界と、愛人の家からたまに戻って来る夫を待ち続ける母親の奈緒。
彼らが通うピアノ教室の先生とその両親。
彼らが遊びに行く霊園の管理人、拓人の周囲の人々のゆっくりとめぐる時間、なんとも優しげで残酷な物語。

拓人の世界はひらがなで、読みにくいという人もいるけれど、なかなか優しい時間だった。
ヤモリと会話する拓人の世界は、透明で優しい風が吹いてるよう。
小説に出てくる人物の中で唯一現実的だったのは、姉の育実だけだったように感じる。

夫を待ち続ける奈緒は、いつまでも女で怖いし、婚約者が中心のピアノの先生の恋する乙女にも辟易。
江國氏の描く女性ってこういう人多いよね。決して共感できないっていうか。
夫の恋人の真雪も、夫も、奈緒も、三人とも厚かましい感じで、誰も好きになれない。

ピアノの先生のお母さんもかつて不倫していた相手をうっとりと思っていて、だけど、実際9年間不倫してたのは私にはできないけど、心の中にいるのは、まあ、理解できる。

拓人の次にこのお母さんが理解の範疇。

ああ、あと霊園の管理人さんね。彼は拓人が見えない会話をすることを察したけど、拓人を理解できる人って心に寂しさを抱えてる人なのかな。
複雑な毎日さえも、さらりと日常が流れていくのは江國ワールドの特徴だよね。

結構長編だったけど、難なく読めた。

奈緒と夫、愛人には幸せになって欲しくない気もするけど、江國氏と幸せな家族像を語り合ったら絶対平行線になりそうな気がする。


posted by じゃじゃまま at 16:28| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 江國香織 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月05日

仮面同窓会 雫井脩介著。

《★★★》

洋輔たちは高校を卒業して7年経っても、在校生だったころの忘れられない恨みがある。
体育教師であり生活指導の樫村からの体罰だ。
高校時代憧れていた美郷と偶然再会し、ストーカーを撃退したことから二人の仲は急速に近づき、そんなとき、同窓会が開かれることになった。

数年ぶりに樫村を見たことにより、忘れられない屈辱がよみがえり、洋輔の悪友である八真人、希一、カズたちと樫村を拉致する計画が持ち上がる。
いたずら半分だったのが、翌日、樫村の遺体が池から発見される。

洋輔たちの計画では樫村は手足を縛ったまま廃工場に置き去りにしたはずが、そこから離れた池で手足を縛られたままで池に落ちていたという。
一体誰が?洋輔たちの中に真犯人はいるのか?

仲間同士で疑心暗鬼になるうちに、一番動揺して、洋輔を疑っていたカズが公園で何者かに刺されて死亡した。
希一たちは洋輔を疑い、洋輔は八真人を疑う。

美郷の親友の真理と高校時代八真人は付き合っていたが、その後真理の自殺には樫村にレイプされたという噂があり、その恨みを晴らすための八真人の犯行だと洋輔は思う。

物語自体は、洋輔の二重人格疑惑や、途中で「俺」様が入り、多少混乱する。
きっと洋輔の他人格が犯行してるんだろうな、と思わせつつ、徐々に美郷のキャラが変わって来て、ストーカーだった男と実は知り合いだったり、希一の胡散臭さとか、どいつもこいつも怪しい。

最初は混乱してしまって、キャラが統一してないな〜と思ってたけど、ラストまで読むと、そういうことね!!って。
結局、全員が犯行に手を染めてしまって、どうなるんでしょうか。

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スタープレイヤー 恒川光太郎著。

《★★》

読むのに時間のかかった一冊だった。
ある日歩いていると、変なモノに声をかけられくじ引きさせられる。当たりくじを引いたらなんでも夢を叶えられるスタープレイヤーとして別世界にいた。

そこは地球ではない、だけど確かに自分は存在している。夕月は絶世の美女に生まれ変わり、宮殿のような城を建てたり、庭園を造ったり、いつかは元の世界に戻るために、十個しかない願いを叶えられる星を一つ残しながらも、徐々に慣れていく。
もう何十年も住んでいるというマキオと出会い、やがては勢力争いに巻き込まれていく。

別世界に連れてこられた人々は、元の地球上ではどうなってんの?アメリカの俳優の例では、どうやら地球上では死んでいるらしい。
この世界にいるのはコピー版。戻る場所なんてない、そう思ったからこそ夕月は戻らない選択をしたんだよね。

恒川氏の魅力は、別世界に入り込みながらも描く世界はどこか懐かしく、日本の古き匂いが漂っていたのに、「スタープレイヤー」は、まるでRPGゲームのようだった。
基本、私の最も共感できない部類。


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2015年02月23日

11月のジュリエット 乾ルカ著。

《★★》

高校2年の優香は乗り込んだ飛行機で、謎のガスにより乗客が大量死する事件に巻き込まれる。生き残ったのはわずか5人。地獄と化した機内に現れた4人の美青年たちは「NJ」という研究のデータを奪うため、秘密に触れた優香たちをも葬り去ろうとする。4人と対峙するうち、生きることに無気力だった優香は変わり始めるが―。閉ざされた飛行機で、凍えるアラスカの地で、少女は“生”を見つめ直す。名もなき花が導く、美しきサバイバル・ロマン。 (「BOOK」データベースより)

なんでしょうか。
まるで【ターミネーター】3だか4の、ゲーム会社だかどっかの会社の家に、お前が作ったものが未来では人類を滅ぼすものになるんだ、っていってシュワちゃんだちが乗り込んだシーンを思い出した。
でもそういうことだよね。

核も発明した人はそんなつもりじゃなかったのに、後に核兵器というものに利用されたように。

この物語も、未来に影を落とすある発明をなかったものにするために、未来から4人の青年たちが送り込まれた。
でもだからといって無関係な人たちまであんなにたくさん殺していいものだろうか。

最後まで残った優香と陣内。陣内は、未来の碑にその名前が刻まれていて、なきものにしようとしていたその不幸な発明を幸せな方に転換させた人らしい。

では優香は?

そのことには触れられてなかったけど、私は勝手に、陣内と優香は将来結婚するんだろう、と解釈した。

posted by じゃじゃまま at 17:44| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 乾ルカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ケモノの城 誉田哲也著。

《★★★☆》

記憶にある、尼崎の監禁殺人事件や、北九州で起きた一家監禁殺人事件など、明らかにそれがモデルだよねって物語。
ある少女が保護された。証言を元にあるマンションの一室に行くと、大量の血痕の反応が出た。少女と一緒に暮らしていた男女は一体誰なのか?
物語の冒頭には、ある青年の告白があり、人を殺そうとかそういう感情など持ったとしても実行に移すことなんてない。あの男に会うまでは・・・なんて意味深なセリフ。
この青年と恋人の生活に、ある男性が現れて、彼らとマンションで監禁されていた少女の事件が一体いつ結びつくのかハラハラしながら読んだ。

このハラハラ感が誉田氏の思う壺なんだろうけど。

少女の証言から出るある男女の名前。警察は必死に行方を追うが、追えば追うほど深い闇を覗くことになる。
関わった人間の、周りの家族たちも消えている。
小説では、二家族が犠牲になっていたけど、保険証の女性とか、え?まだいたよね?って嫌な気分になる。

逃げようにもあんなにボロボロになるまでよく我慢したよねって思ってしまう。
もっと早くどこかに相談できないものか、って思ってしまうけど。

実際の尼崎の事件とか、女の指示で自分の身内によくそんなことできるよねって思ったけど、小説でも自分の身を守るために親を裏切ったり、いや〜、気分悪かった。まったくもって理解できない。
なんでそんな男にそこまで傾倒するかな。

「ソウルケイジ」に似た切ないラストへと加速していったけど、そこはちょっと無理があったかな。
「ソウルケイジ」のようにはならないし、超えなかった。

そっちに持っていこうとすると、青年の恋人の父親の存在を替え玉にするしかないんだろうけど、無理があったかな〜。
だったら、恋人の父親が監禁の犯人でしたっていう方が、いやだけど、いやだけど!!でも現実的にあり得る展開だったのに。
読者をミスリードしたいがために、ちょっと無理のある方向に持って行ったなって正直思った。

でも切ないラストにはなったけどね。
でも久々に誉田節を読んだ気がする。

posted by じゃじゃまま at 17:32| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 誉田哲也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月12日

田村はまだか 朝倉かすみ著。

《★★★★☆》

深夜のバー。小学校のクラス会三次会。男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。’09年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。傑作短編「おまえ、井上鏡子だろう」を特別収録。 (「BOOK」データベースより)

ようやく読んだ。
かつての旧友たちが田村を語る、中村理香を語る。
そして今は二人がよき夫、妻、パパ、ママであることも分かり、薄幸だった子供時代を乗り越えたんだな、と安心する。
旧友の一人は、恐らく田村の父親であろう人間と縁していたり、年下の教え子と切ない恋心を隠し持っていたり、浮気していたり、それぞれの問題も語られつつ、「田村はまだか?」なのだ。

そう、来ないのだ。

後に来れなかった理由が分かるんだけど、結構ショック。
それでも淡々と後日も語られ、最後の最後でバーで私たち読者は田村に会える。
その前に友人たちは病院で会ったりしてるんだけど、私たちは最後の最後に会えるんだよね。

こんなにも小学校時代の友人を待ってくれる旧友たち。
どこにでもある素材なのに、すごくおいしく調理した物語。なるほど、話題になっただけのことはある!

「おまえ、井上鏡子だろう」も、同じくクラス会に参加した他の友達の話。彼は田村は待たない。
どうでもいいんだろう。その帰り道、中学が一緒だった女性とすれ違う。
彼の中では記憶に残っているその女性。たまたま数回、あ、中学の時一緒だった子だ!って再会することもある。
でもそれだけで、別段人生に深く関わることも、その後縁することもないんだけど、でも、そういう再会ってあるよね。
その後で、井上鏡子が死亡欄に載っていても気付くことなく、ああ、またどこかで会うかもな〜ってのんびり想像してる。

どうでもいい再会って誰でもあることで、それを印象深く物語にしている。

posted by じゃじゃまま at 17:33| 神奈川 | Comment(0) | TrackBack(0) | その他 あ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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