2014年10月20日

豆の上で眠る 湊かなえ著。

《★★★》

小学一年生の時に、姉の万佑子ちゃんが行方不明になった。
いつも優しく、絵本を読んで聞かせてくれた万佑子ちゃん。お気に入りの本は、「えんどうまめの上になたおひめさま」。
本物のお姫様だと証明するために、小さな豆をベッドの下に置いて気付くかどうか、そんな童話が二人のお気に入りだった。
本当に気付くかしら?と実験した思い出もあった。

そんな万佑子ちゃんが突然いなくなったのだ。
同じ姉妹とは思えないほど、対照的だった妹の結衣子は、姉の不在よりも、いなくなったのが自分だったら母親はここまでするだろうか、とそんな不安や孤独を感じながら過ごす。
隣の県で起きた同じような事件が、男による監禁事件で解決したことにより、母親は結衣子を利用して不審者を捜す。

万佑子の失踪事件と、現在が交錯しながら物語は進み、現在では、姉は無事に戻って来ていて、でも、結衣子の語り口では、万佑子を失ったものとして語られるので、またもや、いつもの湊節だな、と。
こう思わせておいて、実はこう!!みたいな、そんな展開なんだろう、と予測立てつつ、どんなことがあるだろうか、と考えながら読んだ。

途中、母親の行動のせいで結衣子がクラスでいじめられたり、失踪してから二年後に保護された万佑子が戻って来ても、家族に馴染めなかったり、結衣子は可哀相だったね。
そのわりに、万佑子の方は私立に通ったり、友達もできたりと、この差がなんとも言えず切ない。

物語の最初からキーワードとして出てくるあの童話も、つまりは偽物と本物、そういうことだね。

ラストに近づくにつれ、まるで【そして父になる】を思い出したよ。

取り違え、そういうのって家族にはきちんと話さなきゃダメじゃないのかな。特に姉妹ならば。
なんだか、安西家の親はちょっとずれてるかな。まったく別の子を受け入れられるわけないじゃん、説明なしに。
しかも二年しか経ってないのに、違うものは違うでしょ。

二人の少女にとっては、まあ、辛いだろうけどね。それにミスリードが大好きな湊氏だから、こうでもしないとミスリードできないんだろうけど、取り違えを家族、身内にすら説明なしで強行突破は、説得力に欠ける。

でも、それなりにドキドキしながら読めたけどね。

posted by じゃじゃまま at 12:38| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 ま行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

芸者でGO! 山本幸久著。

《★★★☆》

お仕事小説ですね〜。山本氏のお仕事小説は、本当に楽しいし、ほんわかしてくる。
アヒルバスのデコがゲストなのも、ファンにとっては嬉しいし。

八王子で芸者をしている、置き屋「夢民」五人衆。
男に振られて芸者になった、元女子高生、晴子。
その晴子の元彼の友達、佐野君に夢中な十も年上の紗英。
元看護師で高校生の息子がいるシングルマザーの千香。
プロレス歴はほんのひと月でリングネームすらもらってないのに、そっちの方が興味持たれる優月。
みんなの憧れで、ちょっと遠巻きにもされる謎の喜久代。

どれもこれも、いろんな事情があるんだけど、ふっと笑ってしまったり、涙ぐんだり。

紗英の章では、最後佐野君が帰ってこなくなって、どうしたんだろう?って、佐野君のお父さんが出てきたりで、嫌な予感で終わったよね。
千香には、結婚式前日に事故で亡くなった婚約者との子供がいて、当時の仲間たちが千香にはいてくれたのが嬉しかったし。
女らしくなりたくて芸者になった優月、恋には縁遠いのかなってイメージだったけど、なにやら素敵な出会いがあるし、謎の多かった喜久代さんには、辛い辛い過去があって、別れた子供との再会は・・・ないのかな。

大団円のラストのようで、ちょっとずつ余韻を引きずりながら終わったのも、いい味。

佐野君と逃避行に走った沙英は見つかったのか。
置屋「夢民」が千香が継いでくれれば、なんか安心だしね。だって、千香には亡き婚約者との間の息子を抱えて、これからも女手で頑張って欲しいしね。

なんだろうな〜、なんか嬉しくなる物語でした。

posted by じゃじゃまま at 12:07| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 山本幸久 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月08日

コロボックル絵物語 有川浩著。

《★★★》

どうということもない短いお話。
だけど、子供のころ佐藤さとる氏の「コロボックル」シリーズに夢中になった者としては、久しぶりに、コロボックルの存在を信じてたあの頃に戻れて嬉しかった。

当時、佐藤さとる氏のコロボックルを読んだ子供たちは、絶対コロボックルを信じて探したね。
私は多少遅く、中学一年のころに読みました。読み始めた瞬間から、ドキドキワクワクして、もしかしたら本当にいるのかも???って確かに探した。

これは子供たちにも話してるし、本当にあったことなんだけど、でも、今では半信半疑の出来事。
そう、ちょうど佐藤さとる氏の「コロボックル」に夢中になっていたある晩。
さあ、もう寝ましょうとベッドに入りました。
そうしたら、ベッドの下から「ルルルルルルルルル・・・・」って音が。

それはまるで物語の通り、コロボックルの話し声みたい!!
それでも、まさかね〜、きっと虫に違いない、と。
でも明らかに声は部屋の中から。じゃ、虫が部屋の中かよ!?いつもなら虫嫌いの私は大騒ぎするところなんだけど、でも、虫ともちょっと違うような、っていうか、半分、コロボックルかも!って信じてたからね。

しかもしかも!ベッドの下あたりから聞こえてきて、探したんだ、コロボックル。
だけど、探して驚かしちゃいけないと思って、ゆっくりと「コロボックルさん、出ておいで。おやすみなさい」とかなんとか話しかけたんだよね。

あの当時、確かに私は信じてた。

そんな子供が全国に何人いただろう。きっと読んだ子供たちはみんな信じてたと思う。
その、信じてた自分のあのころがよみがえって来て、懐かしく読んだ。

そして、実は今でも私は、やっぱりコロボックルだったんじゃないかな〜?って信じてる自分に改めて気付いた。

有川氏が今後、どのように紡いでいくのか。待ってます。

posted by じゃじゃまま at 10:29| 神奈川 | Comment(0) | TrackBack(0) | 有川浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月29日

オール・ユー・ニード・イズ・ラブ 東京バンドワゴン 小路幸也著。

《★★★★》

待ってましたの、東京バンドワゴンシリーズ、もう何弾だか分からなくなってしまいました。9弾か??
細かいエピソードは忘れてしまっても、大丈夫。なんとかついていけるから。
今は亡き、サチさんの語りが耳に心地よく、東京バンドワゴンを舞台に繰り広げられる人情あふれる下町の物語。
 
秋は、
「真っ赤な紅葉はなに見て燃える」・・・ 堀田家ゆかりの人々が増えてきてみ〜んなお知り合い状態なんだけど。
青が出演した映画の脚本家の岸田さんが東京バンドワゴンにやって来て、すずみさんが作った特設コーナーの作家の棚を見ている。そこへ岸田さんと高校時代同級生だった、これまたバンドワゴンゆかりの裕太君がやって来て、再会する。
裕太君によると、岸田さんはすずみさんがフェアをやっている作家の本を燃やしていた過去があるという。なんと、その作家の娘が岸田さんということも判明する。
同じ頃、本を売りに来た女の子。この子も訳ありで、記入した住所と帰る場所が違うことにバンドワゴンの面々はなにかあると察知して、心配する。
親子の絆を優しく問いかける。

それにしても、裕太君って誰だっけ?

冬、
「蔵くなるまで待って」・・・東京バンドワゴンの蔵に眠る、秘密の蔵書に気付いたライターがいるという。
サチさんの実家のことや、なんだか忘れちゃったけど、大事なものなんだよね。
そのライターさんがとうとうバンドワゴンにやって来た。サチさんの初スキャンダルにも話が及んで、藤島さんまでがお父さんの後妻さんとのスキャンダルが狙われたり、そこで明かされる藤島さんの素姓。
とっても有名な書家を父に持つご子息だったという。
敏腕実業家の藤島さんのアイデアで、蔵の蔵書をすべてデジタルアーカイブ化することで、ライターさんをもバンドワゴン側に抱き込め、サチさんの日記から、身の潔白も証明されてよかったよかった。
ついでに、このライターさんと、木島さんっていう、最初にライターさんの存在を勘一に教えてくれた記者さんね、この二人が結婚するってところまで話は及ぶ。

ってことは、本当はバンドワゴンのこと教えたの、木島さんじゃないの?って疑いたくもなるよね。
この二人の結婚は余計だった気もするけど、花陽の友達が木島さんの子供で、この少女が父親の再婚を望んでるって設定だったしね。

春、
「歌って咲かせる実もあるさ」・・・ 勘一が盲腸で入院しちゃった。
バンドワゴンに隣接するカフェに、常連さんの薫子さんがやって来る。最近、古銭でコーヒー代を支払うってことで、藍子や亜美さん、仲良しのすずみさんから事情を聞いていたお嫁さんは心配していた。幼馴染でもある我南人は、薫子さんの優しい遠慮と気遣いに気付く。
物語常連の茅野さんは、元刑事でありながら、古本の詐欺にあってしまう。でも本人はそれでもどこか楽しそう。
一番シンプルな章だったけど、好き。

夏、
「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」・・・ 木島さんと仁科さんの結婚の話や、研人が高校に行かずにロンドンへ音楽のために留学したいと言い出す章。
ちょっと登場人物が増えてきたから、整理するのにちょうどいいかな、なんて勝手に思ってたら、結局は行かないし。
身内の説得よりも、おじいちゃんである我南人の人脈はすごかった。
世界的に超有名なミュージシャンと研人を会わせ、海外を知るためにはまず足元を見よ、じゃないけど、自分の国をよく知ることだ、と悟らせる。
そうなんだよね、海外に行くと日本のこと聞かれたりするんだよね。自信を持って答えられない自分が恥ずかしい。
日本人は自分の国というか、愛国心って改めて考えたりしないもんね。

昔、海外で古典のこと聞かれたもんね。

posted by じゃじゃまま at 11:24| 神奈川 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小路幸也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月17日

赤ヘル1975 重松清著。

《★★★★★》

広島を舞台に、弱小カープが奇跡を起こす年に起こった、少年たちの物語。
決して野球だけの物語ではない、背景には、広島県民たちの愛すべきカープの活躍が描かれているけど、原爆を落とされて30年、広島の人々の苦悩や、そこから立ちあがって来た強さ、そして、私たちの子供時代がそこにはあった。

カープの帽子が赤ヘルと呼ばれるようになる赤に変わった年。カープを愛して止まない野球少年のヤスや、新聞記者志望のユキオ、一攫千金を夢見ては敗れる父に連れられ転校を繰り返すマナブの1975年。
赤なんて女の色だ、と頑なに帽子を被らないヤスは、父を原爆の後遺症で亡くしている。
女手一つで酒屋を継ぎながら姉と自分を育ててくれている母のために、野球部にも入らず家の手伝いをする。

家族のために、誰かが誰かのために我慢する。そんな時代だったよね。
広島へやって来たマナブ。広島の平和や原爆について、熱くなる広島によそもんで、よそもんはよそもんらしく、それでも思うことあって言葉にすると、ヤスに怒られる。
ユキオが言う。「原爆についてヤスから言ってきたら聞くことはしても、こちらからは言ってはいけない」その気持ち、ズシンときた。

分かった風なこと言ってはいけないんだ。そういうことは本当の関係者たちしか言ってはいけないんだ。

物語にはたくさんの関係者が出てくる。その悲しみや苦悩を、読んで知ってはいても、分かった風に理解したと思ってはいけないんだ。

マナブの父はいつも怪しげな商売に手を出しては失敗する。いつも夜逃げ同然で越していく。
どこかにマナブがいるんだろうか。
重松氏の物語にはいつも、どこかにいるんではないだろうか、という人たちが出てくる。

マナブの父が、ヤスの母からお金を受け取る。騙すつもりはなかった、と言うけど、こういう人いるよね。
つもりはないというけど、毎回同じ失敗して、気付かないだろうか。
ヤスは胡散臭さを感じ、だけど、自分の連れの親だから信じたいと、マナブに「大丈夫か?」と聞く。
マナブは父の今までを見て、どこか危なげなものを感じていながらも、「大丈夫」と言ってしまう。
ここで言えないものか。やはり子供は最終的には親を信じてしまうんだろう。

結局失敗するんだけど、マナブにも腹が立つし、ついでにマナブの母にも腹が立った。
家族を捨て、新しい家庭を作る身勝手さ。母に捨てられたマナブ、やっぱりどこかにいそうだ。

カープの優勝を見届け、父と共に九州へ旅立つマナブ。送られてきた手紙に返事を書くと、宛先不明で戻って来て、それっきり。
ヤスがカープのキャンプ地へ行き、北別府選手の名前を叫びながら、心ではマナブを想う。
「帰ってこいよ」と。

三人の少年の物語の先は描かれていない。

このまま会うことはなかったのだろうか。それがさすが重松氏らしいというか、安易な夢を持たせない。

マナブ、一攫千金の夢ばかりを追う父と共に、君はどんな大人になりましたか?
ちゃんと地に足をつけた大人になりましたか?お父さんと同じような弱い人にはなってませんよね?
人を裏切らない大人になってるといい。
きっと他の人よりは寂しいこと、辛いことたくさんあったと思うけど、優しい大人になってるといい。
そして、やっぱり広島に戻っていて欲しい。

人を想うこと、原爆のこと、カープのこと、私はこの物語を読書感想文に推薦する。



posted by じゃじゃまま at 17:41| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 重松清 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

生存者ゼロ 安生正著。

《★★★》

エボラ出血熱やデングウイルスなど、世間を騒がせてるこのタイミングで、なんと恐ろしい本を読んでしまったことか。
というか、安生氏、すごいタイミングで執筆したね。もちろん、ご本人は預言者でもなく、たまたま、もっと以前から目を付けていたテーマに違いないけど。

北海道根室半島沖に浮かぶ石油掘削基地。
そこから緊急連絡が入り、そのまま連絡が途絶える。演習をしていた陸上自衛官の廻田は、救助に向かう。
目にした光景は無残な死体だらけの基地。生存者はゼロ。この遺体のあり様は、なにかの感染症か。
家族を果ての土地で奪われ、学界からも追われた感染症学者の富樫と廻田は、ウイルスの正体に迫るため、責任から逃れようとする政治家や富樫を陥れた元同僚たちと闘いながらも、調査する。

国民がパニックになり、収拾がつかなくなることを恐れ、情報をひた隠しにする政府。なんとかこのまま終わってくれないか、と希望的観測で調査を打ち切った後、とうとう北海道のある町で同じような死体が溢れ、本土に迫るカウントダウンが始まる・・・。

そうかそうか、ウイルスか。
どっかの組織が生物テロを起こしたのかと思ったけど、そうではなかった。
人間が自分たちの文明のため、掘り起こしてしまった、恐ろしいウイルスだった。

ちょうどドラマで、シロアリ駆除業者が一家殺人事件を起こしたのと重なったため、シロアリ、ウイルス、嫌な感じだった。
感染すると猶予もないまま発症して、致死率100%で、結局、シロアリ同士の縄張り争いに賭けるしかないのも、救いがなくてラストがパッとしない。
責任逃ればかりの政治家に、まさか現実ではもう少しマシだろうと思いたい。

そもそも、地方自治体に任せてる方が絶対逃げられないって、中央の政治家さん。そこ、わかんないかな。

家族を失った富樫が、薬物中毒になってしまったのも、なんとも救いがないし。

この先、これからも未知のウイルスが出てくる気がして、人間が先を行きすぎると、こうやって警鐘を鳴らされるのかな。


posted by じゃじゃまま at 17:07| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 あ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月13日

チルドレン 伊坂幸太郎著。

《★★★》

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。 (「BOOK」データベースより)

そんな風に書いてあったけど、何気ない日常に起こった、って結構陣内の日常って何気なくないんだけど。
五つの物語が一つ・・・になったっけ?

なんていうか、常識がないようにも見える飄々とした陣内君の、周りで起こる、そして陣内君の周りにいる人々の、物語。
ほとんど一つの物語だよね。陣内君が大学生だったり、社会人になってたり、また家裁の人目指して勉強中だったりと、時間を前後しながら、一つになったというより、最初から一つの物語。

銀行強盗に遭ったり、誘拐事件の身代金受け渡し現場にいたり、的外れな考えしてそうで、的を射ていたり。
付き合うと疲れそうだけど、あの飄々とした中にも、強さがある気がして、あんな風に生きてみたいな〜と、自分にはないものだから憧れる。

陣内君のお父さんは、女子高生のストーカーってこと?
「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。
posted by じゃじゃまま at 16:48| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 伊坂幸太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月26日

虚夢 薬丸岳著。

《★★★☆》

目の前で愛娘を殺され、自らも重傷を負った母親。犯人である青年藤崎は、心神喪失で罪に問われなかった。
夫婦関係は壊れ、妻はその後再婚した。
その元妻から「あの男を見た」と電話がかかってきた。

小説家であった三上は、作家を引退し、荒んだ生活をしていた。でも元妻からの電話で動き出す。
元妻は、職場でも近所でも「あの男が襲ってくる」騒ぎ、あの犯人と同じ病名を下される。

あの男を見た、のは妄想なのか。

風俗の仕事をしているゆきは、忘れたい過去がある。しつこい客、田代。ふらりとやって来た藤崎との出会い。
そう、藤崎はやっぱりいたのだ。
三上は元妻が見たという言葉を信じ、藤崎を探し出した。そこでゆきのことも見かける三上。
元妻の病状を心配してくれる高校時代の精神科医の友人、松岡。

一見関係なさそうに見えた三上、ゆき、が藤崎によって繋がり、そして松岡も繋がっていた。

ラストの衝撃の真実は、本当に衝撃だった。
そして元妻の計画。

事件が起こり、精神鑑定という言葉を聞くたびに、普通の人間は憤りを感じる。そんなことで、罪を帳消しにするなよ、と。
この小説は、答えでもない。結局、答えなどないから。
藤崎は結局またもや事件を起こした。やっぱり治ってなどなかった。それでもまた数年で社会に戻って来るのだろうか。

元妻の計画。精神異常を装って、それが他人に見破られるのか。もし計画が成功していたら、大きな波紋となり、なにかを大きく動かしたかもしれない。
でも小説は、そちらではなく、結局正当な被害者遺族の訴えで問いかけることにするらしい。(という終わり方)

その問題提起よりも、ゆきの事実の方がインパクト大だった。
薬丸氏・・・ちょっと興味出てきた。



posted by じゃじゃまま at 18:32| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 や行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メグル 乾ルカ著。

《★★★》

「あなたはこれよ。断らないでね」奇妙な迫力を持つ大学学生部の女性職員から半ば強要され、仕方なく指定されたアルバイト先に足を運んだ大学生たち。そのアルバイトは、彼らに何をもたらすのか?五人の若者を通して描かれるのは、さまざまな感情を揺り動かす人間ドラマと小さな奇蹟の物語。小説の楽しみを存分に詰め込んだ愛すべき傑作、鮮やかに登場。 (「BOOK」データベースより)

お通夜で遺体と添い寝して手を握るバイトや、犬に餌を与えるだけで一日一万円もらえるバイト。
雇い主が作った料理を食べるだけのバイトや、大学病院の売店の入れ替え作業だったり、庭作業だったり。
それぞれが、それぞれに必要なものばかり。「アタエル」だけは、あれだけ女性職員の悠木さんから阻止されて、「後悔しないでね」と言われたバイト。
そして、後悔する羽目になった。

大学病院の売店のバイトは、厳格だった父親が倒れ、思うように体を動かせなくなった苛立ちを母親にぶつけ、その逆らえないストレスを娘である飯島さんにぶつける。そんな家から逃げるようにバイトを探した。そそして悠木さんから言われたバイトで、飯島さんは気付く。
病気は本人も看病する家族も辛い、それでも母親は少しでも父に喜んでもらおうとアイスケースをかき回し、やつれた指から指輪が抜けた。
その失くした指輪をバイトで見つけた飯島さん。病気と闘う両親の姿を見て、飯島さんは少し強くなったかな、優しくなれたかな。

「タベル」バイトは、吐いた記憶から食べることを避けていた青年と、病気で食べることができなくなった雇い主。満足させたい、という願いを、青年のトラウマが邪魔をする。
青年の友人が「たった一度の体調の悪かっただけのことで、食べないなんてもったいない」。そして雇い主には「みんなで食べる食事は、どんなものでもおいしい」と提案し、3人で食事をする。
青年と雇い主の願いが成就したハッピーな物語。

毎年、冬の始まりの一日だけ戻って来る女性。毎年、毎年繰り返される庭作業。
そこには、思いだけが残る。
時はまためぐる。

posted by じゃじゃまま at 18:08| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 乾ルカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月21日

刑事の骨 永瀬隼介著。

《★★★☆》

連続幼児殺人事件の捜査本部で、捜査を仕切る若き管理官、不破。
情報漏洩に頭を悩ませながらも、このままノンキャリのエースとして昇るところまで昇りつめようとしていた矢先、かかってきた一本の電話。
それは、連続幼児殺人事件の犯人しか知りえない秘密の暴露を持つ電話。
大勢の捜査員が見つめる中、不破は犯人との交渉に失敗し、同期の警察官に「ぶち殺せ!」と指示を出し、真犯人を追いつめるも取り逃がすという失態で、二度と浮上することができなかった不破。

射撃の腕を持ちながらも、度胸に恵まれず、追い詰めた真犯人を取り逃がした上、同期である不破の刑事人生を終わりにさせた田村。
その後、連続幼児殺人事件の犯人は四人目の犠牲者を出したまま逃げ切り、時効が成立してしまった。

退官後も不満を抱えたままの人生を歩むことになった不破の元に、田村ことホイチが訪ねてきた。

本当は、取り逃がしたままの真犯人を捕まえたい、いや、見つけた、と言いに来たのかもしれない。
素直になれない不破は冷たくあしらったまま、なにも言いだせないホイチを送り出す。
翌日、ホイチの死体が発見された。自殺だという。

自殺に納得できない不破は、ホイチの部屋で幼児連続殺人事件の捜査ノートを見つける。

そこには当時ホイチが真犯人に遭遇する前に、犯人を見ていた高校生の名前や、被害者遺族のことが書いてあった。
一人一人に当たる不破。そして、一人の名前を発見する。栃尾眞一。
栃尾は警察OBで、過去に自分も幼子を殺害され、妻が自殺するという壮絶な過去を持っている男だった。
栃尾の協力も得て、ホイチの捜査を引き継ごうとした不破。

そこに、当時の目撃者であった高校生、犯人確保に成功していたら出ることのなかった四人目の犠牲者の両親、元片腕であった部下の刑事も絡んで、事件は思わぬ方向に進んでいく。

どうなるんだろう?誰が犯人なんだろう?って止まらなかった。でも、あれまあれま、連続幼児殺人事件に犯人が二人いたとは、四人目の犠牲者の母親千恵の執念といい、元夫の下嶋譲の異常さといい、栃尾の正体、盛りだくさん。

警察の隠ぺいは、必ず出るね。
でも、最後の最後で刑事を見せた不破の行動は、考えたね。
小説はその後は書いてないけど、不破が模倣犯であった犯人を殺害し、出頭したら、取り調べで過去のいろんなことが出てきて、これもまた警察は隠ぺいするんだろうか?

これぞ、ハードボイルド。




posted by じゃじゃまま at 10:04| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 な行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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